撮影後にピント合わせができるカメラで知られる米 Lytro が、初の映画撮影用カメラ Lytro Cinema を発表しました。7億5500万画素のセンサを備えたLytro Cinemaは、光線の方向や場面の奥行きも記録する「ライトフィールド撮影」技術を導入したシネマカメラ。
機能はグリーンバックの要らないデプススクリーン(任意の距離以降をマスクする)、撮影後のフォーカスや被写界深度変更、シャッター角度(速度)の変更、カメラ移動の精密なトラッキングなど。やり直しが容易ではない大掛かりな撮影や、撮影後の3D CG合成などVFXと親和性が高い「究極のクリエイティブツール」をうたいます。
Lytroはレンズに入る光線の向きや強さまで記録して、演算で画像を取り出す「ライトフィールドカメラ」を扱うスタートアップ企業。多数のレンズを敷き詰めたレンズアレイ搭載のライトフィールドカメラをコンシューマー向けに2機種、業務用には360度同時撮影の球体カメラ Immerge などを製品化してきました。
新たに発表した Lytro Cinema は、Lytroとしては初の本格的な映画撮影用カメラ。計755メガピクセル(7億5500万画素)のセンサを備え、最高300fpsの高速度撮影に対応します。
Lytro によれば、利点はポストプロダクションでの自由度が高く、3D CG合成などのVFXと親和性に優れること。ライトフィールドカメラでは被写体までの奥行きが取得できることから、二次元の実写映像と三次元のCGを馴染ませるための処理がしやすく、表現の幅が広がるとしています。
特徴はそのほか、実物の背景幕を設置する必要がないデプススクリーン撮影、撮影後の被写界深度やフォーカス変更、パースペクティブの調整、シャッター角度の変更など。
Lytro Cinema はカメラ本体と物理・クラウドストレージ、編集や一般的な業務用フォーマットへの出力プラグインといったソフトウェアなど一式のレンタルで提供されます。価格は12万5000ドルから。
7億5500万画素や「40K」は映画撮影用としてもオーバーキルすぎるケタ違いの数字に見えますが、これはすべての光束を記録してから演算処理で2D画像を取り出すライトフィールドカメラの仕組みから、最終的な出力解像度よりも大きな画素数での撮影が必要となるため。
たとえばコンシューマー向けの Lytro Illumカメラは解像度が「40メガレイ」でしたが、最終的に出力する2D画像の解像度は最大で4メガピクセル程度でした。Lytro Cinemaでは映画制作に耐える出力のため、画素数にして755メガという膨大なライトフィールドRAWデータを記録します。
Lytro は Lytro Cinema の機能をデモするため、The Virtual Reality Company の Robert Stromberg 氏やDavid Stump氏による短編 " Life " を撮影済み。4月19日に、映像制作技術の見本市NAB Show で一般公開する予定です。