いよいよ、格安スマホでもハイレゾ楽曲標準対応端末が販売開始された。これで、スマホを買ってハイレゾデータをダウンロードしてくれば、誰でもスマホでハイレゾ楽曲再生を楽しめる時代が来たのだ。
そんな筆者のようなマニアにとって、いよいよターゲットにすべきスマートフォンが販売開始された。それが今回紹介する「ZenFone 3/ ZenFone 3 Deluxe」だ。筆者は、さっそくメーカーであるASUS様を拝み倒して試用させていただいたので、ここに紹介したい。
筆者のスマートフォンの用途は、音楽鑑賞のほかには、動画視聴、ゲーム、それにTwitter、Facebook、LINEといったSNS、あとはメールといったところなので、ここではAV周りとSNS投稿に必要なカメラ周りを中心にご紹介する。
筆者は残念ながら、ケータイではあまり通話はしない(しても家族間通話。LINEモバイルユーザなのでLINEの無料通話で済ましてしまう)ので、そちら関係の情報は他の方の記事を参照していただきたいが、とりあえず同好の士の参考になれば幸いだ。
主な用途
まぁ、個人的には、スマホの使い道は音楽、ゲームに、動画鑑賞かな、と(個人的な感想です)。ZenFone3では、このうち「ハイレゾ音楽」をスマートフォン本体だけで楽しめるようになったわけだ。
音楽
ゲーム
動画鑑賞
スペック
さて、ZenFone 3/ZenFone Deluxeに関しては、6月にCOMPUTEX TAIPEIでグローバル版が公開された際にも、小口貴宏氏による実機レポ記事が公開されているが、ざっと今回使用機材のスペックから紹介すると、ZenFone 3(ZE520KL)とASUS ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)というのは、以下のようなスマートフォンだ。
■ASUS ZenFone 3(ZE520KL)
▲ZenFone 2シリーズに比べて、アルミボディでかなりファッショナブルなイメージとなった。
5.2 インチ Super IPS+ 液晶ディスプレイ(フルHD・1920 x 1080 ピクセル)、CPUにSnapdragon 625 2.0GHz(Cortex-A53 x4 + 2)オクタコアプロセッサ、4GB LPDDR3 RAMを搭載したミッドレンジ級のスマートフォンだ。10月現在、すでに販売が始まっていて(試用機は違う色だが)「サファイアブラック」カラーが人気となっている。一部販売チャネルでは品薄となっているケースも出ているようだ。
通信規格としてはFDD-LTE/TDD-LTE CAに対応しており、au系のMVNO SIMではVoLTEも利用可能。DSDS(デュアルスタンバイ)対応で、SIM2枚を刺しした場合はその両方でアクティブに待ち受けが可能だ。
筐体のデザインはフラットになり、ディスプレイは2.5Dゴリラガラスを採用し、これまでのZenFone 2系よりぐっと高級感あるものとなったのがこの新世代のモデルに共通した特徴となっている。
搭載カメラはアウトカメラ 1600万画素、インカメラが800万画素。iPhone7やHuawei P9、Honor8のようなデュアルカメラではないものの、ASUS独自のPixel Master3によって暗い夜景などでもぐっと美しい撮影を可能としている。
コネクタはUSB Type-C(2.0)、背面に指紋リーダーを搭載し指紋認証によるロック解除が可能。Wi-Fiは2.4Ghzと5GHz両対応。
■ASUS ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)
▲ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)。寝かせたまま撮影しているのは、起こすと撮影のためのライトがハレーションを起こすため。そのくらいまばゆいオールアルミボディだ。
発売予定にZenFone3 Deluxeは、日本国内ではZS550KLとハイスペック版のZS570KLとなる予定だ。今回お借りできたのは前者、普及価格版のZS550KLとなる。
ZenFone 3と比較すると筐体はフルアルミ合金ボディとなり、ZenFone 3よりさらにデラックスさが増している。ただマシンスペックはディスプレイサイズこそ5.5型と若干大きくなったものの、フルHD解像度Super IPS+液晶、CPUもSnapdragon 625 2.0GHzオクタコアプロセッサで大きな違いはない。またメモリも同じLPDDR3を採用している(容量は3GBから4GBに増えたが)。
カメラユニットもZenFone 3と同じものを採用しており、アウトカメラの画素数は1600万、インカメラが800万となっている。
なお、ハイスペック版のZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)の方は、ZS550KLとはかなり異なり、ディスプレイは5.7型ワイド「Super AMOLED」ディスプレイ・ CPUにはSnapdragon「821」を搭載、メモリも高速な「LPDDR4」で、しかも6GBも搭載している。カメラユニットも異なりメインカメラはなんと2300万画素だ。また、データ通信も3CC CAに対応。USB Type-CコネクタはZS550KLよりも上のUSB 3.0仕様に準拠したものになっている。
ZS550KL、ZS570KL共通な仕様としては、NFC搭載、QuickCharge 3.0の高速充電対応などが挙げられる。
ZenFone 2からの変更点と各機種の立ち位置
ざっくりいえば、ZenFone 3という端末は、デザイン的には大きな進化、スペック的には前世代のZenFone 2シリーズ(といっても初代、Max、Laser、Goでそれぞれかなり仕様が異なるのだが)から、CPUは最新の世代のものへ、ディスプレイはFHDへと順当に進化したものとなっている。特に筐体の違いは大きく、見ただけで今までのZenFone 2とはハッキリ違いがわかるだろう。
特にZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)はフルアルミボディ、ゴリラガラス4を採用するなど、非常に高級感溢れる作りとなった。通信関係もいZenFone2シリーズでは対応していなかったCA(キャリアアグリゲーション)とDSDSに対応など充実した内容となった。ただ個人的には、microSDを1個潰してしまうDSDSの実用性は疑問に思う。
▲ZenFone 3シリーズでは、DSDS(2枚のSIMで二重待ち受け)が可能となっている。ただ、2枚目のSIMスロットはmicroSDと兼用なので、筆者個人としては、実用性は微妙な気もするのだが......。
ところで、ZenFone 3とZenFone 3 Deluxeの違いだが、まず、スペック的にはZenFone 3と3 Deluxe(ZS550KL)はスペック的に非常に似通っているのがわかるだろう。メモリ容量、NFCや急速充電などは異なるのだが、基本的には近い兄弟機と考えるべきだろう。
ただ、同じZenfone 3 Deluxeでも「ZS550KL」と「ZS570KL」の2バージョンが存在することに注意してほしい。今回試用できなかったが、Zenfone 3 Deluxe(ZS570KL)は、先に2機種とは性能的に、全く一線を画す「性能怪獣」(Zenfoneのキャッチフレーズ)そのものの機体だ。
海外のベンチマークサイトの結果を見ても、たとえばAntutu ベンチマーク値ひとつとってもZenFone3と3 Deluxe(ZS550KL)が6万ちょっとしか数値が出ないのに対して、3 Deluxe(ZS570KL)は14万を軽く超えるスコアを叩き出す。
つまり非常にざっくり言って、CPU、メモリ、画面描写のスピードなどは軽く倍を上回る性能をもつマシンであるということだ。価格も大きく違う(ZS550KLは5万5800円、ZS570KLは8万9800円。共に税別)し、スペック面では画面解像度や通信速度も大幅にZS550KLを上回っている。
手軽に楽しめるFLAC再生(ただし、本格的に鑑賞するにはアプリ導入・外付けDACがベター)
さて、ZenFone 3シリーズの(筆者的には最大の)AV機能の強化点であるハイレゾ楽曲再生について紹介したい。
ZenFone 3/ ZenFone 3 Delxueとも、本体のみでハイレゾFLACファイルの再生に対応した。これは、ZenFone 3/ZenFone 3 Delxue(ZS550KL)だけでなく、Zenfone 3 Delxue(ZS570KL)でも共通で、どちらの機種を購入しても同じように使える。
▲Zenfone 3 Delxue(ZS550KL)のホーム画面。「音楽」アプリがなくなり、音楽プレイヤーはGoogleフォルダ内の「Google Play Music」のみとなった。
楽曲再生アプリは、ZenFone5以降ZenFoneシリーズではASUS製の「音楽」という名前の音楽プレイヤーソフトが標準として用意され、さらにGoogleからもGoogle Play Musicが提供されるという二重体勢になっていたのだが、ZenFone 3シリーズではこれがGoogle Play Musicに一本化された。
Google Play Musicはクラウド再生のための音楽再生アプリと思われがちだが、実は端末内の音楽ファイルを聞くこともでき。USB接続でスマートフォン転送した楽曲ファイルを再生したり、あるいはmicroSDに入っている楽曲ファイルも再生可能だ。
ZenFone 3とZenFone 3 Deluxe本体での再生が可能なハイレゾデータは、FLACとWAVオーディオファイルでデータレートは192kHz/24bit、96kHz/24bit、88.2kHz/24bit、48kHz/24bit、44.1kHz/24bitとなっている。ハイレゾ楽曲データ配布サイトとしては、有名なところではe-onkyoやmoraなどがあるが、これらの楽曲データ配布サイトで配布されているハイレゾファイルは(一部のDSD形式のみの曲を除いては)ほぼ全てがFLACデータで提供されているため、つまりZenFone 3 / ZenFone 3 Deluxeでは、このような楽曲配布サイトからファイルを購入して入手しているような一般的なケースではほぼ問題なくそのまま手持ちのファイルが聞けることになる。手間なく手軽にハイレゾ音楽を楽しめる環境であるといえるだろう。
▲たとえば、FLACファイルの入ったmicroSDカードを端末に入れておけば、Google Play Musicの「最近再生または追加した曲」に入るので、これを選べばすぐハイレゾ楽曲の再生が可能だ。
個人的にイヤフォンついては、特にハイレゾ楽曲を聞く場合、数千円程度のインイヤーイヤフォンで構わないのでハイレゾ対応品を別途購入したほうが良いだろうと思う。
ZenFone 3/ Zenfone 3 Delxue(ZS550KL)に付属しているイヤフォンは、ぶっちゃけて言うがあまり質の良いものではない。聞けばわかると思うが、正直、これがハイレゾだと思ってもらっては困るクオリティだ。
ASUSによれば、ZenFone 3 Delxue(ZS570KL)にはZenFone 3/ ZenFone 3 Delxue(ZS550KL)とは異なる、スペック的にも正式に「ハイレゾ対応」のイヤフォンが付属するそうなので、そちらを購入する場合は標準品で十分楽しめるのだと思うが、ZenFone 3/ ZenFone 3 Delxue(ZS550KL)では、面倒でもちゃんとしたイヤフォンを買うべきだ。
▲ZenFone 3 Delxue(ZS550KL)添付のイヤフォン(ZenFone 3添付のものは箱に入っていないが、内容は同じもの)。正直、しょんぼりサウンドなので、ハイレゾ楽曲視聴には別の製品を買ってきたほうがいいと筆者は思う。選べば、たとえばサトレックスのTubomiなど数千円で買えるものもある。
ソースに合わせて適切なエフェクトをかける「オーディオウィザード」
ところでZenFoneシリーズは、日本で最初に販売されたZenFone 5シリーズから「オーディオウィザード」というサウンドイコライザが標準でインストールされており、音声をスマートフォンで再生する際にはエフェクトがかかるようになっている。
これはASUS製スマートフォンに標準でインストールされている音楽再生アプリ「音楽」だけでなく他のアプリ、たとえば、Google Play Musicなどの音楽再生アプリや、YouTubeやAbemaTVといった映像再生アプリ、あるいはゲームアプリなどの再生中も効果を効かせるもので、ZenFoneで聞くサウンドは、同じソースでも他機種に比べて非常に迫力ある、またクリアな音になっているのだ。
この効果は抜群で、筆者は複数のスマートフォンを持っているのだが、基本的に動画再生はZenFoneでやるようにしていたほどだ。
というのも、映画再生であれば低音を重視してEQ(サウンドイコライズ)をかけておけば戦車の砲弾の発射尾音などをズシンとヘッドフォンの中で利かせられたからだ。また、音を聞くことが重要なゲームなどでも、この機能の「スマート」モードで聞くようにしていた。そのようが楽曲の中で印象的な音になる部分が出てくるのでリズムが覚えやすいのだ。
▲Zenfoneの「オーディオウィザード」では、ローレゾリューションのサウンドであれば、それが動画再生であれ、ゲームであれ最適なイコライズをかけてくれる。
▲▼ビットレートが低くなりがちなVBR(可変ビットレート)で音声が流れる動画配信や、リズムゲームのBGMを聞きたい筆者のようなユーザーには非常に心強い機能なのだ。
▲ハイレゾ楽曲再生中に「オーディオウィザード」画面を表示させると「ハイレゾ再生中のため、オーディオウィザードはサウンドエフェクトをサポートしません」という意味のメッセージが表示され、効果が切られてしまう。楽曲データに忠実といえばその通りなのだが、ちょっと物足りないのも事実だ。
この「オーディオウィザード」はZenFone3でも有効なのだが、残念なことにハイレゾ楽曲を再生しているときは、自動的にOFFになり、データそのままの素の音が出てしまう。標準音楽プレイヤーのGoogle Play Musicは、基本的にスマートフォン標準のサウンドエフェクトをそのまま利用しているので、要するに、この端末ではハイレゾ楽曲を再生する場合はサウンドエフェクタが一切ないことになるのだ。
楽曲データに忠実といえばその通りなのだが、筆者的には、これまでのZenFoneでしていたように重低音強調ができないと、ちょっと物足りないのも事実だ。外付けDACを使って楽曲再生をするアプリ、たとえばOnkyoの「HF Player」などを利用するとハイレゾ楽曲に対してのサウンドイコライズを使用可能なので、物足りない場合は、このようなアプリをインストールして使うといい。筆者はTEAC製のDACユーザーなのでTEAC「HR Player」を利用したが、問題なく本体でハイレゾ再生しつつ、イコライザを利用できた。
▲TEAC HR PlayerでのFLACファイルの再生。ハイレゾ再生だが、アプリによるサウンドイコライズが可能。もちろん、この状態でスマートフォンに差したイヤフォンから音楽を聴くことができる。
ハイレゾ音楽を手軽に楽しめる機械、入門機としてはZenFone3はなかなか良いと思う(イヤフォンに関して言えば、HTC 10のように標準でそれなりに聴けるものを添付してほしかったが)。
これで物足りないと思ったら、次はUSB DAC視聴用のアプリを入れて、それから、可能ならUSB DACとポータブルアンプを接続して視聴する、というステップを踏むための入門機とすべきだろう。
ちなみに、ZenFone 3シリーズはちゃんとUSB OTG機能を搭載しているので、外付けUSB DACを接続し、対応プレイヤーソフトを使えばそれを使った音楽鑑賞も可能だ(実際、筆者もUSB Type-C OTGケーブルを調達して、評価中はUSB DAC・ポタアンを接続して本体での再生と聞き比べを行ったりもしている)。
また、ZenFone 3はそれなりにCPUパワー(2.0GHz・8コア)もあるので、外付けDACを接続すれば本体のみでは不可能だったDSD再生も可能になる。
▲ZenFone 3 /ZenFone 3 Deluxeは2.0GHz・8コアとDSDリアルタイム変換・再生するにも十分なCPUパワーがあり、USB OTG機能も搭載している。財力に余裕があればぜひ外付けUSB DACの使用も考えてほしいと思う
なお、音楽機能は、ZenFone 3シリーズでは、ZenFone 3/ ZenFone 3 Delxueとも共通だが、実はこの後年内発売予定の6.8型ファブレット「ZenFone3 Ultra」では、ZenFone 3/Deluxeの機能に加えて、バーチャルサラウンド音響機能の「DTS Headphone:X」が追加される予定だ。これがあるとビデオ鑑賞などでの迫力が、グッと増すはずで、この機種の販売開始も非常に楽しみだ。
カメラのフォーカス性能を大幅強化。AF精度や速度が向上
続いて言及しておきたいのは「カメラ」機能だ。ZenFoneシリーズのカメラはASUS独自のカメラ技術である「PixelMaster 3.0」と呼ばれる一連の技術を採用しているのだが、カメラの使い心地はこれまでのZenFone 2シリーズとは全く別物だ。
カメラユニットにかなり良い部品を使っているのか、4軸光学手ブレ補正と3軸電子式手ブレ補正の組み合わせがハマっているのか、手ブレ補正機能が非常に強力になった。光の少ない展示会場のブースの撮影などでもブレなくパネルや展示物が撮影できており、コンパクトデジカメなどを持っていくよりは、むしろこのスマートフォン1台持って行ったほうが役に立ちそうな感じだ。
また、オートフォーカスに関してもレーザーAF、位相差AF、追尾フォーカスを組み合わせることで高速に合焦し、非常に小気味よく写真を撮ることができるようになった。メーカーによれば最速0.03秒、体感ではそこまで早くはないが、カメラをON・フォーカスしたいものにディスプレイ上でタッチするとそれほど待たずにピントが合う。これはかなり写真を撮るのが楽しくなる小気味よさだ。
カメラモードは、「オートモード」が優秀でシチュエーションに応じてちゃんと、たとえば近接して花を撮影する場合は「マクロ」へ自動的に切り替えて撮影してくれる。
ちなみに、これまでもEXIFではどの写真でHDRで撮影したかなどがわかるようになっていたが、ZenFone 3の場合、ファイル名にHDRなら「vHDR_On」、超解像なら「SRES」などの設定情報が含まれるようになったので、PCなどに転送した場合もファイル名のみでわかるようになったのが便利で、このあたりも良い感じだ。
▲カメラをズーム、ディスプレイでフォーカスしたい部分に指を触れると、次の瞬間には「ピピッ」と合焦音が鳴る。小気味よくピントが合うので、写真を撮るのがかなり楽しくなる
▲ちなみに、前の写真、等倍ズームでは、この程度にしか見えてない写真だ。
▲撮影対象にぐっと近づくと、カメラは自動でマクロモードで撮影してくれる。この写真もモードは「オート」のままの撮影だ。
▲HDR proモードでの撮影。手前の暗がりも、奥の明るさもはっきりワイドなダイナミックレンジで撮影できるので、白とび、黒つぶれなく、撮影可能。
▲撮影モード選択メニュー。「オートモード」で基本的にはなんでも撮れるが、ローライトやHDRに明示的に切り替えたいときにはこのメニューで選ぶ。「パノラマ撮影」やPixel Master3.0で追加された「超解像」撮影もこのメニューから選択できる。
▲ZenFone3 Deluxeによるパノラマ撮影写真。今流行の360度カメラと異なり撮影しながらスマートフォンを手で動かす必要があるが、適当にカメラを動かしても案外綺麗に360度パノラマの撮影が可能だ。
このほか、ZenFone 2系から引き継いでいるカメラ機能も、いろいろな箇所が改善されている。
たとえば、HDR撮影自体はZenFone 2から存在していたわけだが、カメラユニットが変わったためか、以前のような写真を複数撮影して合成して...という処理が感じられなくなった。
原理からいえばそうしているはずなのだが、普通の撮影のように撮影にかかる時間は全く感じさせない。HDRモードに一度してしまったら、スポーツ競技のように極端に動く被写体でない限りは、ずっとHDRで撮影でいいと思ってしまう感じだ。
また、たとえば、以前はHDRは原理上、静止画にしか利用できなかったわけだが、どのように対応したのか、動画でも利用できるようになっていて非常にありがたい.
作例として挙げた動画がHDRを使っているのだが、確かに非常にダイナミックレンジが広く、球場後ろの森の葉などもつぶれていない。
▲動画の作例。HDRモードでの動画撮影だが、ダイナミックレンジが広い以外は特に普通のスマートフォンの撮影と思ってなんの違和感もない出来なのがわかるだろう。
あるいは、個人的に非常に気に入っているのはZenFone 2 Laserからある「単焦点」機能だ。これは、デュアルカメラを持つスマートフォンでいう「アパーチャ機能」のように、疑似的に一眼の単焦点レンズのような、一点にフォーカスして周りをボケさせたような写真にする、というものだ。ただし、デュアルレンズのスマートフォンと違い、1つのレンズでフォーカスを変えて何枚も写真を撮ってソフト的に合成するという処理を行うので正確には違うのだが、独特の写真が撮れるので面白いのだ。
ちなみにZenfone 2 Laserでは同じように撮影しても、アルゴリズムの関係なのか、作例の松の葉のような細かいメッシュの間の被写体はうまくボケなかったりしたことがあったのだが、Zenfone3ではこのあたりのアルゴリズムは改善されたようで、例でも松の葉の間に見える作業員の姿はちゃんとボケているのがわかるだろう。
▲単焦点機能。単眼だが、カメラがピントの違う何点もの写真を撮影し、ソフト的に合成することでボケ味のある写真を作り出す。そのため、撮影後に画面右のスライドバーでボケ方を調整することも可能だ。
▲単焦点で撮影した写真の例。デュアルカメラ(たとえばHuawei P9やHonor8)と比べるとちょっと違うのだが、独特のボケ味のある写真になる。
カメラユニット以上の解像度である、6400万画素の画像を作りだす「超解像」などは撮影に時間がちょっとかかるなど改善の余地があるようにも思うが、それ以外の多くの機能は本当に実用的で、快適になった。
ZenFone 3は、それまでのZenFone 5やZenFone 2シリーズほどのお得感が薄れてきて人によっては「割高」とまで言われることもある。しかし、筆者は個人的には、オーディオのハイレゾ対応、それにカメラ機能の向上を考えれば充当なレベルアップがなされた正常進化なのではないかと思う。
人によってハイスペック版のZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)、あるいはファブレットサイズのZenfone3 Ultraでなければという人もいるだろうが、ZenFone 3(ZE520KL),ASUS ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)は普通の、しかし多くの人にお勧めできるスマートフォンなのではないかと思う。