神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」【#3#4】
- 2016年05月10日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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ボー
ザバーン ザバーン
神使「いや~ 私フェリーって初めて乗りました」
神様「・・・・・・」バリボリ
神使「風が気持ち良いですね」
神様「・・・・・・」バリボリ
神使「神様? そのえびせんはウミネコの餌用に買った物なんですが・・・」
神様「神使さんよ~ どこ向かってんだよ」
神使「あと15分くらいで島の港に着くと思います」
神様「あん? 島?」
神使「次の立ち寄り先はにゃんにゃん島です」
神様「ねぇ、立ち寄り先って誰がチョイスしてんの? 私そいつシメてくるわ」バリボリ
~あらすじ~
神様「私は神様! みんな大好きとってもかわゆい理想の女神!」
神使(訳)「神宮が誇る最大の問題児! 減給・左遷を総なめにする絵に描いたようなダメ神です」
神様「悪の手先からの激しい嫌がらせにも負けず、今日も私を待つ者へ神の力を授ける旅をする」
神使(訳)「悪知恵ばかり働く神様に業を煮やした神宮は、無期の長期出向を命じたのでした」
神様「そう、私は強大な神力を持つ心優しき立派な神様だ!」
神使(訳)「神力は使えませんが、心は優しく尊敬できる立派な神様なのです」
#3
神使「神様、タラップと桟橋の間に段差がありますから気をつけて下さい」
神様「分かっとるわ! 痛てっ」ガクッ
神使「全然分かってないじゃないですか・・・」
神様「お~ 向こうに凄い綺麗な海岸があるな」
神使「真っ白な砂浜で綺麗ですね」
神様「沖縄の海水浴場みたいだ」
神使「神様って沖縄に行ったことあるんですか?」
神様「ない」
神使「・・・そうですか」
神様「イメージだよ、イメージ。 そんな感じだろ?」
ニャー
神様「?」
ニャー ニャー
神使「猫ですね」
ニャー ニャー
ニャー ニャー
神様「・・・ねぇ、ちょっと多すぎない?」
神使「にゃんにゃん島ですから」
ニャー ゴロゴロ
神様「ワンワンッ!」
シャーッ!
神使「何やってるんですか神様・・・ 行きますよ?」
テクテク
神様「しかし、あちこちに猫がいるな」
神使「人懐っこくて可愛いですよね」
神様「犬っころでも猫は可愛いと思うのか?」
神使「まぁ・・・」
神様「で、目的地は?」
神使「この山の頂上にある<もふもふ神社>です」
神様「ふ~ん、初めて聞く神社だな」
神使「10年前から神が配属になったようです」
神様「最近じゃん。こんな所に配属なんて何やらかしたんだ?」
神使「転勤希望だそうです」
神様「希望してこんな僻地にくるなんて物好きもいるもんだな。 ん?」
神使「どうされました?」
神様「いやさぁ、不在神社の管理が私達の仕事じゃないの?」
神使「もふもふ神社には神職と巫女がいません」
神様「神だけいるの?」
神使「そのようです」
神様「ふ~ん」
神使「あっ、見えましたよ」
神様「小さい神社だな」
神様・神使「・・・・・・」
神様「ねぇ、神使君?」
神使「なんでしょうか」
神様「なんで神社の敷地内に喫茶店があるの?」
神使「<喫茶ねこまた>って書いてありますね。 あっ、その下に小さく社務所とも書いてあります」
神様「社務所と喫茶店が同じって変じゃね?」
神使「中に女性の方がいますね」
神様「神職とか巫女さんは居ないんだよな?」
神使「資料ではそうなっています。 取りあえず入りましょうか」
カランコロン
店員「いらっしゃいませ~」
神使「お邪魔します」
神様「・・・・・・」
店員「お二人ですか? そちらのテーブルへどうぞ~」
神使「ありがとうございます」
店員「は~い、こちらメニューになりま~す」
神様「・・・おい」
店員「?」
神様「お前、こんな所で何やってんの?」
店員「ん? あっ! 神ちゃんじゃ~ん!」
神使「神様、お知り合いですか?」
神様「うん、猫」
神使「すいません、雑すぎて全く分からないのですが・・・」
店員「猫神と申しま~す」
神使「猫神様・・・?」
神様「お前って確か、でかでか大神宮の主神だったよな?」
猫神「10年前までね~」
神使「でかでか大神宮の猫神様!? もしかして神の中でも最大級の神力を持つ・・・」
猫神「ふふっ、大げさよ~」
神使「初めまして、私神様の使いで狛犬の神使と申します」
猫神「神ちゃんの神使さんなんだぁ~ 初めまして」ニコッ
神使「お目にかかれて光栄です」
猫神「そんな堅くならないで~ 仲良くしましょうね」
神使「恐縮です」
猫神「私も昔は神ちゃんの神使だったのよ~?」
神使「えっ? そうなんですか?」
猫神「平安時代だけどねぇ~」
神使「平安時代!?」
神様「申し訳ございませんが、昔話はご遠慮頂けますでしょうか」
猫神「ふふっ、ごめんねぇ~」
神様「なんでお前が喫茶店なんかやってんだよ」
猫神「だって~ 神社だけじゃ生活できないんだも~ん」
神様「境内で関係者が営利事業をするのは禁止!」
猫神「でも土地を寝かせておくのも勿体ないし~」
神様「だーめ!」
神使「なんで神様そんなに厳しいんですか・・・」
神様「自分に優しく、他人にはめっちゃ厳しく! それが私流」
猫神「でも、神宮から許可出してもらったも~ん」ペラッ
神使「拝見します。 たしかに神宮の正式な許可証ですね」
神様「誰だよ、そんな許可出したヤツは! 他に示しがつかないだろ!」バンバン
神使「神宮 広域特務課 審査係 神様、とあります」
神様「・・・今の時代は神社運営だけでは厳しいからな。 良い判断だ」ウン
猫神「さっすが神ちゃ~ん、分かる神は違うわ~」
神様「そうだろ? そこら辺の堅物と一緒にするなよ? 私は先見の明を持っているんだ」
神使「・・・・・・」
猫神「で、ご注文は~?」
神様「コーラ、おすすめデザートセットで」
神使「私は、えっと・・・ ブレンドをお願いいたします」
猫神「は~い、少々お待ち下さ~い」
神様「で? なんでお前はこんなへんぴな島にいるんだ?」
神使「確か、転勤希望と伺っていますが」
猫神「そう、疲れちゃってさ~」
神様「!?」
神使「疲れたと申しますと?」
猫神「ほら、あそこって神宮に次ぐ大きな神社じゃな~い?」
神使「そのようですね」
猫神「他に周辺500個の社の管理もあってね~」
神使「500!?」
猫神「そうなの~ まぁ他にも色々と大変でさ~」
神使「ご苦労様です」
猫神「いやいや、逃げて来ちゃったし~」テヘッ
神様「・・・・・・」
猫神「は~い、お待たせいたしました~」コトッ
神使「ありがとうございます」
神様「ちょ、このケーキめっちゃウマそうじゃん!」
猫神「ふふふ、分かる~ 自信作なの」
神様「お前が作ってんの?」
猫神「腕に自信ありです。 さぁ召し上がれ~」
神様「んじゃ、いただきま~す」パクッ
猫神「どぉ~?」
神様「やばい! うまいっ!」パクパク
神使「神様、一口頂けますか?」
神様「ふざけんなよ」パクパク
神使「・・・すいません、私もケーキを追加でお願いできますでしょうか」
猫神「ありがとぉ~ 今もってくるね」
カランコロン
猫娘「すいません店長! 遅くなりました」
猫神「あっ、猫娘ちゃんおはよ~ お客様にこのケーキ持って行って~」
猫娘「お客様?」
神様・神使「・・・・・・」
猫娘「いらっしゃいませ・・・ じゃない。 いらっしゃいませニャ!」
神様「あっ、うん。 えっと・・・ 神使君?」
神使「はい」
神様「どうしよう。 人の姿になった猫が喋ってる」
神使「そうですね」
猫娘「正体がバレてる! ニャ」
猫神「あぁ~ 神宮から来た神様と神使さんよ。 気にしないで~」
猫娘「初めまして、バイトの猫娘です。 違う、バイトの猫娘ですニャ!」
神様「なんで言い直したの?」
猫娘「お客さんの前では語尾に“ニャ”を付けろと店長から言われてまして・・・ ニャ」
神様「猫神ちゃんさぁ」
猫神「なぁに~」
神様「露骨すぎだろ」
猫神「え~ だってにゃんにゃん島の喫茶店だもん。 その位の露骨さは必要だよ~」
神使「もしかして、神使として籍に入れるというのはこちらの猫娘さんですか?」
猫神「そうそう」
神様「神使だぁ?」
神使「はい、神使登録の調査依頼が出ております」
神様「へぇー、数日中に神宮から使いの者がくると思うんでそれまで大人しくしていて下さい」
神使「神様・・・ その使いの者が私達なんですが・・・」
神様「はぁ~っ? お前さぁ、なんだよこれ。 どうすんだよこんなの」
猫娘「こんなのだなんて・・・ こんニャにょだニャんて・・・」
神様「だから一々言い直してんじゃねぇよ! しかも噛んでるし」
神使「神使適正を調べて猫娘さんを神使として相応しいか審査して下さい」
神様「審査? 私がすんの?」
神使「はい」
神様「お前がやれよ猫神! 自分の神使にすんだろ?」
猫神「いや~、私じゃ無理なんだよね~」
神使「主神が自分の神使を登録するには一定の規模の社を持っていることが必要なんです」
神様「はぁ? なんだそれ?」
神使「10年前の神法改正で追加された条項です」
神様「なんでそんな変な規則が追加されてんだよ!」
神使「私にそう言われましても・・・」
猫神「そう言うことなんだな~ この社の規模の主神じゃ何も出来ないの~」
神様「・・・面倒くさい時代だなぁ」
猫神「まぁね~ でも規則には従わないと~」
神様「・・・規則ねぇ~」