アニ「壁に穴のある街で」
アニ「ですからもういいですか?」
アニ「これ以上の意味が私にはわかりません」
とこんな風な手紙を私は書き、捨てる
だって届ける方法がどうやってもわからないし
わからなくなった
この世界は誰かが望んだように人類は負けそうだった
どのくらいなんだろう?
負けたかどうかは知らないし、分からない
私は一人で暮らしていた
誰とも会わない。会いたくない
滅んでしまった?かまわない。変わらないから
それは昔だって今だったそうだ
いやになる
いやになった
だから離れた
この街は人がまあいない。いなくなった
死んで殺され逃げて
結果としてはどれも同じ
いなくなってしまっては
理由はそう外にいる
歩く音、呼吸の音、うめき声。何から何まで
アニ「うるさい」
耳障りな振動。嫌になる
この街のそばの壁には穴が開いている。それは小さな巨人が通れるくらいの
アニ「いなければいいのに」
誰に言っているのだろう?声を発する度にそう思う
目の前の巨人にいってるのかな?
アニ「変な顔だ」
聞こえている?どうでもいいけど
向けられているのはそんな殺意だ
アニ「仕方ないね」
私の家の周りにうるさい奴はいらない
こんな雨の日はなおさらだ
家でゆっくりしたいよ
冷たさを感じ
確かにあるものだと
ブレードを触る
立体機動で跳ぶとき
真直ぐに降りる雨は
斜めに方向を変えて
私に迫り過ぎてゆく
このときだけ私は
何も考えなくていい
ブレードを触る
熱い。確かに殺した
こうなっては相手に願うことは
真直ぐ倒れて何も壊さないように
アニ「死んでくれ」
パチパチパチ
サシャ「いやーすごいですねーアニは」
まだうるさい奴がいた
サシャ「お疲れ様です。じゃあご飯にしますか?」
アニ「まだいたの?」
サシャ「まだいますよ。もちろん」
なんでいるんだ?
アニ「いつ帰るの?」
サシャ「じゃ一緒に帰りましょう」
違う
アニ「いい加減所属の兵団にもどりな」
サシャ「あぅそうですねー」
アニ「うん」
サシャ「いつか帰ります」
いつか?
アニ「なんで?」
サシャ「いいからっ帰りましょう。ねっ」
理由は言いたがらない。ここに来た理由もいる理由も
それは私も同じだけれど
サシャ「今日のご飯はなんでしょねー」
折れたブレード、尽きかけたガス
そんな状態で現れた。巨人に出会ってでもしたら
危なかっただろう。今もそうだ
サシャ「アニ特製のスープですかね?」
アニ「そうだねぇ」
ひとまず帰ろう。戻るところがあるならば
・・・特製ってなんだ?
サシャ「美味しいですね」
アニ「そんなことない」
ほんとにそう思う。いつもと同じだ
アニ「あんたは何食ってもそういうじゃないか」
サシャ「何を食べても美味しいのですよ」
アニ「あっそ」
まあいいや。一人分を作るのも、二人分も変わらない
んっ?何で私が作るんだ?
仮にも居候のあいつが作るべきじゃないか?
サシャ「私の顔になにかついていますか?」
アニ「別に」
サシャ「アニは料理上手ですね」
アニ「そう」
上手いか?自分では分からないな
アニ「別に」
サシャ「・・・アニいいですか?」
なんだ?
アニ「なに?」
サシャ「もっと会話しましょうよ」
アニ「やだね」
話すのは苦手なんだよ
サシャ「いくら話すのが苦手でもですねー」
うん。ばれてるね。じゃあ・・・
アニ「あんたは今日何をやっていたの?」
何も思いつかないな。一人でいるほうが喋っているかも
サシャ「私ですか?物思いに耽っていました」
そうか。次は何を話そう
アニ「・・・」
サシャ「冗談ですって。そんな怖い顔しないでください」
してるつもりはないけど
サシャ「掃除とかですね。買い物です」
意外にちゃんとしてる
アニ「そう」
いつ終るかもしれないこの場所に
そんな気持ちは湧かない
物も買う気持ちにもなれない
アニ「何を買ったの?」
サシャ「食料と食料と・・・食料です」
あー・・・
サシャ「怖い顔」
アニ「してないよ」
アニ「無事に買えた?怖い思いしなかった?」
サシャ「あっありがとうございます!」
なにが?
サシャ「大丈夫でしたよ。立体機動を持ってますから」
サシャ「逃げに徹すればまあ大丈夫です」
サシャ「それに・・・アニも近くにいますから」
アニ「戦いなよ」
サシャ「・・・すみません」
アニ「おかわりいる?」
サシャ「はい!」
サシャ「もう寝ましょうか?」
アニ「あーうん」
サシャ「火を消しますよ?」
アニ「どうぞ」
消えた
サシャ「明日は何をしましょうね?」
アニ「うん」
思いつかない
サシャ「どうして目を?天井を見つめているのですか?」
アニ「寝なよ」
サシャ「・・・はい」
なぜかこの暮らしをしてから
どんなに暗くても何も見えなくてもベットに入ってから目を開けて
天井と窓の外を交互に見ている
暗さを比較しているのだと思う
そしていつの間にか寝ている
サシャ「あのー」
うるさいな
サシャ「起きてます?」
アニ「うん」
サシャ「やっぱりアニのご飯は美味しいですよ」
アニ「・・・ああ。ありがと」
明日は何を作ろうかな
サシャ「えっどこにです?」
アニ「そこらへんをぶらぶらする」
サシャ「何をしに行くんですか?」
アニ「人殺しをしに」
サシャ「巨人は人じゃないです」
どっちでもいいんだ
アニ「生きるためにはさ」
サシャ「はい・・・」
私は巨人を殺して生活をしている
殺せば金がもらえる
何も感じるな
アニ「あんたも来る?」
なんて性格が悪いんだ私は
サシャ「・・・」
アニ「嫌ならいい」
本当だ
どちらの肯定だろうか?
サシャ「お弁当作りますね」
アニ「あっうん」
私は自分のことしか無理で
いつもそうで
それしかできないから
あなたはもっと別のところに
サシャ「はいっどうぞ」
アニ「ありがと」
こんなとこにいたら駄目だ
サシャ「ではいきましょう」
アニ「えっ?」
サシャ「狩りですよ」
きっとこいつは私と同じじゃないのか?
サシャ「あのっブレード借りていいですか?」
アニ「いいよ」
アニ「・・・」
サシャ「なにか?」
成績は優秀だったから
なんとかなるだろうか
アニ「ふー・・・じゃあ役割を決めようか」
サシャ「役割?」
アニ「あんたは囮だ」
サシャ「囮」
アニ「私が殺す」
サシャ「すみません」
アニ「なにが?」
サシャ「いえ・・・アニのほうが危ないですから」
アニ「おんなじだよ」
アニ「単に私より成績の悪かった奴に任せられないから。それだけ」
サシャ「ああ。そうでした。そうでしたね」
アニ「いこうか」
サシャ「ええ」
変なことを言ってしまった
サシャ「街がまるで森の中のように生きているように蠢いているように見えてしまいます」
普段より少しよく喋る
サシャ「アニは森で狩りとかしたことありますか?」
アニ「ないよ」
サシャ「そうですか。今度行きますか?」
アニ「あー」
行きたくないなー
サシャ「どっちなんですか?」
アニ「帰ったら考えるよ」
サシャ「ほんとですよ?」
アニ「今は今のことだけを考えるんだ」
アニ「後にも先にもその価値があるかどうかわからないし」
サシャ「ありますから。ありますよきっと」
アニ「そう?」
サシャ「昔は楽しかったじゃないですか。そうじゃありませんでした?」
わからないよ。そんな余裕はなかったから
それにもうあまり思い出せない
そこまで昔でもないのに
サシャ「いまは大変かもしれないですが」
サシャ「きっと」
アニ「もう。やめだ」
アニ「うん」
みんなって誰のことだ
いろんな奴がいた
昔から知っている奴とか
・・・死にたがりの奴とか
思い出したくない
死んでしまった人や
それと同じくらいに
生きている人のこと
だから思いだせないのか
サシャ「・・・」
アニ「責めてないから」
サシャ「昔は楽しかったなんて随分情けないことを言いました」
サシャ「そんなこと言うなんて嫌になりますね」
サシャ「そうですよね?嫌になりますよ」
サシャ「駄目です。そんなんじゃ」
サシャ「がんばりましょう。狩って狩って狩りまくってやりましょうよ
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