戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://elephant.2chblog.jp/archives/52172352.html


暁「加賀さん加賀さん」 加賀「?」|エレファント速報:SSまとめブログ

TOP

暁「加賀さん加賀さん」 加賀「?」

1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 20:28:41.75 ID:JmAYa6bZO


加賀「誰?」

暁「暁よ!」

声で解ってはいたけれど
振り向き、あえて聞くと
暁型一番艦の自称レディは元気良く名乗りを上げた

加賀「貴女、レディじゃなかったかしら?」

暁「違うわ、あかつ…」

加賀「ふふっ」

暁「もうっ!」

暁「暁でレディよ!」

ちょっぴりむくれた駆逐艦、暁に笑い返す
あまりこういうことは得意ではなかったのだけれど
いつの間にか
そう、あの五航戦がきてから
少し上手くなった、ような気がする



2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 20:36:09.58 ID:JmAYa6bZO


加賀「それで、何か用かしら?」

暁「加賀さんはレディだと、赤城さんから聞いたわ」

暁「暁にレデ…」

加賀「他を当たって頂戴」

一蹴する。
意地悪ではなく、教えられることがないからだ
弓を教えてと言うのなら
少し考えてあげないこともないのだけれど
残念ながら、レディとやらは教えられない

加賀「貴女がレディなら教える側だと思うのだけど」

暁「それはそうだけど」

暁「暁のレディと加賀さんのレディは違うかもしれないわ!」

暁「だから、えっと」

言い訳すら最後まで言えずに
自称レディはうつ向いてしまった
泣くか、逃げるか
心の投票箱には白紙を一枚
きっと、その両方だから



3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 20:45:49.68 ID:JmAYa6bZO


加賀「……………」

常日頃戦いに明け暮れる私達にとっての日常とは戦場であり
目の前で駆逐艦が悔し涙を浮かべているのは
私達にとっての非日常である

加賀「まずは、泣かないことね」

ポンッっと頭に手を置く

暁「!」

これは非日常だ
けれど
いや、だからこそ私達は非日常に安寧を求め
享受し、安らぎを得る
それを与えてくれる一因である幼き駆逐艦には
言葉にはしないけれど、感謝している



4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 21:00:25.53 ID:JmAYa6bZO


だから、少しだけ
そう思ったのがいけなかったのかもしれない

暁「………」

潤んだ瞳が私を見上げる
ちょっぴりむくれた、顔が見えた

暁「…泣かないわ」

暁「レディだから、泣かないわ」

加賀「……………」

もう泣いているようなものだけれど
それはあえて、言わずにおく
五航戦の子相手だったら…とも考えるのは止めた

加賀「それが正しいわ」

加賀「レディ、なら」

暁「うんっ」

泣かせた私に同意して頷く自称レディ
端から見ればきっと笑い話
けれど、私はもう一度頭をポフポフする
その感触、その非日常が好きだったから



7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 21:23:29.09 ID:JmAYa6bZO


暁「加賀さん」

暁「暁は、レディになれる?」

加賀「………」

自称レディはそう言った
子供っぽさを残しながら
戦いに赴くような、真面目な瞳で

加賀「そうね…」

幼い駆逐艦の言葉は
普段から口にしているレディではなく
年齢…あるいは経過年数が届くかどうかだと
すぐにわかった



9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 08:52:36.24 ID:3TpyF7YYO


この子が不安になっているであろうことは
すぐに気づくことかできた
私の触れる頭が、小刻みに震えていたから

加賀「……」

この幼い駆逐艦は戦場を生き抜けるのかどうか
不安になっていて、恐れている
私でさえ慣れたわけではないことなのだから
自称レディが平気なわけがなかった

加賀「なれ…」

暁「?」

加賀「……なれるわ」

無責任に言っていいのか不安はあった
けれど私はこの場を取り繕うために
目の前で駆逐艦が泣かないために
哀愁の漂う背中を見送らないために
そう言った

暁「そ、そうよね!」

加賀「っ」

一番艦暁のその笑みは
いつぞやの《無事に帰ってくるよね》という言葉への返しと
その言葉を向けた結果を思い出させた



11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 18:32:37.45 ID:LtEwy75xO


暁「加賀さん、ありがとう!」

加賀「気にしなくていいわ」

加賀「何も、していないから」

私がそういうと、自称レディはそんなことないわ。と
嬉しそうに笑う
幼い駆逐艦のこの笑みは
普段の私たちをいやしてくれる貴重な存在
けれど
今だけは、胸に痛かった

暁「やっぱり、加賀さんはレディだったわ」

暁「また、お願いしてもいい?」

加賀「……気が向いたら」

暁「ありがとう!」

そういって走り去っていく
元気な暁型駆逐艦の一番艦を見送る
姿が見えなくなると
すぐに、ため息がこぼれた

加賀「……また」

加賀「その約束、貴女は守れるのかしら」

自称レディに問いかけるように
自分自身に問いかけるように
私はそう言って、自室へと戻った



12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 20:53:22.48 ID:LtEwy75xO


翔鶴「先輩、お疲れ様です」

加賀「貴女……」

自室といっても
艦隊の中でさらに二人一組とかで部屋割りされているため
相方がいる
私の相方は、翔鶴さん
正規空母、翔鶴型の……確か、3番艦

加賀「どこかに出かけなかったの?」

翔鶴「いえ、瑞鶴と少し」

加賀「そう……向こうの部屋にいても構わないわ」

翔鶴「その……」

翔鶴さんは暗い表情で口ごもると
誤魔化すように笑って、お茶はいかがですか? と、言う
断るのも失礼かと考えて
一杯だけ、もらう

翔鶴「…………」

加賀「…………」

空気が重い
あの五航戦と同じように、私も苦手なのか
それとも、ただ
私の最初の会話がまずかったのか
とにかく、空気がよどんでいるように思えた



13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 07:08:37.45 ID:6zVra42JO


翔鶴「瑞鶴は」

翔鶴「瑞鶴は…私が嫌いみたいです」

加賀「………」

あの五航戦は脳味噌まで七面鳥なのかしら
ついこの前、話したばかりだというのに
内心、怒りを覚えつつ翔鶴さんを見る

加賀「そう言われたの?」

翔鶴「…いえ」

寂しそうな様子で翔鶴さんは首を振る
言葉にされてはいないけれど、態度で示されたのかもしれない
いずれにしても…

加賀「戸惑っているのよ」

翔鶴「え?」

加賀「どう接したら良いのか」

加賀「…色々と、複雑だから」



14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 07:19:07.71 ID:6zVra42JO


五航戦を庇うわけではないけれど
そんなつもりは毛頭無いけれど
けれど、五航戦の気持ちは分からなくもない
それに目の前の翔鶴さんを慰めるには不可欠だと思った

加賀「だから、瑞鶴を嫌いにはならないであげて」

翔鶴「それは、もちろんそのつもりです…」

悲しげな姿は良く似ている
落ち込んだ姿も浮かべた笑みも彼女に良く似ている
それはそうだ。彼女とこの翔鶴さんは
全く同じで全く違う存在なのだから

加賀「…もう少し、出てきます」

加賀「好きに、していていいわ」

私がそう言うと、翔鶴さんは頷く
やはり、彼女は彼女であって彼女ではなかった



15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 08:47:09.57 ID:6zVra42JO


加賀「加賀です」

執務室の扉を叩いて名乗る

電「入っても平気なのです」

いつもの声が聞こえてから、失礼します。と、一言
扉を開けてなかに入ると
真っ正面に空席一つと書類を抱えた秘書艦の電さんが見えた

加賀「提督は外出?」

電「はい」

電「先ほど、如月型四番艦を迎えに」

加賀「また、なのね」

電「駆逐艦は盾なのです」

電「低コストで量産ができ、欠けても戦力的に影響はないのです」

冷めた口調の初期艦であり秘書艦である電さんの表情は
裏腹に、悲しさが滲み出ていた
私もまだ一番艦だけれど
ここに来てからの年月は当然ながら彼女よりも短い
つまり、この駆逐艦は精神的には私よりもずっと、大人だ

電「なので、加賀さんはあまり駆逐艦に関わらないことをおすすめするのです」

加賀「暁さんのこと?」

電「なのです」

電「明日には、二番艦になっているかもしれません」

電「同じ言葉を繰り返す」

電「その辛さは、瑞鶴さんを見ているのなら」

電「よく知っているはずなのです」



16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 08:57:31.95 ID:6zVra42JO


瑞鶴、五航戦、瑞鶴型航空…いや
今は瑞鶴型装甲空母一番艦だったか

電「瑞鶴さんはもう一人前なのです」

電「だから…」

加賀「一人前では足りないわ」

電さんの言葉に割り込み、頭を振る
彼女は少し躊躇し、
もう一度言い直そうとしていたけれど、息を呑むだけで止まった

加賀「それに、私は託されました」

加賀「だから、譲れません」

電「翔鶴さんとの相部屋も、ですか?」

加賀「…私なら、平気よ」

加賀「あの人の優しさは、人の心に残りやすい」

加賀「なのに、あの人の魂は消えやすい」

だから、私が適任だ
私は別に辛くはないから



18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 09:29:41.26 ID:6zVra42JO


電「…電よりも、加賀さんは強いのです」

加賀「いいえ、貴女の方がずっと強いわ」

加賀「貴女は数多くの入れ替わりを見て、繰り返してきた」

加賀「それも親しい駆逐艦から、慕っていた戦艦や空母まで」

加賀「それでも、ここにいられるのだから」

空母である私が駆逐艦であるこの子を。というのは
周りから見ればおかしな話かもしれないけれど

加賀「私は、貴女に憧れているわ」

電「そんなことを言われても困るのです」

照れ臭そうに頬を染めて笑う
その姿だけは、駆逐艦らしい愛らしさを感じた



19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月) 10:45:00.14 ID:6zVra42JO


電「解ったのです」

電「暁お姉ちゃんとのことに口出しはしないのです」

電「ただ、これだけはとどめておいて欲しいのです」

電「あまり強く想わないように。と」

電さんはそう言うと
駆逐艦らしからぬ表情で私を見る

電「駆逐艦が壊れただけで」

電「空母の加賀さんまで壊れるのは問題なので」

冷たい言葉、冷酷な瞳
けれど、それがこの子の本心ではないと分かっている
でも、だからこそ私は羨望の目を向ける
偽りとはいえ
そう言うことが出来る強さを、この子は持っているからだ



20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/04(月)qP5tzXl



元スレ
暁「加賀さん加賀さん」 加賀「?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467458921/
このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote

    SSをツイートする

    SSをはてブする

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

    カテゴリ別アーカイブ
    月別アーカイブ
    記事検索
    スポンサードリンク
    最新記事
    新着コメント
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    解析タグ
    ブログパーツ
    ツヴァイ料金
    スポンサードリンク

    • ライブドアブログ

    ページトップへ

    © 2011 エレファント速報:SSまとめブログ. Customize by yoshihira Powered by ライブドアブログ
    多重債務