高峯のあ「牛丼大盛り……つぇ、つゆだケで……っ!」
・短編形式
・非シリアス
・のあさんのキャラ、口調、クールなイメージが『著しく』崩壊します
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承下さい
●登場人物●
高峯のあ、他
※今回は過去作の補足的なお話になります。
高峯のあ「和風牛丼並……あっあとから揚げ」
高峯のあ「(プレミアム牛めし……あっあと焼のり)」
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【吉野家】
のあ「ぁっ、モ、持ち帰りで……」
バイト「……」
バイト「は、はい。かしこまりました、少々お待ち下さい……?」
バイト「(つ、つゆだけ……??)」スタスタ
のあ「……」
のあ「(明日は、いよいよプロダクションの見学かぁ)」
のあ「(緊張するなぁ。平服で構いませんと言われたけれど……平服ってスーツよね?)」
のあ「(アイドルに興味はありませんか、と真面目そうな顔のあの人に声を掛けられたけど……)」
のあ「……」
のあ「(……よく考えれば、これって真っ当な就職活動なんだわ)」
のあ「(今まで適当な仕事やバイトでダラダラと食いつないで来たけど……そろそろ安定した収入で生活したいし)」
のあ「(もう24だし、そろそろ結婚とかも視野に入れないと)」
のあ「(ふふっ。芸能界に入って、スターと電撃入籍からの玉の輿……ってのも悪くないかな)」
のあ「(……まあ、夢のまた夢だわ。そもそもあんまり結婚とか興味ないし)」
のあ「(もしこれでダメだったら、実家帰ろうかなぁ)」
のあ「…………」
のあ「(弱気じゃダメよ、高峯のあ)」
のあ「(とにかく明日の見学は、全力で色々と攻めていかないと)」
のあ「(よーし……とにかく気合を入れないと! あぁ、特盛りを頼めばよかった)」
のあ「……」ドキドキ
バイト「お客様…………、申し訳ありませんが……」
のあ「(───ッ!?)」ビクゥ!
バイト「当店では、つゆだけは当店では対応出来かねまして……ハイ」
のあ「ぁっ……」
のあ「ソッ……、そうナンですか……? モ、持ち帰り、不可……?」モゴモゴ
バイト「大変申し訳ありません」
のあ「ソ、そうなんだ……ス……すみません……ま、また来マス……」モゴモゴ
のあ「…………」トボトボ
バイト「……」
のあ「ソウナンダ……」トボトボ
━━━━1分後━━━━
【キッチン】
店員「どうだった? さっきの並弁当、つゆだけの客」
バイト「フツーに帰りましたよ。あっさり」
店員「まあ……いるんだよね、冷やかしでそういうの頼む客。しかもこれが実際、かなりの数」
バイト「そうなんすか?」
店員「牛丼肉抜きとか、ねぎだけとか、つゆだけ、つゆのみとか。深夜帯だと特に」
店員「一連の流れをこっそり録音とか撮影とかしてさ。で、その後大半は面白がってネットに上げたり、武勇伝っぽく報告したりするのね」
店員「まあ実際は肉抜きとかなら提供する店もあるんだけど、つゆだけは流石に……ウチでも無理だから」
店員「一回断わって、すんなり帰るならそれに越したことは無いから」
バイト「ぁーす」
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【事務室】
愛海「ねえねえ、プロデューサー?」
P「ん?」
P「どうした、愛海。難しい顔して」
愛海「昨日のお昼ごろ、プロデューサーと一緒に歩いてた人……あれ誰?」
P「うん? あぁ……彼女か」
P「新しく所属するかもしれない人だよ。綺麗な人だったろ」
愛海「うん! ってことは、一般人?」
愛海「世の中、まだまだ捨てたもんじゃあないね」
P「だろ。鮮やかに輝く髪に、整った顔立ち、オーストラリアの砂浜を思わせる透き通るような白い肌……!」
愛海「グンバツのスタイル、むしゃぶりつきたくなるような体つき……」
P「あぁ!」
P「……………ア?」
愛海「ぜひとも、色よい返事をいただきたいね。プロデューサー?」
P「……まあそうだが。ただ、愛海が言うとなにかと不穏だな」
愛海「なんっていうのかなー……目に入ったのは一瞬だったけど」
愛海「でも、すごく印象に残る人だったよ。容姿がステキってのも勿論あるけど」
P「お? 愛海も分かるか」
P「ああいうのを、『オーラ』っていうんだよ。オーラ」
P「キリっとした面貌から読み取れる彼女の不敵な性格、容貌やルックスから裏打ちされた自信」
P「張り詰めた空気を纏った荘厳さ、仕草からほの見える品の良さ」
P「体は心を表すというか、生れ持った天性の才覚というか……」
愛海「ふぅん。でもさ、でもさ?」
愛海「ああいう人こそ現状に満足せず、ストイックに自分を磨いてそうじゃない?」
愛海「いろいろ悩みもあったりしてね。あたしにはよく分からないケド」
P「……まあ、な。」
P「類まれなる美貌の裏に隠された、たゆまぬ努力、か……」
愛海「まー、でも一つ確実に言えるのは……!」
P「?」
愛海「か、彼女のお山っ……!」
愛海「実に登り甲斐がありそうだよぉ……うぇへへ♪」
P「……」
愛海「もし所属したら、こりゃあ先輩からのアツい指導が必要ですなー……♪」ワキワキ
P「……ハァ」
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【高峯宅】
のあ「……っ!!」
のあ「あぁっ! し、しまった!」
のあ「くっ……!」ガクッ
のあ「笑点、見逃したぁ……」
のあ「……まぁいいや。ちびまる子ちゃんから観よう」スクッ
のあ「……」ガサゴソ
のあ「ビールと……あとチー鱈、は……無かったかな……」
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【事務所 中庭】
のあ「(はー……)」
のあ「(……美しく手入れされた中庭。豪奢な噴水に、道には綺麗な花々を散りばめて……)」
のあ「(いまにでも、どこかの国のお姫様がドレスをなびかせながら、小鳥たちと会話しながら歩いてきそう)」
のあ「(まるで、おとぎの世界に迷い込んだよう)」
のあ「(ここに来れただけでも、所属して良かった)」
のあ「(……)」
のあ「(レッスン費にプロモーション活動費に……正直、かなり出費はかさむ)」
のあ「(……でも、がんばろ)」
のあ「(アイドル……、よく分からないけど、でもきっと、こういう経験は無駄にはならないと思うし)」
のあ「(……あの人がかけてくれた言葉を、信じてみよう)」
のあ「……」
のあ「…………」
のあ「(……生活、切り詰めよ)」
のあ「(しばらく牛丼は無理かな……よし、うどんにしよう)」
のあ「(これからは吉野屋から丸亀製麺にシフトしていくわ……)」
P「おはようございます、高峯さん。お待たせしました」
のあ「(……っ!)」ビクッ
のあ「ァ……」
P「今日はまずトレーナーさん達への挨拶と、あとは今後の活動展開の、ちょっとした説明です」
P「あっ。あと、これを貴女にお渡ししておきます」スッ
のあ「(───ッ!!)」
【IDカード】
のあ「(こ、これは!)」
のあ「(し、社員証……っ!?)」
のあ「(……ん?)」スッ
のあ「(?? ……変ね、顔写真が入ってない。プロデューサーのは顔写真ついてるのに)」
P「今までは、うしろにピッタリ付いて貰って俺のカードだけで出入りしていましたが、今日からは高峯さんにもコレを預けますね」
P「事務所内の各ドアの前で、カードリーダライタにかざしていただければOKです。それでドアが開きます」
のあ「(……? …………??)」クルッ
P「そうですね……そのカードの事は、電気の錠を開けるためのカギと思って頂ければ分かりやすいかと」
P「ただ注意ですが、入退室の際は必ず一回一回カードをかざして下さいね」
P「もしチェックせずに違うドアに入ろうとすると、セキュリティの認証不可でドアが開きませんから」
のあ「(? …………)」ジー
P「大切に保管して下さい。じゃあ、さっそく行きましょうか」
のあ「(……でもまあ、社員証には変わりないわ。憧れの)」
のあ「(ふ、フフっ。これを首から下げてると、なんか『デキる大人』って感じがする。格好いい……♪)」スチャ
のあ「(ヤバ……っ。このまま外に出てコンビニのコーヒーとか買ってみたい気分♪)」ドキドキ
P「……??」
P「高峯さん? どうしました?」
のあ「!!」
のあ「ナ……何でもないわ。早く行きましょう」
P「はい、そうですね」
のあ「(……♪)」スタスタ
━━━30分後━━━
【レッスンルーム】
P「……」
P「(高峯さん、遅いなぁ)」
P「(トイレに行ったきり、戻ってこない。そろそろ20分経つぞ………体調不良か?)」
P「…………」
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【どこかの部屋のドア】
のあ「フゥー、フゥー……っ!」プルプル
のあ「……っ」ピッ
ブブーッ!
*『アンチパスバックエラー発生』
のあ「ヒッ!」ビクッ!
のあ「フゥー……フゥー、フゥー……!」オロオロ
のあ「……っ!」ピッ
ブブーッ!!
*『アンチパスバックエラー発生』
ブブーッ!!
*『アンチパスバックエラー発生』
ブブーッ!!
ブブーッ!! ブブーッ!!
ブブーッ!! ブブーッ!! ブブーッ!!
のあ「ヒグッ……、う、ウゥ……ッ」オロオロ
のあ「(ど、ドアが開かない……た、助けてっ……!)」グスッ
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【撮影スタジオ】
のあ「……よろしく」ペコリ
P「よろしくお願いします」
カメラマン「はい。どうぞよろしく」
カメラマン「宣材写真の撮影だからと気を張らず、どうか楽に、いつも通りに構えていただいて結構です」
P「じゃあ高峯さん、まずは奥の控室で簡単なメイクと……、あと服も整えて下さい」
のあ「……ええ」
スタスタスタ
───ガチャ バタン
カ