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1968年1月半ば、イタリアのシチリア島西部にて発生したM5.5のベリーズ地震は、およそ400名の死者と1000名近くの負傷者を出した局地的な地震だった。
なかでも最も被害が大きかったジベッリーナ町の住民は、壊滅状態になった町でプレハブ住宅でおよそ10年近く生活したのち、復興が望めない町から離れた。
それからしばらくし、ジベッリーナは生まれ変った。かつて住人が暮らしていた町は、アルベルト・ブッリにより厚い灰白色のコンクリートで覆われ、巨大なランドアートとなったのだ。
これは、震災で命を落とした人々の追悼碑でもあり、震災を忘れないようにするための意味合いが込められている。廃墟となった町並みを丸ごと封じ込めた大胆なモニュメントはいくつかの物議をかもしだしているものの、その巨大なコンクリートの迷宮は、見る者を圧倒する迫力を秘めている。
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イタリアのシチリア島にある州都パレルモから約70km西に、丘の斜面を抱くように広がる巨大なコンクリートの迷宮がある。この厚い板状のコンクリートに入った亀裂のような道は、かつてこの場所に存在した昔のジベッリーナの町道と正確に一致している。
ベリーズ地震により、島内で被災した町の数は10ヶ所を超えた。なかでも最も揺れが強く局地的に壊滅的な被害を受けたのが、このジベッリーナだった。
震災後のジベッリーナの様子
image credit:www.webalice.it
復興活動は進まず、震災後も家を失った何千人もの人々が、がれきと化した我が家のそばの仮設プレハブで暮らしていた。その生活は10年ほど続いたが、結局荒廃した町の復興は断念され、行き場を失ったジベッリーナの住民の町は新しい土地で再建されることになった。
新たな町が建てられたのは旧ジベッリーナから約20kmに離れたベリーズの谷に位置する不毛な土地だったが、イタリア屈指の建築家や芸術家の手により、豪華な庭園、大きな広場、ポストモダンな建物、広い道路、そして巨大な現代彫刻などで溢れていった。
この町の設計は、前進や進歩の理想に向かうことをテーマに、ジベッリーナを近代的な開放型美術館にするプロジェクトに沿って行われたものだったのだ。
それからしばらくたった1983年、芸術の町となったジベッリーナの町長は国際的にも有名なアーティスト、アルベルト・ブッリを町に招待した。
その際に廃墟と化した旧ジベッリーナを案内されたブッリは、この被災地に震災で命を落とした人々の追悼碑の役割を果たすと同時に、古い町と新しい町をつなぐ芸術的な絆を表す巨大なモニュメントを造ることを思いつき、その作業が進められることになった。
旧ジベッリーナの町を保存したコンクリートの迷宮
image credit:Grand Voyage Italy
Cretto di Burri(コンクリートの迷宮)と名付けられたそのモニュメントは、29エーカー(およそ3万500坪。東京ドーム2.5個分)あった旧ジベッリーナの町全域を、厚さおよそ1.5mのコンクリートで覆ったものだ。制作にあたっては、倒木や崩れた建物、壊れた家具などを含むがれきを覆うため、廃墟の町には大量のコンクリートが流し込まれた。こうしてかつてのジベッリーナの町並みは保存され、町を区切っていた通りが残った。
image credit:Grand Voyage Italy
だが、この創作物はある種の物議をかもしだすことになる。ブッリが作り上げたコンクリートの迷宮は芸術への畏敬の念を感じさせるアートであったが、旧市街の史跡を抹消する手段に動揺する人々もいたのだ。
この一連の出来事に関しては、「旧ジベッリーナの町で生まれた人々の子孫にとって、そのルーツを象徴する記念碑は巨大なコンクリートの塊のみだ」という批判のみならず新しいジベッリーナの町を「醜い開拓地」と評する意見もある。
image credit:maurizio mucciola/Flickr
また、ある旅行専門サイトでは、同じような被害に遭いながらも被災地の痕跡を残した近隣の町を引き合いに出し、そちらの町長は芸術家を気取るようなタイプではなかったため、住民たちのかつての生活を切り離さずに住民たちとより良い話し合いをした、という辛辣なコメントを残している。
こうした批判があるものの、シチリア島のはずれに突然現れる灰白色の巨大なコンクリート迷宮の訪問は、ダイナミックな芸術作品の一つとして興味深い観光の1つに数えられるだろう。
image credit:Grand Voyage Italy
image credit:Giovanni Caruso/Panoramio
image credit:Giovanni Caruso/Panoramio
image credit:Rmene/Panoramio
image credit:Michele Cannone/Flickr
image credit:@beps/Flickr
震災直後の旧ジベッリーナの様子(1968)
Terremoto nel Belice (Gibellina) - gennaio 1968
コンクリートの迷宮(ドローンで空撮)
Cretto di Burri - Gibellina (TP)
イタリアのファッションブランド、ボッテガ・ヴェネタとのコラボ映像
The Art of Collaboration Fall/Winter 2016 with Viviane Sassen- Bottega Veneta
via:amusingplanet・translated D
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コメント
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2. 匿名処理班
無機的でなおかつ人の営みが見えてくる様な不気味な美しさを感じる。ポンペイの遺跡みたいな。
住民は結局街を棄てたわけであって、震災の爪あとを残しつつ街を維持してる近隣と比べるのも酷な気がするな。
3. 匿名処理班
これを見て思った事は、地震や被災地の現状について
「人々の記憶の中で、ただのコンクリート詰めのように風化していってないだろうか?」という警鐘に俺は見えてきたなぁ
4. 匿名処理班
現代芸術としてはいい、慰霊は少し違う気がする
亡くなった人を封じ込めたみたい
5. 匿名処理班
ポンペイの遺跡のように街は保存されているとも言えるわけだし、数世紀先のことまで視野に入れたアートだという気がする。白い迷路をさまよってみたくなるし、ミニマルアートのようにも見える、いいと思う。
6. 匿名処理班
違う魅せ方があってもよかったと思う
7. 匿名処理班
全くよくないな 放射線で汚染された土地の再利用法かと思ったんだけど
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