【ディケイド】門矢士「風に乗って」【デレマス】
・仮面ライダーディケイドとデレマス(アニメ)のクロスSSです。ディケイド寄り
・地の文有り
・他ライダーとのクロス要素もあり
[前回]→【ディケイド】門矢士「宇宙が来る」【デレマス】
第13話 GOIN’!!! to Ride the Wind
フェスを目前に控えた8月の中頃。シンデレラプロジェクトは、新曲の収録を終えた。
ユニットごとのパフォーマンスに始まり、プロジェクト全体でのダンスや歌等、シンデレラプロジェクトとして出来ることはほぼやった。
そして、フェスの前日。
346プロの貸し切った会場近くのホテルで、調整や打ち合わせ等をしつつ、皆が翌日を楽しみに待っていたのだが門矢士だけは違った。
士「…………」
未央「…つかさん、どうしたの?」
卯月「さぁ…。朝からずっとあんな感じです…」
現在時刻は正午を少し過ぎた頃。
シンデレラプロジェクトがミーティングルームとして借り受けた、広めの一室。
長い脚を組み、椅子に深くもたれ込む士は、ずっと仏頂面だった。
凛「仕事が上手く行ってない…っていうのは、ありえないよね」
蘭子「…まさか、異界の者たちの訪れが?」
みく「ええ…。それは困るにゃあ」
一言で言うなら、鬱陶しい。朝から頭の奥で何かが鳴っている。龍騎の世界で感じた、戦いを知らせるあの音に酷似していた。
敵の攻撃だと思うが、あまりにも地味。精神干渉にしても、弱すぎて効果がない。
しかしそのままではいられないので、士は面倒くさげに口を開いた。
士「…お前たちの中に、変な感覚のヤツはいるか」
「「「え?」」」
士「頭の奥で何かが鳴ってるような、そんな感覚があるヤツはいるか」
士の問いに、全員が「?」を浮かべた。士の問いも要領を得ないので、当然と言えば当然の反応なのだが、士にもそう言う他ない感覚である。
とにかく、その反応から、士は少女たちの中に該当者がいないことを察した。
みりあ「何かあったの?」
士「…朝からずっとこうだ。何かが感覚に引っかかる。敵の攻撃か…?」
きらり「士ちゃん、大丈夫ぅ…?」
莉嘉「働き詰めでお疲れ、とか?」
士「いや、そんなことは全くない」
普通の人間ならいざ知らず、士は働き詰めで参るほど弱くはない。社会人としては規格外とも言える体力の持ち主だ。
故に、体調不良と言う線は最初から捨てている。だからこそ、この現象が気になるのだ。
士「戦うしかねえだろ。このタイミングで敵が来れば、そいつが原因だろうからな」
その時、士にしか聞こえない音が、突然大きくなった。
それは攻撃と言うよりは、何かの“報せ”であるかのように、士の中で次第に存在感を増していく。
士「…………何かが来てやがる」
その場にいる全員の表情が、一瞬で強ばった。プロデューサーとて例外ではない。
もし大規模な戦いになれば、明日のフェスに支障が出るかもしれない。
そして、もし誰か一人でも巻き込まれてケガでもすれば、その時点で“全員でステージに立つ”という目標も叶わなくなってしまう。
何人かはそこまで考えているであろう、と、士は表情から読み取っていた。
椅子から立ち上がった士は、自分の感覚を頼りに歩き出す。
P「門矢さん、自分に何かできることはありますか」
士「敵はまだ来てない。だが、そう遠くないうちに現れるだろう。なるべく早く片付けるが、可能な限りここから人を出すな。いいか」
P「分かりました。皆さんも、門矢さんの指示通りにお願いします」
「「「はいっ」」」
多くはスタッフだ。今回のフェス開催に向けて、彼らもまた陰ながらにアイドルたちを支え続ける存在だ。
フォーカスされることは無いだろうが、彼らには彼らの物語がある。それらも守るため、士は歩を進める。
ホテルの外に出た士は、裏手の駐車場で足を止める。そして、ディケイドライバーを装着した。
士「変身」
変身が完了すると同時に音が収まり、オーロラが出現して戦闘員・マスカレイド・ダスタードたちが現れた。
落ち着き払った態度で手を払い、ライドブッカーを握りしめる。士のもう一つの仕事が始まった。
士「雑魚だけか…。何かの作戦か?」
5分程度で敵を全て片付け、士は変身を解除した。
奇妙な音に導かれるようにして戦ったが、今思えばあれは世界が発した敵の襲来のサインだったのだろうか。
となれば、戦いが続く限り、それが今後再び起こる可能性は高い。
ただ、これまでのように行き当たりばったりに戦うよりは、事前に対策を立てられる分幾分マシだ。
彼の中で問題になっているのは、先ほど少女たちが見せた表情についてだった。
士「慣れてきている…か」
プロデューサーをはじめとした何人かは、敵が出現した際に「恐怖し怯える」という段階を脱している。
それによって何が起こり得るか。どう行動すればいいのか。それを瞬時に考えられるようになっていた。
それは本来のこの世界では要らない思考だ。やはり士が戦うことで、世界の枠組みは徐々に歪み始めている。
目に見えてそれが分かるのが、士としては歯痒かった。
何事もなかったかのように戻ってきた士を、シンデレラプロジェクトの面々が拍子抜けした表情で出迎えた。
未央「あれ?思ったより早かったね」
士「雑魚ばかりで、多少は戦えるやつがいなかったからな」
そうして、いつものようにソファにふんぞり返る。その様子を見て、全員がほっと息を吐いた。
みりあ「明日はどうなるのかな」
士「……さあな」
今日も大切だが、彼女たちにとって一番大事なのは明日のステージだ。そこに敵が来ればステージは台無しになってしまう。
アスタリスクの二人の初ステージも、一人の人間の暴走でぶち壊されてしまった過去がある。警戒するのは当然の事だった。
P「天気は問題ありません。大きなトラブルも無ければ、予定通りに進行できるはずです」
士「何かあれば俺たちが対処する。あまり考えすぎるな」
敵が来るかどうかは、その時にならなければ分からない。先の予想が正しいのなら、来る時にはまたあの音が聞こえる。
明日戦うことが無ければいい。しかし、そういう時にこそ敵が攻めてくることが多いのも知っている。だから士は戦うことを覚悟していた。
今日はそれ以降に敵が来ることも無く、粛々と過ぎていく。
女子寮組はさておき、そうでない者たちは初めてプロジェクトメンバー以外と同じ屋根の下で過ごすことになる。
そのことに、少女たちは多少浮足立っていた。
夕食後。プロデューサーと士が会議で部屋を離れている間、プロジェクトの部屋に集まった少女たちの中で、莉嘉が提案した。
莉嘉「ねーねー!みんなで何かしない?」
みく「何かって何にゃ」
莉嘉「うーん…、トランプとか」
今日何度目かの会議が終わり、やっと解放された士とプロデューサー。2人はホテルのラウンジで、揃ってコーヒーを飲んでいた。
旨いが、士には少し物足りなかった。
長い旅の内に、コーヒーは栄次郎が淹れるものが当たり前になっていたせいだろうか。
ここ最近は光写真館に戻っても、栄次郎のコーヒーを飲む時間すらなかった。仕事が多忙を極めていた証拠だ。
士「…………」
P「門矢さん、どうかしましたか」
士「明日のフェスが終われば、あいつらはさらに注目されて、仕事も増えるだろうな」
P「そう…ですね。そうなればいいと、思っています」
そう答えた対面のプロデューサーは、よく見れば分かるくらいの微妙さで微笑んでいた。
だが、彼の表情は突如一変して、いつも通りの固い表情になってしまう。
P「門矢さん。……明日は、どうなるでしょうか」
士「何とも言えない。だが、予想する限りじゃ敵は来る」
こんな会話をしなければならないのが残念でならない。
本当なら明日の天気を心配するとか、誰それのコンディションは問題ないかとか、そう言う話になるはずなのだ。
それでも今は必要なことだからと、士はプロデューサーには包み隠さずに話をする。
P「他の方には、私の裁量でお伝えしてもよろしいのでしょうか」
士「まず信じる奴の方が少ねえだろうがな…」
それきり、プロデューサーは黙り込んでしまった。いつもの癖で、手が首の後ろを押さえている。
士「…あくまで予想だ。そう今から構えすぎるな」
コーヒーを啜る。豊かな苦みが、口の中一杯に広がった。きっと、目の前の男もこんな風に苦い思いをしているのだろう。
ゆっくりとした動きでカップを持ち上げ、口をつけるプロデューサー。一息ついた彼の目には、少しだけの余裕があった。
P「…はい。明日も何卒、よろしくお願いします」
士「ああ」
2人は共に立ち上がり、様子を見るためにプロジェクトの部屋へ向かった。
その頃、2人が戻って来る事など少しも知らない少女たちは、トランプゲームからガールズトークに移っていた。
何人かは顔を真っ赤にして突っ伏し、何人かはガチガチに固まったまま一言も発さない。
そんな中、割と平静な未央が莉嘉とみりあを相手に話をしていた。
莉嘉「未央ちゃん、Pくんと士くんに色々と助けてもらったんでしょ?そーゆーところから、好きになったりしないの?」
未央「うーん、ちょっと違うかも。プロデューサーにも、つかさんにも感謝してる、って言えば良いのかなぁ」
みりあ「どうして?」
未央「プロデューサーは、私がその…、やめるって言っちゃっても、ちゃんとやり直そうって言ってくれたんだ。今もあの時のことは忘れてないよ」
未央「つかさんは、私が怪物になっちゃいそうなところを、ギリギリで止めてくれた。みんなと一緒にいられるのは、2人のお陰なんだ」
未央「だーからっ、明日は2人に恩返しする場でもあるんだ。しまむー・しぶりんと一緒のステージで、今度こそ見てくれる人を笑顔にするから」
あの時のことは、当事者の未央・プロデューサー、そして士の3人以外には口頭でしか伝えられていない。
話を聞いただけでは、未央がどれほど2人に感謝しているのは伝わり切らないだろう。それほ
コメント一覧
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- 2016年05月03日 22:02
- 新作か!待ってた!
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- 2016年05月03日 22:28
- あとはオーズ、ウィザード、鎧武か。なんだかんだ楽しく見てるし、次のにも期待。
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- 2016年05月03日 22:41
- ディケイドのメアリースーまだやってたの?自己満足。
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- 2016年05月03日 22:41
- 二期ストーリーにも続いてくれて何より。常務(当事)との絡みもあるのか期待。
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- 2016年05月03日 23:03
- 写真館があるなら夏ミカンとユウスケはどうしてんだろう?
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