磯風の料理修行メニュー
初めて書き込みますので、至らぬ点等見受けられましたらご容赦ください
磯風「なぁ、司令よ」
提督「どうした?」
磯風「やはり人の子であれば、料理が上手い人間に惹かれるのが道理か?」
提督「(何か嫌なことを言い出しそうな雰囲気だな…)」
提督「そりゃあ料理が出来るに越したことはないが、誰かの魅力はそれだけでは推し測れないぞ」
磯風「そうだろうか。司令も男なら、一度は夢見るだろう?司令が激務をこなし、電車か車で帰宅し、玄関を開けたら愛する女性がお玉とエプロン姿で、『お帰りなさいアナタ!ご飯にする?お風呂にする?それとも…タ・ワ・シ?キャー!///』と言ってくれるのを!」
提督「なんかちげぇよなソレ?まあ細かい部分は置いておき、言われて悪い気はしねぇよ」
磯風「そうだろう!司令もお玉を持った伴侶にタマを弄くられたいだろう!?だがな、それにはある条件があるのだ」
提督「条件?」
磯風「そうだ。想像してみろ。新婚の二人。愛の巣はちょっと手狭なアパート。これから子を作り、大きな家を手に入れるには贅沢は出来ない。日々倹約し、工夫を凝らし、我が儘は控え節制に努めなければならぬ」
磯風「けれどもせめて、料理くらいは期待してもいいではないか?家族を養うため、企業戦士と化した提督の毎日の楽しみは、妻の手料理にこそ詰まっている!」ドン
提督「机に足を乗せるのをやめろ。それで?」
磯風「そうだ、これからだ!ここからが本題だぞ!?」ズビシッ
提督「人を指差すのやめろ。それで?」
磯風「食事は日々の活力だ!健康の面でも精神衛生の面でも、重要なのは言うまでもない!だが、もしも妻の料理レベルが低かったら、どうする?」
磯風「アパートは狭いのだぞ?キッチンだって玄関から見えるに決まってる!今日の晩御飯はなんだろうな~とウキウキ帰って来た司令が第一に目にしたものが、私の料理だったらどうするつもりだ!?」
提督「卒倒するかもわからんな」
磯風「うぅ…ずばり言ってくるな…。まぁ、そういうことだ。鍋から黒い煙がふすふすと立ち込めているなんて、ギャグでしかないだろう?百年の恋も一気に冷めるというものだ」
磯風「せめてもの楽しみすら不意にされた提督の悲しみは止まるところを知らない。ストレスはマッハ、髪の毛はハゲ散らかし、生理不順で子供は出来ず、やがて二人の愛は瓦礫のように崩れ去っていく…。私はそんなの、嫌なんだ」
提督「いつ、誰がどこでお前とケッコンすると言ったよ…」
磯風「それを回避するための手段が、私が料理を覚えることなのだ!」
提督「聞いちゃいねえな。まあいいや」
提督「ところでお前、急にどうしたんだ?」
磯風「どう、とは?主語は明確には」
提督「いやいや、お前、この前までは料理が下手なのをたいして気にしてなかっただろ?なんでその考えを改めるに至ったのかを尋ねてるんだよ」
磯風「あぁそのことか」
磯風「いやなに。私とて女だ。殿方に喜ばれる作法の一つや二つ、覚えておこうと思ってな?」
提督「七輪でサンマを焼いて、危うく庁舎を焼け野原にするところだったお前がか?」
磯風「んな!?知っていたのか!消火は浜風達と迅速に行ったハズ…!」
提督「その浜風から報告があったんだよ。サンマを二尾焼いてたら、火災旋風が発生したなんて誰も忘れるワケねーだろ…」
提督「その時浜風はもう一つ報告してくれたよ」
磯風「な、なんだ?」
提督「お前がもう、料理はこりごりだから二度とやらんと言っていたとな。すぐに忘れたみたいだが…」
提督「そんなお前が、料理の腕を上達させなたいなどと言うとは、よっぽどの理由があるに決まってる。本当のところはなんだ?」ジロリ
磯風「うぬぅ…。そう睨むな…」
提督「お前の場合はシャレにならんからな。多少厳しくいかせてもらうぞ」
磯風「わかったよ。言うよ…」
磯風「…司令のバカモノめ…」
回想
―食堂―
間宮「お待たせしました、提督!日替わり定食の大盛りです!」ドドン
提督「おぉ、悪いな間宮!時間外に使ってしまって」
間宮「いえいえ、とんでもありません!これが私の仕事ですから!」
間宮「それに、何か所用があればいつでもお申し付けくださいね?提督の喜びが、私達の喜びにも繋がりますから!」
提督「ははっ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
提督「それなら、三時頃になったら茶を淹れるようにしてくれないか?駆逐艦の子達が菓子をくれるんだが、甘いのなんの…口をずっきりしたい」
間宮「はい、喜んで!毎日淹れてさしあげます!」
間宮「(ハッ!?今のって求婚ぽかったような…いえいえ、考えすぎ考えすぎ!)」ブンブン
提督「どうかしたか?」
間宮「あーいえ!?なんでもないですよ!アハハハハ…」
―食堂前廊下―
ワイワイ
磯風「おや?こんな時間に、食堂から声が」
磯風「司令じゃないか。今から昼食か?結構な量を食べるのだな…」
磯風「…なんだろう。間宮さんと楽しくしゃべっているな…」
磯風「……」キキミミ
間宮「提督は、どんな女性がお好きですか?」
提督「どんなってこともねぇよ。当たり前のことが、普通に出来ていれば構わん」
間宮「うーん…でも、それだと女の子がよってきたとき、アピールのしようがありませんよ?」
間宮「たとえば…料理が上手な子なんてどうでしょう!?男性の心を掴むには、まず胃袋からと申しますものね。これは提督も望むところなのでは?」
提督「そうだな。美味いものを食べるのは好きだ」
提督「…そういや、この鎮守府には料理が上手いやつが多いよな。間宮もそうだが、瑞鳳とか、川内も中々のものだと神通から聞いた」
間宮「……」
間宮「そうだわ!栄養の整った美味しい料理を作れるのも大事ですが、嗜好品も大事です!デザートのバリエーションが豊富な子も、良いと思いません?」
提督「そうだな。最近は抹茶の菓子なんてのも聞くし…甘さが控えめなら文句なしだな」
間宮「…!ですよね!時代はやはり、低カ口リーなお菓子ですよ!」
間宮「(提督は甘くないのが好みということ?この情報は、今初めて聞きました。ということは、これは大きなチャンス!やったぁ!)」
提督「甘さ控えめと言えば、萩風が作るものは俺好みなんだよな。なんか菓子に野菜が練り込まれてるとかで…面白いアイデアだと思うよ。今度作ってみてくれないか?」
間宮「……」
間宮「料理もお菓子も大事ですが、提督の疲れた体を癒してあげるのも重要な役割です!マッサージができる子も、良いと思いませんか?」
提督「(露骨に自分を推してきているな…)」
――――――
磯風「…………」キキミミオワリ
磯風「料理…か…」
回想終わり
磯風「と言うわけだ」
磯風「なんだ。こめかみを押さえて、どうかしたのか?」
提督「いやなに…自分の発言の軽率さを恨んでいるところだ」
提督「なるほど、わかった。俺と間宮の話を聞き、一念発起して、もう一度料理を、と」
磯風「そうだ」
提督「確かに料理が出来るに越したことはないし、誰かを労えるようになりたいという思いも立派だが…」
提督「……」
磯風「……」
提督「率直に訊こう」
磯風「うむ」
提督「諦める気は?」
磯風「微塵も」
提督「俺がダメと言ったら?」
磯風「はっ倒しても突き進む」
提督「病床に伏す者が増えると聞いても?」
磯風「挑戦に犠牲は付き物だ」
提督「………」
磯風「………」キラキラ
提督「(どうする!?動機がどうであれ、磯風がしたいと言っていることを無下にはできん。しかも料理。他の連中がやっていることを、コイツ一人にだけノーとは言えん!)」
提督「(たとえ完成したものが、およそ料理とは言えなくても、だ!)」
提督「(なにより……)」チラ
磯風「司令……どうだろうか?」ウワメヅカイ
提督「ぬぅ……」
提督「(至近距離で、瞳を潤ませ、髪の毛を机に垂らし、か細い声で懇願する姿……。クソッ、断りきれん!)」
提督「はぁ……」
提督「わかったよ」
磯風「本当か!?」パアアア
提督「ただし、条件が一つ。一七駆の連中のうち、誰かが必ず一緒にいること。いいな?」
磯風「御安いご用だ!」ドヤア
提督「なぜ得意気な顔をする…」
磯風「ふっ。見ていろ司令。お前がむせび泣いて歓喜する料理を作ってやる!」ドドン
提督「悲しみの涙を流すよりはマシだが…」
磯風「……」
提督「……?どうした。犬みたいに頭を突き出したままの姿勢で。まだなにかあるのか?」
磯風「いや…せっかくだから、な?」
提督「言わなきゃわからんぞ」
磯風「ええい、バカモノめ…」
磯風「雪風達にいつも、やっているだろう? 」
磯風「頭を撫でてくれ」
提督「なんで」
磯風「雪風達はいつも嬉しそうだ。司令の手には、それだけの力があるのだと推測する。だから私も…な?」
提督「……」ナデナデ
磯風「お。ふむ……ほぅ。悪くない」
提督「……」ナデナデ
磯風「むむ、中々に抗いにくい…。司令の手はやはり大きいな」
提督「……」ナデナデ
磯風「うぅ…なんだか体が熱くなってきた…。し、司令?もう、いいぞ」
提督「……」ナデナデ
磯風「はぅ…しれい…もう…そろそろ…」
提督「……」パッ
磯風「あっ…」
提督「磯風」
磯風「な、なんだ?」カアアア
提督「とりあえず、楽しみにしている。とだけ伝えておこう」
磯風「!」
磯風「あぁ。任せておけ!とびきり美味いものを拵えてやるさ!」
コメント一覧
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- 2016年10月02日 22:32
- なんか既視感あると思ったらシエスタとアンリエッタなのか
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- 2016年10月02日 22:38
- 史実が最大の敵か…
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- 2016年10月02日 23:26
- 陽炎型大好き提督の俺にはたまらん
陽炎もしっかりお姉さんしてたし