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草食恐竜は、本当に植物だけを食べていたのか? : カラパイア

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 草食動物と肉食動物の違いとは何なのか?

 生物学者以外の人は、その骨に運命のごとく刻まれていると答えるだろう。肉食動物なら鋭い牙と爪を備え、草食動物なら臼のような歯と蹄(ひづめ)を備える。もちろん、両方の特徴を兼ね備えた動物もいるが、”狩る者”と”狩られる者”の領分は犯されることがないと考える人は多い。

 では本当に、草食恐竜は植物のみを食べていたのだろうか?
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 恐竜については、化石からしか分析することができないが、両者の違いは特にはっきりとしているようだ。アンキロサウルスを例にとろう。

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アンキロサウルス復元予想図

 硬い装甲に覆われ、どっしりとした足、ずんぐりとした腹を持つ、植物を食べることに特化したかのような数少ない草食恐竜である。

 歯はごく小さく、クチバシは丸みを帯び、噛み付くことなどできなかった。背中には突起があり、捕食者に遭遇すれば身を丸めて身を守ると説明される。現在の家畜のように、中生代の生態系においては常に狩られる者であり、狩ることはないとされている。

 だが、古生物学者のジ・チアンらの発表によると、少なくとも中国のアンキロサウルスの仲間リャオニンゴサウルスはそうした傾向に抵抗していた可能性があるという。

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リャオニンゴサウルスの化石

 これまで知られている最大の標本は30cmほどで、棍棒のような尻尾を持つより有名な仲間よりもかなり小さい。最初に発見されたリャオニンゴサウルスからは化石化した組織が見つかった。ジ・チアンはこれについて腹甲という、亀のような水生爬虫類の腹部によく見られる骨状の構造であると主張する。

 しかし、新たに記載された標本には腹甲がない。代わりにその腹には大量の魚の化石が詰まっており、不運な爬虫類の尻尾らしきものも見つかっている。ジ・チアンのチームはさらに奇妙な解剖学的な痕跡にも触れている。骨盤はあまり結合しておらず、爪は比較的鋭く、不規則な歯があり、頭部は亀に似ていた。

 総合的に考えて、リャオニンゴサウルスは小型の泳ぎ回る肉食動物であり、それまで完全に草食動物と考えられてきた系統から外れているとジ・チアンは論じる。要するに、表面的にただ亀に似ているだけでなく、おそらく亀のように行動していたということだ。

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 水生で、肉食動物的な生態の証拠とされるものは決まり切ったものではない。例えば、リャオニンゴサウルスの骨の腹部にあった魚の化石は、ちょっとした難問を突きつける。

 『ジャーナル・オブ・ジオロジー』誌の論文で、ジ・チアンらはそこに魚が入り込んだ理由として3つの可能性を提示する。

 まず、実際に泳ぎまわって淡水の小魚を大量に貪り食っていた可能性がある。しかし、リャオニンゴサウルスの死体が魚の死体のうえに落ちたと想像することもできる。あるいは、ひょっとしたら魚は恐竜の体内を隠れ家として使ったり、これを食べたりしていて、一緒に保存されたのかもしれない。結局、魚は体内に散らばっており、餌だったとしたら予測されるように腸内にまとまっていたわけではないのだ。

 論文の著者らは捕食者説を支持している。「付近にある別の場所の同じ岩から採取された魚の標本は、胸郭の中で見つかったものと好対照で、非常にはっきりとした輪郭を示しています」と共著者であるカナダ自然博物館の古生物学者シャオ・チュン・ウーは話す。「胸郭内の魚の骨はどれも体の輪郭が曖昧で、そのほとんどで尻びれが欠けていました。胃の消化液によるものでしょう」

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 しかし、腹甲と結合していない骨を水の中で暮らした解剖学的証拠とするのは少々大胆だ。アンキロサウルスの専門家であるロイヤルオンタリオ博物館のビクトリア・アーバーは、2010年に最初の標本で見つかった腹甲とされるものを検査したが、確信を得られなかったという。「その表面は非常に細かい鱗のような質感で、どちらかというと皮のような印象を受けました」と彼女。「今回の新しい標本を含み、腹甲を持つ標本をほかに知りません。むしろ変わった皮が保存されたかのような感じです」

 ジ・チアンが水生爬虫類のそれに似ていると主張する骨格の未結合の骨は、単純にその動物が若かったことを示している可能性もある。アーバーによると、恐竜の骨は年を重ねるにつれて結合する傾向があるという。化石が非常に小さかったことも、子供だったと考えた方がうまく説明できる。ジ・チアンらは大人である証拠として、中国にあるリャオニンゴサウルスの標本はいずれも小さいと主張する。しかし、そうした標本は科学誌で公開されたものではなく、彼らの主張を確かめることは今のところ難しい。

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 こうした議論が起こるそもそもの原因は、論文の写真が非常に不明瞭で、疑いの余地が多分にあることである。「著者の結論は理にかなったものだと思います」と話すのは、ウーの同僚のジョーダン・マロンだ。「ですが、これを論文の中でもっと明確にすることができたはずです」と彼。それでも、リャオニンゴサウルスが魚を食べていたという見解は、鋭い歯や爪といった骨格の奇妙な特徴をうまく説明できると彼は考えている。

 リャオニンゴサウルスは大人だったのか、それとも子供だったのか? もし子供だったとすれば、それは水生ではないということなのだろうか? 本当に魚を食べていたのか?

草食と考えられる現在の動物の多くは実際には雑食である可能性

 これらに答えを出すにはいくつか方法があるとアーバーは言う。一つには、骨を砕いて細胞の成長を確かめるというやり方がある。ここから死んだときの年齢が推測できるだろう。また、ジ・チアンらが論文で言及している他のリャオニンゴサウルスの標本を徹底的に精査する方法もある。それまでは、リャオニンゴサウルスが亀のような生態を持っていたのかどうかはっきりしないままだ。

 仮にジ・チアンらの仮説が正しいと証明されれば、一般的な想定が修正されることもあるかもしれない。草食と考えられる現在の動物の多くは、思ったよりも植物にべったりではないということだ。

 鹿や牛や馬はひな鳥から魚の死体までなんでも食べることで知られている。アンキロサウルスの標本のほとんどは彼らが主に柔らかい植物を食べていたことを示唆するが、時折肉を楽しんでいた可能性もあるということだ。

 化石は、不完全なものや謎めいたものまで、自然がいかに予測不能であるものか思い起こさせてくれる。しかし、現代の動物もまた過去に関する似たような洞察を与えてくれる。「自然の歴史は、今日私たちが思っている以上に複雑だということです」とウーは話してくれた。

via:Did Plant-Eating Dinosaurs Really Only Eat Plants?/ translated hiroching / edited by parumo
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