希 にこ
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/05(木) 22:51:36.94 ID:5w2yYt/j0
前作:花陽「親愛なる隣人」凛「アメイジングかよちん!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459775793/
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462456296
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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/05(木) 22:52:55.96 ID:5w2yYt/jo
前回のラブライブ! デン!
普通の高校生だった私、小泉花陽。
ひょんなことから特殊能力を持つ"ライバー"になってしまって、今までの日常は終わりを告げ、戦いの日々が始まりました。
幼馴染の凛ちゃん、新しくできた友だちの真姫ちゃん。スクールヒーローの先輩たち。
たくさんの出会いが私を変えてくれました。だけどついに倒した敵(ヴィラン)は真姫ちゃんのお父さんで……。
真姫ちゃんに二度と近づかないという約束。それでも私は真姫ちゃんの隣にいることを選んだ。
その選択がやがて私たちを苦しめると、まだ誰も知らないまま――
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/05(木) 22:58:22.26 ID:5w2yYt/jo
西木野タワー占拠事件から数週間後 音ノ木坂学院
【μ's】
穂乃果「スクールヒーローチームのお名前募集BOXにやっと一枚入ってたけど……なにこれ、なんて読むの?」
海未「たぶん、マイクロズじゃないかと」
ことり「海未ちゃんそれじゃOSとか作ってそうな名前だよぉ~」ウフフ
花陽「あのー、たぶんミューズって読むんじゃないかと……」
海未「あっ……!」///
凛「あー海未ちゃん赤くなったにゃ―」
海未「も、もちろん知っていますとも! 神話に出てくる音の女神のことです」コホン
ことり「石鹸じゃないんだぁ」
穂乃果「音の女神……うん、音ノ木坂にちなんだいい名前。やっと部員候補が五人揃ったし、タイミングが良いよね」
穂乃果「――私たちは、スクールヒーローμ'sだ!」
【μ's】
穂乃果「スクールヒーローチームのお名前募集BOXにやっと一枚入ってたけど……なにこれ、なんて読むの?」
海未「たぶん、マイクロズじゃないかと」
ことり「海未ちゃんそれじゃOSとか作ってそうな名前だよぉ~」ウフフ
花陽「あのー、たぶんミューズって読むんじゃないかと……」
海未「あっ……!」///
凛「あー海未ちゃん赤くなったにゃ―」
海未「も、もちろん知っていますとも! 神話に出てくる音の女神のことです」コホン
ことり「石鹸じゃないんだぁ」
穂乃果「音の女神……うん、音ノ木坂にちなんだいい名前。やっと部員候補が五人揃ったし、タイミングが良いよね」
穂乃果「――私たちは、スクールヒーローμ'sだ!」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/05(木) 23:25:27.64 ID:5w2yYt/jo
音ノ木坂学院 生徒会室
絵里「認められないわ」
穂乃果「そんな! 言われたとおり五人集めてきたんですよ!」
絵里「五人集めてきて創ろうとしているのが、スクールヒーロー部だというのが認められないのよ」
希「穂乃果ちゃん、うちらの学校には、もうヒーロー研究部があるんや」
穂乃果「ええ!?」
絵里「類似した活動目的の部がある状況で、新しく別の部活動を始めることは許可できないわ」
希「つまり、そっちの部員と話をつけてきて欲しいってことやね。えりち」
絵里「……」プイ
希「まあそういうことなんや。ごめんね、穂乃果ちゃん」
絵里「認められないわ」
穂乃果「そんな! 言われたとおり五人集めてきたんですよ!」
絵里「五人集めてきて創ろうとしているのが、スクールヒーロー部だというのが認められないのよ」
希「穂乃果ちゃん、うちらの学校には、もうヒーロー研究部があるんや」
穂乃果「ええ!?」
絵里「類似した活動目的の部がある状況で、新しく別の部活動を始めることは許可できないわ」
希「つまり、そっちの部員と話をつけてきて欲しいってことやね。えりち」
絵里「……」プイ
希「まあそういうことなんや。ごめんね、穂乃果ちゃん」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/05(木) 23:37:38.54 ID:5w2yYt/jo
音ノ木坂学院 屋上
穂乃果「――と、いうわけなんだよ!」プンプン
海未「確かに道理は通っています。生徒数の減少で予算に限りが出ていますし、部の数をいたずらに増やすわけにはいきませんね」
ことり「でもオトノキにヒーロー部がもうあったなんて。花陽ちゃんは知ってた?」
花陽「実は……昔有名になったスクールヒーローチームがこのオトノキにあったんです」
穂乃果「ええ!? どうしてそんな大事なこと黙ってたの!?」
花陽「そのヒーローは二年近く前に活動をやめてたから……きっとやめちゃったんだと思って」
海未「そのチームは、なんという名前だったのですか?」
花陽「チーム名は"トラブルバスターズ"。中心になって活躍していたのは……」
花陽「最初のスクールヒーロー――"キャプテン・ニコニー"です」
CAPTAIN NICONII EP.1 "The First School Hero."
穂乃果「――と、いうわけなんだよ!」プンプン
海未「確かに道理は通っています。生徒数の減少で予算に限りが出ていますし、部の数をいたずらに増やすわけにはいきませんね」
ことり「でもオトノキにヒーロー部がもうあったなんて。花陽ちゃんは知ってた?」
花陽「実は……昔有名になったスクールヒーローチームがこのオトノキにあったんです」
穂乃果「ええ!? どうしてそんな大事なこと黙ってたの!?」
花陽「そのヒーローは二年近く前に活動をやめてたから……きっとやめちゃったんだと思って」
海未「そのチームは、なんという名前だったのですか?」
花陽「チーム名は"トラブルバスターズ"。中心になって活躍していたのは……」
花陽「最初のスクールヒーロー――"キャプテン・ニコニー"です」
CAPTAIN NICONII EP.1 "The First School Hero."
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:24:50.39 ID:JuX4D3JMo
どうしてだれもやらなかったんだろう。
だって、これだけコミックや、映画や、テレビ番組があるのに。
挑戦する変人が、一人くらいいてもいいと思うの。
みんな毎日そんなに楽しいのかな?
学校や会社で行くだけで満足なの?
こんなことを考えるのはにこだけ?
ねえ、正直になろうよ。
だれだって一度くらいは、スーパーヒーローに憧れたはずニコ。
私が誰かって?
私は矢澤にこ。
またの名を、スクールヒーロー"キャプテン・ニコニー"!
Chapter.1 過去編
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:25:31.92 ID:JuX4D3JMo
【音ノ木坂学院入学式の日 矢澤家・洗面所』
にこ「……」
すううううううう。
息を吸って。
にこ「ニコッ!」ニコッ
鏡の前で、笑顔の練習をする。
にこ「うん、今日もばっちりニコッ」
毎日の私の日課だった。だけど今日はいつもより、大切な日。
にこ「ママー、ここあ、こころ、虎太郎、行ってくる!」
にこママ「今日は入学式よね。制服、似合ってるわよ。うん、我が娘ながら可愛いわ、まるでアイドルみたい」
にこ「もーママったらぁー、褒めても何も出ないよー」テレテレ
にこママ「行く前にパパにも挨拶ね」
にこ「わかってる!」バタバタ
パパの遺影の前で手を合わせる。
にこ「パパ……『最初の技は笑顔』だよね。大丈夫、友だちもきっとできるから」
にこ「ちゃんと笑えるから」
にこ「行ってきます!」
私は矢澤にこ。ニコニーって覚えてラブニコッ!
今日から音ノ木坂学院の一年生。本音をいえば、もっとオシャレな学校に行きたかったけど、母子家庭で贅沢は言えないわよね。
でもにこは強いから、弱音なんて吐かない。友だち沢山作って、高校生活を謳歌するニコッ!
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:26:09.66 ID:JuX4D3JMo
初めて歩く通学路、オシャレに気を使ったからちょっと早足。そんな時だった――
「……ブツブツ」フラフラ
にこ「あの女の子……なんだかフラフラしてる」
どうしたんだろう。にこと同じ制服を着た長い黒髪の女の子――その胸のあたりが著しく自己主張している――が、虚ろな目で歩いていた。
貧血かな、声をかけようかな、と思ったけど、様子がおかしくて声をかけづらい雰囲気だった。
それに、信号の前だとちゃんと立ち止まってる。完全に意識がもうろうとしてるわけじゃなくて、何か考えてるようだった。
だけど――
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
にこ(青信号なのに――車が!?)
居眠り運転なのか、ブレーキが壊れたのかはわからない。
信号で止まる気配もなく、横断歩道に突っ込んでくる。そして黒髪の女の子は気づいていない。
にこ「――危ない!」ダッ
「えっ……!?」
ドンッ!
にこ(間に合――)
にこの両腕が彼女を突き飛ばした――その瞬間、にこの身体が空中に巻き上がった。
ぐしゃり、と全身の骨が砕けるのを感じた。不思議と痛みは感じなくて。
にこは思った。
入学式には、出られないかなって。
ぐしゃぐしゃに歪んだにこの身体んも周りにはたくさんの人が集まってきて、そこにはあの黒髪の女の子もいて。
「どうして……どうしてうちのことなんて、助けたん……」ポロポロ
にこの頬に涙の粒が落ちる音を聴いた。
「……ブツブツ」フラフラ
にこ「あの女の子……なんだかフラフラしてる」
どうしたんだろう。にこと同じ制服を着た長い黒髪の女の子――その胸のあたりが著しく自己主張している――が、虚ろな目で歩いていた。
貧血かな、声をかけようかな、と思ったけど、様子がおかしくて声をかけづらい雰囲気だった。
それに、信号の前だとちゃんと立ち止まってる。完全に意識がもうろうとしてるわけじゃなくて、何か考えてるようだった。
だけど――
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
にこ(青信号なのに――車が!?)
居眠り運転なのか、ブレーキが壊れたのかはわからない。
信号で止まる気配もなく、横断歩道に突っ込んでくる。そして黒髪の女の子は気づいていない。
にこ「――危ない!」ダッ
「えっ……!?」
ドンッ!
にこ(間に合――)
にこの両腕が彼女を突き飛ばした――その瞬間、にこの身体が空中に巻き上がった。
ぐしゃり、と全身の骨が砕けるのを感じた。不思議と痛みは感じなくて。
にこは思った。
入学式には、出られないかなって。
ぐしゃぐしゃに歪んだにこの身体んも周りにはたくさんの人が集まってきて、そこにはあの黒髪の女の子もいて。
「どうして……どうしてうちのことなんて、助けたん……」ポロポロ
にこの頬に涙の粒が落ちる音を聴いた。
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:26:42.35 ID:JuX4D3JMo
「うちなんて、いなくなってもいいのに……かわりに傷つくことなんてなかったんや……」
にこ(ああ、なにやってるんだろう、にこは)
にこ(この子を泣かせちゃった)
にこ(せっかくの可愛い顔が台無しにこ――なんて、もううめき声も出ないよ。肺が潰れちゃったんだ)
にこ(でも泣かないで、笑ってよ)
にこ(あんたが笑ってくれたら、にこはそれで……それだけで……)
白衣の男「ふむ――笑顔か」
黒髪の少女「あのっ、あなたは……?」
白衣の男「私は医者だ、君は彼女の知り合いかね?」
黒髪の少女「いいえ……見ず知らずのうちを、この子は……」
白衣の男「そう、か……そういうことができる人間、か」
黒髪の少女「お願いします、うちの血が使えるなら使ってください! うち、O型やから誰にだって輸血できます! それに内蔵だって使えるだけ使ってください!」ガシッ
白衣の男「……変わっているな。互いに無関心であることが普通な現代にあって、君たちは」
黒髪の少女「……」
白衣の男「いいだろう。本来ならばもう助からないが……手をつくしてみよう。手の開いている者達は手を貸してくれ、私の"研究所"が近い」
なぜだろう。身体はもうボロボロで、生命が尽きかけてるって自分でもわかるのに。
意識ははっきりとしている――ような気がした。
黒髪の女の子のことも、白衣の男の人のことも、はっきりとわかった。だけど身体が動かない。なにも伝えられない。
にこの身体は運ばれ、白い大きな建物に入っていった。病院じゃない、研究機関みたいだった。
そこの実験室のような場所ににこは横たえられた。
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:27:45.56 ID:JuX4D3JMo
研究員「西木野博士――この"死体"は?」
白衣の男の人は西木野博士と呼ばれていた。なんだか偉い人みたいだった。
西木野博士「"死体"ではない。まだ生きている。確実に致命傷だが奇跡的と言わざるをえない。しかしこのままでは死ぬだろうな。現代医療では生かす術はない」
研究員「では、何のために……」
西木野博士「可能性を感じた」
研究員「は……?」
西木野博士「"ラブカニウム"を用意しろ」
研究員「それは――まさか!」
西木野博士「そのまさかだ。移植手術を始めるぞ」
"ウェポン25計画"――始動だ。
麻酔が注入される。にこの意識が薄れていく。
そして……"声"が聴こえた。
懐かしい声が。もう聴けないはずだった、大好きな人の声が。
「にこ――」
「――最初の技は笑顔だ!」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:28:14.00 ID:JuX4D3JMo
【二週間後 西木野総合病院・個室】
にこ「……」パチッ
知らない天井だ。
にこ「ここは……?」
黒髪の少女「よかった……目が覚めたんやね!」ガバッ
にこ「ちょ! いたっ、いたたたたた!! ぬゎによいきなり!」
黒髪の少女「ご、ごめんな! うち、つい嬉しくなって!」ビクッ
にこ「あんた、確か……"さっき"の」
黒髪の少女「……ごめんな、うちのせいで」
にこ「なに謝ってんのよ、いきなり」
黒髪の少女「事故はもう二週間も前のことなんや」
にこ「えっ……」
黒髪の少女「本当に、ごめんな……うちのせいでこんなことになって……」ジワリ
にこ「ちょっと、泣かないでよ! にこはこうして生きてるんだからもう気にしなくていいわよ!」
黒髪の少女「……でも……でも」
にこ「あんたねぇ、泣いてばっかだとせっかくの可愛い顔が台無しよ」
にこは女の子の涙を指でぬぐった。
黒髪の少女「っ……!」///
にこ「ほら笑うわよ。ニコッ!」ニコッ
黒髪の少女 キュウウウウン!
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:28:52.32 ID:JuX4D3JMo
黒髪の少女「に、にこっ」テレテレ
にこ「……」クスッ
にこ「良かった」
黒髪の少女「うん、ほんま生きててくれて良かった」
にこ「それもあるけど……もしにこが死んじゃったら、きっとあんた。気に病んじゃっただろうから」
にこ「だから生きててよかった」
黒髪の少女「そ、そんなこと言われたら、うち……」ドキドキ
にこ「え?」
黒髪の少女「な、なんでもないんよ」
にこ「そう。そういえばにこが目を覚ました時にいるなんて出来過ぎよね。あんた、まさか毎日ここにいたの?」
黒髪の少女「うん、ほんまはずっと居たかったけどそうするわけにもいかんし、放課後だけしか……」
にこ「はぁ、真面目なのねぇ。でもありがと。目覚めた時誰もいなかったら、たぶん寂しかったから。あんたの顔がまた見られて良かったわ」
黒髪の少女「……すごいんやね。矢澤さんは。まるで正義のヒーローや」
にこ「正義のヒーロー?」
黒髪の少女「うち、自暴自棄になっとったんや。ずっと助けて欲しかったんや……だからありがとう。どれだけお礼を言っても、言い尽くせへん」
にこ「……こっちこそありがとう」
黒髪の少女「え」
にこ「にこをヒーローって言ってくれて。ずっと憧れてたから。ねえあんた、名前は?」
黒髪の少女「うちは、うちの名前は――東條希」
にこ「そう、じゃあ希って呼ぶわね。いいでしょ、生命の恩人ってやつだもの、そのくらいの特権があったって!」
希「ふふっ……おもろいなぁ、矢澤さんは」
にこ「だからあんたも、にこって呼んで。名前で。これでおあいこでしょ」
にこ「助けたとか、助けられたとか、もうこれからはチャラ」
希「……ええんかな。うち、こんなに優しくされて」
にこ「いいのよ、人の厚意は素直に受け取りなさい」
希「うん……よろしくね、にこっち」ニコッ
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:29:33.32 ID:JuX4D3JMo
【さらに数日後 西木野総合病院・個室】
西木野博士「久し振りだね、矢澤くん」
にこ「西木野先生!」
西木野博士「術後はどうかな、全身の痛みはマシになったかね」
にこ「はい、もう全然。手もこうやって動きますし」
西木野博士「経過は良好なようだ。補強につかった"特殊金属"がうまく適合したようだな。そろそろ歩行訓練をはじめても良い頃合いだ。退院もそう遠くはないだろう」
にこ「あの……前から聞きたかったんですけど、"特殊金属"っていうのは……」
にこ「それに、ママ――じゃなくてお母さんが言ってました。西木野博士が手術代を全部肩代わりしてくれたって。自分で勝手にやったことだからって……」
西木野博士「君はその理由が知りたいのかね?」
にこ「……はい。どうしてそんなに優しくしてくれるんですか」
西木野博士「君は興味深いな。その質問は私が君に聞きたかったことそのものだ。君にこそ問いたい。なぜ見ず知らずの他人のために生命をかけられたのか」
にこ「……私は、ただ身体が勝手に……」
西木野博士「そこには打算も何もなかっただろう。だからこそ知りたいのだ。それが心からの行動だからだ。君の魂に刻まれた自己犠牲だからだ」
西木野博士「ふっ、そういう物言いをすると、私も宗教家の言うことを信じそうになるな。自己犠牲、か。そういうことができる人間もいるということだ」
にこ「あの、先生……?」
西木野博士「すまない、独り言だ。先ほどの質問についてだが、手術代は気にしないで良い。金なら余っている。使い道は妻子にいい暮らしをさせてやることくらいしかないからね」
西木野博士「それに君の体内で身体を補強している"特殊金属は"――そうだな、君自身には話しておこう」
西木野博士「それは"ラブカニウム"と呼ばれる、未発表の素材でね。矢澤くん、"隕石"のことは知っているかな」
西木野博士「久し振りだね、矢澤くん」
にこ「西木野先生!」
西木野博士「術後はどうかな、全身の痛みはマシになったかね」
にこ「はい、もう全然。手もこうやって動きますし」
西木野博士「経過は良好なようだ。補強につかった"特殊金属"がうまく適合したようだな。そろそろ歩行訓練をはじめても良い頃合いだ。退院もそう遠くはないだろう」
にこ「あの……前から聞きたかったんですけど、"特殊金属"っていうのは……」
にこ「それに、ママ――じゃなくてお母さんが言ってました。西木野博士が手術代を全部肩代わりしてくれたって。自分で勝手にやったことだからって……」
西木野博士「君はその理由が知りたいのかね?」
にこ「……はい。どうしてそんなに優しくしてくれるんですか」
西木野博士「君は興味深いな。その質問は私が君に聞きたかったことそのものだ。君にこそ問いたい。なぜ見ず知らずの他人のために生命をかけられたのか」
にこ「……私は、ただ身体が勝手に……」
西木野博士「そこには打算も何もなかっただろう。だからこそ知りたいのだ。それが心からの行動だからだ。君の魂に刻まれた自己犠牲だからだ」
西木野博士「ふっ、そういう物言いをすると、私も宗教家の言うことを信じそうになるな。自己犠牲、か。そういうことができる人間もいるということだ」
にこ「あの、先生……?」
西木野博士「すまない、独り言だ。先ほどの質問についてだが、手術代は気にしないで良い。金なら余っている。使い道は妻子にいい暮らしをさせてやることくらいしかないからね」
西木野博士「それに君の体内で身体を補強している"特殊金属は"――そうだな、君自身には話しておこう」
西木野博士「それは"ラブカニウム"と呼ばれる、未発表の素材でね。矢澤くん、"隕石"のことは知っているかな」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:30:08.23 ID:JuX4D3JMo
にこ「はい。私が生まれたころ、東京に隕石群が降り注いだって」
西木野博士「"ラブカニウム"は一言でいえば、隕石から発見された地球外の元素から創りだされたものだ。素材として強固で、柔軟性も高く、形状記憶能力も持っている。めったに破損することはないが、破損しても自己再生する特性がある」
にこ「そ、そんな貴重そうなものが!?」
西木野博士「それは良い。君にとって重要なのは、申し訳ないが骨格を強化したことでデメリットが生じるということだ」
にこ「それって……」ゴクリ
西木野博士「あくまでも外部から埋め込んだ強化骨格だから、代謝はしない。つまり君の身体の成長は止まってしまう。育ち盛りの年齢の君には酷だが……これ以上身長は伸びないし、体型も大きく変化しないと思って欲しい」
にこ「……」
西木野博士「これに関しては私の技術力不足だ。私を責めてもらってかまわない」
にこ「……ニコッ!」ニコッ
西木野博士「……笑顔、か」
にこ「私、西木野先生には感謝しかしてません。だからそんな顔しないでください」
にこ「パパが――じゃなくて、お父さんが言ってました。『最初の技は笑顔』!」ニコッ
西木野博士「ふっ……君は本当に、面白いな。そうだ、君に合わせたい人がいるんだ。明日からリハビリがてら会ってくれるかな。年齢も近いし、良い話し相手にはるはずだ」
にこ「いいですけど、誰なんですか?」
西木野博士「絶賛不登校中の、私の不肖の娘――西木野真姫、さ」
Chapter.1 END
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/11(水) 13:31:54.32 ID:JuX4D3JMo
EP.1 Chapter.1はここまでです。次回はEP.1 Chapter.2ですが週末くらいには投下できればと思います。