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京太郎
2
誓子
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10: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 00:36:32.97 ID:53c6G4Q50



エイスリン「シロ!」


白望「エイスリン? なんでここに」

エイスリン「キョータロモ、イル」

京太郎「よう、一ヶ月ぶりぐらいか」

白望「……どういうこと?」

エイスリン「I don't know. キョータロ、ナンデ?」

京太郎「あー、俺とエイスリンがはとこなのは知ってるよな?」

白望「……ちょいタンマ」


白望「まさか、私と君も親戚ってオチ?」


京太郎「特にひねりがなくて悪いけど、俺とお前もはとこなんだってよ」

白望「ダル……」


11: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 00:42:48.84 ID:53c6G4Q50


白望(でも、似てる似てるって言われてたのにはちょっと納得できたかな)


京太郎「まあそういうわけなんだ。犬に噛まれたと思って諦めてくれ」

白望「別にいい。君はともかく、エイスリンとも親戚だったってことだし」

エイスリン「ウン、Meteor」

京太郎「隕石? ……ああ、姻戚か。また高度な技術を」


小蒔「京太郎様ー!」パタパタ


京太郎「小蒔」

小蒔「はい、お待ちしておりました」

エイスリン「オヒサ?」

小蒔「あ、そうですね。お二人もお久しぶりです!」

白望「ちょいタンマ、これって……」

京太郎「ああ、永水の連中も俺の親戚みたいでさ。まぁ、お前らからすれば姻戚か」

白望「なにこれ、ダル……」



12: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 00:50:57.56 ID:53c6G4Q50



小蒔「じゃあ、こちらでちょっと待っててくださいね」

京太郎「ああ、俺はちょっと仮眠とるから」

小蒔「お布団用意します?」

京太郎「いや、ここはあったかいし適当に横になってるよ」

小蒔「風邪、ひかないでくださいね?」

京太郎「はは、そしたら小蒔に看病してもらおうかな」

小蒔「――! ちょ、ちょっと部屋の温度を……!」

京太郎「わ、わざわざ寒くする必要もないんだからな?」

小蒔「そう、ですね……」シュン


エイスリン「Hmm……」

白望「なんというか、またわかりやすいね」

エイスリン「オニミコ、テゴワイ……」

白望「鬼巫女って……」


13: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 00:58:00.16 ID:53c6G4Q50


小蒔「それではまた後で」


京太郎「ふわぁ……」

エイスリン「マダネムイ?」

京太郎「ああ、ちょっとな」

白望「神代さん、ちょっと忙しそうだったね」

京太郎「下の方で一般客向けに縁日みたいなことやってるからな」

白望「なるほど、そのお手伝い」

京太郎「そうだ、せっかくだし二人で遊びに行ったらいいんじゃないか?」

エイスリン「キョータロハ?」

京太郎「少し休んだら合流する」

白望「待っててって言われた気がするんだけど」

京太郎「あ、そうか……」


霞「あら?」


14: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:04:07.74 ID:53c6G4Q50


京太郎「よ、お邪魔してる」

白望「どうも」

エイスリン「コンチャッス」

霞「久しぶりね。もう着いてたの」

京太郎「忙しいのか?」

霞「まだそれほどでもないけれどね」

白望「他の人は?」

霞「これから巴ちゃんと春ちゃんと一緒に下の方に行くつもりなの」

エイスリン「チッコイノハ?」

霞「明星と湧ちゃんなら下でお手伝いしてるはずだけれど……初美ちゃんは、ね」

京太郎「含みのある言い方だな」

霞「ちょっと反省してもらってるだけよ?」ニコッ

エイスリン「――っ」ビクッ

京太郎「あいつは一体なにをやらかしたんだ……」


15: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:09:44.02 ID:53c6G4Q50


京太郎「まあいいや、せっかくだし二人のこと頼む」

霞「あなたは?」

京太郎「俺は小蒔を待ってる。眠いしな」

霞「ふんふむ……」


霞(せっかくだし、二人きりにしてあげましょうか)


霞「わかったわ、それじゃあ行きましょうか」

エイスリン「ヤタイ、タノシミ!」

白望「寒いからここにいたい……」ダルダル

エイスリン「Nah! シロモ!」グイグイ

白望「うあー」ズルズル


京太郎「さて、俺はちょっと休んでよう……ふわぁ」ウトウト

京太郎「やばいな、思った以上に眠い――」



16: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:17:56.86 ID:53c6G4Q50



初美「はぁ……やっと終わったのですよ」

初美「物置の整理をさせるなんて……霞ちゃんは鬼畜すぎなのですよ!」

初美「私がお遊びで入れたわさび入り饅頭が当たったからって……もう!」

初美「こうなったらあとはサボってのんびりしちゃいますかー」


小蒔「初美ちゃん?」


小蒔「お疲れ様です」

初美「もうクタクタなのですよー」

小蒔「霞ちゃん、怒ってましたからねぇ」

初美「菩薩の笑みで閻魔の所業なのですよっ」

小蒔「初美ちゃんのイタズラは楽しいけど、ほどほどにですよ?」

初美「は~い……って姫様に注意されると新鮮ですねー」

小蒔「もう、私だって言う時は言いますっ」

初美「姫様も成長しましたねー」ウンウン


17: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:26:27.71 ID:53c6G4Q50


初美「ところでその掛け布団は?」

小蒔「これですか? 寒くないようにです!」

初美「用途は丸分かりなのですよ。姫様これからお休みしちゃうですか?」

小蒔「京太郎様が寝ているから、風邪をひかないようにって用意しちゃいました」

初美「あー、もうそんな時間なのですね」


初美(どうりで外が暗い暗い)

初美(もう下の方ではなにやら始まってるころですかね?)


小蒔「それじゃ、ゆっくり休んでてくださいね」

初美「姫様は思う存分イチャイチャしてくるといいのですよ」

小蒔「初美ちゃんったら……もう!」テレテレ


18: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:35:19.92 ID:53c6G4Q50


「姫様ー? こちらで見ていただきたいものが――」


小蒔「あ……呼ばれちゃいました」

初美「私が行ってきてもいいのですよ?」

小蒔「呼ばれているのは私ですから。それに、初美ちゃんは疲れちゃってます」

初美「本当にいいのですか?」

小蒔「かわりにこの掛け布団を届けてくれますか?」

初美「それぐらい楽勝なのですよ」

小蒔「じゃあ、お願いしますね」

初美「はーい」



19: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:42:57.36 ID:53c6G4Q50



初美「失礼するのですよーっと」ガラッ


京太郎「――zzz」


初美「本当に寝てますねー」ツンツン

初美「さて、姫様から承った任務を果たしちゃいましょうか」

初美「よい、しょ……」パサッ

初美「ふぅ、らっくらくなミッションでしたねー」

初美「それにしても……」


京太郎「ん~」ムニャムニャ


初美「こうも無防備だと、イタズラsたくなっちゃいますねー」

初美「……よし、しちゃいますか」

初美「今まで恥ずかしい思いをさせられてきたお返しなのですよ……!」

初美「とりあえず、顔に落書きでも――」


20: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:48:41.34 ID:53c6G4Q50


京太郎「ん……るっせーな」グイッ

初美「――ひゃわ!」


京太郎「この抱き枕、いー感じ……zzz」ギュッ


初美(どっ、どどどっ、どういうことなのですか!?)

初美(掛け布団の中に引きずり込まれて……だ、抱きしめられて)

初美(マズい、この状況はマズいのですよ……!)

初美(なんとか抜け出さないと――)


初美「ん~」ググッ

京太郎「――zzz」ギュッ

初美「んん~~っ」グググッ

京太郎「――zzz」ギュウウ


21: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 01:58:01.24 ID:53c6G4Q50


初美(――ビクともしないのですよっ)

初美(力強すぎなのですよ! 腕だってこんなにたくましくて……胸板も)キュン

初美(……なんなのですか、今の)


初美「もう、仕方ないのですよ」


初美(抜け出せなんだから、どうしようもないんだから)

初美(このまま寝ちゃっても問題ないに決まってるのですよ)

初美(私、疲れちゃってますから)

初美(でも、姫様に見つかったらマズいですかね?)


初美「……それも、深く考えないことにしちゃいましょうか」


初美(深く考え過ぎたら、霞ちゃんみたくなってしまいそうですしね)


京太郎「あったけぇな……」ムニャムニャ

初美「ほんと、暢気なのですよ……ふわぁ」



22: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 02:04:49.22 ID:53c6G4Q50



京太郎「んっ……」

京太郎「ああ、寝てたんだっけ」

京太郎「掛け布団、小蒔が用意してくれたのかな?」パサッ


初美「――zzz」


京太郎「……なんでやねん」


京太郎(状況の整理からはじめてみよう)

京太郎(俺は一人で寝ていた……これは寝る前の状況からも明白だ)

京太郎(つまり、こいつは俺が寝ている最中にここに入り込んだことになるな)

京太郎(……なんだろうか、最近はそういうのがはやってるのか?)

京太郎(昨日の夜はエイスリンと……いや、思い出すとなんとも言えない気分になるからやめよう)


京太郎「さて、どうするかな」


23: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 02:14:17.74 ID:53c6G4Q50


京太郎(イタズラ目的だろうし、こいつを起こしてデコピンでも食らわせてやってもいいんだけど)

京太郎(よくよく考えたら、掛け布団を持ってきてくれたのはこいつだって可能性もあるんだよな)

京太郎(そうなると、あんまりぞんざいにするのはどうかと思うし)

京太郎(……よし、決めた)


京太郎「起こさないように……っと」ソロー


京太郎(このまま寝かしといてやるか。んでもって俺は小蒔を探しに行こう)

京太郎(平和的解決ってやつだな)


京太郎「あとは掛け布団を――」


初美「んんぅ……あれ?」パチッ


初美「……」

京太郎「……よう、いいタイミングだな」

初美「わ、私に覆いかぶさってなにをする気なのですかっ」

京太郎「いや、風邪ひかないように掛け布団を――」

初美「ま、まさか……私にエロエロなことをしようと……!」

京太郎「とりあえず申し開きさせてもらおうか」



24: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 02:21:40.19 ID:53c6G4Q50



初美「むぅ……納得できないのですよ」

京太郎「そうは言っても事実は事実だ。俺は掛け布団をかぶせようとしただけ、いいか?」

初美「私を引きずり込んで抱き枕にしたのはどこのだれでしたっけねー?」

京太郎「ちょっと待て、お前が潜り込んできたんだろ」

初美「意識がなかったくせになにがわかるのですか」

京太郎「たしかに……本当なのか?」

初美「本当も本当なのですよ!」

京太郎「マジかぁ……じゃあ悪いことしたな」

初美「それは、その……」モジモジ


初美「と、とにかく! こうなったらお詫びの一つや二つじゃ済まないのですよ!」


京太郎「ごめんなさいすまなかった俺が悪かった……これで三回」

初美「謝って済む問題じゃないのですよ」

京太郎「だよなぁ……わかった、しばらくお前に付き合おう。これでどうだ?」

初美「んー、とりあえずはそれで」

京太郎「じゃあ、なにする?」

初美「お腹ペコペコなのですよ。せっかくだし、下の屋台でなにかいただきたいですねー」

京太郎「わかった。あー、ちょっと待て」

初美「はい?」

京太郎「勝手にいなくなったら小蒔が心配しないかな」

初美「姫様もまだ誰かに捕まってると思うのですよ」

京太郎「そりゃまた忙しそうだな」

初美「というわけで、書置きでも残しておきますか」



25: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 02:30:12.03 ID:53c6G4Q50



初美「う~ん、奢ってもらうとまた味が格別なのですよ」

京太郎「食べ過ぎて腹壊すなよ?」

初美「失礼ですねー、そんな子供じゃないのですよ」

京太郎「うん、まぁそうだな」


京太郎(これで俺と同学年だもんな)

京太郎(わかっちゃいるけど、どうしても年下に思えてならない)


初美「あ、次は向こうに行ってみるのですよっ」タタタ

京太郎「待て待て、財布を置いてどこにいく」

初美「うわぁ……さすがに自分を財布呼ばわりするのはどうかと思うのですよ」

京太郎「あれこれ俺の財布から出てったらそう思ってもしかたないよなっ」

初美「はいはーい、感謝してますよー」

京太郎「まったく……ほら、どの屋台だ?」

初美「あのチョコバナナの……あっ!」

京太郎「なんだ?」

初美「か、霞ちゃんたちなのですよ」


26: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/23(金) 02:36:48.54 ID:53c6G4Q50


霞『じゃあ甘酒もらってきましょうか』

エイスリン『オサケ、イイノ?』

巴『大丈夫ですよ、アルコールは入ってないし』

シロ『寒いから早く……』ブルッ

春『黒糖には防寒効果がある……かも』


京太郎「お、ちょうどいいな。一緒に――」

初美「だ、ダメなのですよっ」グイッ

京太郎「はぁ? なんでそんな……」

初美「い、今霞ちゃんに見つかったらなにをされるか……」ガタガタ

京太郎「いや、どんだけ怯えてんだよ」


京太郎(まーたなんかやらかしたのか、こいつは)

京太郎(そういや反省してもらってるって言ってたっけ)


初美「とりあえず迂回しながらチョコバナナを目指すのですよ!」

京太郎「それは諦めないのか……」



35: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:17:02.38 ID:ZhL7BJ5h0
んじゃ、始めます

残り3分の1! ……以上はありそうだなぁ

36: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:26:50.98 ID:ZhL7BJ5h0



初美「ふぅ、どうにかなったのですよ……」

京太郎「二人羽織作戦とか言い出した時はどうなるかと思ったけど、意外になんとかなったな」

初美「これでゆっくり座って食べられますねー」

京太郎「あーあ、俺もなんか買っときゃよかったか」

初美「一口食べますかー?」

京太郎「いや、どっちかって言うとしょっぱいものの気分だ」

初美「もう、遠慮はなしなのですよ」

京太郎「俺の金で買ったものに遠慮する理由をちょっと考えてみようか?」

初美「細かいことは気にしちゃダメダメですよー?」


初美「ほら、立ってないであなたも座っちゃうのですよ」

京太郎「だな」


37: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:32:53.88 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「しかし、お前なにやったんだ?」

初美「んむっ、はんれふか?」

京太郎「話すときはくわえるな」キュポン

初美「ああっ、私のチョコバナナっ」

京太郎「別に取ったりしねーよ、ほら」

初美「ふぅ、それでなんでしたか?」

京太郎「お前が石戸をどうやって怒らせたのかって話」

初美「うっ、頭が……」

京太郎「よっぽどのことをやらかしたのか」

初美「ちょっとわさび入りのお饅頭を用意しただけなのですよ」

京太郎「なるほど、それが石戸に当たったと」

初美「霞ちゃんが悶絶する様は面白かったですけど、その後が……」ブルッ

京太郎「とどのつまり石戸に当たったのが運の尽きだな」

初美「よくよく考えれば、姫様に当たったらもっと酷い目にあわされてたと思いますねー」

京太郎「お前、とんだチャレンジャーだな」

初美「ふふん、もっと褒めてもバチは当たらないのですよ」

京太郎「アホ、自重しろ」ペシッ

初美「あうっ」


38: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:39:09.03 ID:ZhL7BJ5h0


初美「叩くとかひどいのですよっ」

京太郎「別に俺はフェミニストでもないしなー」

初美「ぶぅ……こうなったら謝罪と賠償を要求するのですよ!」

京太郎「賠償ねぇ……一応聞くけど、なにすりゃいいんだ?」

初美「それは今から考えますねー」



39: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:45:22.55 ID:ZhL7BJ5h0



初美「~~♪」

京太郎「あのさぁ」

初美「なんですかー?」

京太郎「そろそろ脚しびれてきたんだけど」

初美「まだ私の心は深くふかーく傷ついているのですよ……」ヨヨッ

京太郎「俺はどっちかって言うとされる方が好みんだけどな、膝枕」

初美「しびれるからされる側希望なのですよ」グリグリ

京太郎「くぉっ! お前、しびれてるのに頭動かすなよっ」

初美「んふふー、弱点はとことん攻めるのが勝負の秘訣っ」グリグリ

京太郎「くっ、んのやろ……!」

初美「ふぅ、反省しましたかー?」

京太郎「あとで覚えてろ」

初美「じゃ、もう1セットで」グリグリ

京太郎「くぅっ――!」



40: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:53:26.05 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「ふぅ……」

初美「中々良かったですねー」

京太郎「満足したかよ」

初美「んー、ぼちぼち?」

京太郎「あれだけやっておいてぼちぼちだと……!?」

初美「まぁ、でも窒息の心配がないのは高評価なのですよ」

京太郎「膝枕で窒息ってどんな事態だよ」

初美「霞ちゃんの胸に聞けば答えは自ずと見えるはず……」

京太郎「……ああ、そういうこと」


京太郎(たしかにあれは凶器だな……)

京太郎(でも、あの胸を押し付けられて逝くならある意味本望かもしれない)


41: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 00:59:52.28 ID:ZhL7BJ5h0


初美「なにやら邪な念を感じるのですよ」

京太郎「き、気のせいじゃないか?」

初美「私は大人の女ですから許してあげますけどねー」

京太郎「おと、な……?」

初美「むっ、誕生日は?」

京太郎「二月二日」

初美「ふっ、勝ったのですよ。これで私の方が大人だと証明されちゃいましたね」

京太郎「勝ち誇るのはもうちょっと背を伸ばしてからにしろ」

初美「背は関係ないのですよ!」


初美「もう、私の方がお姉さんなのですよ? だから言うことは素直に聞くこと!」

京太郎「ずいぶん子供っぽいお姉さんもいたもんだ」

初美「童心を忘れないというのは大切なことなのですよ」

京太郎「ま、それには賛成するよ」


「ちょっといいかな」


43: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:08:35.22 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「はい?」

初美「なんなのですか?」

「ここらへんで小学生ぐらいの女の子を連れ回している不審者がいるらしくてね」

京太郎「はぁ」

初美「物騒ですねー。私でよければおまわりさんに協力するのですよ」

「ありがとう、じゃあ目撃情報だけど――」


「なんでも色んなものを買い与えて警戒心をとき」

京太郎「なるほど」

「女の子に覆いかぶさるように抱きつきながら移動して」

京太郎「ん?」

「さらにチョコバナナを頬張る姿をいやらしい目で見つめ」

京太郎「あれ……」

「挙句の果てに膝枕と称して自分の股間に女の子の顔を押し付けるような輩らしい」

京太郎「……」ダラダラ


45: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:15:24.92 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎(なんだろう、そんなことしてるわけはないのに……)

京太郎(妙に一致するというか……)


「こんなことしていた人たちに心当たりはあるかな?」

初美「ないですねー。あ、外見とかは」

「女の子の方は140cmぐらいで、男の方は長身の金髪……」


京太郎「……」メソラシ

初美「?」

「……」


「君たち、ちょっと来てもらってもいいかな?」ポン



47: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:23:17.06 ID:ZhL7BJ5h0



『いたか?』

『いや、こっちには』


京太郎「ふーっ、ふーっ……!」

初美「な、なんなのですか、こんな茂みに連れ込んで……」

京太郎「お前はっ、状況の把握がっ、まったくできてないっ!」

初美「はい?」


京太郎(くっそう、なんでこんなことに……!)

京太郎(まさか警備員に追い回される事態になるとは)

京太郎(いや、でも逃げたのは失敗だったか?)

京太郎(俺もこいつもやましいことはしてないんだから……)ガサッ


50: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:30:16.10 ID:ZhL7BJ5h0


「いた! 君たち、いきなり走り出すなんてやっぱり――」


京太郎「すいません、ちょっと動揺しちゃって」

「……事情を聞かせてもらってもいいかな?」


京太郎(やった、やっぱり話せば分かるんだ……!)


「まず、君たちの関係からなんだが」

京太郎「それはともだ――」


初美「ズバリ、ただならぬ関係なのですよ!」


「た、ただならぬ関係……?」ピクピク

初美「一緒に寝る仲と言いますか、ここに来る前だって布団の中に引きずり込まれて……」ポッ

京太郎「」

「よしよし、よーくわかった」


「やっぱりちょっと来てもらってもいいかな?」ガシッ

京太郎「誤解だぁーっ!!」



52: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:37:19.08 ID:ZhL7BJ5h0



『くそ、どこいったんだ』

『絶対見つけるぞ』

『今度はあっちを探してくる』

『ああ、連れ回されてる女の子のためにもな』


京太郎「ふーっ、ふーっ……!」

初美「またなのですか? ……まさかここで私を!?」

京太郎「頼むから黙ってて!?」


京太郎(くっそう、警備員の数が増えてやがる)

京太郎(一体何でこんな……)


京太郎「……」

初美「? 私の顔になにかついてますか?」


京太郎(うん、紛れもなくこいつのせいだな!)


53: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:45:10.70 ID:ZhL7BJ5h0


初美「もう、こんな所に隠れてたらなんにも楽しめないのですよ!」ガサッ

京太郎「あっ、バカっ」グイッ

初美「あうっ」


『――! 何の音だ?』


京太郎(やばい、気づかれたか……!?)

京太郎(てかなんで縁日で人も多いのに、こっちの音を正確に察知できるんだよ!)


初美「やっ、もう……いい加減にするのですよ!」ジタバタ

京太郎「あ、暴れんなって」

初美「いーやー!」


京太郎(やばいやばいやばいやばい!)

京太郎(こんなことで捕まるとか嫌すぎるだろ!)

京太郎(どうにかこうにかして、まずはこいつを黙らせないと……!)

京太郎(……ええい、ままよっ――)


54: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:46:06.71 ID:ZhL7BJ5h0
ここで唐突にコンマ
高ければ高いほどいい感じです


直下

58: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 01:59:17.70 ID:ZhL7BJ5h0


コンマ61以上 熱烈なハグ


京太郎「――いいから、黙ってろよ」ギュッ

初美「ふぁっ」


京太郎「これ以上騒ぐと、口塞ぐぞ」

初美「ふ、塞ぐって……」


初美(もしかして、キスなのですか!?)

初美(そんな、心の準備がまだ――)


初美「……」

京太郎「?」


京太郎(黙ったのはいいけど、なんで目を閉じてるんだ?)

京太郎(まぁ、手で抑える必要がなくなったのはありがたい)


初美「……」ソワソワ


京太郎(……待て、もしかして勘違いしてるんじゃないだろうな)

京太郎(いや、まさかな……)


59: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:03:03.72 ID:ZhL7BJ5h0


初美「……?」


初美(ま、まだなのですか?)


京太郎(まさかとは思うけど……うん)

京太郎(触れないでおこう。結果的には静かになったし)


京太郎「よし、おとなしくなってくれたか……じゃあ、戻るぞ」

初美「えっ」

京太郎「ほとぼりが冷めるまで上に退避だ」



60: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:06:24.87 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「つ、疲れた……」グッタリ

京太郎「なんであんなことに……」


小蒔「あ、京太郎様」


小蒔「戻ってたんですか?」

京太郎「ああ、予想外のアクシデントにみまわれてな……」

小蒔「あくしでんと? そういえば初美ちゃんの機嫌が悪かったような……」

京太郎「それな……(社会的に)生きるか死ぬかの瀬戸際だったぜ」

小蒔「そ、そんなことが……!」


京太郎(しかし、腹減ったな……)グゥ

京太郎(あいつに奢ってばっかで俺はほとんど食べてないからな)


61: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:12:18.93 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「夕飯はもうすぐだっけ?」

小蒔「あ、お腹空きましたか?」

京太郎「ちょっとな」

小蒔「お饅頭、食べます?」

京太郎「……一個ぐらいなら大丈夫か」

小蒔「お茶もご用意しますねっ」

京太郎「俺も手伝うよ。忙しかったんだろ?」

小蒔「そんな……京太郎様だって疲れてますよね」

京太郎「いいんだよ、待ってるだけってのも暇だしな」

小蒔「わかりました。あ、初めての共同作業ですね!」

京太郎「あってるような、あってないような……?」


「見てみて、やっぱり本命は姫様かしらね?」

「あんた昔から本当にそういうの大好きだったよね。正直ダルい」

「やだもぉ、じゃなきゃ駆け落ちなんてしないわよ!」

「……はぁ、白望たちはまだかな」

「あ、白望ちゃんかわいいわねぇ。うちのにちょっと面影が似てるし」

「あんたの子と違ってめんどくさがり屋だけどね。まったく、誰に似たんだろうね」

「ブーメランもほどほどにねー」

「は?」



62: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:17:49.95 ID:ZhL7BJ5h0



白望「ふぅ……」

エイスリン「シロ、オツカレ?」

白望「ちょっと夕飯食べて気が抜けたかも」

エイスリン「? イツモノコトダヨ?」

白望「ダル……」


白望(疲れてる、というより戸惑ってる)

白望(状況の整理がまだ追いついてないのかな)


春「お風呂の準備できたけど、入る?」


エイスリン「ロンオブモチ!」

白望「どこで覚えてきたのそれ。面白外人みたいな」

エイスリン「Hmm……リンカイ? ビデオデイッテタ」

白望「……そんなのあったっけ?」

春「小瀬川さんは?」

白望「私は……後でいいや」


白望(ちょっと考え事もしたいしね)


春「わかった、じゃあ用意だけしておく。あんまり遅くなる前に入って」

白望「ん、ありがとう」

エイスリン「ヒトップロ、アビテクル!」

白望「いってらっしゃい」



63: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:23:10.97 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「やりぃ、俺の勝ちだ!」

「また負けたかー。お前今日はついてるなぁ」

京太郎「ん、ああ、まあ……」


京太郎(エイスリンとあれやこれやあったしな……)


京太郎「ポーカーやめてスピードでもやる?」

「ダメだ、お前反射神経いいし」

京太郎「なんだ、つまんないなー」

「やめだやめ。俺は向こうで小瀬川さんと飲んでくるけど、お前は?」

京太郎「未成年に酒勧めようとすんなよ」

「まったく、変なところで真面目だな」

京太郎「いいから行けって、俺は適当に暇つぶしてるから」

「お、夜這いか?」

京太郎「あーもう、うるさい!」



64: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:29:02.16 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「まったく、こっちをからかうことばかり言いやがって」

京太郎「夜這いなんかしたら……受け入れそうなやつはいるな」

京太郎「違う違うっ、夜這いはどうでもいいんだよ!」

京太郎「いやでも、万が一って事態もあり得るし……」

京太郎「……よし、念のためだ。もしそういう状況に陥ったときに言うセリフでも考えてみるか」


――コンコン


京太郎(暴れんな、暴れんなよ……とか?)

京太郎(いや、なんか睡眠薬盛った後に言いそうなセリフだし)

京太郎(なぁ……スケベしようや……とか?)

京太郎(いや、これはさすがに気持ち悪い)

京太郎(お前が好きだぁぁーー!! お前が欲しいぃぃーー!!)

京太郎(いや、うるせぇよ。夜這いしに行って自分で大声あげまくるってどういうことだよ)

京太郎(でも、直球ってのは悪くないな)

京太郎(そんなに熱くなくてもいいから、ここはストレートに――)


――ガラッ


65: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:35:45.43 ID:ZhL7BJ5h0


巴「お風呂空きましたけど――」


京太郎「――お前のことが好きだったんだよ……!」


巴「え、えっ……!?」カァァ

京太郎「……あれ?」

巴「えと、それはさすがに……あっ、けして嫌だとかそういうことではないんですけど……」モジモジ

京太郎「か、狩宿?」

巴「やっぱり姫様を差し置いてというのは……と、とにかくっ」


巴「こ、心の準備がまだできませんっ……!」ダッ


京太郎「待てっ、狩宿さんウェイトウェイトっ!」



66: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:42:33.43 ID:ZhL7BJ5h0



巴「……はぁ、演劇の練習だったと」

京太郎「う、うんまぁ、そんな感じ。悪い、ノックにも気づかなかった」

巴「あ、いえ……勘違いしたのはこっちですし」

京太郎「ホント悪い。今度なんかお詫びするよ」

巴「簡単にお詫びなんて言っちゃダメですよ? これがはっちゃんだったら好き放題されちゃうんですから」

京太郎「……たしかに」

巴「じゃあ、お風呂にはいつでも入れますから」

京太郎「ああ、親父たちにも伝えとく」

巴「お願いしますね」


京太郎「風呂ね……旅館じゃないから男女分かれてないんだよな」

京太郎「ま、だいたい時間で分けてるから大丈夫だとは思うけど」



67: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:49:31.51 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「やっぱり広いなー、一人だと尚更」

京太郎「親父達は後で入るみたいだし、独り占め状態か」

京太郎「……落ち着かないな」

京太郎「まぁ、ゆっくりはできるか」


――カラカラ


京太郎(あれ、もう来たのか。早いな)


――シャー


京太郎(うちの親父にしては静かだな。小瀬川のおじさんか?)


――チャポン


68: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:55:20.76 ID:ZhL7BJ5h0


白望「……ふぅ」


京太郎「……」

白望「……え?」

京太郎「奇遇、だな?」

白望「……ダル」


京太郎(ナイスおもち! ……じゃなくて!)

京太郎(なんでこいつタオルで体隠してないんだよっ)

京太郎(あ、自分一人だって思ってたら特に隠さないか……でもなくて!)

京太郎(どうして小瀬川がここに……)


69: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 02:59:04.28 ID:ZhL7BJ5h0


白望「……あんまり見ないで。さすがに恥ずかしい」

京太郎「あ、悪い。今出るから」

白望「なんで?」

京太郎「なんでって……色々まずいだろ」

白望「いいよ、別に。減るもんじゃないし……ちょっと恥ずかしいけど」ボソッ

京太郎「いやいや、もうちょっと恥じらえよ」

白望「そういうのダルいから」

京太郎「はぁ~、わかった。あんまり気にしないことにする」

白望「ん」

京太郎「俺はあったまったら出てくから、そっちも好きにしろ」

白望「わかったよ」


70: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:03:07.82 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「……」

白望「……」


京太郎(なんて)

白望(言ったけど)


京太郎(くそっ、海綿体に血が……!)ギンギン

京太郎(体隠さないから一瞬全部見えちゃったんだよ……)

京太郎(収まる気配がない……これじゃ出るに出られない!)


白望(まいったなぁ……普通に恥ずかしいや)カァァ

白望(ちょっと見栄張っちゃったかな)

白望(湯船から出たらまた全部見えちゃうし……)


京太郎「……」

白望「……」


((どうしよう……))



71: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:08:08.38 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「……ま、まだ出ないのか?」

白望「そっちこそ……」

京太郎「俺はまだまだ。ほんの数ミクロンしかあったまってないからな」

白望「私も、普段長風呂だから」


京太郎(って、なんで我慢大会みたいになってんだよ!)

京太郎(いい加減限界だぞ……)

京太郎(……なんとかなんないか)


白望(……なんでこんなダルいことになってるかな)

白望(さすがにもうキツいよ……)

白望(どうにかしないとね)


72: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:11:16.26 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎(方法その1、羞恥心を捨て去る)

白望(でも、それが原因でこんなことになってるんだよね……)

京太郎(方法その2、相手の目をそらす)

白望(でも、そんな目を引くものはここにはないんだよね……)

京太郎(相手になにをするでもなく、見られないように脱出する方法――)

白望(そんなの――)


((――ある……!))


京太郎(なんで気づかなかったんだ、こんな簡単なことに!)

白望(相手から隠すのは、見られたくない部分だけ)

京太郎(つまり――)

白望(要するに――)


((――相手に背中を向けて移動すればいい!))


73: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:14:40.83 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎(そうと決まれば……)クルッ

白望(早速背中を向けて……)クルッ


――ザパッ


「「――!?」」


京太郎(なっ、今の音……!)

白望(同時に、立ち上がった?)

京太郎(くそっ、考えることは一緒だったってことかよ……!)

白望(ダル……このまま進んだら入口でぶつかるし)

京太郎(どう、切り抜ける……?)


――ガラッ


74: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:18:55.49 ID:ZhL7BJ5h0


「いやぁ、小瀬川さんも飲みますねー」

「いえいえ須賀さんこそ。おかげで足元が危うい危うい」


京太郎「……」

白望「……」


「あれ、なにやってるんだお前ら」

「し、白望っ!? なんで京太郎くんと風呂に……!」


京太郎「……ダル」

白望「そう言いたいのは私なんだけど」



75: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:24:21.26 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「くっ、やっと解放された……」

白望「足が痺れた……」

京太郎「まさかこの歳であんな説教くらうとはな」

白望「ごめん、お父さんが勘違いしちゃったみたいで」

京太郎「いや、勘違いしてもしかたないだろ」


京太郎(裸の男女が風呂場で……ましてや俺の方はアレだったしな!)


京太郎「しかし、もうすぐ日が変わるな」

白望「新年だね……エイスリンたちは下かな?」

京太郎「だろうな、小蒔たちも色々忙しくしてるんじゃないか?」

白望「じゃあ」

京太郎「そうだな」


白望「とりあえず、ここでゆっくりしてようかな」

京太郎「せっかくだし一緒に下降りるか」


白望「……ダル」

京太郎「よし、じゃあ早速行こうぜ。初詣だ初詣」ガシッ

白望「ちょっ」



76: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:29:09.40 ID:ZhL7BJ5h0



白望「さっきより人多い、ダルい……」

京太郎「そりゃ初詣が本番だからな」

白望「そもそもこの組み合わせがおかしいよ」

京太郎「俺とお前か?」

白望「私はほっといてエイスリンと一緒にいればいいのに」

京太郎「まぁそう言うな。一緒に説教くらった仲だろ」

白望「どんな仲なのさ、それ」

京太郎「一緒に風呂に入った仲でもあるしな」

白望「……帰る」

京太郎「待て待て! 冗談だから!」ガシッ


77: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:33:03.58 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「さて、気を取り直して……どこ行く?」

白望「あそこのベンチ」

京太郎「休む気満々か! 却下」

白望「うるさいなぁ、もう」

京太郎「せっかくだし年越しそば食おうぜ、年越しそば」

白望「海老天がいい」

京太郎「あ、あったっけ?」

白望「それ以外は却下で」

京太郎「ま、マジかぁ……」

白望「……なんて、冗談――」


京太郎「よし、持ってくるから座って待ってろ――じゃ」


白望「――だったんだけど、行っちゃったね」

白望「さすがに待ってなきゃダメだよね」

白望「……ダルいなぁ」



78: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:36:06.37 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「うーん、やっぱ天ぷらそばはないか」

京太郎「どうすっかなぁ」

京太郎「最悪出前でも……ん?」

京太郎「そっか、エビを食わせる店自体はあるんだな……」

京太郎「……まぁ、やってみるか」



79: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:39:05.00 ID:ZhL7BJ5h0



白望「……寒い」

白望「遅いな……なにやってるんだろ」

白望「律儀に待ってるなんてバカらしいよね」

白望「でも、ここで帰るのもダルいし……」


京太郎「お、ちゃんと待ってたか」


白望「別に、動くのがダルかっただけ」

京太郎「まぁ、なんでもいいけどな。ほら」

白望「これ……あったんだ」

京太郎「てかお前、ないのわかってて言ったろ」

白望「冗談のつもりだったんだけどね。すぐ行っちゃうから」

京太郎「せっかく作ってきたんだ、ありがたく食ってくれ」

白望「作った?」

京太郎「ああ、材料分けてもらってさ。そばの上に乗っけた」

白望「まさかそこまでするなんて」

京太郎「どうだ、これでもう帰るなんて言えないだろ」

白望「しょうがないね……ダルいけど付き合うよ、初詣」

京太郎「んじゃ、そば食おうぜ」



80: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:46:57.58 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「小蒔たちは見当たらないな」

白望「エイスリンもいないね」

京太郎「だれかと一緒にいるとは思うけどな」

白望「この人の多さだからね……ダルい」

京太郎「ま、俺らは俺らで楽しもうぜ」

白望「……」


白望(付き合うとは言ったけど、やっぱりまずいかな)

白望(エイスリンにもだし、それに神代さんも……)

白望(見つかったらダルいどころじゃなくなるかな)


京太郎「なにぼーっとしてるんだよ、ほら」グイッ

白望「……引っ張らなくてもちゃんと歩くよ」

京太郎「でもはぐれたらダルい、だろ?」

白望「……先回りとか、ダルい」



81: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:49:21.99 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「なにお願いした?」

白望「受験合格」

京太郎「うわ、思い出したくないこと思い出した……」

白望「そっちは?」

京太郎「いや、俺は……」

白望「人に聞いといて言わないのは不公平」

京太郎「なんというか、目標を見つけるのがお願いというか」

白望「なにそれ」

京太郎「悩み多き年頃ってやつ?」

白望「ふーん、余裕あるんだね」

京太郎「どうせ高校出るまでには決めなきゃいけないことだしな」

白望「ま、頑張って……勉強の方も」

京太郎「だからそれはやめようぜ……」



82: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:51:36.69 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「お賽銭投げ込んだし……次、どうする?」

白望「なんでもいい」

京太郎「なんでもいい、ね」

白望「こういう意見はダルかった?」

京太郎「いいや、あれだけ戻りたがってたのにって思って」

白望「……別に、人ごみにも寒さにも慣れただけだから」

京太郎「じゃあまだ連れ回せるってことだよな」

白望「お好きに。もう諦めたから」

京太郎「とか言って、本当は楽しんでるだろ?」

白望「そういうのダルい」

京太郎「あ、はい」



83: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:54:38.59 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「もらってきたぞ」

白望「……甘酒?」

京太郎「せっかくだしな、一回は飲んでおこうと」

白望「私は二回目だけど」

京太郎「あー、嫌いだったか?」

白望「別に、いただきます」


京太郎「うん、甘ったるくてあったまるな」

白望「……今更だけど、君って馴れ馴れしいね」

京太郎「よく言われるな、それは」

白望「そんな仲良いわけでもないのにさ」

京太郎「ちょっ、この前一緒に遊んだろ」

白望「そういう時は豊音とかエイスリンがメインで、私はおまけみたいなものだしね」

京太郎「俺はそう思ったことはないけどな……」

白望「まあ、なんでもいいけどね……ゴメン、ダルいこと言ったね」


84: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:57:09.54 ID:ZhL7BJ5h0


白望(ダメだ、なんかもやもやしてる)

白望(二人に悪いと思ってるから?)

白望(もっと考えればわかりそうだけど……)


京太郎「そこまでストレートに言われると驚くけど、別にダルくはないな」

白望「そう?」

京太郎「要するに、そっちとしては友達の友達って感覚だったわけだ」

白望「……」

京太郎「でもちょっとでも本音を出したんならさ、それこそ友達の第一歩だろ」


京太郎「だから、あらためてよろしく」


85: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 03:59:40.68 ID:ZhL7BJ5h0


白望「……なんで君と私が似てるなんて言われるんだろうね」

京太郎「はとこだからか?」

白望「外見だけの話じゃなくてさ」

京太郎「ふむ……じゃあ、クラスに来たばかりで馴染めていない留学生がいたとする」

白望「いやに具体的だね」

京太郎「ただの設定だ。……それで、お前はそいつをほっとくか?」

白望「それは……」

京太郎「ダルいからほっとかない、だろ」

白望「……あたってるけど、どうして?」

京太郎「俺も同じだからだ」


京太郎「目に入らなかったらそれはそれでいいんだよ」

京太郎「でも、目に入って気にしちゃうとアウトだ」

京太郎「もやもやして、ほっておけなくなる」

京太郎「つまりさ、自分のためだ。スッキリしたいからそうしてるようなもんだ」


86: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:04:37.91 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「俺としてはこんなとこだな」

白望「結構自己中だね、君」

京太郎「これでも丸くなったとは思うんだけどな」

白望「でも、そっか……たしかにそうだね」

京太郎「加えて言うなら、そのエゴっぷりで誰かと仲良く出来たら儲けもんってところか」

白望「……その開き直りっぷりは羨ましいな」

京太郎「そんな褒めんなよ」

白望「別に褒めてないけど……まあ、半々ってところ」

京太郎「半分もありゃ十分だよ。ほら、冷めるぞ」

白望「まだ温かいから大丈夫――」ドンッ


「あ、ごめんなさーい」

「ほら、急がないと遅れるって」

「おいてかないでよー!」


87: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:09:30.01 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「なんだあいつら……大丈夫か?」

白望「上着にはかかってない、けど」

京太郎「ああ、靴か」

白望「まいったなぁ」

京太郎「歩けるか?」

白望「歩ける……けど」ヌチャ


白望(……気持ち悪い)


京太郎「こりゃ、一回上に戻ったほうが良さそうだな」

白望「だね、洗っときたいし」

京太郎「よし、とりあえず靴は脱いどけ」

白望「脱いだら歩けないんだけど」

京太郎「心配すんな、歩く必要なんかないから」



88: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:13:58.51 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「お客さん、乗り心地は?」

白望「……別に」

京太郎「はは、ダルくはないってとこか」

白望「転んだら困るから前見て」

京太郎「はいはい」


白望(……なんでおんぶされてるんだろ)

白望(ラクだからいいんだけどさ)

白望(でもやっぱり、なんかもやもやするな)


89: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:17:34.94 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「そういや、昔からの付き合いなのか?」

白望「いきなりなに?」

京太郎「臼沢と鹿倉」

白望「そうだけど」

京太郎「俺と久ちゃんもそうなんだよ」

白望「知ってる」

京太郎「だろうな」

白望「仲良いよね。口説いたの?」

京太郎「なんでそうなるんだよ……逆だ。口説かれた」

白望「ふーん、どんなふうに?」

京太郎「興味津々か」

白望「多人の馴れ初めを聞くのはダルくない」

京太郎「えっと、そうだな……」


京太郎「私の誕生日に辛気臭い顔すんなって蹴飛ばされた」


90: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:20:14.77 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「そんなんだから軽く喧嘩になったりしたな」

白望「それ、本当?」

京太郎「当時は俺もトゲトゲしててさ」

白望「なんか想像できないけど」

京太郎「俺の髪、自毛だから。それで色々あってさ」

白望「……」


『うわっ、こいつの髪真っ白だ!』

『全部白髪とかハンパねーな!』


京太郎「ま、そんなの今更気にしてないけどな」

白望「色々あるよね、そういうのホントダルい……」

京太郎「でも、認めてくれる一言があるってだけで違うもんだ」


『そのかみ、お日さまにあたるとキラキラしてきれいじゃない』


京太郎「久ちゃんってさ、きっと男だったら絶対修羅場ってたと思うな」

白望「……それ、君が言うの?」

京太郎「うっ……俺の話は置いとこうぜ」


91: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:23:47.70 ID:ZhL7BJ5h0


白望(自毛で色々あって……そんなとこまで一緒なんてね)

白望(認めてくれる一言か……)


京太郎「そういや綺麗だよな、お前の」

白望「私の?」

京太郎「その髪、月の光に透かすとさ」

白望「……ダル」


白望(――ダルく、ない)


京太郎「はは、キザったらしかったか?」

白望「ホントダルい」


白望(――ダルくなんか、ない)


白望「……」ギュッ

京太郎「なんだ、疲れたのか?」

白望「君の背中はダルくないから……」

京太郎「気に入ってくれたようでなによりだよ」

白望「ホントもう……」


白望(もやもや、増えちゃったな)



92: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:28:19.18 ID:ZhL7BJ5h0



京太郎「それじゃあ、エイスリンは小瀬川と帰るのか」

「まあ、陸路で長野経由だとどうしても時間かかるしな」

京太郎「それにしては俺たちは車なんだな」

「車じゃなきゃカピのやつを連れてこれないからな」

京太郎「それもそうか」


白望「ちょっといい?」


京太郎「なんだ、もうすぐ出るんだろ?」

白望「その前に一つ、言っておこうと思って」

「……さて、俺は母さんのとこに行ってくるか」

京太郎「ん、ああ」


93: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:31:04.85 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「それで、言いたいことってなんだ?」

白望「……ちょいタンマ」

京太郎「?」

白望「……迷ったけど、これに決めた」グイッ

京太郎「――んむっ!?」

白望「――んっ」


京太郎「……えっと、なにこれ」

白望「別に、エイスリンともしてるでしょ」

京太郎「いやいや、そういう問題じゃなくてっ」

白望「嫌だったなら謝るけど」

京太郎「正直役得……ってそうでもなくてっ」

白望「とにかく、言いたいことは言った……つもり」


白望「それじゃあ……君といるの、ダルくないから」


94: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:32:54.59 ID:ZhL7BJ5h0


京太郎「……言いたいことって」サスサス

「終わったか?」

京太郎「おわっ! いたのかよ!」

「白望ちゃんが向こうに行ったから頃合かと思ってな」

京太郎「……そうかよ」

「それで……どうだった?」

京太郎「なにがだよ」

「したんだろ、キス」

京太郎「やっぱり見てたんじゃねーか!」

「だから見てないって。推測とカマかけだ」


「白望ちゃんが顔赤くしながら離れてった」

「そして戻ったらお前も顔赤くして唇をさすってた」


「むしろ簡単すぎるな」

京太郎「頼むからもうやめてください……」



95: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:35:20.22 ID:ZhL7BJ5h0



エイスリン「シロ、カエリイッショ!」

白望「……」

エイスリン「ドシタノ?」

白望「ああ、ごめん」

エイスリン「ダイジョブ?」

白望「具合は悪くないよ」


白望(でも……)


白望「エイスリン」

エイスリン「What?」

白望「せめて悔いが残らないようにしたいね」

エイスリン「?」

白望「ごめん、ダルいこと言った」




96: ◆zSdeXZwVBY 2016/09/25(日) 04:37:37.70 ID:ZhL7BJ5h0
ようやく終了……長かった
インハイ決勝戦大将卓の1.5倍弱……

ともあれ、安価はまた今度です
おやすみなさい……ってもう朝か

それじゃ

163: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:20:34.07 ID:MzTQV/SG0


・三年、十月四日、二人の秘め事


久「あら、これから学祭の準備?」

和「部長は学生議会ですね」

久「そ、もうすぐ学祭あるし議会も入れ替わりだし……地味に忙しいのよね」


「待ちなさい、逃がさないわよ!」

京太郎「あんたもしつこいなっ」


和「今の先輩ですよね。追われてるんでしょうか?」

久「あー、この時期だもんね」

和「時期?」

久「今って学祭前じゃない。だから躍起になって捕まえようとしてるってところね」

和「話が繋がってないです」

久「彼女は演劇部なんだけどね、京太郎は去年、それを手伝ったのよ」

和「だからといってあの執着はちょっとおかしいと思うんですけど」

久「あ、手伝ったっていっても端役や雑用じゃなくてね、あいつ、飛び入りで主役やったのよ」

和「ぶ、部外者の先輩が主役ですか?」

久「それで結構好評だったのよ。だから今年もってことだと思う」

和「はぁ……先輩、大丈夫でしょうか?」

久「あれならまだ余裕あるから大丈夫じゃない?」

和「部長は楽観しすぎです。私、一言言ってきますっ」

久「うーん」


164: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:26:53.70 ID:MzTQV/SG0


『あなたは……原村さん?』

和『私のことはどうでもいいですから、それよりも――』

『気に入った! 須賀京太郎を主役、あなたをヒロインに抜擢するわ!』

和『え、えぇっと……』

『そうと決まれば善は急げよ!』グイッ

和『ひゃいいっ!?』


久(――なんてことにならないとも限らないし、止めておきますか)

久(あいつが向こう行っちゃったら手伝ってもらえないしね)


久「はい、ストップ」ガシッ

和「離してくださいっ、私は先輩のために……!」

久「去年の演劇のビデオ、気にならない?」

和「……」



165: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:32:44.00 ID:MzTQV/SG0



京太郎「ふぅ、やっと撒いたか……」

京太郎「日増しにラブコールが激しくなってくな」

京太郎「断っても諦めてくんないんだよなぁ」

京太郎「学祭が終わるまで逃げ切ればおとなしくなるとは思うんだけどよ」


和「先輩、ここにいましたか」


京太郎「お、サボりか? ま、俺もだけどな」

和「ビデオ、見ました」

京太郎「ビデオ? 一体何の――」


和「先輩の演劇、素晴らしかったです!」

和「魔女と契約した魔眼の王だとか、それでいて王の柱を放つ勇者でありながら行商人でもあるとか!」

和「個人的には悲しみを覚えると死んでしまうという設定も切なくていいと思いました!」


京太郎「お、おう……あり、がとう?」

和「ぜひ、今年もやりましょう!」

京太郎「そ、それはちょっとな……」


166: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:38:41.87 ID:MzTQV/SG0


京太郎(てか、なんであれを和が知ってるんだ……)

京太郎(何も知らないはずの後輩にまで俺の黒歴史が……)

京太郎(いいや、それよりも目の前の状況だ)

京太郎(こいつの目はマジだ……なんとかしないと今年も黒歴史が打ち立てられる……!)


京太郎「――和」

和「はい、私も一緒に頑張りますっ」

京太郎「いいから、俺の話を聞け」ガシッ

和「あっ……」

京太郎「演劇も良いと思う。でもな、今年は久ちゃんの手伝いをしてやりたいんだよ」

和「……」

京太郎「最後なんだ、締めくくりなんだ。だから、少しでも良くなればってさ」

和「……すみません、少し冷静じゃなかったみたいです」

京太郎「わかってくれたか」

和「私のわがままで困らせるわけにはいかないですから」

京太郎「……そういや、今日って誕生日だったっけ?」

和「あ、はい……そういえば」

京太郎「よし、それじゃあ人気のないとこ行こうぜ」

和「人気のない所、ですか?」

京太郎「演劇には出られないけど、せっかくだから俺の演技を見てくれよ」



167: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:42:43.43 ID:MzTQV/SG0



和「――♪」

優希「お、のどちゃん今日はご機嫌だじぇ」

和「そうですか?」

優希「さては……誕生日ということで昨日は家族で美味しいものを食べたと見たじぇ!」ビシッ

和「はぁ……まぁ、食べましたけど」

優希「くぅ~、我ながら冴えに冴えまくりだじぇっ。タコスのフルコースとは憎いっ」

和「それでそんなに喜ぶのはゆーきぐらいです」チャラ

優希「ん? その見慣れないアクセサリーは……」

和「このブレスレットですか? 昨日、先輩が買ってくれたんです」テレテレ


優希(あ、ご機嫌な理由って……)


和「それに……」

優希「なんだじぇ」

和「いえ、なんでもないです」

優希「余計気になるっ!」

和「教えません。だって……」


和「私と先輩の、秘密ですから」



168: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 00:51:23.33 ID:MzTQV/SG0



京太郎「……ふぅ」

咲「どうしたの? 朝からため息なんて」

京太郎「お前、黒歴史ってどう思う?」

咲「え、あ……知らないなー」メソラシ

京太郎「ふむ……机の奥、B5のノート」

咲「な、なんでそれを!?」

京太郎「いや、適当に言っただけなんだけど」

咲「と、とにかくっ、今は私のことより京ちゃんだよ! なにかあったの?」

京太郎「んー……やっぱいいや」

咲「えっ、そこで梯子はずされると余計気になるよっ」

京太郎「よくよく考えれば、あいつが勝手にしゃべるとは思えないしな」

咲「あいつって? そもそもなにやったの?」

京太郎「そりゃ言えないな。まぁ、秘め事ってやつ?」

咲「ひ、秘め事って……!」

京太郎「あ、今お前エロいこと考えただろ」

咲「考えてません!」




169: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/05(水) 01:04:22.73 ID:MzTQV/SG0
というわけで誕生日おめでとう
まだ25時だし大丈夫なはず……

咲ちゃんはよっぽどのコンマを出さない限りED確定します
残りエピソードは……10回以内ですかね?

それじゃ、今週中にはテイルズクリアして週末に更新! できたらいいですね

去ります

175: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/09(日) 23:55:10.08 ID:lLzbklMQ0


・三年、夏の終わりに――if


京太郎「本当にここでいいのか?」

由暉子「はい。ちょっと遠いけど、花火は見えますから」

京太郎「ま、人もいないからゆっくりはできるか」

由暉子「……みんな、心配してるでしょうか?」

京太郎「ああ、さっきメールしといたから心配すんな」

由暉子「あの、怪我のことは……」

京太郎「黙っといたよ。向こうの楽しい気分に水差したくないしな」

由暉子「良かった……じゃあ、お願いします」

京太郎「それじゃ」ピトッ

由暉子「――んんっ」ピクッ

京太郎「冷たかったか?」

由暉子「ちょっとびっくりしちゃいました」

京太郎「まあ、我慢してくれ。こうやって冷やしてりゃ、治るのも早くなるから」

由暉子「は、はい……」


176: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/09(日) 23:59:31.19 ID:lLzbklMQ0


由暉子(須賀さんの手が足に……)

由暉子(触れられているところは暖かいのに、氷水は冷たくて)

由暉子(なんだか変な感じです)


京太郎「さて、花火はもうすぐか。咲や和たちは仲良くやってるかな」

由暉子「……名前」ボソッ

京太郎「ん?」

由暉子「なんでその二人を名前で?」

京太郎「そりゃ咲とは幼馴染だし」

由暉子「じゃあ原村さんは?」

京太郎「入部してからの付き合いもそれなりだからな」

由暉子「入部してから……それじゃあ、私の方が早く知り合ったということですか?」

京太郎「そうだな。去年の年末だったっけ」

由暉子「じゃあ、どうぞ」

京太郎「どうぞ?」

由暉子「名前で呼んでくれないんですか?」

京太郎「……もしかして和に対抗心とか持ってるか?」

由暉子「はい、結構」

京太郎「あー……」


177: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:03:27.75 ID:z8auhqZV0


京太郎(和もけっこうアイドル的な扱いされることあるしな……)


由暉子「でも、それだけじゃないです」

京太郎「まぁ、断る理由もないけどな。えっと……由暉子?」

由暉子「はい」

京太郎「由暉子」

由暉子「はい♪」

京太郎「やっぱりアイドルは笑顔が一番だな」ポン

由暉子「あ……」ドキドキ

京太郎「お、花火上がるな」


由暉子「――好き、です」


由暉子(熱に浮かされるように、その一言が私の口から出ました)

由暉子(伝えようと思っていたわけじゃありません)

由暉子(想いを吐き出さなければ我慢できませんでした)

由暉子(肝心なところで勇気が出なくて……だから花火の音に紛れさせようとして)

由暉子(でも、その一言は――)


178: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:10:18.94 ID:z8auhqZV0


京太郎「好きって、俺のこと……じゃないよな?」

由暉子「……あれ?」


由暉子(聞こえちゃってたみたいです)


京太郎「ああ、勘違いだったら悪い。こっち向いてたからさ」

由暉子「……」

京太郎「はは、恥ずかしいな。自意識過剰ってやつか?」

由暉子「えっと、その、あの」カァァ


由暉子(予想外の事態に顔が熱くなって、頭が沸騰しそうで)

由暉子(気がついたら、私は身を乗り出して――)


由暉子「――んっ」


由暉子(彼に、キスしちゃっていました)


179: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:14:32.51 ID:z8auhqZV0


京太郎「……えっと、勘違いじゃなかった……みたいな?」


由暉子「――私みたいな女の子は嫌でしょうか?」

由暉子「背も低いし、胸も不釣合に大きいし、他の人からズレてるなんて言われることもあります」

由暉子「だけど、好きです……ううん、ずっと好きでした」

由暉子「あなたが、一緒にゆきみだいふくを食べてくれたあの日から」


京太郎「……俺は――んむっ」

由暉子「んっ……言わないでください」


由暉子(告白の返事が怖くて、自分の唇で彼の口を塞ぎます)

由暉子(自分で思うよりもずっと大胆で臆病な私は、行き詰まることが見えている逃げ道に走りました)

由暉子(だって、こんなことをしていればごまかしが効かなくなるのはわかりきっています)

由暉子(それでも……)


180: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:19:07.20 ID:z8auhqZV0


由暉子「ん……ちゅっ……んっ、はぁ……」


由暉子(先輩たちと雑誌で見た知識を総動員して、拙いながらも舌を絡めて)

由暉子(そうしているうちに頭が痺れて、体もギュッと抱きしめられて……あれ?)


由暉子「ん……んんっ!?」

京太郎「はぁ……こっちの気も知らないで好き放題しやがって」


由暉子(抵抗する間もなく、押し倒されてしまいまいした)

由暉子(いつも余裕があって優しかった彼が、この時はやけに荒々しくて)


京太郎「もう我慢できないから先に謝っとく……ごめんな」

由暉子「は、い……」ドキドキ


由暉子(私は、そのまま彼に身を委ねました)



181: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:23:23.09 ID:z8auhqZV0



由暉子「ん……」

京太郎「悪い、本当に悪かった!」

由暉子「まるで獣みたいでした」

京太郎「発散する機会があんまりなくて……つってもいいわけにもならないか」

由暉子「別にいいんです。私も、その……嫌じゃなかったですから」

京太郎「……そうか?」

由暉子「はい、ひと夏の思い出というやつですね」ニコッ


由暉子(結局答えは聞けていないけど、これで余計に彼への想いが募っちゃうけど)

由暉子(良かったんだと思います……きっと)

由暉子(そう言い聞かせながら、笑って見せます)

由暉子(アイドルは笑顔が大事みたいなので)


京太郎「……ダメだな」

由暉子「え?」

京太郎「それじゃ、ダメだ」


182: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:26:01.09 ID:z8auhqZV0


由暉子(ダメだしされてしまいました)

由暉子(何がいけなかったのかは、今ひとつわかりません)

由暉子(すると、今度は優しく抱きしめられて)


京太郎「俺も好きだよ……遅れたけど、さっきの返事」


由暉子(期待していたけど、半ば諦めていて)

由暉子(でも、なによりも欲しかった言葉)

由暉子(目頭が熱くなって、視界が歪んでいきます)


京太郎「あ、あれ? ここは満面の笑みでってパターンじゃ……」

由暉子「嬉し、泣きです……」

京太郎「……そっか」ギュッ

由暉子「もう少し、このまま……」

京太郎「ああ」




つづ……かない

183: ◆zSdeXZwVBY 2016/10/10(月) 00:31:25.35 ID:z8auhqZV0
というわけで誕生日記念のifでした

ここの京太郎は本番まで行ったら責任をとってくれる模様
ただし相手が複数だった場合は未知です

さて、新しい仮面ライダーとは違いゲームクリアはならなかったので更新は多分明日です
テイルズのあとにもペルソナやらうたわれやら色々控えてるんですけどね

それじゃ