【コラム】 「俺を好きなのはお前だけかよ」3巻発売記念!駱駝先生インタビュー
ネタバレ:この記事には、『俺を好きなのはお前だけかよ』1巻〜3巻までのネタバレが含まれます。最新3巻までお読みいただいた後に御覧ください。
■ジョーロ母の元ネタはダウンタウンの有名コント!?
───前回のインタビューで募集していた読書メーターとのコラボ「愛のムチレビュー企画」はいかがでしたか?
駱駝:皆さん思った以上に優しくて、ヤバい感想が来るのかなと覚悟していたんですが、全体としてはフワッとした暖かいものが多かったですね。印象的だったのはファンレターを送ってくれた方が、読書メーターにも感想を書いてくれていたようで、ファンレター内に「僕のが採用されなかった」っておっしゃってたことですかね(笑)。他には2巻の感想で、ひとりだけA子さん周りの話を少し当てている方とか。
三木一馬(担当編集。以下、三木):ありがたいことに読書メーターの方が良い人ばかりで、心温かいコメントが揃いました。本を買って読むってことは、お金を払っているんだから楽しまなきゃ損じゃないですか。そういう前向きな方々から暖かいコメントをお寄せいただいて、この企画をやって良かったと思いました。
───その後、2巻も発売されましたね
駱駝:2巻の感想では「あっさり仲直りしすぎじゃない?」という方もいらっしゃいました。あえてそうさせてもらったので、とても嬉しい感想でした。
―――読者のヒロイン人気の傾向はありますか?
駱駝:個人的に推したいヒロインはサンちゃんなんですが(笑) パンジーが一番人気ではないかと。2巻の感想ではコスモスもチラチラ出てきたり。あとはジョーロのお母さんが反響が予想以上に多くて(笑)。
三木:最初は「某日曜18時からの国民的アニメに出てくる家庭的なお母さんのようなビジュアルにしましょう」ってところから始まったんです。参考資料として、駱駝さんと一緒にダウンタウンさんの「オカンとマー君」のコントを何時間も見直して完成させました(笑)。
───あれが原点ですか!(笑)
駱駝:あとは『花より男子』の道明寺がそこにモデルとして加わります。雨に濡れるパーマがストレートになる部分が(笑)。
―――ジョーロはお母さんの素顔をずっと知らないままだったのですか?
駱駝:きっとお父さんが風呂にも一緒に入れず、海にもプールにも連れて行かず、化粧も落とさせずに、化粧を落としてる時はたまたま顔パックをつけていたんだと思いますね。
やっぱり家族って十何年間一緒に住んでいても知らない一面ってあるので、そういう一面を今回知ったんですね!
■パンジーは進むにつれどんどん弱っていくヒロイン!?
―――パンジーが1巻から3巻までの間に、いろんな面が明らかになっていきましたね
駱駝:1巻のパンジーはラブコメのヒロインを意識して書いていて、裏表をなくして真っ直ぐに主人公に感情をぶつけるタイプです。そんな子が3巻では、汚い部分を出して人間味を出してもらったので、個人的には劣化させているイメージですね。某脳噛探偵さんを意識して、ドンドン弱くなっていくような感じ(笑)。ちなみにジョーロもこれまで鋼のようなメンタルをしていたので 今回は弱い部分を出していこうというのが3巻です。
―――パンジーがいつも落ち込んでいるジョーロに追い打ちをかけていて、嫌われるのがわかっていても本当のことを指摘してしまう。パンジーは頭が良いから気づいていると思うのに、なぜ言ってしまうのですか?
駱駝:気づいているからこそ、真っ直ぐにどんなことでも言う。パンジーはライオンタイプなので、子供は谷に落とすのです(笑)。
―――でも、自分を好きになってほしいんですよね
駱駝:もちろんです。しかし、ポイント稼ぎはしないですし、嫌われる可能性があることも平然とやります。
―――3巻の執筆はいかがでしたか?
駱駝:やりたいことが多すぎて、まとめるのが大変でした。そこは苦労しましたし、面白かったところです。3巻はひまわりを活躍させるのが個人的な一番のテーマだったので、どう無双させようかなっていう事を考えてました。
───2巻のコスモスみたいな役割はできないと
駱駝:1巻と2巻って謎解きみたいなシーンがあったんですけど、ひまわりに主軸を当てるとなると、彼女にはそんなことができないから、最後は体を張ってもらったんです。だってひまわりが謎解きしたらおかしいじゃないですか(笑)。
───そういう賢い子じゃないですよね(笑)。考えるより先に行動するタイプですから
駱駝:あと3巻でもう一つやりたかったのが、ジョーロとパンジーを喧嘩させたかったんです。ジョーロはパンジーの外見は好きだけど、中身は中身で見るから、例えどんなに外見がよくても本音で喧嘩はする、というのを入れたかったです。まぁ、最終的には本音を覆い隠しましたが(笑)。
───ツバキの登場も大きな事件でした
駱駝:そうですね。ツバキの話ももちろんメインの一つで、ツバキ・パンジー・ひまわり・A子さんって色々入った結果ボリューミーになってページ数が増えたというところですね。
■洋木茅春・ツバキ登場!
―――ツバキはどういった子なんでしょうか?
駱駝:ツバキは「胸以外は最強」で、スペックも高いんですよ。気が利いて料理もできて優しくて、頭も回って、ジョーロにとって天使のような 、先ほどの某日曜夕方アニメのおじいちゃんポジションです。
全員:えっ!?
駱駝:あれ?わかりにくいですか。「いつでも味方でいてくれる存在」ってことです(笑)。ちなみに腹黒のツバキも少し書いたんですが、それはまるごとボツにして、ツバキは天使へと生まれ変わりました。
―――「ボクっ子」「初体験その○」が口癖など、ユニークな子ですよね
駱駝:そこは個性が豊かじゃないとヒロイン3人に埋もれてしまうので、パンジー・コスモス・ひまわりに負けないように意識しました。こういう小ネタは打ち合わせで話してると舞い降りてきます。
―――ブリキ先生がデザインされた、ツバキのデザインについてはいかがですか?
駱駝:毎度のことですが、大満足です!とても可愛くて男前な感じが素晴らしい!
三木:ところで、カバー裏にあるツバキのワンポイントイラストの意味はどういう……?
駱駝:「串、千本飲ます」です。僕が送ったキャラクター設定資料にツバキの口癖として書いたんですが、それをブリキさんが使ってくれたんですね。でもまだ本編では使われていません(笑)。
───ブリキ先生のイラストで触発されることってありますか?
駱駝:はい、例えばひまわりの好物クリームパンは、一巻でひまわりがパンを食べているイラストがあったので、それに感化されて作った設定です。偶数巻はブリキ神に降臨していただこうと目論んでおりますので、次は4巻にご期待ください!
―――3巻では、モブを自認していたジョーロがついに主人公の意識に目覚めました
駱駝:そういう、1巻2巻3巻でジョーロの変化に意識してました。1巻では、終盤まであいつガチモブなんですよ。
───擬態してました(笑)
駱駝:ガチモブから最後だけカッコよくなって、みんなに主人公として認識してもらえる話が1巻。主人公になっているんだけど、本人が気づいていない話が2巻。なので、3巻は主人公として自覚を持って頑張っていこうという考えを持つ話にしようと意識しました。これは、ラブコメ(?)であると同時に、ジョーロの成長物語ですから。
―――ジョーロは読者にとって相当うらやましい立場にいますが、こういうラブコメにしようと最初から考えられていましたか?
駱駝:はい、考えていました。読者の方から「なんでモテるんだろう?」と思われないように意識して、かっこ悪いけどかっこいい奴にしようと物語を展開させているつもりです。
───ジョーロが主人公を自覚して、これで第一部が終わったという感じですか? 「この物語はいったん終わり」という表現もありました
駱駝:あのネタは、どうしても入れたかっただけです(笑)。まだ第一部は終わってません。『ジョジョ』で例えると、ジョースター家が燃えた辺りの中盤です。
タイトルも、少なくとも第一部が終わるまでは変更しないです。それまではタイトルと整合性を取りつつ続けていきます。その後は……変わるかもしれないですね(笑)。
■A子はビッチではなく ビッチの皮をかぶった純情乙女です(笑)
―――3巻はアルバイトの話がでてきますが、接客などのご経験は?
駱駝:大学時代はコンビニでバイトしてました。後は中華料理屋で働いていたり、派遣会社で色々と工場の荷運びなどをしていましたんですが、今回のジョーロのバイトで、実際の経験が活きたシーンは一つもないです(笑)。居酒屋メニューの省略の仕方などは、居酒屋で働いてる人にリサーチしました。
───表立っては描かなかった裏テーマ的な部分は?
駱駝:『努力はたまに報われる』ですかね。世の中厳しいので、毎度毎度報われるわけではないですが、折角の物語ですし、報われるところも報われないところも見てもらいたい!みたいな。あとは、強いて言えばA子さんかな。
―――カリスマA子はモブだと思っていたのですが、最終的に花のあだ名がついてヒロイン候補となったのに驚きました
駱駝:A子さんは2巻の時からヒロインにしようと考えていました。 ただ名前で悩んでいて、あだ名もA関連の花にしようかなとか、色々と話し合った結果、名前は「あ」行にしつつもあだ名はちょっと変えました。
―――ジョーロに試練を与える立場でしたが、A子みたいな子を魅力的に描くのは作家として大変ではないでしょうか?
駱駝:いえ、A子は私が大好きなので大丈夫です。当初の原稿だと、私の愛が強すぎてむしろ削られてしまったくらいなので(笑)。
―――天然系ビッチ、清楚系ビッチ、A子……非常にビッチが多い作品ですが そのあたりはいかがですか?
駱駝:ぶっ飛んだヒロインを書くのは楽しいので、ビチビチしい女の子を書くのも楽しいなと。A子はビッチではなくビッチの皮をかぶった純情乙女です(笑)。
───A子は、読者が驚いてくれればいいなっていう狙いはあったんですか?
駱駝:やっぱりバレる人にはバレると思っているんですよ。気づく人は絶対気づく。なので、気づいている人は「やっぱりそうだったな」って楽しんでもらって、気づかない人は「えー!? そうだったの」って驚いてもらおうという両取り狙いです、はい。
■とことんまで通常のラブコメでできないことを やるというコンセプト
───新人賞で出した時には1巻完結のつもりで続きは全く考えてなかったって事はありますか?
駱駝:1巻を書いていた時は1巻完結のつもりだったんで、「おっ!続くのこれ!?」みたいな(笑)。でも一応、続いた時用の話は用意してたので。まあ今の2巻とはまるで違う話でしたが。
───3巻まで来てみて、「あ、こいつこんなキャラだったんだ」みたいに、作者の予想を上回る存在感のキャラはいますか?
駱駝:私の予想を一番超えているのはコスモスなんですよ。いろんなポンコツな一面が出てくるというか。掘り下げていくと色々出てきて、2巻ではサムライになったり。
ほんとにコスモスが色々とやるもんだから、「こいつ、もうなんでもいけんだろ」みたいな頼りになるキャラクターになりました。
―――最後に皆さんへのメッセージをお願いいたします
三木:この話はいわゆる普段ラブコメを好きで読んでいる方々をターゲットに、とことんまで通常のラブコメでできないことをやるというコンセプトで作られてます。ヒロインたちがジョーロではなく別の人を好きなところから1巻はスタートしたり、2巻では裏で糸を引いている腹黒な子が真のヒロインだったり。お約束事を率先し破っていくタイトルです。
―――読者を驚かせたいのでしょうか?
三木:どちらかというと、全てのキャラクターは、「人間らしさ」……つまり別の一面があるということを伝えたいといいますか。キャラクターはいつ何時も同じような記号でないといけないのですが、それを率先して壊しにいっています。人間ならば二面性があって当然だろうと。ですがラブコメは画一的な様式美が大事で、本当はその二面性はいらないのですが、むしろだからやってみようと思っています。
駱駝:『ポケモンGo』の休憩に適した本なので、ポケストップがあるところでゆっくり休みながら本を読んで、たまにブルッと震えてポケモンを捕まえながら読めます(笑)。
三木:別にその本は『俺好き』じゃなくてもいいのでは……?
駱駝:流行りモノには乗っかるスタイルなので。
三木:じゃあ僕は、カイロスとスティンガー君も似てますって言っておきます(笑)。
駱駝:それと、3巻でようやく地盤固めが終わったので、4巻ではいよいよ真の戦い───『ジョジョ』第一部に例えると、ようやくディオとの闘いが始まるところです。普通のラブコメではできないことをやるので、バトルもこの際、アリなのではないかと。
三木:次の巻からいきなりバトルものになったら驚くわ!
───(笑) ありがとうございました
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イラスト:ブリキ氏のホームページ「ブリキの砦」
ブリキ (イラストレーター) - Wikipedia
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