転載元:カイオウ「例え天地逆となっても己の道は変えぬ!」
ラオウ「兄者のやり方では天は握れぬ!天の覇者はこのラオウただ一人!」
ラオウ「このままこの国を修羅の国とするならば、いずれこの国は俺が奪う!」
カイオウ「ほう、今から攻め入るか?」
ラオウ「いや。俺にはまだかの地で倒さねばならぬ敵が二人居る!その二人の敵を倒さねば天は握れぬ!」
ザッザッザッ…
カイオウ「流石はラオウ。あくまでラオウ流の生き方を貫くか…」
カイオウ「我が心に残った最後の想い…」スッ
カイオウ「さらばラオウ!」ドガッ!
ブシュウッ!
カイオウ「これで俺の中のラオウは死んだ!」
男「死んではおらぬ。ただ、見てみぬ振りをするものがまた一つ増えただけだ」
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カイオウ「ぬっ!」何奴!気配を悟られる事なくこのカイオウの背後を取るとは」
男「お前の体の傷の数はお前が無視しているお前自身の想いの数!その鎧の下には一体どれだけの傷があるのかな?」
カイオウ「ゴミムシめが、このカイオウの前から失せよ!」ブンッ
男「この世界最強の一角に数えられるお前を以てしても、俺に影響を及ぼす事は叶わぬ!」
カイオウ「ぬう!ならば空間ごと葬り去ってくれるわ!暗流天破!」ゴオッ
男「無駄だ。俺はこの世界に立っているわけでもなければ、宙に浮いているわけでもない。空間ですら俺に影響を与えない」
カイオウ「うぬぬほ…何というヤツ!」
男「その魔闘気、まさにお前の意識の中を顕しているかの様だ」
カイオウ「おのれ!何としてでもその耳障りな口を塞いでやるわ!」
ヒョウ「どうしたカイオウ」
カイオウ「ぬう…ヒョウ!」
ヒョウ「…この男は?」
男「俺は何者か…などはどうでも良い。大事なのはお前達が本当は何を想うのか…だ。」
ヒョウ「?」
カイオウ「どけぃヒョウ!そのゴミムシをこの手で跡形も残さず消し去らねば気が収まらぬわ!」
男「よほど琴線に触れたようだな。つまりは大当たりだというわけだ」
男「その想いをずっと無視し続けるつもりか?身の破滅が起こるまで」
ヒョウ「!」ハッ
カイオウ「黙れぃ!渾身の魔闘気で吹き飛ばしてくれるわ!」
ヒョウ「いかん!待てカイオウ!」
カイオウ「ふぬうあぁ!」
暗 琉 霏 破
男「それすら例外はない」
ヒョウ「なん…だと?」
カイオウ「ぬうう!うぬは一体!?」
男「お前が俺に影響を及ぼせる可能性があるとするならば、それは真に望むものを発露させたお前の姿!それを見た時、俺は消えるであろう」
カイオウ「…何を言っておる?」
男「お前の真の胸の内を見せろ。俺はそれを見たいのだ。俺がそれを見たいと決めた以上、お前はそうするより他に俺から解放される事はない
カイオウ「小虫が!神にでもなったつもりか!」
男「既にそうであるものに改めてなる事は出来ん。そして、そうではないものにもなる事は出来ん」
カイオウ「ぬぬ…!先程からわけの解らぬ事を!このカイオウを愚弄するか!」
男「愚弄されたと感じたなら、それはお前が自分を愚弄している事に他ならぬ」
今度は北斗琉拳か
期待!
ヒョウ「お前が誰かは知らぬし、それを問うつもりもない。だが、それ以上はやめてくれぬか」
男「うむ。よかろう。言葉で説得させる事が本意では無いしな」
男「ではまた会おう」
カイオウ「このカイオウから逃げおおせられると思ったか!待てぃ!」
ヒョウ「良いではないかカイオウ。ただの一人の男の言葉に翻弄される程、お前は小さくはないはずだ」
カイオウ「…ここは貴様の顔を立てておくわ。ただ、次にあやつを目にした時は必ず滅してくれる!」
ヒョウ「…」
−ヒョウの居城−
ナガト「ヒョウ様。男が一人、謁見を望んでおりまするが」
ヒョウ「男?もしや…。通してくれ」
男「また会ったな」
ヒョウ「やはりお前か」
男「ヒョウよ。カイオウが歪んだ原因の大半はお前にある事を自覚しているだろう」
ヒョウ「なっ!?」
ナガト「待たれい!何故ヒョウ様に責任が及ぶのだ!ヒョウ様は第二の羅将として、カイオウ…様を支えておられるのだぞ」
男「無理するな。お前と四人の腹心がカイオウを倒してこのヒョウに国を預けようと願っている事は知っている」
ナガト「ううっ!?」タラーッ
ヒョウ「ナガト!?どういう事だ!」
男「今のカイオウがこの国の頂点にある限り、この国に未来はない事を悟っているのだ。お前も本当は解っているだろう」
ヒョウ「貴様!何処まで知っているのだ!」
男「全部だ」
ヒョウ「全部…とは?」
男「ここに居る全ての者の本心だ。ここには居ないカイオウも…だが」
男「だから隠す意味は無い。だが、真意は自らの言葉によって発せられなければ力を持たない。俺が知っているだけでは、そこには何の力も無いのだ」
ヒョウ「俺の本心を俺自ら顕せ…と?」
男「そうだ。お前はカイオウを歪めた負い目から自分の想いに封をしているのだろう。しかし、本当はどうしたいのかは既に解っているのだ」
ヒョウ「…俺はカイオウと敵対する事は出来ない」
男「自分が北斗宗家の嫡男として弱過ぎたが故に、希代の英雄になるはずだったカイオウを潰してしまったからか?」
ヒョウ「それもあろう。…が、それだけではない」
男「幼かったお前とケンシロウを火事から救う為にカイオウの母の命が失われてしまったからか?」
ヒョウ「何故そんな事まで!…いや、全部知っているのだったな。それも無くはなかろうが…」
男「お前の許嫁がカイオウの妹だからか?」
ヒョウ「うう…それは…」
ナガト「もうやめてくれ!ヒョウ様とて長い間悩み続けて苦しまれて来たのだ」
男「悩み続ける事によって解決が起こるものではない!」カッ
ナガト「うっ!」
男「それはただ自らの決断を先伸ばしにしていただけに過ぎん!そのうち解決されるだろうと期待しているのだろうが、その“そのうち”は永遠に来ない!」
男「解決とは“今”起こるのだ。“そのうち”起こるものではない」
ヒョウ「…俺は」ヨロッ
男「焦って答えは出さずとも良い。いや、もう既にお前の中の答えは外に出ようとしているだろう」
男「後はそれを待て」
ヒョウ「…ああ」
男「ではナガト。他の腹心四人を集めてもらおうか。ヒョウを慕うお前達全員の力も必要になるだろう」
ナガト「お主は一体…?修羅ではなかろうし、拳法の心得があるとも思えぬが」
男「国は暴力によってなるものに非ず。意識によってなるものだ。そこに腕力も拳法の腕も不要だ」
−居城の一室−
男「お前達全員はカイオウを倒す為の尖兵としてヒョウに支えているんだったな」
腹心A「左様にございます」
腹心B「しかしヒョウ様にそのご意志を感じる事が出来ず、今まで我らの中のみで秘めておりました」
腹心C「いや、それにも増してカイオウに心を痛めるヒョウ様が不憫でならず…」
腹心D「カイオウ討伐の打診をするどころではありませなんだ」
男「そうか。…で、ヒョウとカイオウ、直接対決したら勝てると思うか?」
ナガト「カイオウは第一の羅将、ヒョウ様は第二の羅将だが、ヒョウ様の腕はカイオウにそう大きな差はないと見ている。そこに我ら五人が命を捨てて加われば倒す事は出来よう」
ナガト「いや、例え我らが居らずともヒョウ様ならカイオウを倒せる!我々はそう信じております」
男『ヒョウも良い部下に恵まれているな。案外良い部下持ちが多いんだよな、この世界。だが…』
男「何でも倒してはい解決!…という考え方はいかん!」ダンッ
ナガト「はっ!?」
男「いや、今のは無しで頼む」
サヤカ「ヒョウ」
ヒョウ「サヤカ」
サヤカ「昨日から随分悩んでいるようだけれども、私に話せる事ではないの?」
ヒョウ「フッ…心配するな。悩みという程の事でもない」
サヤカ「ヒョウ。私達は結婚するんでしょ?結婚するってどういう事か解る?」
ヒョウ「サヤカ…それは」
サヤカ「貴方は私を守ろうと、心配させまいとしようとしてくれている事は解ってる。だけどそれは私の事を軽く見ているわ」
ヒョウ「!…そんな事はない!俺がお前を想う中にその様な邪念はない!」
サヤカ「それは解っている。悪く思わないでね。でも結婚するという事は、お互いに守る側と守られる側に別れたままでいるって事じゃないと思うの」
ヒョウ「俺はお前を守りたいのだ。それはいけない事だと言うのか?」
サヤカ「私も貴方を守りたいの」
ヒョウ「サ…サヤカ!」
サヤカ「私が思う結婚はね、お互いが一つになるという事よ。だから、守る側と守られる側に分かれたままじゃおかしいでしょ」
サヤカ「貴方は私を守るし、私は貴方を守る。私は貴方に守られるし、貴方は私に守られるの」
サヤカ「さっき軽く見ているといったのはそういう意味。私だって貴方を守れるのよ。守られてばかりの女じゃない」
サヤカ「私はカイオウの妹、そして貴方の許嫁。二人の羅将を身内に持つ女なんだから」
ヒョウ「サヤカ!」ガバッ
ヒョウ「すまぬ…お前の言う通りであった。俺は意識しないところでお前は守られるべき存在だと思い込んでいたようだ」
サヤカ「ヒョウ…」ギュッ
ヒョウ「サヤカ、ならば聞いてくれるか」
サヤカ「」コクッ
ヒョウ「実はカイオウの事を考えていたのだ」
サヤカ「兄さんを倒すべきかどうか…?」
ヒョウ「何故…!」ハッ
サヤカ「解るわよ。いつも何年もこんなに近くに居るんだから。あと、兄さんの事も何となく」
サヤカ「兄さん、多分誰かに助けて欲しいんだと思うの。自分でも自分の事が見えなくなってどうしたら良いか解らないんだと思う」
ヒョウ「…俺に救えるだろうか。実の弟のラオウならばカイオウを…」
サヤカ「ラオウは今居ないでしょう?今居るのは貴方よ、ヒョウ」
ヒョウ「しかし、カイオウに劣る俺ではどうにもならぬ」
サヤカ「貴方は兄さんを倒したいの?」
ヒョウ「いや違う!俺は、奴が救いを求めているのならば救ってやりたいのだ」
サヤカ「ならば救ってあげて。今それが出来るのはヒョウ、貴方だけよ」
ヒョウ「…お前には俺がそれが出来ると」
サヤカ「信じてるわ」ニコッ
ヒョウ「!」
ヒョウ「すまぬサヤカ。また後で会おう」
サヤカ「ええ」
サヤカ「…ヒョウ。兄さん」
−居城の一室−
ナガト「ヒョウ様!」
男「決意は固まったようだな」
ヒョウ「うむ。皆の者聞くが良い。俺はカイオウに自分の本心を見せようと思う」
ナガト「ヒョウ様、それは…」
ヒョウ「闘いは避けられまい。だが、これはカイオウを倒す為の闘いではない!」
腹心A「それはどういう…」
ヒョウ「カイオウが歪んだ責は全て俺にある。だから俺はその落とし前を付けねばならぬ。カイオウへの謝罪として、そしてカイオウを解放する為の闘いなのだ!」
腹心B〜D「「「おお!」」」
男「拳で詫び、拳で解放するか。それが拳法家の在り方なんだな」
ナガト「それでは配下全軍、ヒョウ様のお供をつかまつります!」
ヒョウ「それには及ばぬ。全軍で向かえば国全体を割る闘いになる。俺一人でカイオウの元に向かう。お前達はサヤカを守ってくれ」
ナガト「それではヒョウ様はカイオウの配下共に!」
ヒョウ「…そこで倒れるならば、その程度の男だったと言う事だ」
−カイオウの城−
ヒョウ「すまぬな。付き合わせる形になってしまった」
男「俺の事は気にしなくて良い。俺はこの世界の影響は一切受けないし、勝手に着いて来たんだ」
ヒョウ「フッ…そうだったな」
ヒョウ「カイオウの部下か」
滅殺隊A「例えヒョウ様と言えど、カイオウ様に手向かうとあらばここを通すわけには参りませぬ」ガバァッ
滅殺隊B「呪龍羅斬陣にて地獄へご案内申し上げましょう」ガバァッ
滅殺隊C「お覚悟を!」ガバァッ
ヒョウ「はあああっ」コオォォッ
北斗琉拳奥義
闘 玉 壁 双
滅殺隊A〜C「「「うぎゅあ!」」」ドシャァッ
ヒョウ「北斗宗家の嫡男としては劣等の部類とは言えこのヒョウ、貴様らごときに遅れは取らぬ!」
カイオウ「来たかヒョウ」
ヒョウ「カイオウ…」
カイオウ「その虫もにたぶらかされたか?いや、そうでなくとも何時かこの様な日が来ると思っていたわ」
カイオウ「お前が俺に遺恨がある事はずっと前から、それこそ貴様の乱取り相手を務めていた頃から知っておったわ」
ヒョウ「カイオウ…」
−魔闘気が膨れ上がっていく…!?
カイオウ「うぬごときがこのカイオウを倒せると思ったか!のぼせ上がるでないわヒョウ!」
カイオウ「羅将の地位など俺にとっては取って付けた遊びの様なもの!本来ならば羅将は俺一人で良かったのだ!」
カイオウ「ただ同じ拳法を学んだよしみで与えてやったに過ぎん!それをこのカイオウと同格になったと思い込むとはとんだたわけよ!」
ヒョウ「違う!俺は…」
男「これは歪んだ心の叫び。本心ではない」
ヒョウ「何!」
男「奴はお前に救ってくれと叫んでいる。応えてやるんだ」
カイオウ「叩き刻んで腐土と化してくれるわ!どおりゃ!」
バギャアッ!
ヒョウ「ぐあっはあっ!」ドガアッ
カイオウ「瓦礫に埋もれたまま果てるが良い!ぬうう…うおああ!」
暗 琉 霏 破
ドガアアアッ!
シュウウウ…
カイオウ「瓦礫ごと消し飛びおったか!ヒョウ…愚かな男よ」
カイオウ「なにっ!?」
ヒョウ「」ユラリ
カイオウ「むうっ!何だあれは!ヒョウの背後に魔闘気ではないオーラが!闘神が見える!」
カイオウ「ぐっ!おぼあっ!息が詰まる!魔闘気が逆流して来る!魔闘気が怯え…」
カイオウ「ぐふあっ!よっ、鎧を!鎧を脱がねば…」バリーン
カイオウ「」ハァハァ…
ヒョウ「カイオウ…。俺は北斗琉拳のヒョウとしてではなく、北斗宗家のヒョウとしてお前に伝えねばならぬ!」
カイオウ「貴様!まさか、宗家の血が目覚めたと言うのか!」
ヒョウ「うりゃあ!」
擾 摩 光 掌
カイオウ「!」
カイオウ「うぬあっ!」ブシャアッ
カイオウ「何という一閃!ならば…」
暗 琉 天 破
ヒョウ「むうっ!」グワーン
カイオウ「魔界を極めておらぬ貴様では自らの位置を掴む事は出来まい!今度こそ渾身の魔闘気にて葬ってくれよう!」
カイオウ「受けい!そして宗家の血と共に滅せよ!」
暗 琉 炎 殺 陣
ヒョウ「はっ!」
遊 昇 凄 舞
ヒョウ「実体を滅し空間を乱れ飛ぶ!これを前にしては暗琉天破も無効の奥義!」
カイオウ「うぬぬほ!その奥義は北斗宗家最強の従者と呼ばれた黒夜叉以外に極めた者はおらぬはず!」
ヒョウ「何故かは知らぬが、出来る気がした…。まるで生まれた時から身体に染み付いているかの様に…」
−カイオウ、今こそお前に俺の本心を打ち明けよう!
万 手 魔 音 拳
カイオウ「おあっ!」ブシャシャアッ
カイオウ「うがは〜!」ガックリ
ヒョウ「カイオウ…」ハーッ…ハーッ
カイオウ「ヒョウ」
ヒョウ「俺はお前に」
カイオウ「貴様が北斗宗家の血を引いているというだけで、俺は貴様の従者に!」
ヒョウ「はっ!」
カイオウ「拳法の腕では遥かに勝っていながら、宗家の血を持たぬというだけで俺は貴様の従者として苦汁を…!」
ヒョウ「カイオウ!」
カイオウ「宗家の血が何だと言うのだ!生まれた血筋で己の運命を決められてたまるか〜!」
男『核心の部分が顕に…』
カイオウ「俺が宗家に産まれていれば!俺にも宗家の血が流れていれば!俺はそんな屈辱に満ちた運命に翻弄される事はなかったのだあ!おああ!」
凄 妙 弾 烈
ヒョウ「ぐぶっ!?ぐはあっ!」
ヒョウ「」ピクピク
カイオウ「誰に教えられたわけでもない、生まれつき身に付いていた拳!このカイオウ不敗の拳の前に付け焼き刃の宗家の拳など通じぬ!」
ヒョウ「…」ググッ
カイオウ「致命の破孔を突いた!貴様の身体はもうすぐ吹き飛ぶ!」
ヒョウ「ぶは〜っ…ぶぶは〜っ」
カイオウ「何故吹き飛ばぬ…?」
ヒョウ「初めて見る拳だが、俺には解った。カイオウそれは宗家の拳だ」
カイオウ「何だと!?」
ヒョウ「師父ジュウケイが言っていた。宗家の拳は余りにも極められた拳故に受けの術も極められ、実戦での戦闘力を失っていたと」
カイオウ「俺にも宗家を継ぐ資格があったという事か…?ならば、ならば何故弾き出された!」
ヒョウ「宗家も琉拳もない。俺はヒョウという男でお前はカイオウという男!もうそれで良いではないか!」
カイオウ「うぬには解らぬ!宗家として陽の当たる中をぬくぬくと歩んで来たうぬにはな!」
ヒョウ『何故だ…。何故かは知らんがカイオウの心が解る!』
カイオウ「今こそ貴様を倒し、全て破壊し尽くしてやるわ!」
−ヒョウ、お前の手で俺を倒してくれ!
カイオウ「例え天地逆となっても己の道は変えぬ!」バアアアッ
−俺を呪われた宿命から解放してくれ!
カイオウ「うああああーーーっ!」
ヒョウ「カイオウ」
−兄手そして友よ!
カイオウ「!」ハッ
男『通じた!お互いの心が…』
ドゴアッ!
カイオウ「ぐぶっ…見事だヒョウ。さあ、お前の手で俺に止めを刺すが良い」
ヒョウ「カイオウ…。俺はお前を倒す為に来たのではない。お前に俺の本心を伝えに来たのだ」
カイオウ「ど、どういう事だ…?」
ヒョウ「俺に力があったら、北斗宗家の嫡男としての力量が十分であったなら、お前はここまで歪まなかったはず」
ヒョウ「お前が苦しんだのは全て俺のせいだ。許してくれ」
カイオウ「お前は…?何時からお前はそんな事を」
ヒョウ「幼い頃からずっと。自分の力の無さ故にお前に打ち明ける事すら出来なかった。それは俺の弱さ故…」
カイオウ「…このバカヤロウ。お前が初めからこれ程の強さを見せていれば、俺は俺の宿命に素直に…」
カイオウ「いや。弱者はこのカイオウ。俺が弱者だったからこそ、そうやって何かのせいにしていなければ自分を保てなかったのであろう…」
男「それに気付いたお前はもはや弱者ではない」
カイオウ「お前は…」
男「人は自分が最も否定している事を受け入れた時、最も欲したものを得るのだ。今、お前はそれを得たな」
カイオウ「相変わらず何を言っているのかは分からん。分からんが、何故か解るような気がするわ…」フッ
サヤカ「ヒョウ!兄さん!」
ヒョウ/カイオウ「サヤカ!」
サヤカ「ヒョウと兄さんの事、何時かこうなってくれると信じていた」
ヒョウ「カイオウ。俺の背中を押してくれたのは他でもない。このサヤカなのだ」
カイオウ「サヤカが…」
男「お前を真に想う人間が少なくとも二人は居る事が解っただろう」
男「本人が居ないのに言うのも何だが、おそらくラオウもな」
カイオウ「…そこまで見抜いているとは、お前は一体何者なのだ」
ヒョウ「そうだ。教えたところで影響を受けも与えもしないのだろう?ならば聞かせてくれないか」
男「ではネタばらしをしよう」
男「俺…いや俺達は、お前達の世界とは異なる場所でお前達の世界を見ている」
男「お前達の世界は最初から最後まで全て知っている。途中から見ようと思えば何処からでも見れるし、最初から見ようと思えばそれも出来る」
男「今回のお前達の場面は、そんな世界の一場面というわけだ」
カイオウ「」
ヒョウ「」
サヤカ「私、解る気がする」
ヒョウ「しかし、何故その様な者が俺達の世界…とやらに干渉するのだ?」
男「いや、干渉したくても出来ない。この世界は干渉された世界ではなくて、これはこれで初めから決まっていた世界だ」
男「俺達はお前達それぞれに対して持つ認識や感覚が異なる。お前達を通して俺自身を表現すると、この様な世界として顕れる」
カイオウ「このカイオウが自分の宿命を受け入れる姿が、うぬの姿と重なるという事か。以前に言っていたのはその事であったか」
男「ああ。本当はお前もヒョウも死の間際だけに心を通わせて終わるんだ。サヤカに至ってはカイオウに無意味に殺されてしまう」
サヤカ「まあ!」
男「おおっと。ネタバレが過ぎたな。そんなのこの世界では何の意味もない事だ」
カイオウ「…俺はこれからどうすれば良いのだ?」
男「その傷の数だけ押し込めた想いの一つ一つを素直に表現して行けば良い」
男「俺はもう満足だ。二度とこの世界に顕れる事もなかろう」
男「ひょっとしたら、違うお前達に会いたいと思う事があるかも知れんが、それはお前達とは関係のない、また別の存在だ」
男「ではさらばだ」
ヒョウ「…最後まで解らぬ男だったな」
カイオウ「…うむ。だが救われた。それはあの男によってなのか、ヒョウによってなのか、それは解らぬが」
サヤカ「兄さんはヒョウに救われたのよ。傷だらけになりながらも行動したのはヒョウなんだから」
カイオウ「…そうだな。ヒョウよ」
ヒョウ「どうした、カイオウ」
カイオウ「また幼き頃に戻って共に遊ぼうぞ」
−終わり−
−おまけ−
ラオウ「何!修羅の国から使いが!」
赤鯱「かの国で何やら大きな動きがありました由。海を渡られますか拳王様」
ラオウ「未だ覇道の半ばだが、何が起こったのかこの目で確かめねばなるまい!」
赤鯱「ははっ!シャチ、お前も着いて来るがいい」
シャチ「はい!」
−修羅の国−
ヒョウ「待っていたぞ。長旅ご苦労であったな」
ラオウ「ヒョウか!羅将のうぬが出迎えるとは。兄者…カイオウは何処だ?この国に起こった重大な異変とは!?」
ヒョウ「カイオウに直接聞くが良い。その拳を以てな」
ラオウ「なんと!?」
ヒョウ「フッ…。奴も久し振りに実の弟と語り合いたくなったのであろう」
カイオウ「来たかラオウ」
ラオウ「兄者…?」
−あれほど凄まじかった魔闘気が見る影もないわ。
カイオウ「うぬは言ったな、二人の敵を倒さずに天は握れぬと」
カイオウ「それはおそらくトキとケンシロウであろう。しかし、その前にこの兄を超えてみせよ」
−兄の背中を追う者の姿、想いをこの俺を通して知るが良い。
−そして、その想いを以て二人の弟を受け止めよ!
ラオウ「!」ハッ
ラオウ『何故から解らぬが、この闘いは避けられぬ。いや、避けてはならぬ!』
ラオウ「よかろう。まずはこの修羅の国を平定し、その勢いを以て覇道を成そう!」
カイオウ「それでこそ我が弟ラオウ!ならば互角の闘いが出来よう!」
ラオウ『何が起きたのは知らぬが、以前の兄者ではない!そう、これは』
−俺が昔から追い続けた英雄としての姿だ!
カイオウ『ラオウよ。貴様が目指した兄、カイオウの姿をとくとその目に焼き付けよ!そして』
−この兄を超え、天の覇者となれ!
ラオウ「ぐぬおおあぁーー!」グゴゴゴ
−兄は!兄は英雄に戻ってくれた!いや、英雄のままでいてくれた!
カイオウ「ふぬおああぁーー!」ブオオオォ
−魔界を制覇した真の北斗琉拳!その奥義を見るが良い!
ラオウ「受けてみぃ!このラオウ無敵の拳!」
天 将 奔 烈
カイオウ「これぞ真に魔界を極めたこのカイオウ渾身の一撃!」
暗 琉 霏 破
−ホントに終わり−
あっ暗流霏破だった。
最後の最後でやってしまった_(:3」∠)_
北斗屈指のコンプレックスの塊達による三部作、お付き合い頂きありがとうございました。
乙
サウザーも男くんに救ってやって欲しかった
このままだといちご味になるしかない
乙
出来たらサウザーとユダも救ってやって欲しい
乙
もっと続けてもいいのよ?
・SS深夜VIPに投稿されたスレッドの紹介でした
カイオウ「例え天地逆となっても己の道は変えぬ!」
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・サキュバス「さぁチンチン出しなさい!キンタマ空っぽになるまで絞り尽くしてあげる!」ショタ「ママ…?」サ キュバス「?!」
1: 男 2016/07/07(木) 21:48:27 ID:MULTe6Eo
ラオウ「兄者のやり方では天は握れぬ!天の覇者はこのラオウただ一人!」
ラオウ「このままこの国を修羅の国とするならば、いずれこの国は俺が奪う!」
カイオウ「ほう、今から攻め入るか?」
ラオウ「いや。俺にはまだかの地で倒さねばならぬ敵が二人居る!その二人の敵を倒さねば天は握れぬ!」
ザッザッザッ…
カイオウ「流石はラオウ。あくまでラオウ流の生き方を貫くか…」
カイオウ「我が心に残った最後の想い…」スッ
カイオウ「さらばラオウ!」ドガッ!
ブシュウッ!
カイオウ「これで俺の中のラオウは死んだ!」
男「死んではおらぬ。ただ、見てみぬ振りをするものがまた一つ増えただけだ」
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2: 男 2016/07/07(木) 22:01:05 ID:MULTe6Eo
カイオウ「ぬっ!」何奴!気配を悟られる事なくこのカイオウの背後を取るとは」
男「お前の体の傷の数はお前が無視しているお前自身の想いの数!その鎧の下には一体どれだけの傷があるのかな?」
カイオウ「ゴミムシめが、このカイオウの前から失せよ!」ブンッ
男「この世界最強の一角に数えられるお前を以てしても、俺に影響を及ぼす事は叶わぬ!」
カイオウ「ぬう!ならば空間ごと葬り去ってくれるわ!暗流天破!」ゴオッ
男「無駄だ。俺はこの世界に立っているわけでもなければ、宙に浮いているわけでもない。空間ですら俺に影響を与えない」
カイオウ「うぬぬほ…何というヤツ!」
男「その魔闘気、まさにお前の意識の中を顕しているかの様だ」
3: 男 2016/07/07(木) 22:35:31 ID:MULTe6Eo
カイオウ「おのれ!何としてでもその耳障りな口を塞いでやるわ!」
ヒョウ「どうしたカイオウ」
カイオウ「ぬう…ヒョウ!」
ヒョウ「…この男は?」
男「俺は何者か…などはどうでも良い。大事なのはお前達が本当は何を想うのか…だ。」
ヒョウ「?」
カイオウ「どけぃヒョウ!そのゴミムシをこの手で跡形も残さず消し去らねば気が収まらぬわ!」
男「よほど琴線に触れたようだな。つまりは大当たりだというわけだ」
男「その想いをずっと無視し続けるつもりか?身の破滅が起こるまで」
ヒョウ「!」ハッ
カイオウ「黙れぃ!渾身の魔闘気で吹き飛ばしてくれるわ!」
ヒョウ「いかん!待てカイオウ!」
カイオウ「ふぬうあぁ!」
暗 琉 霏 破
男「それすら例外はない」
4: 男 2016/07/07(木) 22:45:43 ID:MULTe6Eo
ヒョウ「なん…だと?」
カイオウ「ぬうう!うぬは一体!?」
男「お前が俺に影響を及ぼせる可能性があるとするならば、それは真に望むものを発露させたお前の姿!それを見た時、俺は消えるであろう」
カイオウ「…何を言っておる?」
男「お前の真の胸の内を見せろ。俺はそれを見たいのだ。俺がそれを見たいと決めた以上、お前はそうするより他に俺から解放される事はない
カイオウ「小虫が!神にでもなったつもりか!」
男「既にそうであるものに改めてなる事は出来ん。そして、そうではないものにもなる事は出来ん」
カイオウ「ぬぬ…!先程からわけの解らぬ事を!このカイオウを愚弄するか!」
男「愚弄されたと感じたなら、それはお前が自分を愚弄している事に他ならぬ」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/07(木) 22:47:46 ID:.jv6uSQQ
今度は北斗琉拳か
期待!
6: 男 2016/07/07(木) 22:55:38 ID:MULTe6Eo
ヒョウ「お前が誰かは知らぬし、それを問うつもりもない。だが、それ以上はやめてくれぬか」
男「うむ。よかろう。言葉で説得させる事が本意では無いしな」
男「ではまた会おう」
カイオウ「このカイオウから逃げおおせられると思ったか!待てぃ!」
ヒョウ「良いではないかカイオウ。ただの一人の男の言葉に翻弄される程、お前は小さくはないはずだ」
カイオウ「…ここは貴様の顔を立てておくわ。ただ、次にあやつを目にした時は必ず滅してくれる!」
ヒョウ「…」
−ヒョウの居城−
ナガト「ヒョウ様。男が一人、謁見を望んでおりまするが」
ヒョウ「男?もしや…。通してくれ」
男「また会ったな」
7: 男 2016/07/07(木) 23:08:55 ID:MULTe6Eo
ヒョウ「やはりお前か」
男「ヒョウよ。カイオウが歪んだ原因の大半はお前にある事を自覚しているだろう」
ヒョウ「なっ!?」
ナガト「待たれい!何故ヒョウ様に責任が及ぶのだ!ヒョウ様は第二の羅将として、カイオウ…様を支えておられるのだぞ」
男「無理するな。お前と四人の腹心がカイオウを倒してこのヒョウに国を預けようと願っている事は知っている」
ナガト「ううっ!?」タラーッ
ヒョウ「ナガト!?どういう事だ!」
男「今のカイオウがこの国の頂点にある限り、この国に未来はない事を悟っているのだ。お前も本当は解っているだろう」
ヒョウ「貴様!何処まで知っているのだ!」
男「全部だ」
8: 男 2016/07/07(木) 23:19:14 ID:MULTe6Eo
ヒョウ「全部…とは?」
男「ここに居る全ての者の本心だ。ここには居ないカイオウも…だが」
男「だから隠す意味は無い。だが、真意は自らの言葉によって発せられなければ力を持たない。俺が知っているだけでは、そこには何の力も無いのだ」
ヒョウ「俺の本心を俺自ら顕せ…と?」
男「そうだ。お前はカイオウを歪めた負い目から自分の想いに封をしているのだろう。しかし、本当はどうしたいのかは既に解っているのだ」
ヒョウ「…俺はカイオウと敵対する事は出来ない」
男「自分が北斗宗家の嫡男として弱過ぎたが故に、希代の英雄になるはずだったカイオウを潰してしまったからか?」
ヒョウ「それもあろう。…が、それだけではない」
9: 男 2016/07/07(木) 23:27:16 ID:MULTe6Eo
男「幼かったお前とケンシロウを火事から救う為にカイオウの母の命が失われてしまったからか?」
ヒョウ「何故そんな事まで!…いや、全部知っているのだったな。それも無くはなかろうが…」
男「お前の許嫁がカイオウの妹だからか?」
ヒョウ「うう…それは…」
ナガト「もうやめてくれ!ヒョウ様とて長い間悩み続けて苦しまれて来たのだ」
男「悩み続ける事によって解決が起こるものではない!」カッ
ナガト「うっ!」
男「それはただ自らの決断を先伸ばしにしていただけに過ぎん!そのうち解決されるだろうと期待しているのだろうが、その“そのうち”は永遠に来ない!」
男「解決とは“今”起こるのだ。“そのうち”起こるものではない」
10: 男 2016/07/07(木) 23:41:10 ID:MULTe6Eo
ヒョウ「…俺は」ヨロッ
男「焦って答えは出さずとも良い。いや、もう既にお前の中の答えは外に出ようとしているだろう」
男「後はそれを待て」
ヒョウ「…ああ」
男「ではナガト。他の腹心四人を集めてもらおうか。ヒョウを慕うお前達全員の力も必要になるだろう」
ナガト「お主は一体…?修羅ではなかろうし、拳法の心得があるとも思えぬが」
男「国は暴力によってなるものに非ず。意識によってなるものだ。そこに腕力も拳法の腕も不要だ」
−居城の一室−
男「お前達全員はカイオウを倒す為の尖兵としてヒョウに支えているんだったな」
腹心A「左様にございます」
腹心B「しかしヒョウ様にそのご意志を感じる事が出来ず、今まで我らの中のみで秘めておりました」
11: 男 2016/07/07(木) 23:58:03 ID:MULTe6Eo
腹心C「いや、それにも増してカイオウに心を痛めるヒョウ様が不憫でならず…」
腹心D「カイオウ討伐の打診をするどころではありませなんだ」
男「そうか。…で、ヒョウとカイオウ、直接対決したら勝てると思うか?」
ナガト「カイオウは第一の羅将、ヒョウ様は第二の羅将だが、ヒョウ様の腕はカイオウにそう大きな差はないと見ている。そこに我ら五人が命を捨てて加われば倒す事は出来よう」
ナガト「いや、例え我らが居らずともヒョウ様ならカイオウを倒せる!我々はそう信じております」
男『ヒョウも良い部下に恵まれているな。案外良い部下持ちが多いんだよな、この世界。だが…』
男「何でも倒してはい解決!…という考え方はいかん!」ダンッ
ナガト「はっ!?」
男「いや、今のは無しで頼む」
12: 男 2016/07/08(金) 00:07:29 ID:UCt7RUlY
サヤカ「ヒョウ」
ヒョウ「サヤカ」
サヤカ「昨日から随分悩んでいるようだけれども、私に話せる事ではないの?」
ヒョウ「フッ…心配するな。悩みという程の事でもない」
サヤカ「ヒョウ。私達は結婚するんでしょ?結婚するってどういう事か解る?」
ヒョウ「サヤカ…それは」
サヤカ「貴方は私を守ろうと、心配させまいとしようとしてくれている事は解ってる。だけどそれは私の事を軽く見ているわ」
ヒョウ「!…そんな事はない!俺がお前を想う中にその様な邪念はない!」
サヤカ「それは解っている。悪く思わないでね。でも結婚するという事は、お互いに守る側と守られる側に別れたままでいるって事じゃないと思うの」
ヒョウ「俺はお前を守りたいのだ。それはいけない事だと言うのか?」
13: 男 2016/07/08(金) 00:14:33 ID:UCt7RUlY
サヤカ「私も貴方を守りたいの」
ヒョウ「サ…サヤカ!」
サヤカ「私が思う結婚はね、お互いが一つになるという事よ。だから、守る側と守られる側に分かれたままじゃおかしいでしょ」
サヤカ「貴方は私を守るし、私は貴方を守る。私は貴方に守られるし、貴方は私に守られるの」
サヤカ「さっき軽く見ているといったのはそういう意味。私だって貴方を守れるのよ。守られてばかりの女じゃない」
サヤカ「私はカイオウの妹、そして貴方の許嫁。二人の羅将を身内に持つ女なんだから」
ヒョウ「サヤカ!」ガバッ
ヒョウ「すまぬ…お前の言う通りであった。俺は意識しないところでお前は守られるべき存在だと思い込んでいたようだ」
サヤカ「ヒョウ…」ギュッ
14: 男 2016/07/08(金) 00:22:01 ID:UCt7RUlY
ヒョウ「サヤカ、ならば聞いてくれるか」
サヤカ「」コクッ
ヒョウ「実はカイオウの事を考えていたのだ」
サヤカ「兄さんを倒すべきかどうか…?」
ヒョウ「何故…!」ハッ
サヤカ「解るわよ。いつも何年もこんなに近くに居るんだから。あと、兄さんの事も何となく」
サヤカ「兄さん、多分誰かに助けて欲しいんだと思うの。自分でも自分の事が見えなくなってどうしたら良いか解らないんだと思う」
ヒョウ「…俺に救えるだろうか。実の弟のラオウならばカイオウを…」
サヤカ「ラオウは今居ないでしょう?今居るのは貴方よ、ヒョウ」
ヒョウ「しかし、カイオウに劣る俺ではどうにもならぬ」
15: 男 2016/07/08(金) 00:33:32 ID:UCt7RUlY
サヤカ「貴方は兄さんを倒したいの?」
ヒョウ「いや違う!俺は、奴が救いを求めているのならば救ってやりたいのだ」
サヤカ「ならば救ってあげて。今それが出来るのはヒョウ、貴方だけよ」
ヒョウ「…お前には俺がそれが出来ると」
サヤカ「信じてるわ」ニコッ
ヒョウ「!」
ヒョウ「すまぬサヤカ。また後で会おう」
サヤカ「ええ」
サヤカ「…ヒョウ。兄さん」
−居城の一室−
ナガト「ヒョウ様!」
男「決意は固まったようだな」
ヒョウ「うむ。皆の者聞くが良い。俺はカイオウに自分の本心を見せようと思う」
ナガト「ヒョウ様、それは…」
ヒョウ「闘いは避けられまい。だが、これはカイオウを倒す為の闘いではない!」
16: 男 2016/07/08(金) 00:43:24 ID:UCt7RUlY
腹心A「それはどういう…」
ヒョウ「カイオウが歪んだ責は全て俺にある。だから俺はその落とし前を付けねばならぬ。カイオウへの謝罪として、そしてカイオウを解放する為の闘いなのだ!」
腹心B〜D「「「おお!」」」
男「拳で詫び、拳で解放するか。それが拳法家の在り方なんだな」
ナガト「それでは配下全軍、ヒョウ様のお供をつかまつります!」
ヒョウ「それには及ばぬ。全軍で向かえば国全体を割る闘いになる。俺一人でカイオウの元に向かう。お前達はサヤカを守ってくれ」
ナガト「それではヒョウ様はカイオウの配下共に!」
ヒョウ「…そこで倒れるならば、その程度の男だったと言う事だ」
17: 男 2016/07/08(金) 00:56:40 ID:UCt7RUlY
−カイオウの城−
ヒョウ「すまぬな。付き合わせる形になってしまった」
男「俺の事は気にしなくて良い。俺はこの世界の影響は一切受けないし、勝手に着いて来たんだ」
ヒョウ「フッ…そうだったな」
ヒョウ「カイオウの部下か」
滅殺隊A「例えヒョウ様と言えど、カイオウ様に手向かうとあらばここを通すわけには参りませぬ」ガバァッ
滅殺隊B「呪龍羅斬陣にて地獄へご案内申し上げましょう」ガバァッ
滅殺隊C「お覚悟を!」ガバァッ
ヒョウ「はあああっ」コオォォッ
北斗琉拳奥義
闘 玉 壁 双
滅殺隊A〜C「「「うぎゅあ!」」」ドシャァッ
ヒョウ「北斗宗家の嫡男としては劣等の部類とは言えこのヒョウ、貴様らごときに遅れは取らぬ!」
18: 男 2016/07/08(金) 01:16:08 ID:UCt7RUlY
カイオウ「来たかヒョウ」
ヒョウ「カイオウ…」
カイオウ「その虫もにたぶらかされたか?いや、そうでなくとも何時かこの様な日が来ると思っていたわ」
カイオウ「お前が俺に遺恨がある事はずっと前から、それこそ貴様の乱取り相手を務めていた頃から知っておったわ」
ヒョウ「カイオウ…」
−魔闘気が膨れ上がっていく…!?
カイオウ「うぬごときがこのカイオウを倒せると思ったか!のぼせ上がるでないわヒョウ!」
カイオウ「羅将の地位など俺にとっては取って付けた遊びの様なもの!本来ならば羅将は俺一人で良かったのだ!」
カイオウ「ただ同じ拳法を学んだよしみで与えてやったに過ぎん!それをこのカイオウと同格になったと思い込むとはとんだたわけよ!」
19: 男 2016/07/08(金) 01:25:29 ID:UCt7RUlY
ヒョウ「違う!俺は…」
男「これは歪んだ心の叫び。本心ではない」
ヒョウ「何!」
男「奴はお前に救ってくれと叫んでいる。応えてやるんだ」
カイオウ「叩き刻んで腐土と化してくれるわ!どおりゃ!」
バギャアッ!
ヒョウ「ぐあっはあっ!」ドガアッ
カイオウ「瓦礫に埋もれたまま果てるが良い!ぬうう…うおああ!」
暗 琉 霏 破
ドガアアアッ!
シュウウウ…
カイオウ「瓦礫ごと消し飛びおったか!ヒョウ…愚かな男よ」
カイオウ「なにっ!?」
ヒョウ「」ユラリ
カイオウ「むうっ!何だあれは!ヒョウの背後に魔闘気ではないオーラが!闘神が見える!」
20: 男 2016/07/08(金) 01:35:40 ID:UCt7RUlY
カイオウ「ぐっ!おぼあっ!息が詰まる!魔闘気が逆流して来る!魔闘気が怯え…」
カイオウ「ぐふあっ!よっ、鎧を!鎧を脱がねば…」バリーン
カイオウ「」ハァハァ…
ヒョウ「カイオウ…。俺は北斗琉拳のヒョウとしてではなく、北斗宗家のヒョウとしてお前に伝えねばならぬ!」
カイオウ「貴様!まさか、宗家の血が目覚めたと言うのか!」
ヒョウ「うりゃあ!」
擾 摩 光 掌
カイオウ「!」
カイオウ「うぬあっ!」ブシャアッ
カイオウ「何という一閃!ならば…」
暗 琉 天 破
ヒョウ「むうっ!」グワーン
カイオウ「魔界を極めておらぬ貴様では自らの位置を掴む事は出来まい!今度こそ渾身の魔闘気にて葬ってくれよう!」
21: 男 2016/07/08(金) 01:51:53 ID:UCt7RUlY
カイオウ「受けい!そして宗家の血と共に滅せよ!」
暗 琉 炎 殺 陣
ヒョウ「はっ!」
遊 昇 凄 舞
ヒョウ「実体を滅し空間を乱れ飛ぶ!これを前にしては暗琉天破も無効の奥義!」
カイオウ「うぬぬほ!その奥義は北斗宗家最強の従者と呼ばれた黒夜叉以外に極めた者はおらぬはず!」
ヒョウ「何故かは知らぬが、出来る気がした…。まるで生まれた時から身体に染み付いているかの様に…」
−カイオウ、今こそお前に俺の本心を打ち明けよう!
万 手 魔 音 拳
カイオウ「おあっ!」ブシャシャアッ
カイオウ「うがは〜!」ガックリ
22: 男 2016/07/08(金) 02:03:28 ID:UCt7RUlY
ヒョウ「カイオウ…」ハーッ…ハーッ
カイオウ「ヒョウ」
ヒョウ「俺はお前に」
カイオウ「貴様が北斗宗家の血を引いているというだけで、俺は貴様の従者に!」
ヒョウ「はっ!」
カイオウ「拳法の腕では遥かに勝っていながら、宗家の血を持たぬというだけで俺は貴様の従者として苦汁を…!」
ヒョウ「カイオウ!」
カイオウ「宗家の血が何だと言うのだ!生まれた血筋で己の運命を決められてたまるか〜!」
男『核心の部分が顕に…』
カイオウ「俺が宗家に産まれていれば!俺にも宗家の血が流れていれば!俺はそんな屈辱に満ちた運命に翻弄される事はなかったのだあ!おああ!」
凄 妙 弾 烈
ヒョウ「ぐぶっ!?ぐはあっ!」
23: 男 2016/07/08(金) 02:13:37 ID:UCt7RUlY
ヒョウ「」ピクピク
カイオウ「誰に教えられたわけでもない、生まれつき身に付いていた拳!このカイオウ不敗の拳の前に付け焼き刃の宗家の拳など通じぬ!」
ヒョウ「…」ググッ
カイオウ「致命の破孔を突いた!貴様の身体はもうすぐ吹き飛ぶ!」
ヒョウ「ぶは〜っ…ぶぶは〜っ」
カイオウ「何故吹き飛ばぬ…?」
ヒョウ「初めて見る拳だが、俺には解った。カイオウそれは宗家の拳だ」
カイオウ「何だと!?」
ヒョウ「師父ジュウケイが言っていた。宗家の拳は余りにも極められた拳故に受けの術も極められ、実戦での戦闘力を失っていたと」
カイオウ「俺にも宗家を継ぐ資格があったという事か…?ならば、ならば何故弾き出された!」
24: 男 2016/07/08(金) 02:40:20 ID:UCt7RUlY
ヒョウ「宗家も琉拳もない。俺はヒョウという男でお前はカイオウという男!もうそれで良いではないか!」
カイオウ「うぬには解らぬ!宗家として陽の当たる中をぬくぬくと歩んで来たうぬにはな!」
ヒョウ『何故だ…。何故かは知らんがカイオウの心が解る!』
カイオウ「今こそ貴様を倒し、全て破壊し尽くしてやるわ!」
−ヒョウ、お前の手で俺を倒してくれ!
カイオウ「例え天地逆となっても己の道は変えぬ!」バアアアッ
−俺を呪われた宿命から解放してくれ!
カイオウ「うああああーーーっ!」
ヒョウ「カイオウ」
−兄手そして友よ!
カイオウ「!」ハッ
男『通じた!お互いの心が…』
ドゴアッ!
25: 男 2016/07/08(金) 02:49:23 ID:UCt7RUlY
カイオウ「ぐぶっ…見事だヒョウ。さあ、お前の手で俺に止めを刺すが良い」
ヒョウ「カイオウ…。俺はお前を倒す為に来たのではない。お前に俺の本心を伝えに来たのだ」
カイオウ「ど、どういう事だ…?」
ヒョウ「俺に力があったら、北斗宗家の嫡男としての力量が十分であったなら、お前はここまで歪まなかったはず」
ヒョウ「お前が苦しんだのは全て俺のせいだ。許してくれ」
カイオウ「お前は…?何時からお前はそんな事を」
ヒョウ「幼い頃からずっと。自分の力の無さ故にお前に打ち明ける事すら出来なかった。それは俺の弱さ故…」
カイオウ「…このバカヤロウ。お前が初めからこれ程の強さを見せていれば、俺は俺の宿命に素直に…」
26: 男 2016/07/08(金) 02:57:39 ID:UCt7RUlY
カイオウ「いや。弱者はこのカイオウ。俺が弱者だったからこそ、そうやって何かのせいにしていなければ自分を保てなかったのであろう…」
男「それに気付いたお前はもはや弱者ではない」
カイオウ「お前は…」
男「人は自分が最も否定している事を受け入れた時、最も欲したものを得るのだ。今、お前はそれを得たな」
カイオウ「相変わらず何を言っているのかは分からん。分からんが、何故か解るような気がするわ…」フッ
サヤカ「ヒョウ!兄さん!」
ヒョウ/カイオウ「サヤカ!」
サヤカ「ヒョウと兄さんの事、何時かこうなってくれると信じていた」
ヒョウ「カイオウ。俺の背中を押してくれたのは他でもない。このサヤカなのだ」
27: 男 2016/07/08(金) 03:05:37 ID:UCt7RUlY
カイオウ「サヤカが…」
男「お前を真に想う人間が少なくとも二人は居る事が解っただろう」
男「本人が居ないのに言うのも何だが、おそらくラオウもな」
カイオウ「…そこまで見抜いているとは、お前は一体何者なのだ」
ヒョウ「そうだ。教えたところで影響を受けも与えもしないのだろう?ならば聞かせてくれないか」
男「ではネタばらしをしよう」
男「俺…いや俺達は、お前達の世界とは異なる場所でお前達の世界を見ている」
男「お前達の世界は最初から最後まで全て知っている。途中から見ようと思えば何処からでも見れるし、最初から見ようと思えばそれも出来る」
男「今回のお前達の場面は、そんな世界の一場面というわけだ」
28: 男 2016/07/08(金) 03:18:59 ID:UCt7RUlY
カイオウ「」
ヒョウ「」
サヤカ「私、解る気がする」
ヒョウ「しかし、何故その様な者が俺達の世界…とやらに干渉するのだ?」
男「いや、干渉したくても出来ない。この世界は干渉された世界ではなくて、これはこれで初めから決まっていた世界だ」
男「俺達はお前達それぞれに対して持つ認識や感覚が異なる。お前達を通して俺自身を表現すると、この様な世界として顕れる」
カイオウ「このカイオウが自分の宿命を受け入れる姿が、うぬの姿と重なるという事か。以前に言っていたのはその事であったか」
男「ああ。本当はお前もヒョウも死の間際だけに心を通わせて終わるんだ。サヤカに至ってはカイオウに無意味に殺されてしまう」
29: 男 2016/07/08(金) 03:32:42 ID:UCt7RUlY
サヤカ「まあ!」
男「おおっと。ネタバレが過ぎたな。そんなのこの世界では何の意味もない事だ」
カイオウ「…俺はこれからどうすれば良いのだ?」
男「その傷の数だけ押し込めた想いの一つ一つを素直に表現して行けば良い」
男「俺はもう満足だ。二度とこの世界に顕れる事もなかろう」
男「ひょっとしたら、違うお前達に会いたいと思う事があるかも知れんが、それはお前達とは関係のない、また別の存在だ」
男「ではさらばだ」
ヒョウ「…最後まで解らぬ男だったな」
カイオウ「…うむ。だが救われた。それはあの男によってなのか、ヒョウによってなのか、それは解らぬが」
サヤカ「兄さんはヒョウに救われたのよ。傷だらけになりながらも行動したのはヒョウなんだから」
30: 男 2016/07/08(金) 03:35:18 ID:UCt7RUlY
カイオウ「…そうだな。ヒョウよ」
ヒョウ「どうした、カイオウ」
カイオウ「また幼き頃に戻って共に遊ぼうぞ」
−終わり−
31: 男 2016/07/08(金) 09:21:34 ID:UCt7RUlY
−おまけ−
ラオウ「何!修羅の国から使いが!」
赤鯱「かの国で何やら大きな動きがありました由。海を渡られますか拳王様」
ラオウ「未だ覇道の半ばだが、何が起こったのかこの目で確かめねばなるまい!」
赤鯱「ははっ!シャチ、お前も着いて来るがいい」
シャチ「はい!」
−修羅の国−
ヒョウ「待っていたぞ。長旅ご苦労であったな」
ラオウ「ヒョウか!羅将のうぬが出迎えるとは。兄者…カイオウは何処だ?この国に起こった重大な異変とは!?」
ヒョウ「カイオウに直接聞くが良い。その拳を以てな」
ラオウ「なんと!?」
ヒョウ「フッ…。奴も久し振りに実の弟と語り合いたくなったのであろう」
32: 男 2016/07/08(金) 09:32:11 ID:UCt7RUlY
カイオウ「来たかラオウ」
ラオウ「兄者…?」
−あれほど凄まじかった魔闘気が見る影もないわ。
カイオウ「うぬは言ったな、二人の敵を倒さずに天は握れぬと」
カイオウ「それはおそらくトキとケンシロウであろう。しかし、その前にこの兄を超えてみせよ」
−兄の背中を追う者の姿、想いをこの俺を通して知るが良い。
−そして、その想いを以て二人の弟を受け止めよ!
ラオウ「!」ハッ
ラオウ『何故から解らぬが、この闘いは避けられぬ。いや、避けてはならぬ!』
ラオウ「よかろう。まずはこの修羅の国を平定し、その勢いを以て覇道を成そう!」
カイオウ「それでこそ我が弟ラオウ!ならば互角の闘いが出来よう!」
33: 男 2016/07/08(金) 09:47:22 ID:UCt7RUlY
ラオウ『何が起きたのは知らぬが、以前の兄者ではない!そう、これは』
−俺が昔から追い続けた英雄としての姿だ!
カイオウ『ラオウよ。貴様が目指した兄、カイオウの姿をとくとその目に焼き付けよ!そして』
−この兄を超え、天の覇者となれ!
ラオウ「ぐぬおおあぁーー!」グゴゴゴ
−兄は!兄は英雄に戻ってくれた!いや、英雄のままでいてくれた!
カイオウ「ふぬおああぁーー!」ブオオオォ
−魔界を制覇した真の北斗琉拳!その奥義を見るが良い!
ラオウ「受けてみぃ!このラオウ無敵の拳!」
天 将 奔 烈
カイオウ「これぞ真に魔界を極めたこのカイオウ渾身の一撃!」
暗 琉 霏 破
−ホントに終わり−
34: 男 2016/07/08(金) 09:54:53 ID:UCt7RUlY
あっ暗流霏破だった。
最後の最後でやってしまった_(:3」∠)_
北斗屈指のコンプレックスの塊達による三部作、お付き合い頂きありがとうございました。
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/08(金) 09:59:30 ID:/EMmR/A.
乙
サウザーも男くんに救ってやって欲しかった
このままだといちご味になるしかない
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/08(金) 10:38:44 ID:Nx8XC5JU
乙
出来たらサウザーとユダも救ってやって欲しい
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/08(金) 14:20:14 ID:HBkiVjf2
乙
もっと続けてもいいのよ?
・SS深夜VIPに投稿されたスレッドの紹介でした
カイオウ「例え天地逆となっても己の道は変えぬ!」
・管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
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