武部沙織「ゆかりんの誕生日プレゼントは喋る戦車でどう?」
- 2016年07月21日 23:40
- SS、ガールズ&パンツァー
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沙織「重大発表があります」
みほ「え? 急にどうしたの?」
華「お見合いでもするのですか?」
沙織「夏休みも終わって、無事に大洗に戻ってこれて、なんだかんだありつつも、先日みんなで麻子の誕生日を祝ったわけだけど」
みほ「うん。少しだけ遅れちゃったけど」
華「丁度、冷泉さんの生誕祝いの日はわたくしたちも色々ありましたから」
沙織「で、祝われた麻子がこういったのよ」
麻子『そういえば、秋山さんのこと誰か、祝ったのか?』
沙織「って」
みほ「あ……」
華「優花里さんの誕生日は……。すみません、聞いたことがありませんでした……」
みほ「6月6日」
華「流石、みほさん」
みほ「戦車道の全国大会中だった所為もあって、優花里さんの誕生日は何もできてない……」
華「喜んで。いえ、むしろ参加させてほしいぐらいです」
みほ「私も」
沙織「うんうん。そういうと思ってたよ。やっぱり、持つべきものは友達だよね。彼氏も持ちたいけど」
華「では、今日にでも開催しましょうか?」
みほ「あ、それならエルヴィンさんたちも誘わない? 優花里さん、エルヴィンさんやカエサルさんとも仲がいいし」
華「でしたら、一年生のみなさんも誘ってみてはいかがでしょう。きっと楽しくなると思います」
みほ「いいね。そうしよっか」
華「いっそのこと、戦車道受講者の皆さんをお誘いするのも――」
沙織「全車停止!!」
みほ「は、はい!」
沙織「参加者を決めるのもいいけど、一番考えなきゃいけないものがあるでしょ?」
みほ「それって、プレゼント?」
沙織「そう! 誕生日会において、それは外せないじゃない?」
みほ「でも、優花里さんへのプレゼントなら戦車グッズしかないんじゃ……」
華「けれど、本人が最も喜ぶモノにしないと……」
みほ「期待を悪い意味で裏切るのもどうかな……」
沙織「私も戦車好きのゆかりんにボコのぬいぐるみとか、エンゲージリングとか、花束とか、そういうのをあげてもビミョーな顔をするのはわかってる」
みほ「ボコは良いと思うけどな」
華「花束も悪くないと思いますよ。エンゲージリングは最も困るでしょうけど」
沙織「だからっ!! ゆかりんにプレゼントするのは戦車系で決まり!!」
みほ「う、うん」
華「それでは放課後、せんしゃ倶楽部に行きましょう」
みほ「そうだね」
沙織「だからって、戦車の模型とか、履帯とかをプレゼントするのはサプライズ感に欠けちゃうと思わない?」
みほ「えっと、それじゃあ、どうすれば……」
沙織「ゆかりんの誕生日プレゼントは喋る戦車でどう?」
みほ「喋る戦車!?」
華「語尾にせんしゃーってつけるのでしょうか?」
みほ「えっと、玩具にそういうのあるのかな?」
沙織「ちがうわよぉ。玩具じゃなくて本物の戦車を喋らせるの」
みほ「そ、そんなのことできるの!?」
沙織「できるかどうかは今からやってみればいいじゃん」
みほ「そ、そうかもしれないけど……」
華「戦車は一輌でいくらぐらいするのでしょうか?」
みほ「戦車にもよるけど流石に個人で買うには高価だよね」
沙織「だったら、あそこの戦車を使えばよくない?」
みほ「あそこって、大洗の!?」
沙織「本当にプレゼントできるってわけじゃないけど、ゆかりんはきっと喜んでくれるよ」
みほ「それは喜ぶだろうけど」
華「どのようにしゃべらせるつもりなのですか?」
沙織「ふっふっふっふ。それじゃ、今から倉庫にいってみよっか」
みほ「え?」
沙織「まこー、準備はいいー?」
麻子「本当にやるのか?」
沙織「まぁまぁ、いいじゃない」
みほ「何をするんだろう……」
華「さぁ……」
沙織「あーあー。んんっ」
Ⅳ号戦車『こんにちはっ! 私、Ⅳ号戦車H型! よろしくね、優花里さん!」
みほ「……」
沙織「どう? これで、ゆかりんもいつかみたいに最高だぜーって言ってくれるでしょ!」
麻子「どう思う?」
華「残念でなりませんわ」
麻子「準備した私がいうのもなんだが、五十鈴さんと同じ気持ちだ」
沙織「なにがよぉ」
麻子「戦車にスピーカーをつけて沙織が喋るだけで、秋山さんが喜ぶと思うのか」
麻子「相手は秋山さんだ。こんなことをすれば気を遣わせてしまうだけだと思うが」
沙織「そうかなぁ」
みほ「普通でいいんじゃないかな?」
沙織「でもでもぉ。モテる女はサプライズも上手だって本に書いてあるもん」
華「それが本音なのですね」
沙織「ゆかりんを祝ってあげたいって気持ちもホントだもん!!」
麻子「とにかく沙織としてはどうしても驚かせたいわけだな」
沙織「うんっ」
麻子「では、知恵を借りるか」
沙織「麻子以上に知恵を持ってる人っているの?」
麻子「私の感性ではどうにも人を喜ばせる方法を思いつけない。だから知恵を借りる」
みほ「誰に借りるの?」
華「会長?」
麻子「戦車のことなら自動車部だ」
沙織「ほらぁ!! 私の言った通りじゃない!!」
ナカジマ「勿論、ちゃんと形にできればの話ですけどね」
みほ「一応、スピーカーを取り付けてはみたんですけど」
ホシノ「けど、これだとスピーカーから声がしているのはモロバレだ」
ツチヤ「あの秋山さんがこれに気づかないわけもないしな」
沙織「そんなぁ……」
華「やはり喋る戦車は難しいんですね」
スズキ「でも、スピーカーを見えないように設置することはできると思うよ」
華「本当ですか?」
スズキ「戦車の中を少し弄ればね」
沙織「是非、やってもらえませんか!?」
ナカジマ「けど、そういう改造をしちゃうとⅣ号戦車が試合にでれなくなっちゃう可能性もあるよな?」
ホシノ「通信傍受機を積むのはいいとしても、スピーカーを埋め込むとなればレギュレーション違反かも」
沙織「うぅ……そっかぁ……」
みほ「あ、会長。どうしたんです?」
杏「やぁやぁ、なんか倉庫に残ってる生徒がいるって聞いたから様子を見に来たんだ。そしたら、なんだか楽しそうな話が聞こえてね」
ナカジマ「見回り、ご苦労様です」
杏「これも仕事だからなぁ」
みほ(園さんや河嶋さんがやってるものだと思ってたけど……)
沙織「会長もこういう仕事してるんですね」
みほ「ちょっと」
杏「まぁね。んで、喋る戦車、作るのー?」
ナカジマ「いやぁ、できるとは思うんですけど、試合に出ることができなくなるんで」
杏「一日だけっていう条件ならどう? 今のところ練習試合の申し込みもないし」
みほ「いいんですか?」
杏「いいんじゃない?」
沙織「そんなテキトーな。でも、会長がいいっていうなら、いいよね!」
杏「責任はわたしがもつよー。だから、やっちゃえば?」
杏「私も喋る戦車が気になるしね」
ナカジマ「とりあえず喋る戦車は作る方向でいきますけど、どう喋らせますか?」
沙織「どうって、一つしかないんじゃないですか?」
ナカジマ「一言に喋ると言っても色々あると思いますよ。戦車が生きているかのように外や乗組員に向けて喋るというのは一つの表現ですからね」
麻子「他にどのようなものがある」
ナカジマ「例えば、戦車の妖精がいて、喋りかけてくるとか」
ホシノ「どういう意味?」
ナカジマ「言うなれば特定の人にしか声が聞こえないっていうほうが、驚きは増すし、信じてしまう人もいるかもしれない」
華「そのようなことができるのですか?」
ナカジマ「LRADっていうがあるんですけど、それって特定の範囲に音声を届けることができるんです。所謂、指向性音響装置ですね」
ツチヤ「パラメトリック・スピーカーってやつだ」
ナカジマ「そうそう。それを使えば秋山さんだけに聞こえる戦車の声っていうのも再現できるわけです」
みほ「あ、あぁ……」
麻子「秋山さんにだけ、か。それなら秋山さんでもスピーカーからの声とは思わないかもしれないな」
ナカジマ「確かに安くはないですけど、使ってみたかったんですよねぇ」
みほ「何に使うんですか? 自動車とは関係なさそうですけど」
ホシノ「ダカール・ラリーをしていて遭難したときに使える」
ツチヤ「あとはF1レースのときに誰にも気づかれずに指示を出せるんじゃない?」
スズキ「普通に違反だね」
杏「それはそうと、そのスピーカーは手元にあるのぉ?」
ナカジマ「それがないんですよね」
沙織「だったら、できないじゃん……」
麻子「ふりだしに戻ったな」
ナカジマ「でも、サンダース大付属が所持してるっていうのは知ってますよ。だから、私たちもそのスピーカーのことを知っていましたし」
華「なるほど」
みほ「ええと、だったら……」
杏「よーし、かりちゃおー!!」
みほ「そうなりますよね、会長だったら……」
アリサ「車輌の整備を終わらせた班から上がってよし」
「「イエース」」
アリサ「しっかりやりなさいよ」
ケイ「アーリサっ」
アリサ「なんですか、隊長?」
ケイ「さっき大洗からコールがあってね。あるイベントのために貸してほしいものがあるみたいなのよ」
アリサ「何を借りたいと言っているのですか」
ケイ「ほら、前にアリサが趣味で買ったスピーカーあるじゃない? それをどうしても借りたいんだって」
アリサ「あれを……。ダメです。あれはかなり高くて、お小遣いを貯めてようやく買えたのですから」
ケイ「えー? どうしてもダメなわけ?」
アリサ「貸して、もし壊れたらどうするんですか」
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