どうもリックェです。今日のテーマは量子論です。
いきなりそんな話するとブラウザ閉じられかねないのでネギトロの話から。
ネギトロの話
科学関連の話っておもしろいんですけど苦手な人苦手じゃないですか。たとえるなら おいしいけど骨の多い魚 なんですよね。食べにくい。
科学関連のブログや記事を読み漁って気がついたんですが、
これらを書いてる人は、この骨の多い魚 を読者に向けて調理してくれています。調理法はいくつかあります。
- ムニエル
アニメやオカルトなどの創作物の小麦粉・バターをつけたので読みやすい(反面、創作物についての内容が多すぎる場合もある)- 刺し身
ていねいに骨をとった素材の味。おいしいところだけ(純粋な理解を助け、科学の読み物になってる)- 踊り食い
読み手の消化力が必要。論文に相当
この話をしたのは、この記事の調理法を述べるためです。
この記事は ネギトロ でご提供しようと思います。
そりゃあ、調理方法は、刺し身にあこがれるんですが、刺し身をさばくほどの理解とテクがないのと僕の興味は理論や技術より科学を通してみる「世界」の方だからです。
骨に近い部分をこそげとると「世界のエキス」がつまってます。そして雑談のネギを添えて提供するスタイルです。
小せえヤツはブレがち
前置き長くなりました。
今回、話をするのは微細構造定数についてです。
さっそくですが微細構造定数とはなにか?
微細構造はすっげー小さい奴の構造って意味です。
すっげー小せえ奴はブレがちで、その位置が特定できない。
その特定できなさ加減に関係する定数です。
ブレがちってなんだよって話になるので補足します。
次の原子力マークを見てください。
よく見る図案ですよね。
原子構造の図です。原子は原子核と電子からできていて、電子は原子核の周りをブンブンとサテライツみたいに飛び回ってます。その電子の軌道を図案化したやつです。
でも、この図は時代遅れなんですよ。最近の量子力学の電子の軌道の図案はもっぱらこんな感じ。
全然、ブンサテ してない。
軌道って、この時刻にここにいるっていう位置をつないだ線じゃないですか。でも電子軌道って実はブレブレなので線が引けません。この時刻にこのへんにいるかもっていう曖昧さをモヤモヤの濃淡でしめしています。こんなんもはや軌道ではないので電子雲なんて呼んだりしています。
このブレブレは、実は電子にかぎらず陽子も中性子も、オレやお前を構成している素粒子も小せえヤツって基本ブレてる。ていうかブレは性分。
不確定性原理って言葉聞いたことありますよね?
イルでドープな相当イカした言葉だと思ってる人いるかもですが、言い換えるとコレ。めちゃめちゃブレてる。
怒ってもしょうがないよ。それより「大きな心でブレごと愛しましょう」ってムーブメントがあったのよ。そのラブのテクニックが微細構造定数です。
物理学者の「蠱毒」微細構造定数
抽象的な説明に逃げたので、今度は具体的なアプローチ行きましょう。
微細構造定数は定数。ある具体的な数値があります。それが
0.00729735256。分数に直すとだいたい 1/137 。
余談ですが、この137って数字に魅力を感じて、物理学者はロッカーやトランクのカギ全部このナンバーにしてるとうわさなので、お知り合いに物理学者がいましたら、ぜひお試しください。
さて、この1/137どこから来たのかっていうと、
この式です。式とか出してゴメンなさい。
まじめに計算すると 1/137 になります。
それはさておき、この式を見てなにかに似てると気が付きませんか……?
そうです。
こ ど く
蠱毒
ですね。急だな。
蠱毒はマンガとかでお馴染みなんで説明不要と思いますが、ひとつのツボにたくさん毒虫を放り込んで殺しあわせ、最後に生き残った一匹を呪術に使うアレです。
微細構造定数は、いわば物理学者が作った「蠱毒」のツボです。
物理学者の「蠱毒」
いくつかのなにかありそうな定数を式の中に放り込んで、計算する。
物理学者の蠱毒の毒虫は「定数」です。
定数は世界ができたときには決まっていた数値で、今までもこれからもその決まった値のままです。きっとね。
式に入ってるアルファベットとかアルファベットみたいのは全部定数です。それも「なにかありそうな定数」です。
で、全部の定数について説明するとイヤになっちゃうんで、ひとつ例をあげると c ってやつが「光の速度」です。
んで、ごぞんじ光より速いものはなくて、その速さは 1秒で地球を7周半 なんですよね。めちゃくちゃ速い。でも「なにかありそう」なのは次です。
7周半と8周半は大差ない
光の速度って「1秒で地球8周半」とかでもよくないですか?
飛び抜けて世界で一番速いなら、別の数値でも物理法則の大筋は変わらないでしょう。でもなぜか「1秒で地球7周半」と決まっている。理由はわからない。でも世界ができた頃からずっとそう。これはなにかある。
ちなみに微細構造定数式の他の定数も ありそうな定数 ばかり。平和な社会では生きられない そんなやつらを一箇所に集めたのが微細構造定数なのです。
一応他の定数も乗っけておきます。興味あれば
ありそうな奴ら集めたら無次元になった
ワケありの奴らをひとっところに集めたのは、それなりのワケがあるんですがさして広がる話じゃないんで端折ります。
まあ、とにかく集めたんです。とにかく。でも、集めてみたら大変だった。
微細構造定数には単位がない。
カッコいい言い方すると次元がない。無次元量なんです。これが超ヤバイ。
そもそも単位と次元って?
「秒速5センチメートル」っていうときの「秒速◯センチメートル」の部分が単位。秒とセンチメートルが時間と距離なので「時間と長さの次元」を持つと表現します。
微細構造定数はなんで単位がないの?
物理計算中に、次元が打ち消し合うことは日常茶飯事ですが、微細構造定数はそれの究極系。全ての次元が消えさった特殊ケース。無。そしてわたしも消えよう永遠に!
次元が打ち消し合って消えるってどういうことなの?
たとえば「秒速5cmで動くエクスデス は10秒で何cm動くか?」式はこうなります。
5cm/s × 10s = 50cm。答え50cm。
cm/sは理系風にかいた秒速◯センチ、sは秒です。
単位だけに注目すると
(cm/s) × (s) = (cm)
ふつうの数と同じで、単位も通分で同じ次元があれば消せます。つまり答えのcmは、sが打ち消し合ってcmだけ残ってると考えてもいいわけです(単位換算っていいます)
わかりにくい……よね?
エクスデスのくだりもいらない……よね?
ここで、さっきの蠱毒の話です。
わけあり定数を集めてひとつにしたら、殺し合いの果て、次元打ち消し合って全滅した。これが物理学者の「蠱毒」、微細構造定数です。
単位がないってどうヤバイの?
物理はどういう学問かというと、文字通り、
もののことわり
物 理
を探求する学問で、端的に言うと物の性質のことです。
物の性質は長さや重さといった具体的な次元(種類)があって、メートルとかキログラムみたいに単位がついています。
つまり、単位を見ればなんの性質について話してるかわかる。
ところが微細構造定数は単位がない量。
単位がない量っていうのは純粋な数です。もはや 現実の物体の性質 の話から離れてしまっている。抽象的な概念なんです。
まとめ
まとめましょう。
物理学者の研究対象は実体ある物の性質!
これを研究しまくれば、世界の構造の秘密に到達できる。…そんな風に考えていたのに、実体が消えてしまった。
実体なき概念が 実体あるこの世界を作っている!
かもしれないわけです。
最後に喩え話をして終えます。
「世界」って書いてある段ボール箱があって、
開けるにはガムテをはがさなくちゃいけない。
……と、思い込んでいてガムテ部分を探してたんですが、実は段ボールってガムテなしでも閉じられるじゃないですか。こんな風に。
「ハネ」の部分をそれぞれとなりに噛ませればいい。
だから最初からガムテなんかなかったのかもしれない。
微細構造定数はそれを示しました。
さらにいうと、この段ボール箱、6面全部ハネを噛ませてあるんじゃないかってことです。
そんな箱、どこから開けようとしてもあけられないかもしれない。
それを開けようとするのが物理学者という人達なのだ!最高にロック!