628 名前:たまちゃんねえさん[] 投稿日:2013/08/03(土) 09:46:40.24 ID:1ajP44Xh [1/2]
もうずっと昔の話。
大学生だったころ、大学の友達3人と一緒に東京の奥多摩へ遊びに行った。
民宿で1泊して、ちょっとハイキング、というお手軽旅行。

泊まった翌日、友人と女ふたりで民宿の周りを散歩しようということになった。
舗装された道路が1本、ゆるゆると山の中に続いていたので、少し上っていってみることにした。
早朝だったので、車も人もいなくて、
ふたりだけで新鮮な空気とおしゃべりを楽しんでいたときのこと。
一匹の犬が現れた。

シェットランドシープドッグの血統書付きと思われる、とてもきれいな犬。
飼い主と思われる人もなく、リードもなく、突然犬だけで道路の上のほうから降りて来た。

私たちと出会うと、くるっとUターンして止まり、そして私たちを振り返る。
「『これ、こっちについて来い』って言ってるんじゃない?」




629 名前:たまちゃんねえさん[] 投稿日:2013/08/03(土) 09:49:17.02 ID:1ajP44Xh [2/2]
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犬を先頭に、人間ふたりが2、3M遅れて一緒に歩く、というかたちで、
上り道を歩いて行った。

人間が止まると犬も止まる。
そして、振り返って「わんっ」と軽く吠える。

7、80Mほど行っただろうか。
犬がぴたりと止まった。
そこには道の片側に上りの石段が10段ほど続いてあり、
民家があるのが見えた。
犬はその石段を上がって門の中へ消えて行ってしまった。

「行っちゃったね」と言いながら、
短い散歩を終えようと、来た道を戻ろうとしたときだった。

犬が門のところに再び現れた。
口には子犬をくわえて。
見ていると、足元にほかの子犬もころころしてる。
子犬たちをうながしながら、犬は石段を降りてきた。

「かわいい子どもたちだね~」
と子犬をなでくりまわしていた私たちを、
見てる母犬は、とても自慢げだった。
民宿へ戻るとき、母犬は「え、もう戻っちゃうの?」みたいな顔をして
見つめてた。

子どもを守るために、人間を遠ざける親犬は多いと思っていたが、
わざわざ「うちの子、見に来て~」「ね、ね、かわいいでしょ~~」と
招待する犬がいることを、そのときはじめて知った。