アクア「犬ね!」ダクネス「雌犬だと……ハァハァ」カズマ「はぁ……」
- 2016年04月12日 23:40
- SS、この素晴らしい世界に祝福を!
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※この素晴らしい世界に祝福を!のSSです。
オリジナルキャラ(動物とモンスター)が登場します。
オリジナルキャラ苦手な人は注意してください。
ふぅ……いい朝だ。
今日も屋敷を全力で警備していた俺はそろそろ就寝しようかと布団に潜り込んだ。
「カズマーカズマさーん」
無事仕事を終え、お疲れモードの俺をどっかの駄女神が呼ぶ。
「カズマーカズマさーん」
当然無視だ。俺は疲れているんだ。
これ以上の厄介事はごめんだ。
「カズマー!カズマってば!起きてるんでしょう!?」
迷惑女神が俺の部屋の前でドアをドンドンと荒々しく叩く。
寝よう。俺は寝るぞ!
「このヒキニート!部屋から出てきなさい!あなたは包囲されているわ!田舎のお母さんが悲しむわよ!」
だんだん楽しくなってきたのか、アクアは適当な事を言い出す。
「今ならカツ丼……いえ、カエルの照り焼き定職を署で出してあげるわ!さあ、吐きなさい!あなたを、犯人です!」
悪い事は何もしてないのに、俺が一体何を吐くというんだよ……
はぁ……このままアクアを放っておくと、何をしでかすかわからないし、部屋のドアを開けてやるとするか。
観念した俺は部屋のドアを開けた。
そこにはアクアが----
「ったく、どうしてカズマはこっちの世界でもヒキニートなの?だからヒキニートなのよ」
か、かわいい。
「ねえ?カズマーカズマー?聞いてるー?もしもーしバカですかー?……って、いひゃいいひゃいいひゃい」
調子に乗っているアクアの頬を引っ張り、俺は改めてアクアが抱いていた、かわいいそれを見た。
「なぁ?何で犬抱いてんの?」
* * *
「かわいいですね。かわいいですね」
めぐみんが目を真っ赤にしながら犬を抱っこしてナデナデしている。
いいなぁ……。俺も犬になりたい。
犬になったらスカートとか覗き放題だよな。
それにペロペロしても犯罪にならないし、あぁ……いいなぁ……犬。
犬を撫でているめぐみんをダクネスが羨ましそうに。
「な、なぁ。そろそろ私に代わってくれないか? もちろんこの犬を抱っこするだけだ。
決して首輪をつけて犬になりたいとかそんな事を考えていないからな。
もちろんだが、夜に薄着で散歩プレイをしたいだなんて考えてもいない」
チラチラこっちを見るダクネスを無視して、めぐみんが続ける。
「そういえば、この子の名前は決まっているのですか? 決まっていないのなら、私が素敵な名前を考えますが」
めぐみんが何か恐ろしい事を言った気がするが……
というか、めぐみんは自分に名前をつけるセンスがあると、本気で思っているからたちが悪い。
そんなやり取りを見ていたアクアがフフンと胸を張って。
「この子の名前はクイーンチャコール・ヴァイデンよ。この子はいずれ犬どころかワーウルフすらをも統べる犬族の王女になるわ。
そうね、この子を呼ぶ時はヴァイ姫とでも呼んであげて」
* * *
クイーンチャコール・ヴァイデン。
小さい。本当に小さいの一言に尽きる。たぶん、生まれてほんの1ヶ月くらいの柴犬だ。
手と足はまだまだ短く、毛並みは茶色で、目はクリッとしていてかわいい。
この犬は、拾ってくださいと書かれた段ボールに捨てられていたらしい。
それを見たアクアが拾って来たとの事。
うーむ。本当は元の場所に戻してきなさい! というのが筋なんだろうが……
「わんわん」
みんなに撫でられて、嬉しそうなヴァイ姫を見たら、それを言えなくなる。
こんな小さいのにみんなを魅了するとは……将来は大物になるのかもしれない。
「じゃあ、ヴァイ姫だっけ? 俺はカズマ。よろしくな」
「わん!」
めぐみんが立ち上がり、バサッとマントを翻し。
「我が名はめぐみん! アークウィザードをにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者! アクセル随一の魔法の使い手にして、いつか爆裂魔法を極める者!!」
「我が名はアクア! 崇められし存在にして、やがて魔王を滅ぼす者!」
「私はダクネス。よろしくな。ヴァイ姫」
「わん!」
「あー! ダクネス、ノリが悪いわよ!」
「はぁ……ダクネスには失望しました」
「し、しかし、そういうノリは苦手で……」
三人がワイワイガヤガヤ騒いでいると。
「にゃーん」
我が家のペット……めぐみんの使い魔のちょむすけがヴァイ姫を舐めていた。
よかった。犬と猫は仲が悪いと聞くが、特に問題ないようだ。
「じゃあ、ヴァイ姫の飯を買いに行くか。あと首輪とか必要な物もそろえないとな」
「ああ、そうだな。ふふっ……それにしても首輪か。色んな首輪があると聞くが、似合うものがあるといいな」
ダクネスが意気揚々と立ち上がった。
「お前の首輪は買わないからな」
「……わかっている」
ダクネスが寂しそうに呟いた。
一日一爆裂に行く私達。
いつもはカズマかダクネスと二人で行くのだが、今日からは新しく可愛らしい仲間が、一生懸命に連いてきている。
「頑張れ! ヴァイ姫! もう少しだからな!頑張れ!」
「わん!」
この犬が来てから一週間。
最初の頃は栄養が足りてなかったのか、走り回ったりできなかったが、今はもう元気過ぎて困るぐらいになっていた。
その有り余る元気を少しでも発散させるために、今日から一日一爆裂に連れてくることにしたのだ。
まぁ、困っているのは、主な遊び相手のちょむすけなんですが……。
「めぐみん。この辺にしないか? さすがのヴァイ姫も疲れてきているみたいなんだが……」
「まったくカズマは親バカか何かですか? ヴァイ姫はこんなに小さいとはいえ犬です。あまり甘やかしたらダメですよ」
「いや、だが……」
「ヴァイ姫。まだまだ元気ですよね?」
「わん♪」
ヴァイ姫が元気に吠える。この犬は人間の言葉がわかる賢い子なのかもしれない。
「ぐ、ぐぐぐぐぐ」
カズマが珍しく悔しそうにしている。
カズマの悔しがる姿を見る事ができるなんて……ヴァイ姫には感謝しなくては。
「そ、それより、ヴァイ姫に紐が必要だろ。もしいなくなったら……。なんでこの世界では犬に紐をしないのが常識なんだよ……」
「はぁ……。またその話ですか。いいですか、カズマ? 紐は元々、勝手に人を襲ったり逃げたりする犬にする物。
ヴァイ姫は賢い子です。勝手に逃げたりしません。襲ったりしません。安心してください」
「賢いのはわかってるんだが……でもなぁ……」
ヴァイ姫を飼ってわかった事がある。
それはカズマが親バカだという事。
ヴァイ姫の姿が少しでも見えなくなると、心配ばかりしている。
この人と結婚した人は、子供の教育とかで大変な目にあいそうな気がする。
「ふふっ」
「おい。なんで笑ってるんだよ……」
「いいえ。将来大変だなと思いまして……。それより、あの岩に爆裂魔法を使いたいのですが」
「わかった」
いくらヴァイ姫が賢い子とはいえ、初めての爆裂魔法には驚くかもしれない。
いや、驚いてもらわないと困る。
さあ、今日はヴァイ姫に爆裂魔法を披露する日。
私は少し緊張し。
「『エクスプロージョン』ッッ!」
----私の生涯をかける爆裂魔法を新しい仲間に披露した。
私が筋トレをしていると、ヴァイ姫が帰ってきた。
ヴァイ姫がこの家にきて、すでに一ヶ月。
友達でもできたのか、よく出かけるようになった。
「ヴァイ姫。遊んでくるのはいいが、身だしなみは常に整えないとダメだ。貴族の嗜みというものがあってだな」
「わん」
「まったく……返事だけはいいな」
どこで遊んできたのか、ヴァイ姫は汚れていた。
育てると決めたのだ。きちんと育てないといけない。
どこに行っても恥ずかしくないよう、礼儀作法を身につけさせないと。
「ぐがーぐがー」
ソファーで、真昼間から寝ている、あの男のようになって貰っては困る。
この家で一番まともな私が躾をしなければ、ヴァイ姫がダメになってしまう。
* * *
私は外で桶に水を張り、ヴァイ姫を洗ってやることにした。
「ダクネス? 何をしているの?」
「アクアか。見ての通り、汚れたヴァイ姫を洗ってやっている」
「まったくこの子は。毎日ふらふら遊びに行って、誰に似たのかしら?」
絶対にアクアとカズマの影響だ。
「きゃんきゃん」
「おっと、暴れるな。こらっ」
ヴァイ姫は何故か水が好きで、水遊びをしたがる。
「ちょっと、もぉ。ヴァイ姫ったら……」
水しぶきがアクアにかかり、それをヴァイ姫が舐めとる……顔を舐めとる。
「はいはい。ありがとうヴァイ姫。もう大丈夫だから……もうっ。くすぐったいってば」
普段ご飯をやっているアクアへの恩返しのつもりか、ヴァイ姫がアクアの頬をペロペロと舐める。
「ねえ、ダクネス?ちょっとヴァイ姫を捕まえてくれないかしら?ダクネス?」
い、いや、きっと賢いヴァイ姫の事だ。そんな事するはず……
しかし、ヴァイ姫はこう見えて恩義に報いる方だと思う。
う、うむ。そのように育てたつもりだ。そう貴族とは恩義に報いる生き物だ。
「ちょ、ちょっとダクネス!? なんでダクネスの方が犬みたいにハァハァしているの!? め、目が異常よ!? ダクネス!!!?」
その後、アクアの身に危険を感じたのか、ヴァイ姫が私を襲って来た。
まだまだ攻撃力が足りないようで、気持ちよくなかっ…………これでは番犬としてどうかと思う。
今度からヴァイ姫を鍛えてやろうと私は密かに誓った。
「ただいまー」
「わんわんわんっ」
私が帰宅するとヴァイ姫がお祭りのように騒いでお出迎えをしてくれる。
さすがアクシズ教徒のヴァイ姫ね。お祭りが好きみたいで安心したわ。
「お出迎えありがとう。ヴァイ姫」
ヴァイ姫の前だと私は自然と笑顔になってしまう。
「行くわよ。ヴァイ姫」
たった今買って来たお酒を自室に持っていこうとすると、ヴァイ姫がついてくる。
ヴァイ姫はお利口さんで、お母さんである私を護衛してくれる。
私がお風呂に入る時は、外でジッと待って、カズマが覗きをしないように見張ってくれ、
私が寝るときは、一緒のお布団に入ってきて、私を癒してくれる。
どうしよう。この子。可愛すぎるんですけど。
私がヴァイ姫に癒されていると、我が家のヒキニートが話しかけてきた。
「カズマ、ヴァイ姫は私が好きなの。年中ヒキニートのあなたは嫌いって言っているの」
「ぐっ。毎日毎日お前ばっかり卑怯だぞ!」
「ふふん。なんとでも言いなさい。さあ行くわよ、ヴァイ姫。その男と喋っているとゲスになっちゃうわよ」
「ヴァイ姫! 俺と一緒に寝てくれるなら、この高級な餌をやるぞ!」
「まったく……。ヴァイ姫を何だと思っているの?いい?私とヴァイ姫は親子みたいなものなの! 親子の愛情はお金や物じゃ揺るがな……あ、あれ?ヴァイ姫!? なんでそっちに行くの!?」
「最近、クエストに行かない貧乏なお前は嫌なんだと。じゃあなアクア。今日は一人寂しく寝ろよ」
「いやぁぁぁぁ。カズマさーーーん。お願いだからヴァイ姫を返してーーーー!」