全てを喰らう雛苺
- § 桜田ジュンの部屋
真紅「それじゃあ始めるわよ。この夏の新作ローゼンパントマイムを…!」
翠星石「わぁい、ですぅ~!」
雛苺「待ってましたなのー!」
真紅「はぁあああああ…っ!」シュバババババ
翠星石「み、見えるですぅー! 夢の対決! レッドマンVSレッドゴリラ=サンの暴力バトル@採石場が見えるです!」
雛苺「スゴいのー! スゴい臨場感なのよ! この間、蒼星石が自慢してた薔薇屋敷の大きいテレビよりスゴイのー!」
真紅「イヤーッ! ダァアーッ! イヤーッ! ダアッー!」しゅばばば
翠星石「むむぅ…、レッドゴリラ=サンがやや押しているですか!?」
雛苺「それは分からないのよ翠星石! レッドマンはまだ素手だけで戦っているの!」
翠星石「手に汗握る展開ですぅ~!」
真紅「ふふふ…、お楽しみのところ悪いけど、今日の真紅ちゃんはただのパントマイムに終始するつもりはないわ」グググ
雛苺「あややややや? 真紅が変な動きをローゼンパントマイムに織り交ぜてきたのよ!」
翠星石「な、何をするつもりで…!? ああっ!? み、見えるです! 真紅の左側に立つレッドマンが!」
雛苺「そして真紅の右側にはレッドゴリラ=サンが仁王立ちしているの! ま、まさか…!」
翠星石「まさか、この立ち位置…、フォーメーションはッッ!?」
真紅「レッドマン=サン!」
レッドマン「ファイッ!」
真紅「レッドゴリラ=サン!」
レッドゴリラ「イヤー!」
真紅「特に意味のない暴力! お借りします!」グオオーーッ
翠星石「うおおおっーーー! やっぱりフュージョンです! フュージョンアップです!」
雛苺「燃える展開なのー!」
真紅「フュージョンアップ! ローゼンメイデン第5ドール真紅・ナイフアロンダイト!」♪デデーン
雛苺「ナイフアロンダイト!?」
翠星石「ナイフアロンダイトですと!? 形態名ですか!?」
ジュン「レッドナイフはまだいいとして、アロンダイト=サンはレッドゴリラ=サンと実際、別人では…」
真紅「だまらっしゃい、ジュン! くらえ暴力!」ドガッ
ジュン「グワーッ!」
翠星石「なんという…有無を言わせぬ暴力!」
雛苺「流石はレッドマン=サンとレッドゴリラ=サンの力をお借りしているだけはあるのー!」
ジュン「い、いい加減にしろよ! 毎日毎日、何かと理由をつけて暴れやがって! 静かに遊べないのか!?」
雛苺「そ、そんな…っ!? ひどいのよジュン! ヒナや真紅達の自由な発想から生まれた遊びなのに…!」
ジュン「自由も何も…、単にウルトラマンオーブの、ごっこ遊びじゃあねーか」
翠星石「そんなこと言わないでくれですー! 真紅のローゼンパントマイム新作だけが翠星石達の楽しみなんですよ!」
雛苺「これ以外にヒナ達が知ってる遊びなんて、お父様が作り損ねたドールの砕けた顔での福笑いぐらいしかないのー!」
真紅「翠星石…、雛苺…、あまり取り乱しては見苦しくてよ」
雛苺「真紅…!?」
翠星石「どうしたです真紅!? そんな急に大人しく!? あっ…、3分経ったから、もうナイフアロンダイト終わりですか?」
真紅「ええ…。そしてこのローゼンパントマイムからのフュージョンアップは私とマスターの力を大幅に消耗するわ」
ジュン「アッチィー! 今さら気づいたけど指輪アツッ…! アーツィ! アーツェ! アツゥイ! アッツー!!」
真紅「さあ、雛苺…。お父様が作り損ねて叩き割って捨てていた物言わぬ試作ドール達の顔面パーツで福笑いをしましょう」
雛苺「うぃ…。これで大人しく遊ぶのよね」カチャカチャ
翠星石「はぁ…。こんなゴアめいた福笑い続けていたら、水銀燈みたいに性格ねじ曲がりそうですぅ…」
雛苺「ここをこうして…と。目はこんな感じにすると可愛いのよね」カチャカチャ
翠星石「ぷーっ! クスクス! こいつは笑えるですぅ! オカメみてーになってるですよ」
ジュン「水! 水ぅー! これ火傷してるかもしれーん!」ダダダダッ
真紅「うるッさいわねジュン! 折角、私達があなたの言う事を聞いて静かに遊んでいるというのに!」
ジュン「だって、お前これ! 指輪で火傷て! しかも指輪が取れないし!」ジタバタ
翠星石「ああっ! チビ人間、足元注意です! チビ苺が福笑いやってるんですよ! そこ!」
ジュン「何? 何だって!?」ザグゥッ
雛苺「うにゃー!? ジュンが汚い足で、ヒナが福笑いしていた失敗作ドールの顔面の破片を踏み抜いたのー!」
ジュン「ぎゃーっ! 足の裏、切れたーっ!? いってぇー! 超イッテぇーーー!!」ピョンピョン
真紅「大袈裟ね。ちょびっと血が滲んでるぐらいじゃない」
翠星石「バンソーコーでも貼ってろです」
その時、不思議な事が起こった!
雛苺が福笑いで並べていたローゼンの失敗作ドールズの顔面パーツが一繋がりの能面のようになり
さらに能面の口から舌が伸び、ジュンの足の裏の血を舐め始めたのである!
福笑い「ぺろぺろ、ぺろりーぬ」ペロペロ
ジュン「うひゃああっ!? くすぐったい!? 気持ちわるっ!? な、何だこれ!?」
翠星石「ぎゃああっー! 動かないはずの失敗メイデン福笑いフェイスが何故に突然ぺろぺろをッ!?」
真紅「こ、これは…ッ! まさか!? マイナスエネルギーによるマイナスドールの爆誕!?」
ジュン「マイナスドール!? 何だそれは!? 何が起きているか分かるのか真紅!?」
真紅「いいえ、分からない! けど、福笑いフェイスが魂を得た。それだけは確かなようね」
雛苺「あやややややや…」
真紅「失敗作だったとは言え、お父様に作り上げられた人形の残骸に
雛苺の福笑いによって形成されたニューロンネットワークか…あるいは
そこを踏んづけてジュンが流した血によってもたらされたマイスターローゼンの生命波動
そして英国のEU脱退による国際情勢への影響に対する政財界が抱く懸念と不安
あるいはそれら全てが福笑いの内部で出会ってしまい化学反応を起こしスパーク…!」
ジュン「なるほど、分からん」
福笑い「ヴォゴゴゴゴォオオー! 血ぃ…、温かい血! もっとヴェロヴェロなめたぁ~いィ!」
雛苺「みょわわわっ! ジュン、危ないのー!」
翠星石「福笑いの素早く伸びる舌がチビ人間の足の裏の傷を狙っているですー!」
真紅「させないっ! マスターは私が守る!!」ガシッ
ジュン「し、真紅っ!?」
福笑い「グガガッ!?」
真紅「掴んだ! 舌さえ掴めば、もうあなたは何も出来な…っ!? グワーッ!?」
ジュン「し、真紅…!? 奴の舌が、舌を掴んだ真紅の右腕から体内に潜り込んでいるッ!?」
真紅「まさか私の体を乗っ取る気では!? そうはさせない! ローゼン自切チョーーープ!!」ずばっ
翠星石「真紅っ!? 自分で自分の右腕を切断したですかァーッ!?」
雛苺「素早い状況判断なのよねェー!」
福笑い「右腕…貰った…。美しい、嬉しい…」フワフワ
真紅「ハァーハァー…! 何てこと…!」
ジュン「これはヤバいぞ。ローゼンメイデンが下手に奴と接触すると体の支配を奪われるのか!?」
雛苺「あやややややや~! ヒナ達もう終わりなのー! あんな化け物に勝てるわけないの~っ!」
福笑い「フォフォフォフォフォフォ、お父様の血ぃ、姉妹の体ぁ、全部もらって、全部食う」
翠星石「こ、殺されるですゥ! 翠星石達みんな浸食されて体内の内側から食い破られて殺されるですー」
ジュン「グロいこと言うな!」
真紅「いいえ、諦めてはいけないわ皆! どんな時も!」
雛苺「で、でも真紅は右腕を取られちゃってるのよ!」
翠星石「そもそも無駄にナイフアロンダイトとかやってて、真紅は戦う前から疲労している状況です」
真紅「そんなの関係ない! どんな状況でも、どんな時だろうと諦めない、それが薔薇乙女よ!」
翠星石「真紅…!」
福笑い「グオオオオオオッ…!?」びくんびくん
雛苺「みょわわっ!? 福笑いフェイスが突然ビクビクし始めたのよ!?」
真紅「この真紅ちゃんが何も考えずにローゼン自切チョップをしたと思う!?」
ジュン「何ッ!?」
真紅「自切した右腕内にはレッドゴリラ=サンからお借りしていたバイオサイバネ筋肉がまだ少しだけ残っていたのだわ」
翠星石「何ですとーっ!?」
雛苺「つまり、どういうことなのよ!?」
真紅「私の右腕内のバイオサイバネ筋肉が今度は逆に福笑いフェイスを侵食して絞めあげているというわけ!」
ジュン「何と!?」
福笑い「グワーーーッ! き、キツイぃいいいいい!」ギチギチ
翠星石「おお、奴が滅茶苦茶苦しんでいるです! チャンスです! みんなで囲んで棒で叩くです!」
真紅「その必要は無い! むしろ、近づいては危険よ翠星石!」
翠星石「何故です?」
真紅「私の頭脳ニューロンネットワークから切リ離されたバイオサイバネ筋肉は暴走している」
ジュン「暴走!?」
真紅「ええ…。勿論、暴走はわざとよ。そうでなければあの福笑いフェイスを倒せないと状況判断した」
雛苺「真紅の状況判断スゴすぎるの~」
真紅「そして、既に私のローゼンパントマイムによるフュージョンアップが切れている今ならば
バイオサイバネ筋肉もあれ以上暴走せず、レッドゴリラ=サンにお返しされるはず、多分」
福笑い「ウゴゴゴゴゴゴ…!? ヤ! ラ! レ! ターッ!!」ぼぐちゅっ
翠星石「うげぇっ! 福笑い能面野郎の方が逆に内側からブッ潰れたですぅ」
真紅「危ないところだった。レッドゴリラ=サンからお借りしていたバイオサイバネ筋肉と
執拗に顔面を攻撃する鬼畜性を持つレッドマン=サンの熱い魂が私になければ負けていたわ」
ジュン「……」スッ
雛苺「ジュン!? 福笑いの残骸に近づいちゃ危ないかもなのよ!」
ジュン「いや、こいつはもう本当に抜け殻だよ。仮初めにでも宿っていた魂は逝ってしまった…」
真紅「ジュン…」
翠星石「チビ苺の福笑いが招いたマイナスドールの脅威…。まるで人類が招いた環境問題のように複雑な気分です」
雛苺「ヒナ達、もっともっとラッコさんやイルカさんとかの事を考えないといけないのね」
ジュン「…ところで、聞きそびれていたがマイナスドールって何だ?」
真紅「マイナスドール…、それはお父様から番号を貰えず破棄されていった失敗作の姉達」
翠星石「お父様もちゃんと人形供養やって破壊してたはずですが、何かの弾みで混沌から這い出るですぅ」
真紅「ええ…。過去というものはバラバラにしてやっても、ミミズのように瓦礫の下から這い出てくる」
ジュン「薔薇水晶のような野薔薇より厄介そうだな…」
真紅「いいえ、そんなことはないはずよジュン。だって同じ姉妹だもの、話せば分かってくれるはず」
ジュン「今回、びっくりするほどの暴力で解決したじゃあないか」
翠星石「暴力や金でさっさと解決できるならそれが一番ですよ。後腐れもねぇですし」
ジュン「てめぇ…」
雛苺「薔薇水晶は強すぎて、暴力で解決できなかったから和解したのよね」
ジュン「マジかよ、見損なったぞテメェら」
真紅「冗談よジュン。話しあいにしろ暴力にしろ、解
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