ニュージーランドのとある小島には40年前に作られたカツオドリの営巣を促すためデコイ(鳥の模型)が多数設置されている。デコイをたくさん置いて本物のカツオドリが、仲間の姿と間違えて引き寄せられ、定着してくれることを期待した作戦である。
当時まったく効果があがらず長年放置されてきたが、4年ほど前、色あせたデコイを一旦撤収し、ボランティアの手によって本物そっくりな色彩で塗り替えられ再度この作戦が始まった。
それでもリアル・カツオドリが近寄ることがなく、やっぱりダメか… と思った矢先、昨年の11月にようやく待望のリアル・カツオドリがデコイのもとにやってきた。
だがそれは予想外の結果となった。やってきたのはオスのカツオドリ1羽だけ。つがいの相手に恵まれなかった彼は、80体あるデコイのなかの1体に恋し、求愛を始めたのである。その不毛ながらも切ない様子が海外サイトにて取り上げられていた。
Mana Island, NZ - Nigel the gannet wooing his concrete mate
ニュージーランド北島の沖にあるマーナー島には、本物のカツオドリの巣作りを促すため、コンクリートでできたカツオドリのデコイの群れが置いてある。そのデコイたちが最初に島に設置されたのはおよそ40年前だ。
これら80体のデコイは、1976年にカツオドリが安心して巣作りができるようにと設置されたものだが、島の西側に設置されたまま、まったく管理がなされず雑草に埋もれていた。
image credit:PHILIPPA SARGEANT
2012年、草に覆われた状態で発掘されたデコイたちは、草を取り払われ、島の別の場所に設置された。更にソーラー電池式の音響システムを設置して鳴き声を流し、本格的に海のカツオドリの呼び込み作戦が行われることとなる。
周りには偽物の鳥のフンも置いてあるほどの凝りようだ。毎年定期的にボランティアによって周辺の除草やデコイの色を塗り直すなどの管理が行われるようになった。
期待された作戦だが、肝心の鳥はなかなかやってこない。だが昨年11月、ついにデコイたちは1羽のカツオドリを引き付けることに成功。しかしそれは予想外の展開をみせた。
image credit:SUPPLIED
そのオスのカツオドリの目当てはある一体のデコイだった。彼はそのデコイに一目ぼれしてしまったようで、泥と海藻を運び、せっせと彼女との愛の巣を作り始めたのだ。
本物のメスとつがいになれなかった彼は、デコイの彼女にすべての愛を捧げた。大勢のデコイに見守られながらせっせと巣作りをするオスのカツオドリはいつしか人々の間で「ナイゲル」と呼ばれるようになった。
image credit:HELEN GRAY
マーナー島のボランティアの一人は除草中に、ナイゲルが首を上下に動かし彼女に求愛をしているところを目撃したという。ナイゲルは人目をはばかることなくせっせと求愛行動を続けていたという。
オレ、オマエ、イッショウ、アイスル
コノアイ、ソラニチカウ
image credit:HELEN GRAY
島の住民の話によると、ナイゲルは別の繁殖地を追われた若いオス鳥の可能性が高いという。地元の行動生態学の専門家の話によると、カツオドリの繁殖地の多くは満員になっていて、新しい鳥を入れる余地はない状態だという。
ナイゲルは自暴自棄になっているようにみえるという。一生彼を傷つけることはないが、振り向いても愛してもくれない、かりそめの鳥、デコイ。彼がいつかそのことに気が付いて、学習すれば二度とこうした行動をしなくなるだろうという見解がなされている。
via:arbroath、stuff・translated D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
人間だって今こんな感z
2. 匿名処理班
おじさんも人間の女性よりフィギュアのほうが好きだよ
3. 匿名処理班
せつねえよ(泣)
4. 匿名処理班
おお、ピグマリオン…
5. 匿名処理班
かなしい。。
6. 匿名処理班
「ナイゲルになりたくなければ早く子供を作れ」という大人の創作を感じます。
7. 匿名処理班
ナイゲル「なまえは?」
デコイ 「デコイちゃん」
ナイゲル「カツオドリをすきかい?」
デコイ 「カツオドリが好きだわ」
ナイゲル「こんど繁殖でもしよう」
デコイ 「繁殖でもしましょうか」
ナイゲル「いつしよう」
ボランティア「お客さん、あんまりからかっちゃあ、いけませんよう」
8. 匿名処理班
悲しいなぁ…
9. 匿名処理班
来世のおれか、
10. 匿名処理班
なんか切ないデコイをそっと外してやれよ
そしたら諦めるんじゃないの
11. 匿名処理班
「世にも奇妙な…」の鶴瓶思い出した
12. 匿名処理班
今の俺や
13. 匿名処理班
繁殖地が溢れたって話なら、その内他の鳥も来るようになるのかなぁ
14. 匿名処理班
せつナイゲル……
15.
16. 匿名処理班
リアル「恋するニワトリ」か。
17. 匿名処理班
※7
最後は毒を盛られて静寂が訪れてしまうよ
18. 匿名処理班
似たようなやつがいて
ほっとしたわ
人間も所詮動物さ!
19. 匿名処理班
※17
ボッコちゃんとかだっけ?星新一の
20. 匿名処理班
人間と同じだというけど、研究者の見解ではデコイだと気付けばもうやらないって事だよね。
人間の大きなお友達はデコイだと解った上で…おっとこれ以上いけない
21. 匿名処理班
コッペリア書きに来たらもう書かれてた。
でも彼、意外と幸せかもなあ…とオタクの一匹として共鳴したり。
22. 匿名処理班
悲しい
23. 匿名処理班
ナイゲルがこの島を見つけた時の胸の高鳴り
24. 匿名処理班
日本の鳥島にもデコイに惚れたアホウドリがいたとか
デコイNo22で調べると出てくる
25. 匿名処理班
アホウドリでもデコイ相手に求愛する話があったな。最近は鳥は頭が良いと言われるけど、こういう場合だと良くなさそうにも見える。
26.
27. 匿名処理班
繁殖地からあふれるのはオスだけと言う未来が見えます
28. 匿名処理班
なんかえぐられる
うちにも母さんに求愛行動とるインコがいるけど
母さんデコイじゃないから一応「ごはんはいいのよ」って返事してる
この子にはそういう反応もないんだね;;
29. 匿名処理班
なにこの切ない話
カツオドリの寿命がどれくらいかは知らないけど、どうか次の恋では幸せになっておくれ
※15
谷山浩子さんの歌かな?
30. 匿名処理班
ブラックジャックでもあったな
マネキンの警備員人形に本物の警備員が恋する話
31. 匿名処理班
ナイゲル「国を追われて孤独に漂うばかりの日々だった。
もう仲間に会うこともなく、そのうちあの極悪な吸血鬼に肉を削がれて死んでしまう、
そうやって絶望にふける旅路だったけど、ついに仲間たちの集う楽園を見つけたんだ。それに…彼女とも出会った。僕を追い出した国では絶対にお目にかかれない程の美しさの…
そう、彼女さ」
32.
33.
34. 匿名処理班
(´・_・`)せつねぇ…
35. 匿名処理班
幸せになってほしいと心から願う(/_;)
36.
37. 匿名処理班
そんなのナイゲル・・・
38. 匿名処理班
正直このデコイの群れがいるから他の本物の群れが近寄らないのではないかと思ってしまう
更に若く健康な個体のカップリングチャンスを無駄に消費しているし
きちんと終わりのけじめをとれない発情は生殖器系の疾患も誘発してしまう
さっさとデコイ撤去してしまった方が良いと思うなぁ
39. 匿名処理班
ナイトスクープの「マネキンと結婚式を挙げた女性」を思い出した。
あの女性は最終的に人間の男性と普通に結婚したらしいけど。