野崎「ファンレターをもらった」御子柴「お前これ……腐女子じゃねえか!!」
野崎・御子柴「……」
野崎「佐倉……」
佐倉「ど、どうしたの!? そんな深刻な顔して……」
野崎「ああ、実はこんなファンレターをもらったんだ」
佐倉「どれどれ……」
佐倉「……!!」
佐倉「こ、これは……反応に困るね……」
野崎「ああ、なんと言えばいいのかよく分からない……不思議な気持ちだ」
野崎「ところで御子柴……今、お前が言っていた腐女子とはなんだ?」
佐倉「えっ? ふ……なんて?」
御子柴「? なんだよ、お前のことだから知ってると思ったけど……知らねえのか」
御子柴「まぁ男が二人以上いれば大抵は湧くぜ」
佐倉「みこりん!! 言い方がひどいよ!!」
野崎「まさか俺の漫画で同性愛好きの読者がいるとは知らなかった」
野崎「しかし鈴木と尾瀬は全く絡みがないのだが……まさか好きだとはな」
御子柴「絡みなくてもあいつら妄想できるからな。 凄いぜ?」
佐倉「みこりん!! だから言い方!!」
野崎「うーん……」
佐倉「野崎くん……?」
野崎「鈴木×尾瀬か……」
野崎「……ありかもしれない」
佐倉「!!!?」
野崎「いや……実はここ最近アンケートの順位が良くなくてな」
野崎「だからここで斬新な展開をすれば打ち切りを回避できるかもしれないと思ってな」
佐倉「野崎くん……」
御子柴「腐女子に媚びるってのは……俺的にはあまりいいイメージじゃねえな」
野崎「やはり……やめた方がいいだろうか」
佐倉「け、剣さんと相談したらどうかな?」
野崎「……ああ、そうしよう」
御子柴(ぜってーオッケーもらえねぇと思うけどな)
野崎「夢野です。 剣さん、次の展開なんですけど」
宮前『はい』
野崎「鈴木がうっかり転んで尾瀬とキスしちゃうという展開で一話使おうと思います」
野崎「場合によっては二人のうちどっちかが目覚めるという展開も考えてます」
宮前『は?』
野崎「い、いや……実は腐女子の読者からファンレターをもらいまして……鈴木×尾瀬な展開が見たいと……」
宮前『……夢野さん、掲載誌は少女誌ですよ?』
宮前『やるんだったらそういう雑誌でお願いします』
野崎「す、すいません……」
野崎(剣さんに嫌われてしまっただろうか……)
宮前(あの人は何考えてるんだ……)
前野「みっやまっえくーん!! それ夢野先生の原稿?」
宮前「はい、ボツのやつですけど」
前野「……へー。 男同士がキスかぁ~」
宮前「……」
前野「面白そうな展開だね!!」
宮前「!?」
宮前「いや……『恋しよっ』は悪魔でマミコと鈴木の物語なんで……」
前野「でもさ!! 『恋しよっ』って今、打ち切り候補なんでしょ?」
宮前「!!」
前野「だったらこれぐらいぶっ飛んだ方が僕はいいと思うよ!!」
宮前「……」
前野「……あっ!! あとはタヌキを登場させるとか!!」
宮前「お前が担当の漫画だけでやれ」
野崎「は、はい……なんでしょう」
宮前『あれでいいと思います』
野崎「!!」
宮前『この際腐女子に思いっきり媚びちゃいましょう』
宮前『そうでもしないと『恋しよっ』は続かないかもしれませんから』
野崎「剣さん……」
野崎(まさか剣さんがこんな事を言ってくれるなんて……ここは期待に応えるしかない!!)
野崎「……ありがとうございます。 頑張ります!!」
野崎「ああ。 剣さん曰く、露骨に狙ってもいいそうだ」
御子柴「マジかよ……」
野崎「というわけで早速だが御子柴……」
御子柴「なんだよ?」
野崎「この男二人がくっついてるシーンに花を添えてくれ」
御子柴「お、おう……」
野崎「佐倉はこのシーンにベタを」
佐倉「わ、分かった……」
御子柴「……」スラスラ
佐倉「……」ベタベタ
御子柴(なんだこの気持ち……)
佐倉(いつもと同じ作業をしてる筈なのに……)
御子柴(男同士のシーンってだけで物凄い罪悪感があるな……)
佐倉(漫画の方向性が変わっただけで違う仕事をしてるみたい……)
野崎「アンケートの結果が出たぞ」
佐倉「ど、どうだったの!?」
野崎「結果は……」
御子柴「結果は……?」
野崎「一位だ」
御子柴「!!!!」
佐倉「やったね野崎くん!」
野崎「ああ、正直驚いてる」
御子柴「へっ……感謝しろよ。 これも二人の関係を美しく彩った俺の花のお陰だろ?」
佐倉「これで打ち切り回避だね!!」
野崎「ああ」
御子柴「無視すんなよ!!」
御子柴「しっかし世の中分かんねえな……あんなんで人気が回復するなんてよ」
佐倉「……」
御子柴「……佐倉?」
佐倉「アンケート一位って……凄いことだよね?」
御子柴「? まぁな……」
佐倉「凄いことのはずなのに……私……」
佐倉「……何故かあまり嬉しくないの」
御子柴「??」
野崎「結局尾瀬がホモ化してしまった……」
野崎「しかしこれも『恋しよっ』存続の為……許してくれ」
野崎「……」
野崎「ここは……資料と題してBLの本を買うしかないな」
野崎「……嫌だけど」
野崎「御子柴、このギャルゲーはホモENDはないのか?」
御子柴「ねーよ!!」
堀「おい野崎、なんだこの台本。 ホモが出てきてるじゃねえか」
野崎「す、すいません……」
若松(野崎先輩がまたマネージャーとして来てくれたけど……)
野崎「そこ!! もっとくっつけ!! 密着しろ!!」
若松(くっつくことに拘ってるのはなんでなんだろう……)
野崎「手を繋げ!!」
若松「!!?」
佐倉「ほ、本当だ!……よ、よかったね……」
野崎「……佐倉? なんだが元気がないように見えるが……何かあったのか?」
佐倉「な、何もないよ!! 気にしないで!!」
野崎「……そうなのか? だったらいいんだが……」
佐倉「……」
佐倉「野崎くん……?」
野崎「困惑している読者もいるな……『内容が今までと違って変な感じです』『鈴木が全然恋してない』……」
佐倉「そ、そりゃそうだよね……」
野崎「うーむ……どうやって読者を腐らせるか」
佐倉「!!!?」
佐倉「う、うーんと……マミコと鈴木くんが……どこかに出かける話とか?」
野崎「うーん……どうやって鈴木とほかの男を絡ませるか」
佐倉「!?」
野崎「いや……腐要素を少しでも入れとかないといけないと思ってな」
野崎「うーん……マミコには申し訳ないが……マミコは邪魔だなぁ」
佐倉「……」
野崎「……佐倉?」
佐倉「……違うよ」
野崎「……?」
佐倉「私の知ってる『恋しよっ』は……こんなんじゃないよ……」
佐倉「『恋しよっ』は鈴木くんとマミコの恋物語でしょ?」
佐倉「なのにBLBLって……まるで違う漫画を描いてるみたいで……」
佐倉「こんな漫画……『恋しよっ』なんて言えないよ!!」
野崎「!!!」
佐倉「私……今までベタをしてる時……いつも楽しかったけど……」
佐倉「今は……全然楽しくないよ……」
野崎「……」
野崎「?」
佐倉「ご、ごめん野崎くん!! 私、カッとなってつい……」
野崎「いや……大丈夫だ、気にしてない」
佐倉「わ、私……もう帰るね。 夜遅いし……」
野崎「ああ……気をつけて」
佐倉「うん……ありがとう」
バタン!!
野崎「……」
野崎「……」
野崎(……佐倉の言う通りだ)
野崎(俺は漫画の打ち切りを回避することだけを考えてた)
野崎(一番大切なのは……自分はこの漫画で何を伝えたいか、何を描きたいかなんだ)
野崎(俺が描きたいのは男性同士の恋愛なんかじゃない……)
野崎(恋の素晴らしさを……そして鈴木とマミコの物語を……俺は描きたい)
野崎「……」
コメント一覧
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- 2016年07月22日 22:15
- 面白かったわw
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- 2016年07月22日 22:40
- 相方が野崎の弟になってしまったみこりんにとっては
あながち他人事でもない、実際それっぽい公式グッズも出てるしな
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