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激しい紛争の続くシリアで、非武装で命がけの救助活動を行っている民間機関がある。「ホワイトヘルメット」と呼ばれるこの民間防衛隊は、これまで6万人以上の命を救い、残された市民の安全確保に努めている。
2013年に発足したホワイトヘルメットのメンバーは全員ボランティアで2200人ほどだ。様々な宗教や職業の人が中立的な立場で献身的な救助活動を続けている。その活動が評価され、今年8月にノーベル平和賞にノミネートされたのだが、残念なことに受賞には至らなかった。
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5時間前に起きた空爆で瓦礫となった家の下から、泣き叫ぶ女の子の赤ちゃんが救助された。紫の服を掴んで引っ張り出した救助隊員は、別の隊員の手に彼女を渡した。
「救急車を!」と叫ぶ。別の隊員は、興奮した声で「アッラーは偉大なり!」と叫んだ。少女の髪はほこりをかぶり、顔は血まみれだ。
カメラに一瞬だけ映った小さな顔には苦痛と混乱の表情がにじむ。続いて血だらけの手を揺らす少年が1人救助された。さらに子供2人が引っ張り出されたが、すでに事切れていた。隊員たちは”ホワイトヘルメット”と呼ばれるシリアのボランティア市民救助隊だ。遺体を毛布に包むと、周囲の人が何事か呟く。
The group was considered a top candidate for the prize
この場面は、シリア反政府勢力が支配するアレッポ西部のバシュカティーン(Bashqateen)という小さな農村で9月23日に撮影された。ホワイトヘルメットの隊員にとっては日常である。
映像の中で少年を瓦礫から救助していたモハメド・アティークさん(35歳)は、「瓦礫の下の死体を見ることに慣れてしまいました。瓦礫から聞こえる悲鳴もね」と話す。
ノーベル平和賞にノミネート
約6万人を救助したことでノーベル平和賞の候補者としてノミネートされたホワイトヘルメットだが、賞はコロンビア内戦終結に尽力したフアン・マヌエル・サントス大統領に贈られた。
これについて隊員は大統領への祝辞を送っている。発表後まもなくして「コロンビア大統領のノーベル賞受賞を祝福します。コロンビアの人々に平和があらんことを」とツイッターにコメントが投稿された。だが、それから隊員の1人がシリア南部のダルアーで命を落とすという悲報に見舞われた。またハマーでも施設が爆撃の標的となった。
アサド政権と反政府勢力との戦いは激化し、ホワイトヘルメットはすぐさま任務に戻った。ロシア空軍の支援を受ける政権側は、ここ数週間でアレッポに対して苛烈な空爆を遂行。数百人の死者が出ているほか、病院などのインフラも破壊された。
シリア内戦を担当する国連のスタファン・デミストゥラ特使は、空爆がこのまま続けば、アレッポ東部全体が2ヶ月半で壊滅すると懸念を表明。スブレニツァやルワンダの二の舞は避けねばならないと発言した。
シリアでは日々悲劇が生まれ、その多くが映像に残されている。救助活動に加えて、国内の出来事を記録に残すこともホワイトヘルメットの大切な使命なのである。
9月23日の朝、爆撃機が轟音を上げながらアレッポ西部の田舎に侵入してきたとき、まだ眠っている子供たちもいたことだろう。爆撃の標的とされた1軒の家には、アレッポの戦いから逃れてきた4家族が住んでいた。空襲によって崩れ去り、15人が死亡。5人が生き残った。隊員はロシア軍による空爆だったと考えている。
空襲があったのは午前9時。それから15分後、隊員3人が駆けつけた。カメラに収められていた救助と遺体回収作業は8時間にも及ぶものだった。救助された生後8ヶ月の女の子の名はシャムス。少年は2歳になるいとこだ。母親は2人が寝ている間に犠牲となった。
バシュカティーンでの救出はほとんどニュースにならなかったが、同日アレッポでなされた別の救出劇がオンラインで公開された。やはり空爆で瓦礫となった建物から少女を救出する場面は世界中のメディアに注目された。
この長く、人々を疲弊させる戦争の象徴は子供の犠牲者だ。
8月、ヨーロッパとアメリカのメディアでは、”救急車の少年”と題された血まみれの顔の少年が取り上げられた。2014年には、生後わずか10日の赤ちゃんが瓦礫の中から救助され、”奇跡の赤ちゃん”と報じられた。少年を助けた救助隊員は当時英雄扱いされたが、2016年8月アレッポにおいて迫撃砲が命中し命を落とした。アサド政権とロシアによる空爆が続く中、アレッポでは救助隊員によっていたるところで奇跡の赤ちゃんが救出されている。その多くはほとんど知られることがない。
9月、空爆によってアレッポにあったホワイトヘルメットの4階建の施設が破壊された。だが、隊員は活動を続けざるをえない。爆弾が落ちてくる限り、早急に瓦礫まで駆けつけ、市民を助けなければならない。「神の意志によってこの活動は続けさせられています。罪のない人々の魂を救う人道的な任務です」とアレッポ東部で活動するイスマイル・モハメドさん(31歳)。「それ以外、やることは思いつきません」
9月30日、アレッポ近郊でまたもや爆撃が行われた。隊員は2時間かけて瓦礫を掘り、女性1人と2人の子供を救助。子供の1人はまだ生後1ヶ月の女の子だった。ひたいから血を流し、小さな音を立てている。もっとも新しい奇跡の赤ちゃんだが、最後の1人ではないだろう。
Syria's White Helmets - Witness
via:time・nytimes・aljazeeraなど
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コメント
1. 匿名処理班
弾が彼らを避けますように。ていうかさっさと銃声がやみますように
2.
3. 匿名処理班
がんばれ
がんばれ
4.
5. 匿名処理班
がんばれ
正義の味方
6. 匿名処理班
きつい現実だな
7. 匿名処理班
すごすぎだろ…
8. 匿名処理班
次のノーベル平和賞はこの人達で決まりでしょ
シリア内戦に対して始終事なかれな国連のトップなんかよりずっと相応しい
9. 匿名処理班
いろんな意味で悲しい現実。
10. 匿名処理班
国連何してる お願いだから
11.
12. 匿名処理班
神なんかいない。
いるとすれば彼らのような高潔な魂とその行いをこそ神と呼ぶべきだろう。
13. 匿名処理班
戦争、救助、傍観 全て人の行為
非難、賞賛、無関心…
そうかと言って、全てコントロールされた世界を人は望むかというとノーであり
しかしそうでなければ理想の世界は永遠に訪れない。
全てを受け入れ混沌の中でしか人は生きられないの?
14.
15. 匿名処理班
読んでいて胸が苦しくなった…
16. 匿名処理班
彼らの成してる事と矛盾してしまうが、こう言う事出来る人がこんな紛争で失われたらソレこそ人類の損失だ
こう言う人達こそ何とか生き延びて欲しい
17. 匿名処理班
破壊するのも人間ならば、手を差し出すのも人間か…
18. 匿名処理班
1分でも早くこの馬鹿げた争いが終わりますように…
もうたくさんだよ!
19. 匿名処理班
尊敬するなぁ
こんなに頑張って人助けをしている人達がいるというのに破壊ばかりしてる馬鹿がいるのは悲しいな
20. 匿名処理班
自分には何も出来ないことで、無関心になって行く。
ただ、彼等は日本で似たような事が起きた時、自分たちに出来ることを示してくれる気がする。
21.
22.