【艦これ】三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【前半】
三日月「……」 スタスタ
果たして今まで、私はどれだけの罵声を浴びてきたのだろうか。
三日月「……」 スタスタ
役立たず。これは何度言われたか覚えてすらいない。
三日月「……」 スタスタ
でも、一番頭に来たのはそんなどうでもいい罵声じゃない。
『所詮は睦月型だな。役立たずめ。加えてお前は無個性……やれやれだな』
これはさすがに……我慢できなかった。私の事はいくらでもバカにしていいけれど、大切な姉妹達まで罵倒されているみたいで、すごく不愉快な気分になった。
スタスタ ピタ
三日月「……ここが、新しく所属する鎮守府かぁ」 ジー
ここの司令官は、いったいどんな人なんだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【艦これ】電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのです」
【艦これ】三日月「……バレンタインデーかぁ」
※以上のSSの過去の話となっております。話のつながりはありますが、読んでいなくても問題はありません。よろしくお願い致します。
※書き溜めはしていないので、スローペースになると思います。ご了承ください。
三日月(結構大きいなぁ。前に所属してた鎮守府程じゃないけれど) キョロキョロ
スタスタ
「あ、あの」
三日月「?」 クル
電「も、もしかして……本日着任されるとの連絡を受けていた艦娘の方なのですか?」
三日月「はい! 私は睦月型10番艦の、三日月です。先刻、こちらの鎮守府へ転属命令があり、本日着任いたしました。まだまだ未熟な身ですが、どうぞよろしくお願い致します」 ビシッ
電「は、はいなのです! お、おおお待ちしていましたなのです!」 アセアセ
電「同じく艦娘なのです! 暁型4番艦の電なのでしゅ!」 ビシッ
三日月(か、噛んだ……)
電「……///」
電「うぅ……舌が痛いのです……」
三日月「ぷっ、ふふふ……」
電「……うぅ、は、恥ずかしいよぉ……///」
三日月「!! ご、ごめんなさい! つい……」 オロオロ
電「い、いいのです……悪いのは噛んで失敗しちゃった電なのです」
三日月「いえ、つい笑ってしまった私が悪いですよ……本当にごめんなさい。失礼でした」
電「いや、電が……」
三日月「いや、私が……」
電「電が」
三日月「私が」
電・三日月「……」
電・三日月「「……ふふふ」」
電「これじゃあ埒があかないのです」
三日月「ふふ、そうですね。では、お互いが悪いという事で」
電「この件はおしまい、なのです!」 ニッコリ
三日月「そうですね。そうしましょう」 ニッコリ
電「では、まずは司令官さんの所へ案内するのです」
三日月「はい! 電さん、よろしくお願いしますっ」 ペコリ
電「はわわ、こちらこそなのです」 ペコリ
電「では、着いてきてくださいなのです」 スタスタ
三日月「はい!」 スタスタ
三日月「それにしても、静かですねー。他の艦娘の方々は何か任務中とかですか?」 スタスタ
電「え? この鎮守府にはまだ電しかいないのですよ?」 スタスタ
三日月「え?」
電「はわわ、失礼しましたのです! 訂正なのです! 三日月ちゃんも今日からこの鎮守府の艦娘なので、電と三日月ちゃんしかいないのです」
三日月「そ、そういうことじゃありません! それ……本当の事ですか!?」
電「は、はい」
三日月「え、えー……」
電「……三日月ちゃん、別の鎮守府からここにやってきたんですよね? 前の司令官さんとかから何も聞かされていないのですか?」
三日月「…………」
三日月「……はい。場所と訪れる日にちだけは聞いていましたけれど、それ以外は何も……」
電「そうだったのですか……」
電「ちなみになのですが」
三日月「?」
電「電がこの鎮守府に着任したのもついさっきなのです。三日月ちゃんを迎えに行くことが初めてのお仕事だったのです。だから少し緊張しちゃって……」
三日月「……もしかして、この鎮守府が鎮守府として活動するようになったのって……」
電「本日からなのです」
三日月「……が、頑張ります」
なんだか、大変な日々が始まりそうな予感がした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
電「こちらが、司令官さんがお仕事をする司令室の入り口なのです。中に司令官さんがお待ちしているのです」
三日月「はい。案内ありがとうございます、電さん」
電「いいのです。お仕事ですし、なにより電は新しいお仲間である三日月ちゃんのお役に立ててうれしいのです」 ニッコリ
三日月(……電さんは優しい子だなぁ)
電「では、中に入りましょう」
コンコンコン
電「し、司令官さん。電なのです。ただいま戻りましたのです」
ガチャ
電「司令官さん。三日月ちゃんを……え? し、司令官さん?」
三日月「し、失礼しま……え?」
目の前にあるのは崩れた段ボール箱の山。中は結構広いけれど、それでもその光景は良く目立った。中に司令官らしき人物は見当たらなかった。
三日月(司令官はこの部屋にいるはずじゃ……)
電「はわわわわ」
三日月「も、もしかして……」
三日月「この崩れた段ボールの山こそ司令官ですか!?」
電「そんなわけないのです! 司令官さーん!!」 パタパタ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
提督「ははは……いやぁ、電が迎えに行っている間に少しダンボールの整理でもしようかなって思ってたら崩れて埋もれちゃったよ」 ハハハ
電「わ、笑い事じゃないのです……初日から怪我でもしたら大変なのです!」
提督「心配させてすまないね。……電は優しい子だなぁ」 ナデナデ
電「し、司令官さん……はずかしいのです」
提督「あっ、ごめんつい。女の子に対して失礼だったな」
電「……電は別に嫌ではないのです。でも、嫌がる子もいるかもしれないので、気を付けてくださいね?」
提督「ははは、そうだな」
三日月「……」
三日月(この方が、私の新しい司令官)
電さんと仲良く話す司令官の姿は、“私と私の姉妹達”以外の艦娘と話している前の司令官の様子とよく似ていた。優しい雰囲気だ。違っているのは年齢と見かけだけ。前の司令官より若そうだ。
提督「んで、君が今日から着任……って言ってもここにいるみんなは今日からここに着任か。――まぁ私がここの鎮守府の最高責任者である提督だ。よろしく頼む」
三日月「!!」 ビク
三日月「は、はい! あなたが司令官ですね。三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします!」 ビシ
提督「ははは、そんなに固くならなくても大丈夫だよ。こちらこそよろしく。三日月」 スッ
三日月「――!! ひっ」
パシッ!
提督「え?」
三日月「はぁ……はぁ……――!!」
電「み、三日月ちゃん……?」
三日月「し、失礼しました! 私……わたし、なんてことを……」
自分のやってしまった行動は、無意識での行動だった。司令官の握手を求める手を、私は気が付けば拒絶していた。
三日月(あ、謝らないと……謝らないと、私また!)
提督「ははは、いやぁごめんな三日月」
三日月「……え?」
提督「いきなりでビックリしちゃったよな。すまなかった」
三日月「し、司令官は何も悪く――」
提督「とりあえず! 電! 三日月! まずはこのダンボールの山の整理だ。手伝ってくれ」
電「は、はいなのです!」
三日月「…………」
ごめんなさい。その一言が口から出せなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
提督「よし、とりあえずこんなもんかな。電、三日月。手伝ってくれてありがとう」
電「つ、疲れたのです……。けど、電は頑張るのです」
提督「荷物の整理ってけっこう疲れるからな。本当に助かるよ」
三日月「……」
提督「? 三日月、どうかしたのか?」
三日月「あ、いえ……何でもないです」
提督「おう、そっか。疲れたりしたら正直に言って大丈夫だからな?」
三日月「はい……お気遣い、ありがとうございます」
提督「ひとまず、司令室の形は整った。君たちにはこの後、もう少しだけ仕事をしてもらって、今日の日程は終わりな感じだな。とりあえず一時間休憩してくれ」
電「はいなのです! 司令官さんはどうするのですか?」
提督「私はもうちょっと仕事してから休憩するよ。君達は先に休憩しててくれ」
電「だったら電もお手伝いを」
提督「大丈夫、大丈夫! 今後君達にはうんと働いてもらうから、今は素直に休憩しとくんだ」
電「わ、わかりました。お気遣い、ありがとうございますなのです!」 ペコリ
三日月「……」 ペコリ
提督「おう。ここから出ると、中にいっぱい空き部屋がある。どれでも好きな部屋を使ってもいいからなー」
電「はいなのです!」
電「三日月ちゃん、行きましょうなのです」 スタスタ
三日月「は、はい。三日月、休憩いただきます」 スタスタ
バタン
提督「……」
提督「……はぁ」
三日月「!!」
電「? 三日月ちゃん、どうかしましたか?」
三日月「い、いえ。何でもないですよ」
司令室の中から、私の耳には届いた溜息が届いた。やはり、さっきの事だろうか。私は気になって仕方がなかった。
〈空き部屋〉
電「はぁ……疲れたのです……」 グダー
三日月「ですね……」 グダー
電「それにしても、司令官さんがとても優しそうな人で電は安心しているのです。怖い人じゃなくて良かったのです……」
三日月「……ですね。司令官は……優しそうな方ですね」
司令官もそうだったけれど、電さんも私の先ほどの行動の事は言及してこなかった。まるで何もなかったかのようだ。
電「三日月ちゃんが前にいた鎮守府の司令官さんは、どんな人だったのですか? ……あっ、い、言いたくなかったら言わなくても大丈夫なのですよ?」 オロオロ
三日月(……やっぱり、気を使ってくれているんだ。優しいなぁ)
三日月「ふふ、大丈夫ですよ」 ニコリ
三日月「そうですね。前の司令官は……優しい方……でしたね」
三日月「鎮守府にいた皆さんと、とても仲が良く優しい方でした」
電「そうだったのですか。司令官の人達は、優しい人達が多そうなのです」
三日月「……はい」
三日月(……私たちにも……最初は……)
電「電は、鎮守府に着任するのはここが初めてなのです。……緊張がすごいのです。ちゃんとお仕事できるか心配なのです」
三日月「電さんならきっと大丈夫ですよ」 ニッコリ
電「が、頑張るのです!」
電「三日月ちゃんは、出撃とかはしたことがあるのですか?」
三日月「はい、何回か……ですけど」
電「なら電より先輩なのです!」
電「色々とご迷惑かけてしまうかもしれませんが……あの、その……」
電「よろしくお願いします! なのです」
三日月「あっ、いえ……こちらこそ……出撃したと言っても数回ですし……」
三日月「私は……前の鎮守府で……」
電「な、何かあったのですか?」
三日月「……いえ、何でもありません。ごめんなさい、こんな風に言い留めちゃったら、気になっちゃいますよね」
電「……電なら大丈夫なのです!」
電「……何かあったかは……まぁ気になるけれど……三日月ちゃんが話したくなったときに話してほしいのです」
電「電でよろしければ、いつでもお話を聞