イギリス、ロンドンのフォトグラファーTim Flach(ティム・フラック)さん(1958〜)の写真作品をご紹介します。以前にTim Flachさんの美しい馬の姿を捉えら写真を紹介したことがありますが、こちらは馬ではなく、鶏を撮影した写真となっています。
ただ普通の鶏を撮影したわけではなく、羽毛が全てない状態の鶏が撮影されています。クリスマス時期にスーパーマーケットの食肉売り場に丸焼き用に販売される首のない鶏が陳列されていますが、それを想起させるビジュアルインパクトの強い写真となっています。
撮影されたのは、手によって毛をむしられた鶏ではなく、羽がない自然界の突然変異の遺伝子と短期間で急速に成長させる狙いで作られた品種であるブロイラーの種を掛け合わせて誕生した鶏です。
この鶏自体がとても画期的な誕生で、羽のない分、栄養が肉部分に行き渡り、また高温に耐性があることで、気温の高い地域でも飼育が可能です。
普通の鶏よりも肉のボリュームが多く、人工的に生まれたこの鶏の姿は我々に何を伝えようとしているのでしょうか。
Tim Flachさんの撮影する動物たちのポートレイトは、他の動物たちを捉えたポートレイト作品と一線を画しており、動物の遺伝学、外来種問題、繁殖、各地地域の生態系などの課題にコミットする作品を発表し、動物たちが置かれている問題を社会に提起する作風が特徴的です。
見た目のインパクトや面白さ、滑稽さなど表面的な部分のビジュアルの強さはありますが、裏打ちされた、写真作品の根拠については深く考えさせられるものがあります。
これまでにナショナルジオグラフィック、ニューヨーク・タイムズ・マガジン、サンデータイムズ、シュテルン誌、ゴアテックスやエルメスなどになどのクライアントに写真を提供し、2007年にはカンヌ広告祭で金賞を受賞、写真界のアカデミー賞と言われるインターナショナル・フォトグラフィー・アワード(IPA)で多数受賞しており、国際舞台で活躍する有名なフォトグラファーでもあります。