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どろり初単行本「あの子と遊んじゃいけません」出版記念イベントレポ - ピンガ
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どろり初単行本「あの子と遊んじゃいけません」出版記念イベントレポ

特集 イベントレポート

どろり初単行本「あの子と遊んじゃいけません」出版記念イベント  “バーベキューで食べ残された野菜カス”のようなオモコロ作家陣が集結!「10%しか意味がない」マンガの裏側を明かす

Webサイト・オモコロにて、「友人宅全焼」「絶頂」「神様からのメッセージ」など異彩を放つマンガを発表し続けている新鋭・どろり。そんな彼による初単行本「あの子と遊んじゃいけません」の刊行を記念し、去る8月13日に東京・LOFT9 Shibuyaにてどろりを囲むイベント「どろりとあそぼう」が開催された。本イベントには同じくオモコロで活躍する、「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」のサレンダー橋本、「情熱大陸への執拗な情熱」の宮川サトシ、「村に伝わるわらべ歌になぞらえて殺人事件を起こした人の取り調べ」のてらおか現象、そしてオモコロ編集長の原宿が登壇。宮川曰く“バーベキューで人気者たちが食べられた後に残った野菜カスみたいなメンツ”が繰り広げるトークの模様を、本特集ではお届けする。 

取材・文 / 西村萌

作風は志村けんのコントと同じ

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「あの子と遊んじゃいけません」

「あの子と遊んじゃいけません」はオモコロの掲載作品に、描き下ろしの新作2本を加えた短編集。いずれもSF要素にちょいエロ成分が足された、つかみどころのない“どろり式ディストピアギャグ”だ。同作を読んだ橋本は「何%ぐらいが意味あるんですか?」と、どろりに質問を投げかける。それに対しどろりは「10%ぐらい」と答え、「ドリフのコントの中に『もしも〇〇な△△がいたら』というのがあるけれど、『もし家が焼けても無事な家族がいたら』としたら、あのマンガになるんです」とコメント。宮川は「最後に『ダメだこりゃ』を付けると成立しますよね」と同作とドリフの共通項を述べ、観客たちを納得させた。

目指すは衛藤ヒロユキの路線

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左からどろり、サレンダー橋本、てらおか現象、宮川サトシ。

続いてはTwitterで寄せられた読者からの質問コーナーへ。現在の画風に落ち着くまで変遷はあったのかという疑問が挙がると、どろりは「絵柄は変わりはしてるんですけど、目指してるのはずっと衛藤ヒロユキ先生。『魔法陣グルグル』みたいな絵を描きたくて」と答える。会場には静かな笑いが起きるも、「ずっとその路線」とどろりはまっすぐに語る。

またページ数はどう決めているのかという質問に、どろりは「普段オモコロで描いているのが6ページから8ページぐらい。1ページあたりにかかる時間が2、3時間だから、締め切りの残り時間から計算するとそれぐらいのページになるんです」と答える。原宿は「描きたいものがあって、そこに行き着くまでのページ数ではなく?」と聞くと、どろりは「時間からの逆算です」と明かした。

唐突に登場する「ブラック・ジャック」オマージュの理由

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左から原宿、どろり。

次に寄せられたのは、女優を目指す女の子のオーディション前を描いた「女優への道と救済」について。同作のオチには、「ブラック・ジャック」の1エピソード「ときには真珠のように」のラストで本間医師を救えなかったブラック・ジャックが悲嘆に暮れるシーンのオマージュが唐突に登場する。その理由を聞かれたどろりは「オチは関係ないマンガから持ってくるっていうのだけ決めていて。コマを割って『この位置にこの大きさでくるのってなんかあったっけ』と考えたときに……」と語る。さらに橋本が、オマージュ元には描かれている“本間医師の幻影”はなぜ描いていないのか聞くと、「幻影は描くのが難しかった」と身も蓋もない答えが。「ブラック・ジャック」の中でもシリアスなシーンをギャグマンガに使用したことについても、どろりは「ひどい使い方をしてしまって反省はしています。でも大きさがちょうどよかったんで……」と率直に謝罪した。

“ディストピア”感は、「ドラえもん」の児童向け教育本から

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左からてらおか現象、宮川サトシ。

イベントの中盤では、それぞれが影響を受けたマンガを紹介するコーナーを実施。最初に指名された橋本は水島新司による野球マンガ「ドカベン」の32巻と33巻、てらおかは高野文子の短編集「黄色い本」より表題作、宮川は村岡栄一のパチンコ実録マンガ「ムラオカのCR深海物語」より「その3キンスズぱらだいす編」を挙げ、スクリーンにコマを映しながら解説を行う。そして最後にどろりが選んだのは、いそほゆうすけ、たかや健二による児童向けの教育本「ドラえもん地球救出大作戦」。読者の選択によって物語の展開が変わるゲームブック式の同書は、急展開で衝撃の結末が訪れることもしばしば。この極端な描写は、自身の作品の “ディストピア”的要素に影響を及ぼしているという。

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左から原宿、どろり、てらおか現象、宮川サトシ、サレンダー橋本。

そして最後に行われたのは、テーマに沿ったイラストを描き、そのお題を当てるゲーム。出演者は「不安になるはだしのゲン」「人に迷惑をかけるカイジ」「バンドデビュー美味しんぼ」「死んだ明日のジョー」という、2つのお題が組み合わされた難題にそれぞれ挑む。描く側も当てる側も苦戦しながら賑やかにゲームは進み、和やかなムードでイベントは終了した。