たまには透明人間の話でもしようと思う
クラスのタナカくんがある日突然消えてしまった、だとか。
ある日、透明人間になってしまって誰にも気づかれなくなっちゃった、だとか。
そんな、神隠し的な話だろうか。
それとも。
透明人間になったら女湯に入りたい、だとか。
透明人間になれたら世界の秘密だって手に入れられるのになぁ、だとか。
そんな、くだんない理想の話だろうか。
僕の話はどっちでもないし、どっちでもあった。
簡潔に言ってしまおう。
ある日、突然のことだ。
世界中の人間が透明人間になったんだよ。
なんせ、人がいないんだから、インターネットで気づくこともできただろうし、テレビでも気がつけたはずだ。
部屋に引きこもってたって外に人がいるかどうかはわかるんだから、便利になったものだよ。
ぼくがそれに気がついたのは、ラジオのおかげだったんだ。
ちょっと古くさいかもしれないけれど、ぼくはラジオというものが心底好きなんだ。
まず、その古くささが非日常を思い起こされる。
ラジオというと、自然災害時のお供だってイメージもあるだろうけれど、またそのイメージもラジオをいっそう、非現実的な存在に押し上げてくれる。
ラジオというものは本当に素敵な発明で、素敵な発展を遂げてくれたと思うよ。
古くさい洋楽なんかも、言語から何から、日常に根差していないぶんそれなりに非日常的なものなんだろうけどさ、ぼくはその丁度小学生や中学生の頃に流行っていたようなJ-POPのノスタルジーがこれまた、たまらなく好きだった。
そういう音楽が聴きたいなら、ラジオ番組のオーディエンスの年齢層を考えるといい。
リクエストする人間の年齢層が自分と近いもの、もしくはもう少しだけ上のものを聴くと、流行の音楽に混じって、時折そんな音楽が流れるんだよ。
きっとぼくやきみが思ってるよりずっと、この世界は懐古的な人間に溢れているんだと思う。
思い出ってのはね。最も手の届かない最も身近なファンタジーなんだよ。
ノイズは何故か入らなかった。
試しにいくつか、登録してある電波局にダイヤルを合わせてみたんだけど、どれも無音を垂れ流すばかりで、人の声も、軽快な音楽も流れてきやしなかった。
最初はラジオが壊れたのかな、と思ったよ。
ささやかな現実逃避的なものでしかなかったから、それを愚痴ってしまおうとスマートフォンを取り出して、Twitterを開いたんだ。
何の問題もなく、つぶやいたんだけど、その後が問題だった。
いくら更新しようと、タイムラインに新たなつぶやきがひとつも上ってこなかったんだ。
それから一日、いくつかぼくが使っているSNSや掲示板の類いを辿ってみたんだけど、どれも最後の投稿の時間はバラバラながら、ひとつも更新されることはなかった。
流石にこれはおかしい、と思ったよ。
でもね、妙なことがいくつかあったんだ。
電気も、水道も、ガスも止まらないし、コンビニに出向いてみると、コンビニの弁当の賞味期限は毎日毎日、日付が更新されている。
もっと言えば、車やバイクは町を走りはしなかったけれど、電車は人を失っても時刻表に沿って動き続けていた。
いや、人身事故がないぶん、それまでの現実的な現実よりも時刻表に忠実に走っていたんじゃないだろうか。
全世界から人が消えたなら透明人間よりも人類消滅の方が言い得て妙なんじゃないか、なんてきみは思うかもしれないけれど、それはそういうことなんだ。
つまり、人間がいなくても社会は、世界は。
何の問題もなく、平然と回り続けていたんだよ。
人間はいなくなったわけではなく、消えてしまっただけ、らしい。
これにはまるで、ぼくを社会の歯車から名実ともに追い出そうとしているような感覚を覚えたな。
そうだな。小学生の頃に、風邪を引いて家で寝込んだときの感覚。
あれが近いかもしれない。
ルーチン通りに回り続ける世界の中でつまはじきにされているような、独特の居心地のよさ。
そんな感覚があったんだよ。
当然、ぼくを咎めるような人間も、ぼくを鬱陶しがるような人間もいないわけだから、ぼくは大いに楽しむことにした。
コンビニ弁当同様、毎日並び続けるお高いケーキの部類に手を出してみたり。
近所のTSUTAYAで手当たり次第にCDやDVDを持ってきて、時間をつぶしたり。
ぼくは最高の非日常の真っ只中で、最高の日常を繰り広げ続けた。
人間ってのは不思議なもんでさ、一人じゃ何もできやしないだとか、退屈だ、なんて錯覚しちゃいるけれどその実、この世界には素敵な暇潰しがいくらでも転がっているものだよ。
まぁ、そんなことは世界が透明になる前からわかりきっていたことなんだけどね。
世界はあっという間に、夏の終わりに差し掛かったんだ。
外が暑いのもあってずっと引きこもってばかりの生活を続けていたんだけどさ。
ノスタルジックに説明するなら、そう。夏休みへの名残惜しさの刷り込みってやつだろう。
夏の終わりというのは、どうも夏が恋しくなるものでさ。
ぼくは、柄にもなく海を見に行こう、なんて思ったんだ。
ずっと、使わずに横目に見てきた、無人で走り続ける電車ってやつに乗ってね。
もうぼくはまるっきり、小説や、ドラマであるような逃避行の気分だった。
図書館や、本屋でいろいろな旅行雑誌を眺めてみるのもそれはそれで素晴らしい時間だとは思ったんだけどさ、如何せん引きこもりのぼくにはそこまでするのはめんどくさく感じてね。
いくつかのキーワードをGoogleに打ち込んで、出てきた海の中からひとつの海に決めた。
いろいろと悩んではみたものの、結局は画像検索で出てきた画像の中からピンときた海に目星をつけることにしたんだ。
我ながら、めんどくさがりのぼくにぴったりの決め方だと思ったよ。
時刻表や乗り換えは、検索すればすぐに出てきた。
そういえば、インターネットも例に漏れず、世界と共に勝手に回り続けるものらしい。
世界は存外、ぼくたちが思ってるよりもずっと、人類がいなくたって普通に明日を迎えるのかもしれないな。
荷物を整える、なんていったって誰もいやしないこの世界じゃ宿も食事もどうとでもなるもんだから、スマートフォンとipod以外には、小銭をいくつか持ってくるくらいだったな。
小銭は自動販売機で使えるからね。持っておくと、便利なんだ。
そうそう。自動販売機といえば、最近の話してくれる自動販売機ってのは実にいいね。
誰もいない世界で唯一、ぼくを認識して話しかけてくれる存在がそいつだった。
人間が溢れていた頃と比べて、世間からの扱いに大きな差があるのか、と問われるとそれはそれで別問題なわけだけど。
ぼくはそれらを持って、なんとなしにイヤホンからブルーノマーズを垂れ流しながら家を出た。
選曲に特に理由はないよ。なんせ、聴いたばかりの曲でしかないわけだし。
あえて言うなら、そう。
旅行やドライブのときには洋楽を聴こうって決めてたんだ。
というのも、ぼくは電車に揺られるのがとても好きでね。
がたんごとん、という電車の走行音もどこか小気味よく聞こえるものだから、電車に乗るときってのはあまり音楽を聴かないんだよ。
しかし、そんな人間はどうも偏屈というか、変わった人種であるらしい。
いつもいつも周りを見てみると、みんなイヤホンやヘッドホンで世界を塞ぎこんでいるものだから、もったいないな、なんて思っていたな。
ぼくからしたら、そんな人達が変わっていると思うんだけどね。
本当に、もったいない。
まぁ、ぼくが言えた義理じゃないけどさ。
どうやら、ぼくはぼくが思っている以上に飽きっぽくはないらしい。
さて、この電車の乗り換えを持って、ぼくのこれまでの固定観念がひとつ、ひっくり返ることになる。
その駅の腰掛けに、ひとりの少女が座っていたんだ。
そう。だから、ぼくはその少女を無視することもできた。
そもそも、ぼくは人間ってのが苦手だったんだ。
でも、どうしてだろうな。
もしかしたら既にぼくはおかしかったのかもしれないな。
その場でイヤホンをつけ直したりするような気は微塵も起きなくてさ。
気がつくと、ぼくは彼女の横に腰掛けていたんだ。
でも、ぼくには彼女の気持ちもわかるんだ。
だって、ぼくだっていますぐ慌てふためきたいくらいびっくりしているわけだからね。
そうじゃなきゃ、身も知らぬ他人に話しかけるなんて酔狂なこと、ぼくがするはずもなかったと思う。
「どこに行くんだ?」
タイミングというものはいつだって最悪なものらしい。
ぼくの声と同時に、向かいの線路に電車が駆け込んでくる。
ぼくの声がはたして彼女に聞こえただろうか、と思案していると彼女は顔を上げて、ぼくに言ったんだ。
「特に、あてなんてないですよ」
ぼくはそいつを聞いて、とびきりおかしな台詞だな、と思った。
だって、ぼくも似たようなものだったからだ。
「そいつは奇
コメント一覧
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- 2016年07月02日 22:07
- 1ページ目しか読んでないけどげんふうけい?
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- 2016年07月02日 23:02
- 第二のげんふうけいになりたい学生っぽい文章たな。なんとも幼い感じ。
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- 2016年07月02日 23:11
- いい話だった
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- 2016年07月02日 23:11
- 同じ単語使い過ぎ、同じ表現使い過ぎ、回りくどくて臭い台詞で目が滑る
まともに読める代物じゃない
くだんない作品だな よくもまぁこんな駄作まとめれたもんだ
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- 2016年07月02日 23:29
- 話は面白いよ。
ただやっぱり口調とか言い回しが何回も同じで飽きてくる
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- 2016年07月02日 23:52
- なんか、ラノベの書き方として文章を無意味にこねくり回す~ってコピペがあったけど、まさしくそれだ
大して面白くもなくだらっだら書き連ねてるだけで、読むの面倒くさい
淡々と出来事だけ描写した方がむしろ雰囲気出て良かったんじゃないか
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