870 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 15:48:26 ID:6uDf8ng3O [1/3]
 今日も今日とて、ファミレスで仕事をしていると…
 隣のテーブルに、親子が座ったんです。
 妙に若作りしてる茶髪のお母さんと、中学一年生ぐらいの兄、そして小学校低学年
ぐらいの妹です。
 まあ、どこにでもいる家族連れだなあぐらいにしか思ってなかったのですが……驚
きました。
母「ほら! 早く決めなさいッ! ったく、トロいんだから!」
 お母さんが、デフォルトでキレてるんですよ。
 子どもがなにをしても、怒鳴りつけるんです。
妹「それじゃ、わたしカレーにするー」
母「そ。わかった」
妹「わたし、カレー好きー」
母「うるさいな! そんなこと聞いてないでしょ?!」
 カレー好きって言っただけじゃん!
 なんで、怒鳴るんだよ?!ヽ( `Д´)ノ
 お兄さんの方は、もうこのお母さんに呆れてるのか、
兄「…………」
 無表情でそっぽ向いたまま、一言も喋ろうとしません。注文を決める時もメニュー
を指さしただけ。
 関わり合いになるのを、極力控えているみたいです。
 料理が届いてからも、お母さんはキレっぱなし。
妹「いただきまーす」
母「黙って食べなさい」
妹「……ショボーン(´・ω・`)」
兄「…………」
 ただカチャカチャと鳴り響く、食事の音。
 さっさと自分だけ平らげた母親は、タバコ吸いながらケイタイをいじり始めました。
 やるせねぇ(\\\\\\\\\\\\\\\'A`)





872 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 15:54:15 ID:6uDf8ng3O [2/3]
 すると突然、妹が明るい顔をして口を開いたんです。
妹「あ、そだ、お母さん! 聞いて聞いてっ! あのね! えとね! 今日、学校で
ね、とってもいいことが……」
母「うるさい! 食べてる時は騒がないの! 周りの人に迷惑でしょ!」
 ちっとも迷惑じゃないよ! うるさいのは、アンタだよ!
 むしろ、そのコの話、聞いてあげてよ!
 怒鳴られてびっくりした妹が、カレーをテーブルにほんのちょっと落としちゃった
んですが…
母「あーもー! 汚いな! なんでちゃんと、食べられないの?! 綺麗に食べなさ
い! 綺麗に! あーもームカツク!」
 烈火のごとく、怒る母。
 そんなに怒るほど、こぼしてないだろー?!ヽ( `Д´)ノ
妹「うう…ごめんなさい……」
 ブツブツ文句いいながら、母親はケイタイをいじくっている。
 妹は涙目。兄は一言も喋らずに、黙々と食べています。
 まるでお通夜みたいな雰囲気に包まれたテーブル。
 こんな食事、楽しいはずがない。
 すると。
 母親のケイタイが鳴り始めました。
母「ちょっと、お母さん、電話してくるから。サッサと食べちゃってね」
 そう言い残して、ケイタイ片手に母は店から出ました。
 電話するヒマがあったら、我が子としゃべれよ!
 子育てを経験するどころか、恋人もいない僕には言う資格がないかもしれませんが、
それでも言いたい。
 もうちょっと、子どもとの接し方ってもんがあるだろ。それじゃ、あまりにも可哀
想だろ。子どもがグレてからじゃ遅いんだぞ、ゴルァ( `Д´)
 と、隣のテーブルで、私はキレまくっていたんですが……
 妹のようすを見て、怒りも吹き飛びました。
 そのコは、涙目のまま、一生懸命カレーを食べてたんです。
 お母さんの言いつけを守りたいから、ゆっくり食べていたら怒られてしまうから…
…味わう余裕もないぐらい、急いで食べてたのです。


874 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 15:59:23 ID:6uDf8ng3O [3/3]
 もともと、食べるのが遅い子なのでしょう。焦っているからか、口の周りをべそべ
そに汚してしまっていて……
 きっと、それをまた怒られてしまうのに、それすらも気付かずに必死にカレーをか
き込んでいたんです。
 目にいっぱい涙を溜めて。一生懸命に。あぐあぐ。
 そのコが健気で不憫で、しうは泣きそうになってしまいました。
 もうね、この世には親子の情はないのかと、寂しい気持ちになってしまいましたよ。
 あんなお母さんはやめて、お兄さんチの子になれと、そう言って抱きしめてあげた
くなったほどです。
 そのとき。
 一言も喋らなかった兄がボソッと言ったのです。
兄「……そんなに急がなくてもいいよ」
妹「え?」
兄「ゆっくり食べな」
妹「で、でも……お母さんが」
兄「いいから。好きなんだろ、それ」
妹「うんっ」
 兄は、チラッと母親が出て行った出口の方を確認しつつ…
兄「で? なにがあったって?」
妹「???」
兄「学校でいいことあったんだろ」
妹「う…うんっ! あのね! えとね! 今日学校でね!」
 妹は、楽しげにしゃべり始めました。他愛もないことだったんですが、とっても嬉
しそうに。
 きっと、聞いてもらえるだけで嬉しいんでしょう。さっきまで涙目だったのに満面
の笑みを浮かべています。
 兄は、にこりともせずに話を聞いてあげていたのですが、
兄「そっか。良かったな」
 と言って、妹のべそべそになった口元を拭いてあげたのでした。