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仲間をだますため、28種の存在しない生物を巧妙にでっちあげた博物学者「ジョン・ジェームズ・オーデュボン」 : カラパイア

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 魚11種、カタツムリ3種、鳥2種、軟体動物1種、植物2種、ネズミ9種、全部で28種もの偽物の生物をでっち上げた人物がいる。19世紀に活躍したアメリカの博物学者、ジョン・ジェームズ・オーデュボン(1785年4月26日 - 1851年1月27日)その人だ。

 何故そんなことをしたのかって?それは仲間の博物学者にイタズラしてやろうというちょっとした遊び心からだ。だが、彼が同業者をだました一件は非常に巧妙であり、後世に混乱を招くこととなる。
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 発端は、フランスの博物学者、コンスタンティン・ラフィネスク(1783年10月22日- 1840年9月18日)が、1818年にオハイオ川を下る旅の途中で、オーデュボンに助言を求めたことにはじまる。オーデュボンは絵の才能もあり、北アメリカの鳥類を見事に描写した、『アメリカの鳥類』という博物画集を出したが、当時から鳥を学術的に詳細にスケッチする彼の才能は同業者の間で知られていた。

 ラフィネスクは、新種の生き物、とくに植物を探していて、オーデュボンのスケッチの中に、まだ知られていない新種が含まれているのではないかと考えたのだ。

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アメリカの博物学者、ジョン・ジェームズ・オーデュボン(いたずらの仕掛け人)

 ラフィネスクは、新種に名前をつけるのに凝っていて、博物学者としてのキャリアにおいて、植物2700種、動物6700種に名前をつけた。独学で学び、オーデュボンへの紹介状では、自分のことを"変わり者"と表している。ふたりが会ったとき、オーデュボンはラフィネスクのことを、"植物の汁のしみがあちこちについただぶだぶのコートに、ポケットのたくさんついたチョッキを着て、長いあご髭を生やしていた"と記録している。

 評論家のジョン・ジェレミア・サリバンは、彼のことを愛想はゼロで、オーデュボンだけがつきあいがあった唯一の人間だと書いている。

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フランスの博物学者、コンスタンティン・ラフィネスク(だまされちゃった残念な人)

 オーデュボンはラフィネスクに、実際には存在しない11種の魚をアメリカに生息する生き物として紹介した。ラフィネスクは、自分のノートにそれらを正確に書き留め、のちにそれを新種の証拠として提出した。50年もの間、この11種の魚は、「銃弾にも耐える鱗をもつ」といったとんでもない特徴にもかかわらず、実際に存在する生き物として科学的に記録されていたのだ。

 1870年代にやっとこの魚が実際には存在しないことが明らかになったものの、オーデュボンのでっちあげた偽物はこの魚だけではなかったのだ。

 現在スミソニアン自然史博物館に勤務する哺乳類学者、ニール・ウッドマンは、少なくとも鳥2種、3弁の貝、カタツムリ3種、植物2種、ネズミ9種など、存在するものとしてラフィネスクが教えられた生物はすべて、オーデュボンがでっちあげたものだと述べている。

 ウッドマンは、哺乳類学的観点からラフィネスクの業績を体系的にチェックしてきた。彼はラフィネスクがトガリネズミだとしている生き物が実はトビハツカネズミであったことを発見してから、その正確性に疑問を持ち始めたのだ。

 そしてついにウッドマンはラフィネスクがオーデュボンの教えに基づいて、さまざまな哺乳類に名前をつけていたことをつきとめた。当時のフィールド日誌からは、ラフィネスクが10種の野ネズミの絵を描いていたのがわかる。

大きな目をしたトビハツカネズミ───これは実在しない。
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ライオンの尾をもつトビハツカネズミ───これも実在しない。
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ミスジデバネズミ───発想はわかる。
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クロミミトガリネズミ───う〜ん。
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まだらネズミ───顔の頬の外側に頬嚢(ほほのう:ふくろ)がある?
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 オーデュボンがラフィネスクに教えたこれらの動物たちには、とても奇抜な特徴がある。ミスジデバネズミは、北米にはいない種だし、シロスジレミングは、胸に授乳器官があるが、子どもを背中に乗せて運ぶ。まだらネズミは、確かに頬にふくろをもっているが、外側ではなく内側にある。

 ラフィネスクは、生物の形態の描写は正確だが、オーデュボンの情報を鵜呑みにして、その生き物が存在しないなどとはまるで疑わなかったようだ。

 当時は分類学もはじまったばかりでまだまだ体系だったものはなかった。誰もラフィネスクの識別を頼りにしていなかった為、発見が遅れたという背景もある。ようやくことが明るみになったとき、人々はラフィネスクが勝手に生物をでっちあげたことに腹を立てたそうだが、実際に腹を立てるべき相手はオーデュボンであり彼の豊かなる想像力なのである。

via:atlasobscura

 ジョン・ジェームズ・オーデュボンは日本版のウィキペディアもあり、その美しい博物画は世界各国で書籍化されているが、かなりのいたずらっ子だったようだね。悲しいことにラフィネスクに関しては日本版のウィキペディアがないレベルでの知名度だしな。今ある様々な解読不明なものも、実はかつての人々のちょっとしたいたずら心から登場したのかもしれないね。

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 20:39
  • ID:SlMPpe0g0 #

めっちゃ迷惑な連中やな

2

2. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 20:47
  • ID:x8Cs9b5s0 #

リョコウバトのひと?

3

3. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 20:49
  • ID:CaXlJay40 #

オーデュボン「ラフィが真面目にスケッチを写してる間、何回自分の太ももをツネったか分かりません・・ヒーヒッヒ」

4

4. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 20:50
  • ID:dZ0LhOvY0 #

伊坂幸太郎のオーデュボンの祈りってこの人からきてたのかな

5

5. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 20:55
  • ID:d4OjnbUz0 #

関係ないけど、このたまに見るお札みたいな肖像画ってなんてジャンルの絵なのか気になった

6

6. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:11
  • ID:OI0rVl3t0 #

動物の一部のパーツを見て「あ!これライオンの尻尾みたい!」と感じて、そのまま「このネズミライオンの尻尾持っているんだぜ〜」って嘘ついたのかな?それとも全くの空想なんだろうか…?
どっちにしても可愛い嘘だけど、信じてしまいそうな嘘なのが厄介だね(´^`*)

7

7. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:15
  • ID:0QYZVKt.0 #

ヴォイニッチ手稿もこんな感じで生まれたのかもしれないなぁ…

8

8. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:23
  • ID:8zV1v3Dt0 #

威厳のある人だからといって心酔してはならない、これ戒め。

9

9. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:44
  • ID:PEViZQNT0 #

そして誰もが彼の存在すら忘れてしまった180年後、居ないはずのトビハツカネズミが、モンタナ州のブラックフットインディアン居留地で発見されるのであった…

10

10. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:46
  • ID:zH.ELw3w0 #

ジョアン・フォンクベルタとペレ・フォルミゲーラの『秘密の動物誌』みたいなものか。
あの本も読者を騙す(写真証拠の薄弱さを突き付ける)ための本だった。
オーデュボンは単にイタズラだったようだけど。

11

11. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:49
  • ID:mCW3g8910 #

このオーデュポンって伊坂幸太郎「オーデュポンの祈り」の元となった人だね。
リョコウバトとか真面目な学者かと思いきやこんなお馬鹿な事もしていたんだ…

12

12. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 21:59
  • ID:Q8uaiski0 #

絵が下手でもやって行けてた事に一番驚く。

13

13. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 22:03
  • ID:klnmPkV.0 #

むかし「秘密の動物誌」というものがあってだな

X線写真まで載ってるもんだから頭っから信じてたのに友人から
「わくわく動物ランドには出てこないじゃん」と一蹴されて目が覚めた

14

14.

  • 2016年05月06日 22:06
  • ID:q4XR1nEw0 #
15

15. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 22:08
  • ID:nff4dl640 #

こんなんだからカモノハシが信用されなかったのか。

16

16. 匿名処理班

  • 2016年05月06日 22:22
  • ID:YAJ3GlXx0 #

ちょろい時代だったのね

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