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左腕と左足を失うほどの大事故を経験した当時22歳のバイオ関連の研究者でありゲームが大好きだったジェームズ・ヤングさんは、ゲーム会社、コナミが開発した義手で、ある意味サイボーグ化を果たしたという。
この義手はスマホ充電機、ライト、さらにはドーロンまで内蔵した多機能アームなのだ。
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Bodyhack | Metal Gear Man - PART 2
4年前、ジェームズ・ヤングさんの人生は電車の下敷きになるという悲惨な事故によって一変した。肺が潰れ、頭蓋骨や顔、肋骨を骨折し、脊椎も損傷した。さらに左足は膝から下が切断され、左腕もひどい損傷を負った。
当時、22歳のバイオ関連の研究者だったヤングさんは友達とイギリス、ロンドン東部を走るドックランズ・ライト・レイルウェイに乗ろうとしていた。そして駅に到着した電車のドアを開けようと、まだ完全に止まっていない電車のドアボタンに手を伸ばした。このせいでバランスを崩して、車両と車両の隙間に落ちてしまった。一緒にいた友人が振り返ると、ヤングさんは消えていた。
彼は後から監視カメラの映像で事故の詳細を知ったという。電車が止まった後、友人は助けを呼んで、2人の男性と一緒にヤングさんを一緒に探し始めた。ひどい怪我を負ったヤングさんを発見した見ず知らずの男性が電車の下にもぐり、意識を失わないように話しかけてくれた。
救急ヘリで王立ロンドン病院に搬送され、3人の家族も駆けつけた。脳を守るためにヤングさんは12日間昏睡状態にされている。緊急手術では線路のホコリやオイルまみれの死んだ組織の切除が試みられたが、結局は左腕を切断せざるをえなくなった。さらに顔と体を再建するために、12回もの手術が必要になった。
3ヶ月半の入院生活を経てようやく退院した彼の左腕と左足には義手と義足があった。それはヤングさんに言わせれば、醜いピンク色をした目立つ代物だったという。さらに重要だったのは、義手は手の代わりにフックが装着されたもので、機能的にも不便だったということだ。片腕と片足がないよりはマシだったが、その不便さのせいで新たな問題に直面することになった。
障害のおかげで幻肢痛に悩まされ、強い痛み止めの副作用で常に疲労感が付きまとうようになる。このためフルタイムで仕事に復帰することは難しそうだった。まさにお先真っ暗だった。
そんなヤングさんの人生に再び転機が訪れたのは1年前のことだ。テレビゲーム、特にメタルギアソリットが大好きだったヤングさんは、ゲーム会社のコナミが実験的な義手をテストするために四肢を失った患者を募集していることを知り、それに応募したのだ。こうして彼はバイオニックアームを装着する半サイボーグとなった。
これは肩の部分で神経と筋肉に接続されるロボット工学の結晶で、装着者の個性を反映したユニークな外観が与えられている。また肩の筋肉で本物の腕のように操作することもできる。肩の皮膚に取り付けられたセンサーによって筋肉の信号を検出し、これがバッテリー駆動式の腕や手の部分を動作させるという仕組みだ。その精度はコインなどの小さなものでも拾い上げるほどである。
設計したのはオルタナティブ・リム・プロジェクトの発起人であり、装具アーティストであるソフィー・デ・オリベイラ・バラタさんだ。また制作にはオープン・バイオニクス社が協力しており、3Dプリンタが使用されている。
装着したヤングさんは、「道具ではなく、手が与えられたようでした。柔らかく、それでいてしっかりとしており、腕を振るのが楽しくなります!」と感想を漏らしている。
バイオニックアームには、レーザーライト(実用性よりも装飾的なもの)、懐中電灯、スマホ充電用のUSBポート(手首部)、時計、さらにはドローン(肩の外側パネルに装備)まで搭載されている。こうした仕様は『メタルギアソリッド』の主人公スネークをモチーフにしたものだ。医師に薬剤について説明するという仕事柄、ターミネーターのようなものは勘弁だったと話すヤングさんにとって、見た目は非常に重要なのである。
こうした優れた機能にもかかわらず、バイオニックアームをずっと装着していることはできない。お風呂や寝るときもそうであるが、何よりバッテリーとハーネスとジェルを含めると4.7kgあるため、時折体を休めなければならないのだ。またプロトタイプゆえに定期的なメンテナンスを欠かすこともできない。
実はバイオニックアームの性能はまだ完全に発揮されていない。現在の装着方法が簡易的なものでしかないからだ。そのためヤングさんはサイボーグ化に耐える補強として、足と肩にチタン移植手術を受けることを計画している。移植手術は骨に穴を開けて、そこに金属製のロッドを挿入し、骨細胞と一体化させるというものだ。バイオニックボディはチタンインプラントのスロットに装着されて初めて物を持ち上げたり、振ったりという本物同然の動作が可能になるのだという。
また現時点では痛みがあるためバイオニックレッグを長時間装着することがでず、車椅子生活を送るヤングさんだが、インプラントが済めばこの問題もクリアされるはずだ。そのためにヤングさんは手術費用の資金提供を募っている。
しかし、この手術はイギリスにおいては手足を失った軍人への施術に限り来年許可が下りる予定で、一般人が対象となる予定は今のところない。オープン・バイオニクス社はバイオニックアームを一般の人も利用できるようイギリス国民保険サービスに働きかけている。争点となるのは、これが患者の生涯にわたる処置にかかるコストを軽減するか否かということだ。
バイオニックアームを装着する身長195cmのヤングさんの姿は印象的だ。しかし堅実で明るい彼をひときわ際立たせているのは、自分に対する哀れみなど一抹も感じさせないことだ。「自分の態度について他人に褒められると、返答に屈します。いいも何も、ただやっているだけなんです。大変なことがあれば、それはまだ上手くやる方法が分かっていないだけなんですよ」とヤングさん。
バイオニックアームのおかげで彼の閉じかけた扉が再び開き始めた。「人生で一番大きな問題は?」と聞かれて、「何も。昔みたいに走ってストレス解消できないこと以外はね」と答えている。
via:dailymail/ translated & edited by hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
早く日本でもこういう義手や義足が実用化されて欲しい。
2. 匿名処理班
そんな重いんだったらドローンだのなんだのと余計なものをつけるなよ・・・
3. かわうそ
鋼の募金術師か...新しいな
4. 匿名処理班
これそっくりのアニメがあった!確かブーツホルツだ。
5. 匿名処理班
素晴らしい事だと思う。
不可能を可能にしていく、可能性の広がる文明だ。
6. 匿名処理班
やるじゃんコンマイ
7. 匿名処理班
コナミとメタルギア制作チームが喧嘩別れしたのに、スネークをモチーフにした義手を堂々と作るとは……
8. 匿名処理班
かっこいいな
9. 匿名処理班
なんて前向きな野郎なんだ・・・
10. 匿名処理班
凄いな。今の技術はこんなに進んでるのか
11. 匿名処理班
本物の腕並の自由度はさすがにまだなさそうだね
カッコイイけど肩凝りそう
12. 匿名処理班
「メタルギアソリット」をよく知らないけど、
大好きな人なら生きる希望にもなるよね。
いつかは映画のように、スプレーで表面を皮膚に見せる
技術も出てくるのかな。
13. 匿名処理班
ロボコップ!の世界までもう少しか・・・
わくわくする。
14. 匿名処理班
与えられた境地を嘆かないのは強さだと思うよ。
15. 匿名処理班
シビル・ウォー観たせいかバッキーの腕にしか見えない笑
こういう技術がどんどん進めば腕や足を失っちゃった人もまた不自由ない生活ができるようになるんだよね
16. 匿名処理班
彼が前向きで好感度たけえ
頑張って欲しいな
17. 匿名処理班
動かしている映像は無いのかい?
18. 匿名処理班
スマホ充電器という機能は本当に必要だったのかw
19. 匿名処理班
※2
機能てんこ盛りの試作機を作らないと普通の義手の範囲に収まってしまうのさ
20. 匿名処理班
カッコいい!
けど、楽器演奏が趣味の自分には
腕が機械式になるのはもはや楽器を弾く意味が無くなる気がする。
人体を越えた動きがプログラムされてたりしたら、
色んな意味でやる気失せそうだ。
21. 匿名処理班
車椅子で生活する人が減るなら、社会的コストは減りそう。
22. 匿名処理班
その費用、600万ドル
23. 匿名処理班
リアルオートメイル!
近頃の未来は近すぎてびっくりだ
24. 匿名処理班
※2
余計かどうかは使用者が決めるべきで部外者が決められることじゃないな
25. 匿名処理班
ロケットパンチは!?ロケットパンチはあるの!?
26. 匿名処理班
スマホ充電機能は、単に充電パックを収納可能って事なんだろうな。
体温や関節の動きなどで発電、本当に電気発生させて充電できたらすごいだろうね
あと、「闇のイージス」って漫画思い出した。
27. 匿名処理班
さあ次は実用的で安価なモデルの量産だ
28. 匿名処理班
自尊心を失わないためにもかっこいいのが大事だよな
29. 匿名処理班
コンセントがあれば炊飯器繋いで究極超人あ〜るゴッコできるな
30. 匿名処理班
※20
演奏やってればわかると思うが技術だけで人は感動しないから大丈夫だと思うよ
下手でも心を打つ演奏に触れたことがあるはず
31. 匿名処理班
もし自分が事故で片腕を欠損したら、やっぱりこの方と同じく「筋電位感応サーボ付きの、指先が動くのが欲しい」
って思うだろうな。お金が有ればの話だけど。
この方への研究が進んで、どんどん軽量化や低コスト化に繋がれば救われる人も増えるんじゃないかな?
現在は軍関係者のみの対象とされているチタンパイプ埋設手術、というのが少し気になっています。義手や兵装を取り付ける為のアタッチメントみたいな感じがしますね。生身の身体から筋電位センサー端子付きの金属のジョイントが出ていて、そこにメンテナンスや充電が済んだ義手や兵装をガショッと接続するだけで義手が動かせる、とかサイコガンが撃てる(笑)とか?モロにサイボーグですね。
まあ、個人的には軍事利用はして欲しく無いですけどね。
人を人として活かす技術で人の命を奪うなんて本末転倒過ぎるし。
32. 匿名処理班
かっこいいね。
マスタースレーブじゃないけど、ハンドジェスチャーでドローン操作出来るようになっても楽しそう。
33. 匿名処理班
ドローンよりも缶切り・栓抜きやボールペンをつけた方が日常的に役に立つんじゃないか。
34. 匿名処理班
まずはドローンとスマホ充電機能を外して軽くしよう
35. 匿名処理班
ロボットでも思うんだが
モーター駆動を人工筋肉とかに出来ないのかな
筋肉とか大層なものでなくても
紐みたいなもので筋を引っ張るような構造にすれば
もっと軽量化&スムーズに可動するようになりそうなんだけど
36.
37. 匿名処理班
※30
逆を想定して書いたんだ。
簡単に指の動作速度なんかの技術など習得する必要も無くなり、
指の可動範囲はどこまでも、持久力を考えずにすむし、
力の入れすぎ抜きすぎにリミッターが掛けられる、
「その機能使わなきゃ良い」と言われそうだけど、やろうと思えばすぐできる前提で制限掛けるのと、
できるように制限を解除するように練習するのでは、やる意味がまるで違うなと。
演奏者側が楽しむと言う意味でね。
聴く側からすれば両手とも機械で、本人は座ってるだけで、腕による完全な自動演奏でも楽しい人は楽しいと思う。
38. 匿名処理班
※31
「患者の生涯にわたる処置にかかるコスト」を国の税金から出すことの是非が問われているんでしょうね。軍人の場合、プライベートな事故でない限り負傷は国家の責任でしょうし。
39. 匿名処理班
ヒーローだ。
開発者も装着者も。
40. 匿名処理班
※37
確かに実際に演奏している方でないと分からない事も多いんだな、って思いました。なるほど、技術的なこと、演技力などの個人差による「ゆらぎ」まで表現するとなると、まだまだ未解明な事だらけですね。例えれば廉価版のCDとハイレゾ音源の差みたいな、「同じ曲だけど違う曲」みたいな、味の違いみたいな物が失われてしまうなら、それは奏者にとって自分の音楽では無いですからね。いくら革新的な技術であっても個性差が無い単一化、画一化された物であっては、それが逆にストレスにもなり得ますからね
41. 匿名処理班
どの道目立ってしまうならカッコイイ方がいいね
42. 匿名処理班
本人もウキウキで装着できる。
周りの反応も違ってくるだろうし、これはすごい未来性がありそう!
43. 匿名処理班
※15
お前は俺か
★ペイントすれば完成な
デザインと負担軽減は大切です
44. 匿名処理班
そうか、この義手はまだ未完成なのか。たしかに、武器が装備されてないもんな。
45.
46. 匿名処理班
「小島は抜けたけどメタルギアは俺達のものだからな」というコナミのメッセージ
47. 匿名処理班
二つ名はフルメタル・アーマーですかな。
48. 匿名処理班
プロトタイプだからワイヤーフックと永久機関が
まだ実装されてないんだな。
49. 匿名処理班
※31
あくまでもイギリスの保険事情であって、この手の義手自体は世界で100件以上の実例があるみたいだよ。
50. 匿名処理班
※33
スイスの10徳アーミーナイフみたいだ(笑)
51. 匿名処理班
これは子どもたちの注目の的だな
52. 匿名処理班
コナミじゃなくてカプコンのバイオニックコマンドー
のアームだったらほしい。
53. 匿名処理班
鋼錬はコメント多そうだから闇のイージスと言ってみる
銃弾を叩き落してくれそうね
54. 匿名処理班
実用性としては長時間使用出来ないってのどうなんだろうと思うけどまだ試作段階だよね
これから使いやすくなってくれるといいな
55. 匿名処理班
当分はメカで研究開発だが スタップしだいで…
56. 匿名処理班
難しいとは思うが、バラバラに開発するのではなく、
国、企業、大学などの枠を超えて最先端の技術を結集できる
コーディネーターが現われて欲しい。
たしか・・・脳波コントロールもアメリカでかなりのレベルまで行ってたはず。
57. 匿名処理班
SWのアナキンやルークが使ってたような高性能で軽量な義手が出来上がる日もそう遠くないな!
58. 匿名処理班
自由自在に動くか隠し腕仕込まれたらまた呼んでくれ
59. 匿名処理班
ロケットパンチや電撃の実装が待たれる
60. 匿名処理班
そのうち「思い切って車買う」くらいの感覚でサイボーク化する時代は本当に来るんじゃないかなと思う
倫理の問題とかもあるだろうけど、それを乗り越える気がする
61. 匿名処理班
見た目がかっこいいのはいいことだと思う
62. 匿名処理班
※4
うわ懐っかしい!サイバーフォーミュラだ
ロシアのE・ブーツホルツ。好きだったなぁw
63. 匿名処理班
「アップデートしたんだ」デデン デン デデン
64. 匿名処理班
現段階では、ただのパフォーマンスの様ですな
65. 匿名処理班
メタリックな見た目はカッコいいんだが重さがなぁ
すぐにカーボンとかの軽い素材で新しいのでるんだろうけどさ
攻殻の電脳化&サイボーグ化も、もう夢ではないんだよなぁ