戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://japanese.engadget.com/2016/09/20/3/


食べ物を落として「3秒ルール」は誤り、研究者が実証。床に落ちたらすぐ汚染、時間とともにバイ菌付着量も増加 - Engadget Japanese
 
世の中にはどうでもいいと思えることを一生懸命調べる研究者がいます。そんな「どうでもいいこと」の代表格とも言えるのが3秒ルール。3秒ルールといえばお菓子をうっかり地面に落としても3秒以内に拾えばバイ菌がつかないから大丈夫、というアレです。日本では3秒、米国ではおもに5秒ルールが一般的なほか、国によっては10秒や0.5秒というのもあったりします。

これまでの研究

3秒ルールは2007年以降、これまで数度にわたって大学などのチームによって研究がなされては結果が発表されてきました。特に知られている研究には以下があります。

・2003年、米国の高校生が様々な場所の床を調査し、そのほとんどにバクテリア・細菌が存在しないことを確認、数秒間なら安全とする研究結果を発表しました。ただ、よく子どもが友達と手渡しするであろうクッキーやソフトキャンディーを大腸菌のついた床に落とし5秒後に拾い上げたところではほとんどにバイ菌が付着していたとのこと。高校生はこの研究でイグ・ノーベル賞を受賞しました。

・2007年、米国サウスカロライナ州のクレムゾン大学の研究チームは、食べ物が床に落ちて拾い上げるまでの時間経過と付着する菌の数を調査。5秒未満だろうが5秒を過ぎていようが付着するバイ菌の数に違いはなく、むしろ落とした場所の綺麗さ(汚さ)が問題で、日常的な清掃が大事だという結果を示しています。ただし、床の材質で言えばカーペットのほうがタイルや木の床に比べて菌の付着が少なかったとのこと。

・2012年、英マンチェスター・メトロポリタン大学は、ジャムを塗ったパン、茹でたパスタ、生ハム、ビスケット、ドライフルーツなどを3、5、10秒間床に置き、バクテリアの付着量を調査しました。その結果は塩分や砂糖を多く含有する食品ほど汚染度合いが低く、すぐに拾えば食べても有害な影響はないであろうとするもの。一方でパスタやドライフルーツからは敗血症の原因にもなりうるクレブシエラ菌が検出されるなど危険も示しました。要約すると時間にはあまり関係なく、落とした物によっては(とくに子どもがよく食べるものは)拾って食べても大丈夫な可能性が高いとのこと。

・2014年、英アストン大学の研究チームは床に落とした食べ物の床との接触時間と付着するバイ菌の量を計測する実験を実施。そして水分量の異なる幾つかの食べ物を調べたところ、乾燥した食物に比べて水分量の多い食物のほうが約20倍菌の付着量が多く付着するものの、早く拾い上げたほうが菌の付着は少なく無害である可能性が高いとする結果を示しました。

最新の研究結果

さて、今回米ラトガース大学の研究チームが発表した最新の研究結果は、どちらの判定なのでしょうか。結論から言ってしまうと「食べ物が床に落ちれば、すぐにバイ菌が付着する」という研究結果になっています。ごく当たり前のことを言っているにもかかわらず、ここまで読んでしまったがために「ほんとにそうなのか?」という気持ちになっている読者の方はもう少しだけお付き合いください。

ラトガース大学の食物微生物学者ドナルド・W・シャフナー教授は、床面サンプルとしてステンレス鋼、陶製タイル、木材、カーペットの4種類をまず用意、ついで食品サンプルとしてスイカ、パン、バターを塗ったパン、ストロベリーグミキャンディを用意しました。実験はサルモネラ菌を塗布した4種類の床面に適当な大きさに切った食品サンプルを置く方法で行われ、それぞれ1秒未満、5秒、30秒、300秒が経過した後に取り上げて菌の付着状況を調べました。

その結果、もっとも菌の付着が少なかった床面サンプルはカーペットで、ついでタイルとステンレスは付着率が高くなり、木材の床は木の材質や表面によって大きく数値にばらつきが出るという結果になりました。一方で食物の種類による違いはやはり水分量が影響するのか、最もみずみずしいスイカがワースト1という結果でした。

また時間経過の観点からは食物の種類や床の材質ほどの違いはないにせよ、いずれも1秒未満であっても菌の付着は必ずあり、簡単に汚染されると確認されました。ただ、時間が経過すれば菌の付着量も増えていくと結果にまとめています。

すべての組み合わせを調べるために2500回もの実験を重ねたシャフナー教授食品の種類や床面の材質によって菌の付着量は大きく変わるため「3秒ルール」というように時間の経過だけで食べられるかどうかを決定するというのは誤りだと結論づけています。

ちなみに、これだけ研究が重ねられたテーマであるにも関わらず、食べる人間のほうの健康状態や免疫力といったパラメーターについては発表された研究結果をみつけることができませんでした。これから3秒ルールを検証しようと思う研究チームには、(可能なら)ぜひともサンプルを実食して、何秒以上たてばお腹を壊すのかも確認してほしいものです。われわれが本当に知りたいのはたぶん、そこのはずです。

[Image : Gangelbot Films, Washington State University]
※画像と内容は特に関係ありません。ましてダニー・トレホなら床に落ちたものを食べても大丈夫と言っているわけでもありません。
食べ物を落として「3秒ルール」は誤り、研究者が実証。床に落ちたらすぐ汚染、時間とともにバイ菌付着量も増加
広告

0 コメント

広告