声を失くした金糸雀
- § 草笛みつの部屋
金糸雀「ふわあああ~、今日も疲れたかしら」
みつ「あら、お帰りカナ! 最近いつも疲れてない?」
金糸雀「水銀燈が第2次アリスゲームに備えて、やたらと特訓したがるから付き合うカナも大変かしら」
みつ「そうなんだ~」
金糸雀「第2次アリスゲームだなんて起こるわけないのに、水銀燈ったら本当に戦争狂(ウォーモンガー)だわ」
みつ「ふ~ん」
金糸雀「昭和特撮並みの修業に付き合わされてカナはもう限界よ。やめたくなるかしら特訓~」
みつ「でも、カナはそんな銀ちゃんのことがほっとけないんでしょ?」
金糸雀「まあ、そんなところかしら! カナが見てあげてないと水銀燈ったらすぐ無茶な特訓して野垂れ死にしそうだもの」
みつ「ふふふ…」
金糸雀「何度『いのちをだいじに』って言っても水銀燈ったら聞く耳を持たないんだから…」
みつ「あ、そうだカナ! 喉かわいた? 喉かわかない? 冷蔵庫にアイスティーあるから好きに飲んでね」
金糸雀「ありがとかしら、みっちゃん。それじゃあ早速いただくかしら~!」ガチャッ
みつ「ばっちり冷えてるからね~」
金糸雀「行儀悪いけどペットボトルをラッパ飲みしちゃうかしら~」ンゴッゴッゴ
みつ「ペットボトル? カナ、アイスティーは紙パックに入ってるはず…」
金糸雀「ウボァッーーーーーーーーーー!?」げろげろげろ
みつ「カ、カナ!? 何を飲んだの!? ねえ、しっかりしてカナーーーー!!」
金糸雀「ゲェホッ! ガヘゲヘゴボッ! グェアッ! ……ッ!」
みつ「こ、このペットボトルは! 翠星石ちゃんから貰った自家製オリジナルブランド麺つゆだわ!」
金糸雀「…ッ!? …!!」
みつ「アイスティーと麺つゆを間違えて一気飲みするだなんて…。カナ、もう平気? 落ち着いた?」
金糸雀「…! …ッ!?」
みつ「どうしたの? まさかカナ!? 声が出なくなって…!?」
金糸雀「…!」コクコク
みつ「何て事!? いくら麺ツユを一気飲みしたからって、喉が潰れるだなんてことあるわけが…!」
翠星石「それがあるんですよ、みっちゃんさん」ヌッ
蒼星石「くっ…、間に合わなかったか…」ヌンッ
みつ「翠星石ちゃんに蒼星石くん!? どうしたの唐突に!?」
金糸雀「ッ!」
蒼星石「嫌な予感がしたんで、翠星石を連れて来たんです!」
みつ「なんて勘の良い子なの蒼星石くん! でも、ナイスタイミングだわ! カナの声が出なくなっちゃって…!」
蒼星石「翠星石の麺ツユの原液を思いっきり飲んだせいですね」
みつ「やっぱり。でも、どうして…」
翠星石「翠星石の作ったオリジナル麺つゆは超お得な濃縮タイプです。しかし濃縮したままでは毒なのですぅ!」
蒼星石「nのフィールドのいかがわしい動植物が材料に使われてもいるんです!」
みつ「えええ~っ!? な、なんでそんな危険な麺ツユを!?」
翠星石「ちゃんと薄めて使えば、この上なく美味な麺ツユになるのです」
みつ「本当に?」
蒼星石「それは本当です。現実の香水とかでも原液はクソみたいな悪臭しているものですから」
みつ「そ、そうなんだ…」
金糸雀「…!」
みつ「と、ともかく! カナは大丈夫なの? 声は戻るの!?」
蒼星石「大丈夫です。そろそろ小声ぐらいなら出せるようになるはずです」
金糸雀「…本当に?」ボソボソ
みつ「あ、本当だ! しゃがれ声だけど…、良かったわ」
翠星石「まったく、意地汚い真似をするからですよカナチビ」
金糸雀「す、翠星石が危険な麺ツユを作るか…ッ、ゲェホッ! ゴホゴホ!」
みつ「カ、カナ!?」
蒼星石「それ以上、大声を出してはいけない金糸雀! 喉をいたわるんだ!」
翠星石「喉に無理に負担をかけると完全に声が出せなくなるですよ」
金糸雀「…ッ!」
蒼星石「だが安心してくれ金糸雀。大声を出さずに養生してれば、完治する」
金糸雀「どれぐらい大人しくしていればカナのビューティフルボイスが復活するのかしら?」
蒼星石「ざっと一週間ってところかな」
みつ「一週間も…」
翠星石「まあ、ローゼンメイデンにとっちゃあ、屁でもない時間ですよ。ずっと寝てりゃいいです」
金糸雀「そうね。それが一番かしら」
蒼星石「あ、そうだ。もう一つ注意しておかないといけないことがあった」
金糸雀「?」
蒼星石「パンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクシングをしながら『いのちをだいじに』と叫んではいけない」
金糸雀「は?」
蒼星石「パンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクシングをしながら『いのちをだいじに』と叫んではいけない」
金糸雀「聞こえてたから、もう一回言わなくていいかしら。蒼星石の発言の意味が分からないんだけど…」
蒼星石「翠星石の麺ツユ原液は殆ど呪いの領域の液体だ。今、言った呪いの儀式をすると相乗効果で威力が強化される」
みつ「パンを尻にはさんで(略)…って、呪いの儀式なんだ…」
金糸雀「も、もしソレをやってしまうとカナはどうなってしまうのかしら?」
翠星石「死ぬですぅ」
金糸雀「マジで?」
翠星石「マジです。発動条件が難しい呪いなだけに、発動時には効果覿面ですよ」
金糸雀「あわわわわわわわ…」ガクガクブルブル
みつ「だ、大丈夫よカナ! そんなこと、何があってもカナがするわけないんだから…」
金糸雀「するなと言われると無性にやりたくなってきてしまうかしら…」
みつ「カ、カナ!? やったら死ぬのよ! 『いのちをだいじに』って言いながら死ぬのよ!?」
金糸雀「じょ、冗談かしら。とにかくカナは一週間ずっと鞄に引きこもって声が治るのを待つかしら」
蒼星石「うん、それがいい。じゃあ僕達は帰るから」
翠星石「ゲズントハイト(お大事に)ですぅ~」
- § 翌日・草笛みつの部屋
真紅「翠星石から聞いたわよ。災難だったわね金糸雀」
雛苺「ヒナ達がお見舞いに来てあげたの~」
金糸雀「ぬうう…、安静に寝ていたというのに、とんだお邪魔虫かしら二人とも」
真紅「大声を出しちゃいけないだけで、会話とか普通にできるんでしょ? 何も寝てることないじゃあない」
雛苺「うぃ、ヒナ達の便意を素直に受け止めてなのよね」
金糸雀「それを言うなら便意じゃあなくて善意。と言うか冷やかしが済んだなら早く帰ってほしいかしら」
真紅「つれないわね金糸雀。でもまあいいわ、お見舞いの品を渡したら帰るから」
雛苺「ヒナ達からのプレゼントなの」
金糸雀「プレゼント…?」
真紅「はい、フランスパン。挟みごたえ…じゃあなくて歯ごたえあるものが欲しくなるでしょ、療養中は」
雛苺「ヒナはボクシンググローブのプレゼントなの。寝てばかりだけじゃあなくて体も動かすといいのよね」
金糸雀「…ッ!?」
真紅「じゃあ、私達はこれで…」ニヤニヤ
雛苺「失礼するの」ニヤニヤ
金糸雀「あ、あなた達…っ!」
真紅「えっ? 何? 金糸雀?」
雛苺「大声を出すと喉に良くないのよ金糸雀」
金糸雀「カナがパンを尻にはさんで(略)…すると死ぬって知ってるんでしょう!? なのに…」
真紅「はっはっはー! またまた御冗談を」
雛苺「薔薇乙女一、清純派な金糸雀先生がそんなはしたない真似するはずがないのよね」
真紅「そうそう、そのとおりだわ。それじゃあ、私達は本当に帰るから。チャオ」
雛苺「あでぃおすなの~」
金糸雀「むむむ…」
- § 15分後
金糸雀「……」チラッ
仏パン「……」
グローブ「……」
金糸雀「あああっ、もう! 好奇心がツンツン刺激されるかしら…」
仏パン「…んでよぉ」
グローブ「…しいよぉ」
金糸雀「…ッ!? だ、誰? 誰の声?」キョロキョロ
仏パン「お尻に挟んでよぉ~。楽しいよぉ~。気持ちいいよぉ~?」
グローブ「ボクシングしよぉ~。ねぇっ、ボクシングしよぉ~。ねっ、左手だけでいいから~」
金糸雀「ぐああああ…? げ、幻聴…!? カナの精神はここまで病んでいるのかしら…!」
仏パン「ほらほらジャストサイズだよぉ~? 今、お尻に挟まないと後悔するよぉ~」
グローブ「ボクシングしようよぉ~、カナちゃんなら烈海王より絵になるよぉ~」
金糸雀「な、何を言おうと無駄かしら! カナの鋼鉄の精神はどんな誘惑にも…」
???「暗いよ~怖いよ~。エーンエーン!」
金糸雀「ッ? あ、新たな何者かの声? だ、誰!? って、幻聴に聞いても意味ないわよね…」
鼻くそ「ボクだよカナちゃん。今、君の鼻の穴の奥から直接話しかけている」
金糸雀「カ、カナの鼻くそ…!?」
鼻くそ「助けてカナちゃん。ここは暗くて怖いんだ! 君の白魚のような指でボクを助け出して!」
金糸雀「…!?」
仏パン「お尻に挟んでよ~」
グローブ「ボクシングしようよぉ~」
鼻くそ「ほじくりだしてよぉ~」
金糸雀「くっ…! ダ、ダメかしら。そんなことをしちゃったらカナは死んでしまう」
グローブ「大丈夫だよぉ~。『いのちをだいじに』ってさえ言わなければ…」
鼻くそ「ボク達の言うとおりにしても、何ともないさ~」
仏パン「カナちゃんはどこまでが安全でどこからが危険かちゃんと弁えている乙女だもんねぇ~」
グローブ「踏み越えてはいけない境界線をキチンと理解してるよねぇ~」
金糸雀「そ、それもそうね。カナは違いの分かる乙女…!」フラフラ
メイメイ「…ッ!」ひゅぱっ
金糸雀「メ、メイメイ…? どうして急にここへ? 水銀燈に何かあったの?」
メイメイ「…!!」
金糸雀「えええっ? 水銀燈がnのフィールドで修業中に無茶してピンチに!?」
メイメイ「…っ!」
金糸雀「分かってるわ。すぐに水銀燈を助けに行くかしら」
- § nのフィールド・ローゼンの箱庭・修業のための超重力ルーム
水銀燈「ふ、ふふ…。私としたことが重力の設定を間違えるとはね」ミシミシ
珪孔雀「水銀燈お姉様! しっかりしてください! 今すぐ重力ルームの扉を私が開けますから」
水銀燈「無駄よ。高重力発動中において、その扉は金糸雀の『いのちをだいじに』という言葉にしか反応しないの…」
珪孔雀「な、何なんです!? その意味不明な声紋照合システムは!」
水銀燈「金糸雀の私に対する苦言…なんだけど皮肉ね、この状況では」ビキビキ
珪孔雀「こ、このままでは水銀燈お姉様が潰れてしまうッ!?」
- § nのフィールド・レーテ川のほとり
金糸雀「あ、あれ? 箱庭じゃあない? ここは忘却の川レーテ…? 移動時のnフィーの座標指定がズレた?」
メイメイ「…ッ!」
金糸雀「だ、大丈夫よメイメイ。ここからでも箱庭は近い。再転移するより、走った方が早いかしら」
河童「俺が…! この川の勇者だッ!」ざばあっ
金糸雀「河童!? こ
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- :-:2016/07/10(日) 18:44:00
- クッソ汚い話ですが!それでも久しぶりのカナメイン回の上にカナ銀回なんて…ありがとうSLPY…
- :-:2016/07/10(日) 19:00:47
- たとえ鼻くそオチであったとしても…
ありがとうslpy
ありがとう
- :-:2016/07/10(日) 19:29:44
- ボーボボか銀魂のような鼻くその美談に草生えますよ~
- :-:2016/07/10(日) 19:40:08
- ( ;∀;)イイハナシダナー
- :-:2016/07/10(日) 19:59:19
- 志村由美さん引退の報を受けてのタイトルかな?
- :-:2016/07/10(日) 20:09:27
- ギャグと感動とシュールがギリギリのところでせめぎあいをしている……
- :-:2016/07/10(日) 20:14:56
- フランスパンを尻に挟んで気持ちよくなるなんてこのドスケベ金糸雀め!
- :-:2016/07/10(日) 20:17:53
- 志村さんお疲れ様でした。
SLPYさんはこれからも頑張ってください。
- :-:2016/07/10(日) 20:18:41
- カナはやかんとも対話が出来るからな
鼻くそやその他の物と喋れても不思議はない
- :-:2016/07/10(日) 21:43:39
- 汚い美談だなあ
- :-:2016/07/10(日) 21:57:34
- 志村、うしろうしろー(尻子玉的に)
- :-:2016/07/10(日) 22:33:28
- 「ローゼンメイデンには第2次アリスゲームは無い……
そんな風に考えていた時期が私にもあったかしら」
「へぇ…では第2次アリスゲームはあるというのかい?」
「そうよねぇ~~…ローゼンメイデンは隙あらば姉妹を蹴り落とすドール…て、まさか珪孔雀」
「言いがかりなんだから!」
「そうよ、疑うなんて酷いのよ!」
「やれやれ、戦争狂にも困ったものなのだわ」
「最初から計画通りとかありえないですぅ!」
- :-:2016/07/10(日) 23:27:21
- >蒼星石「パンを尻にはさんで
>雛苺「うぃ、ヒナ達の便意を
(お、やっとローゼンSSにもスカトロかな?)
↓
中の人に捧げるいい話だった
- :-:2016/07/10(日) 23:39:37
- サイコマンのような鼻くその高貴な魂に涙
- :-:2016/07/11(月) 00:01:10
- 良い話だ、良い話…なんだが…