任天堂は本日開催した決算発表のなかで、次のスマートデバイス向けアプリとして『どうぶつの森』『ファイアーエムブレム』をリリースすることを明らかにしました。
任天堂はゲームプラットフォームの盟主である立場から、いわゆる『スマホゲーム』には伝統的に距離を置いてきました。しかし2015年3月にはDeNAとの業務・資本提携を発表し、スマートフォンやタブレットなどスマートデバイスも、全社的な戦略のなかで活用してゆく方針に切り替えています。
いわく、ハードとソフトが一体になった専用ゲーム機のビジネスは今後も中核事業として継続して取り組みつつ、スマートフォン向けにはユーザーが一日に何度も触れる特性にあわせたコンテンツやサービスを提供し、任天堂IP(キャラクターやゲームタイトル)の維持発展に役立てることで、全社的な利益につなげる狙いです。
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— Miitomo【公式】 (@Miitomo_JP) 2016年4月27日
こうした経緯で日本では今年3月、欧米では4月にリリースされた任天堂初のスマホアプリ Miitomo は、リリースから約一か月で世界1000万ユーザーを突破。リリースされたばかりということもあり、任天堂は本日の28年3月期決算発表で細かい数字は明らかにしなかったものの、調査会社が公表した推定 (月間400万アクティブユーザー、売上は4万ドル/日)について問われた際には実態とかけ離れたものではないと回答しています。
どうぶつの森・ファイアーエムブレムは、Miitomo に続く次の任天堂スマホアプリとして、今年秋ごろのリリース予定が明らかにされました。
タイトルとリリース時期以外、内容などの詳細はまったく不明。
任天堂は昨年のDeNAとの提携発表に際して、スマートデバイス向けに既存ゲームをそのまま移植することはないが、「継続して触れてもらうため、ゲーム要素を持たせることは否定しない」と語っています。
蛇足ながら、今回の決算資料から両シリーズのIPぢからを売上本数で測ってみれば、
どうぶつの森シリーズの番外作である
『ニンテンドー3DS どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』(3DS、2015年7月15日発売)
今年度304万本(国内148万本、世界156万本)
ファイアーエムブレムシリーズの最新作
『ファイアーエムブレムif 白夜王国・暗夜王国』(3DS、2015年6月25日)
今年度184万本(国内78万本、海外106万本)
どうぶつの森シリーズの本編最新作である
『とびだせ どうぶつの森』(3DS、2012年11月8日)
今年度107万本(国内31万、海外76)、累計1000万本
どうぶつの森、ファイアーエムブレムとも日本国内でも海外でも人気が高く、難しい戦略タイトルに選ばれるのも納得のシリーズです。
任天堂のスマホアプリについては、昨年の『任天堂がDeNAと業務・資本提携、スマホゲームと会員サービス開発。新ゲーム機NX予告』を参照。
ハードの普及が難しくなったとの課題はあるが、ソフト・ハード一体型のゲーム専用機ビジネスはいまも有効に機能している。家庭用ゲーム専用機の未来を悲観はしていない。
状況を分析すると、任天堂の強み、客がもっとも価値を認め金を払っても良いと考えているのは、任天堂のキャラクターやゲームシリーズなどのIPである。任天堂にとってもっとも重要なのは、この任天堂IPをより多くの人に触れさせ、価値を維持し、最大化させること。
ゲーム専用機ビジネスに変わらず取り組む一方で、インターネットやソーシャルメディアの発展など、ライフスタイルの変化は柔軟に対応してゆく。135年前、テレビが存在しない時代に創業した任天堂が、テレビをメディアとして積極的に活用するようになったことと同じ構造。スマートデバイスは人々が社会とつながる窓になっており、活用しない手はない。
スマートデバイスに限った話ではなく、キャラクター商品や映像コンテンツ化など、人々に多く触れることで任天堂IPの最大化を目指す取り組みは進行中。改めて発表する。
どの手段を選ぶかは、IPによってファンが違うため異なる。最適な手段を使う。
スマートデバイスの活用にあたって。さまざまな伝達手段のなかで、スマートデバイスはグローバルな稼働台数が多く、接触頻度、合計の接触時間が強力。
より密に、継続して接触するため、スマートデバイスでもゲームコンテンツを提供する。
「スマホゲームは作らない」と言っていたのに方針転換では?と言われるが、スマートデバイスの積極活用を掲げた1月の経営方針発表でも、ゲームコンテンツを禁じ手にしないと語っていたように、スマートデバイスでゲームを作ること自体を否定していたわけではない。
しかし、スマートデバイスのアプリの世界ではコンテンツの入れ替わりが激しく、すぐにデフレ化するなど、価値の維持が容易ではない。任天堂IPの維持発展と矛盾しない方法を検討してきた結果、ようやく結論が出た。
スマホゲーム業界は楽に多額の利益を挙げられると思われているが、実はごく少数の勝者だけが儲かっている。絶対の勝算を持ってこの少数にならないかぎり、参入する意味はない。
任天堂はこのためにDeNAと協業する。任天堂の強みが任天堂IPにあるように、DeNAの強みは世界トップレベルのWebサービス構築・運営ノウハウにある。
この2つを組み合わせ、グローバル市場向けに、スマートデバイス向けゲームを共同で開発・運営する。取り組む以上、億単位の客に楽しめるコンテンツを目指す。
活用する任天堂IP は限定しない、しかし厳選する。
ゲーム専用機向けゲームをそのまま移植はしない。
スマートデバイスのプレイスタイルにあわせ、専用機とはまったく別のコンテンツを提供する。
「ゲーム専用機ビジネスに対する情熱や展望を失ったからではない。」(岩田社長)
これまで以上にゲーム専用機ビジネスへの情熱も展望もある。任天堂の強みである任天堂IP (キャラクター、フランチャイズ)をスマートデバイスで展開することにより、多くの人が日常的に継続して触れるスマートデバイスの強みを活用し、ゲーム専用機ビジネスに役立てる。
本日の決算発表資料から、中長期的な経営方針を抜粋すると、
ビデオゲーム専用機ビジネスにおいては、全く新しいコンセプトのゲーム機「NX」を開発しており、これまでどおり、ソフトウェア主導でハード・ソフト一体型のユニークなビジネスを経営の中核にしていきます。
また、任天堂IPに触れる人口を最大化させるために、新たにスマートデバイス向けのゲームビジネスを展開しています。スマートデバイス向けのゲームビジネスを収益の柱となるよう育てていくと同時に、新しい会員サービス「My Nintendo(マイニンテンドー)」を充実させることにより、お客様とのつながりを継続的に強めていくことで、スマートデバイスビジネスとゲーム専用機ビジネスとの相乗効果を狙い、当社ビジネス全体の最大化を目指します。
「スマートデバイス向けのゲームビジネスを収益の柱となるように育ててゆく」ことを明言しています。
本日の決算発表では、昨年のスマホ参入時に同時発表されたまま続報がなかった新型ゲーム機 NX について、2017年3月の発売が明らかにされています。