僕っ娘「青春を探した、僕らの何気ない夏の日」
僕っ娘「ありえないよね」
ハーフ「なにが」
僕っ娘「いやあ、最近おばあちゃん家に遊びに行ったんだけどね」
ハーフ「ああ、そういやお盆だったわね」
僕っ娘「だから、親戚もたくさん集まったわけなんだよ。で、僕の親戚、全員年上なんだ。そうしたら、例外なく始まったよね、毎年恒例の年下いびり」
ハーフ「いや、あんたの家の夏の恒例行事なんか知らないけど」
僕っ娘「いやあ、僕っ娘ちゃん!彼氏はできたかい?え?まだ?ガッハッハッ!それはいかんなあ!僕っ娘ちゃんの年頃の女の子に、彼氏の一人もいないようじゃあ!青春せんとな!ワシらんときはな!………」
僕っ娘「ね?」
ハーフ「ね、ていわれても、いや大体いいたいことはわかるけど」
僕っ娘「僕はそのとき、鈍器を握りしめていたよ」
ハーフ「ビールの空き瓶ね」
僕っ娘「彼氏の有無で決まる青春なんて、スローイング!&バイバイ!だ!」バイバイ
ハーフ「狭いから暴れないでよ」
僕っ娘「ハーフは青春についてどう思うんだい?もちろん僕の意見に賛成だよね」
ハーフ「私は「やっぱり!ハーフならそう言うと思っていたんだ!」
ハーフ「しゃべらせろ」
僕っ娘「そもそも青春ってどういう定義なのか、曖昧じゃないかい?」
ハーフ「あー、あれよあれ、なんかこうブワーッとした、あれね」
僕っ娘「わからないならわからないって素直に認めなよ」
運動娘「オイース、おーだらだらやってんなー」ガチャ
僕っ娘「やっ、部活あがりかい?」
運動娘「そうそう、いやー疲れた疲れた」
ハーフ「あんたらは当たり前のようにウチに上がり込むわね。許可をとりなさい許可を」
僕っ娘「僕達、顔パスだからね」
ハーフ「顔パンしたい気分ね」
運動娘「いやーしかし、せっかくの夏休みだってのにハーフの部屋でだらだらだら、貴重な青春がもったいねーぞ」ピコピコ
僕っ娘「でたな青春お化け!!」
運動娘「あー?」ピコピコ
僕っ娘「じゃあ青春を具体的に説明してみるがいい!さあさあ!」
運動娘「青春なー、私の場合はこうやってハーフの家でゲームすることだなー」ピコピコ
僕っ娘「情けないっ………それが君の答えなんだね………!」
ハーフ「なんでちょっとドラマチックなのよ」
僕っ娘「ここに一冊の本があるよ」
ハーフ「うん」
僕っ娘「本屋に並べてあった本だよ。ここの帯を見てほしい」
ハーフ「ええと?『この夏一番の青春!』ふうん、青春の教科書みたいなものなのかしらね」
僕っ娘「だろう、だからこそ僕はこの本を読んで青春を勉強しようと思う」
ハーフ「結構ね。存分に勉強しなさいな」
僕っ娘「そういうわけだから、静かにしていてくれ給え」ゴロン
ハーフ「家帰って読めよ」
運動娘「あっ、やられた」ドロロン
ハーフ「じゃあ交代ね………ちょ、なに続けようとしてんのよ、約束がちがう……おい!」
運動娘「わはは、ゆるせ~ゆるせ~」ピコピコ
僕っ娘「………」ムクッ
ハーフ「あら、読み終わったの?相変わらず速読ね」
僕っ娘「これが、こんなのが青春なら、僕はいらない………」
ハーフ「何があったのよ」
僕っ娘「砂糖のように甘い恋愛ストーリー………なめくじみたいな粘着質な交際………挙句の果てには獣のように身体を貪りあう始末…………これが青春なら、僕はいらない………」
ハーフ「あー、まあこれも、青春の形のひとつだから」
僕っ娘「あげる」
ハーフ「あ、うん、どうも…」
僕っ娘「………」ゴロン
ハーフ(ふて寝した)
運動娘「ああー!またやられた!」
ハーフ「もう日が暮れるわよ、そろそろ帰らないと」
運動娘「………」ピコピコ
僕っ娘「………」
ハーフ「ほら、外見て外、綺麗な夕景よ。涎垂れそうなくらい綺麗。だからもう帰りましょう?」
運動娘「………」ピコピコ
ハーフ「ほら、ゲームをやめて。外の世界に飛び出すの。そして帰りなさい」
運動娘「………」ピッ
ハーフ「そうそう、電源を落としてね」
運動娘「………」ノビー
ハーフ「うんうん、長時間ゲームしてたものね、身体もこわばるわ」
運動娘「………」ゴロン
ハーフ「………」
カナカナカナ………
ハーフ「夕日が綺麗ね」
僕っ娘「………」
運動娘「………」
ハーフ「………」
カナカナカナ………
ハーフ「………」
僕っ娘「………」
運動娘「………」ポリポリ
ハーフ「帰れよ」
ゴハンヨー
運動娘「うっひょー!!ごはんだー!!!」バタバタ
僕っ娘「おばさぁーん!今日のご飯なにぃー!?」バタバタ
ハーフ「おぉい!!帰れよ!!!三日連続で同じ釜の飯たかってんじゃねえーよ!!!」
オォーイ!…………
運動娘「今日、外遊び行こうぜ」
僕っ娘「あついから、やだよ」
運動娘「いいじゃねえかよー、たまにはパァーッとプールではしゃいだりしてさー」
僕っ娘「僕はインドア派なんだ。そして、そのことに誇りをもっている。だから出ない」
運動娘「ケチな奴め、だったら、あれだ。青春しに行こうぜ!」
僕っ娘「せ、いしゅ、ん……?」ピク
運動娘「おう、青春、青春」
僕っ娘「馬鹿め!青春なんてものはないと、昨日決断を下したのだ!」
運動娘「ええー?ほんとうかよー、案外そのへんに転がってるかもしれねーぞ?僕っ娘がいつも正しいとは限らないからなぁ~」
僕っ娘「いいだろう!だったら外へ探しに行こうじゃないか!そして青春なんて概念が存在しない現実を、その小麦色した顔に叩きつけてやる!いくぞ!!」バタバタ
ハーフ「ただいまー……うおあ!?急に飛び出すな!びっくりしたー……」
無口「あやうく死亡事故」
運動娘「よう、さっそくで悪いけど外遊び行こうぜ!」
ハーフ「別にいいけど……なによ急に」
運動娘「青春探しに行くんだよ、そんでアイス買って公園とかいこうぜ」
ハーフ「はあ?あんたの青春はこの部屋にあるんじゃなかったの?」
運動娘「細かいことはきにするなよ!青春なんてその日の気分だ!」
シャワシャワシャワシャワシャワ………
僕っ娘「あっつ、帰りたい」
ハーフ「まだ出たばっかじゃない」
無口「今日なにするの」
ハーフ「さあ、どうせ行き当たりばったりでしょ」
運動娘「いつも通りだな!はっはっはっ!」
無口「………」キョロキョロ
ハーフ「どうしたのよ、挙動不審ね」
無口「僕っ娘がいない」
ハーフ「はあ?……ほんとね」
運動娘「あ。あいつ交番に入っていったぞ」
ハーフ「なにやってんのよ」
僕っ娘「はぁ~……すずしい………」
おまわり「ははは、外は暑いからね」
ハーフ「すいません!ご迷惑おかけして………」
おまわり「いやいや、いいんだよ。暑いからね、熱中症にならないように涼んでいきなさい」
僕っ娘「涼んでいくといいよ」
ハーフ「ほんとあんた神経図太いわよね」
ハーフ「邪魔じゃないですか?」
おまわり「平気だよ。今から昼休憩だからね」
運動娘「お!にいちゃんそば喰うのか?私にもくれ!」
おまわり「こらこら」
無口「わっぱみせてください」
おまわり「こらこら」
僕っ娘「ははあ、みんなくつろいじゃって。だめだね。公共の場を私物化しちゃあ」
ハーフ「歯を食いしばるといいわ」パキポキ
僕っ娘「ぼ、ぼぼ僕は、ちゃんと理由があって交番を訪れたのさ!」
ハーフ「ふうん、なによ理由って」
僕っ娘「探し物だよ」
おまわり「うん?なにを落としたんだい?」
僕っ娘「青春って落ちてませんでしたか?」
ハーフ「前歯は折るわ」
コメント一覧
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- 2016年09月08日 23:53
- 時間返せ
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