アップルが、iTunesにユーザーの音楽ライブラリーを消去してしまうバグがあるとして、来週にも修正プログラムを提供することを認めました。アップルのもとにはわずかではあるもののライブラリーを失ったユーザーからの報告(苦情)があがっていました。
これはアップルの持つ音楽ライブラリーとユーザーの持つ音楽ライブラリーを照合して、同じと判断したものはアップルのクラウド側に置いてローカルストレージに余裕を持たせるApple Music ライブラリーがはたらいたものと考えられます。Apple Music ライブラリーは iTunes Match と同じようなしくみをApple Musicユーザーに提供するものです。
ただサービス開始当初から、アップル側のライブラリーにマッチしてローカル側の音楽が消去されたにもかかわらず、そのアルバムが歯抜けになっていたり、全く違う曲が割り当てられた、自分のライブラリーなのにDRMがかかっていたといった不具合がときおり報告されていました。
アップル系情報サイトiMoreがPinkstone氏の不具合についてアップルに問い合わせたところ、アップルはそのような報告がわずかながらあがっており重く受け止めている、しかし問題は再現・確認できていないとの回答がありました。ただ、アップルはローカル音楽ライブラリーの取り扱いについては、報告されるような不具合を防止するよう改良を施したiTunesの修正プログラムを用意しており、来週以降にリリースする計画であることも明らかにしました。
不具合が再現できないのに対応するというのは、QuickTime for Windowsの脆弱性を放置しサポート打ち切りを大きく呼びかけなかった会社とは思えないような対応ですが、それだけアップルにとってApple Musicは重要なサービスといえるのかもしれません。
今回の件はPinkstone氏の単純な設定ミスの可能性もないわけではありません。ただ、Apple Musicを利用していても、Apple Music ライブラリーを知らないもしくは正しく理解していないユーザーも多そうです。できることなら、Apple Musicの設定をよりわかりやすく、また確認しやすく手直ししてほしいところです。
蛇足ですが、音楽CDやレコードは発売国や発売時期でミックス・マスタリングが大きく異なります。少しでも良い音で音楽を楽しみたい人の中には、それらの違いを調べあげ、あえて外国盤を買い揃える人もいます。しかし、Apple Music などの音楽ストリーミングサービスではオリジナル盤とリマスター盤は区別されるにしても、それらがどのマスターを使っているかはわかりません。
たとえばMetallicaのアルバム『Death Magnetic』のように(音圧競争の犠牲となった)国内盤CDのクソ音質に対し、レベルを抑えたApple Musicのほうが良い音に聴こえるという例もないではありません。しかしApple Musicの『Death Magnetic』は作品の重要なアクセントとなるドラマティックな大作インスト「Suicide & Redemption」が歯抜けにされて聴けないという別の意味でのクソ仕様だったりします。
音楽を愛する人ほど、音楽ストリーミングサービスは悩ましさがつきまとうものなのかもしれません。