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交通事故が起きても人類で唯一生き伸びることができる人物「Graham」 - GIGAZINE

交通事故が起きても人類で唯一生き伸びることができる人物「Graham」


移動や輸送に便利な自動車でも、いざ事故が起こってしまうと怪我をしてしまったり、場合によっては命を落としてしまうこともあります。人間の体は自動車事故に耐えるようには作られていないのがその理由のひとつではあるのですが、それでは実際に人間が自動車事故に耐えられるように進化したら?というテーマで生みだされたのが、架空の人物「Graham(グラハム)」です。

Meet Graham
http://www.meetgraham.com.au/

Road safety: confronting sculpture shows human vulnerability to crashes | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2016/jul/21/road-safety-confronting-sculpture-shows-human-vulnerability-to-crashes

これがGrahamの全貌。下半身は比較的ヒトに近くなっていますが、頭部や首、そして上半身の胴回りなどはすこしギョッとしてしまうほど特徴的な見た目になっています。


頭部を横から見ると、首がまったくなく、鼻、耳たぶもなくなっており、額が大きく突きだしています。これは、事故の際に最初に激突して怪我をしてしまう部分が退化して、頭全体を守るように進化したもの。


さらに頭蓋骨の断面を見ると、間に空洞を挟んだ二重構造になっています。これは事故による衝撃を吸収するための構造で、よく見ると脳と頭蓋骨の間にも空間があり、事故の際に生じる大きな衝撃を吸収して脳挫傷などを発生させないようになっている模様。


顔を斜め前から見ると、顔の主なパーツが凹みに入っているような状態になっているのがわかります。これももちろん、事故による衝撃から大事なパーツを守るための「進化」。


皮膚の下には脂肪がびっしり。脂肪がクッションの役割を果たすことで、エネルギーを吸収することが可能。


なかなか衝撃的な後頭部の様子。しかし、その中身はさらに衝撃的。


レントゲンで見るとこんな感じ。首の周りを肋骨のような骨がぐるっと取り囲んでおり、そのまま頭蓋骨をサポートするような構造になっています。これは、事故の際に力が集中しがちな首をそもそもなくしてしまうことで、怪我のリスクをなくし、神経へのダメージを抑えるため。


胸の周りは、乳房のような凸凹で覆われていて少しグロテスク。


この部分にはなんと空気が入るようになっており、エアバッグと同じ働きをすることで、内蔵への衝撃を吸収するとのこと。


事故の際、怪我をする確率が高い部位のひとつが「膝」です。その理由のひとつは、膝の曲がる角度が1方向しかなく、無理な力がかかると折れてしまうため。


そのため、Grahamは膝の関節があらゆる方向に曲がるように進化。こうなることで、歩行時に自動車に衝突されても衝撃を効率よく吸収し、怪我をせずに済むようになるとのこと。


足のスネから下をよく見ると、ふくらはぎの部分に妙なコブがあるのですが……


Grahamはなんとここに新たな関節を持つように進化しています。この関節を大きな筋肉で動かすことで、「てこの原理」を応用して大きな力を生みだし、跳躍力を上げて事故を避けるようになるそうです。また、いわゆる「弁慶の泣き所」をヒットしても後ろ向きに関節が曲がるため、骨折のリスクも軽減されるようです。


また、Grahamは皮膚そのものも強化タイプに進化。見た目はあまり変わりありませんが……


内部の構造を大きく変化させることで、皮膚組織を強くして外傷を受けにくくなっています。


この「Graham」は、オーストラリア・メルボルン大学の外科医や、事故調査官、アーティストが共同で作成した作品で、ヴィクトリア州の交通安全キャンペーン「Towards Zero」の一環として製作されたもの。「人間が事故に耐えられようにになったら」という逆説的なテーマを設けることで、事故に対する人間の弱さを明るみにして、安全な交通を心がけることの大切さを訴えかけることを目的にしているそうです。設計は科学的な根拠のあるものになっており、以下のパンフレットでも解説されています。

Meet-Graham-Educational-Resources.pdf


なお、Grahamは実際のオブジェも製作されており、ヴィクトリア州の施設などで目にすることができるとのこと。

Visit Graham
http://www.meetgraham.com.au/visit-graham

Grahamを製作する意義や、実際の製作風景などが以下のムービーで紹介されています。

TAC's interactive sculpture by artist Patricia Piccinini – Meet Graham, TAC 2016 - YouTube

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in サイエンス,  生き物,  動画,  デザイン, Posted by logx_tm