双葉杏「楽園シェルター」
――事務所――
モバP(以下P)「杏ー! どこに行ったー!?」
きらり「レッスン頑張らなきゃメッ! だよ! あっ、杏ちゃんみーっけた!」
杏「杏は杏じゃないよ。物まね芸人の三葉あんこだよ」
P「身長まで一緒な物まね芸人がいるか! ほら、レッスン行くぞ!」
杏「今日は休みにしない? ほら、最近ブラック企業とか過労死とか物騒じゃん? 杏が死んだりしたらみんな悲しむよ?」
きらり「だーいじょうぶだにぃ! 杏ちゃんはそう簡単に死なないよぉ! だからそんな言葉軽々しく使っちゃダーメ! ほぉら! 行こ!」
杏「あーれー……」
P「ふぅ、全く。やる気さえ出せばホント敵なしなんだけどなぁ」
―レッスン後 杏の部屋―
杏「ただいまー……って誰もいないけど。うん? 何か届いてる?」
『シェルターでの生活による人文科学的実験被験者募集』
杏「シェルター生活? 実験? 何だろこれ……アルバイトの募集かな? でも時給とか書いてないじゃん?」
『シェルター内での生活は三食ついており、欲しい物は何でもご用意します!』
『また体調が悪くなった場合、国内トップクラスの医療設備がございますので福祉面においても安全のまさに楽園!』
『ただシェルターで過ごすだけの実験です』
杏「つまりシェルターにいれば何でもただで手に入るから時給はないって事? 欲しいものが貰えて寝て食べて過ごすだけのそんなバカみたいなアルバイトあるわけ……」
杏「もしもし、チラシを見たんですけど……」
―面接会場―
面接官「次の方、どうぞー」
杏「双葉杏でーす。不労所得が貰えると聞いて応募してきましたー」
面接官「おや? 貴女、もしかしてアイドルの双葉杏では?」
杏「名前が同じなだけな別人だよー」
面接官「まあいいでしょう。双葉さん、この度は当実験にご応募いただきありがとうございます。さて、本実験の要項はご確認済みでしょうか?」
杏「要するにシェルターの中で寝てゲームしてお菓子食べるとお金がもらえるんでしょ?」
面接官「ええ。ザックリと言えばそうなりますね。こちらの書類にも目を通していただければと思います」
杏(字が小っちゃくて読みにくいなぁ……美味しい話には裏が有るって言うけどこうも読みにくいとめんどくさいよ)
杏「目を通したよ」
面接官「このシェルター内では必要なものは全てお取り寄せいたします」
杏「と言うと?」
面接官「全国各地の名産品や、今は出回っていない珍しいゲーム、お望みとあれば法律すらも無視した最高級ホテルも真っ青なサービスをご用意しています」
杏「それは凄い!」
面接官「その気になればシェルター内でお仕事も出来ますよ?」
杏「えー。楽してお金を稼ごうとしているのに働くなんてナンセンスだよ」
面接官「それもそうでしたね、失礼いたしました。では健康チェック等諸々ございますのでこちらの部屋へ。それをクリアできましたら合格となります。晴れてシェルターライフを満喫できます」
杏「はーい」
杏(健康チェックを終えた私はその場で合格通知が貰えた)
面接官「おめでとうございます双葉さん。それでは早速シェルターでの生活へと移りますが」
杏「ええ? 今から?」
面接官「はい。双葉さんのお気持ちが変わらないうちにと思いまして」
杏「そう? じゃあちょっと待って、プロデューサーに連絡するから」
面接官「はい、かしこまりました」
杏「ピポパっと……あっ、プロデューサー?」
P『杏か? どうした?』
杏「あ、うん。ちょっとの間杏はシェルターで生活するから」
P『……はっ?』
杏「そういうわけだからよろしくねー」
P『待て待て! シェルターってなんだ!? 仕事はどうするんだよ!』
杏「ここ数日仕事はお休みでしょ? なら大丈夫だって」
P『そうだけど! 意味が分からないぞ!?』
杏「杏は働かなくても生活できる方法を思いついたのだ! じゃあ、そういうわけだから。飽きたらまた戻るよー」
P『おい、杏―!』ピッ
杏「それじゃあシェルターに入れてよ。もう今日は疲れたよ」
面接官「ええ、かしこまりました。では車にお乗りください」
―シェルター内―
杏「ふぁーあ……よく寝たよ。なんか車に乗った途端眠くなったんだけど、薬盛ったの?」
面接官「シェルターの場所は機密事項となっておりますので、杏様にも場所をお伝えするわけにいかなかったのです。ただ、外部との連絡を携帯で取ることは可能ですのでご心配なく」
杏「シェルターって結構広いんだね」
面接官「ええ。本来これは災害シェルターとして用意されたものでしたが、その色々とありまして今は我々が所有しております。たとえ核爆発が起きようとも、この中にいる限りは絶対の安全を保障します」
杏「ふーん」
面接官「では実験を始めましょう。食事は毎日決まった時間に3食出ますが、間食等はお気軽にお申し付けいただけたらと思います」
杏「じゃあ飴を用意しといて」
面接官「かしこまりました。では、素晴らしき楽園ライフを……」
杏(こうして杏のシェルターでの自堕落生活が始まった)
杏「フンフンフーン」ピコピコ
杏「あー、おなかすいたなー。すみませーん、おやつちょうだーい。あと飲み物はコーラで」
管理者「かしこまりました」
杏「一日中ゲームをしながら自堕落に過ごす……しかもそれを誰も咎めないなんて、なんていい場所なんだ!」
prrrrprrrr
杏「必要なものは何でも用意してくれるし、外に出る必要もない! まさに杏の王国だね」
prrrprrr
杏「……まあ、プロデューサーやきらりから毎日のように電話がかかってきてるけど。そんなに心配しなくても飽きたら外に出るのにね」
きらり『にゃっほー! 杏ちゃーん、きらりだよー! 今日もいい天気だねぇ!』
杏「いい天気って、シェルターの中じゃ外の天気なんか見れっこないから関係ないよ。晴れの日も雨の日もやめる時も健やかなる時も杏は杏が思うが儘に自由で有り続けたいの」
きらり『でもぉ、杏ちゃんと一緒にいれば、もーっとハピハピできるにぃ! だから……』
杏「杏は今お仕事中なんです、惰眠を貪り贅沢を尽くしてだらだら過ごす。あれだよ、マリーアントワネットの役作りだよ。パンがなければケーキを食べればなんとやらー」
きらり『杏ちゃん……』
杏「じゃあ切るねー。ギルドの会合に呼ばれてるし、それじゃね」
きらり『うん。帰って来るのをずっとずーっと、待ってるにぃ!』
―またある日のこと―
杏「ゴホッ、ゴホッ……」
杏「寝ずにゲームしてばっかしてたから……けほっ! 風邪ひいたな、体がだるい……病院行かないと」
管理者「その心配はございません、双葉さん」
杏「え?」
管理者「当シェルターでは完璧な医療設備も完璧に整っておりますので。ドクターズ、カモン!」
医者「杏の運命は、俺が変える!」
杏「あっ、医者の方からこっちに来てくれケホ! るんだ……」
管理者「まさに至れり尽くせりとはこの事でございましょう」
―またあくる日―
杏「……」ピコピコ
杏(何もしなくていい生活だけど、流石にずっとシェルターの中にいたら飽きてきたなぁ)
杏「ねえ、管理人さん。この部屋にいるのも飽きてきたんだけど」
管理者「さようでございますか。でしたら、こちらはいかがでしょうか?」
杏「なにこれ? VRヘッドセット?」
管理者「はい。やはりシェルター内でずっと生活するとなると、同じ景色ばかりで飽きてしまう事もあります」
杏「そりゃあ無機質な部屋だもん。家具置くのも面倒だしそのままにしてたけど、味気ないよね」
管理者「そこで私たち考えました、シェルター内にいながらも世界各地へと旅行することが出来るようにすればいいと。つけて見て下さい」
杏「どれどれ……! こ、これは!」
ヘラジカ「ヘラー!」
杏「す、すごい……! 目の前景色が雪国になって噂のヘラジカが……」
管理者「お気に召されたようで何よりでございます。我々は様々な事情により旅行に行くことが出来ない方々のために、仮想現実での旅行を体験させるべくVRでの世界旅行を実現させたのです。リモコンを押していただくと」
中国人「ニーハオ!」
杏「! 今度は万里の長城の上! でこれを推すと」
京美人「おいでやす~」
杏「京都の街並みになった!」
管理者「世界各国の観光地をシェルター内にいながら体感できますので、ますます外に出るなんて選択肢がなくなるんですよ……ってあれ、聞いていませんね」
杏「おー! すごいぞー! ゴリラだゴリラ!」
管理者「コホン。まあ、良いでしょう。よきシェルターライフを……」
杏「ここは楽園かー! ハッハッハッハ!」
prrrprrr
杏(この時、完全に現実や外の世界のことなんて私の頭の中から抜け落ちていた)
prrrprrr
杏「今度は恐竜が出て来たー!」
prrrprrr
杏(そして私は、自分の愚かさを一生後悔することになる)
―数週間後―
テーレッテー!
杏「ヒャッハー! 汚物は消毒だー!」
杏「……うーん、流石にこうもずっとVR見てたら飽きてくるもんだね」
杏(そう言えば、ここんところ管理者としか会話していないな……みんな元気しているかな)
杏「うわっ。携帯の着信がすごいことになってるよ。結構な間見てなかったしなぁ」
杏「プロデューサーにきらりに……留守電も沢山だ。あれ? 途中からきらりからの電話がない」
――
きらり『うん。帰って来るのをずっとずーっと、待ってるにぃ!』
――
杏「愛想尽かされても、仕方ないよね」
留守電『もしもし! 杏か! 聞いてるか!? 良いか、これを聞いたらすぐにかけなおしてくれ!』
杏「やばっ、一週間も前の留守電じゃんこれ……凄く切羽詰ってるけど、何が有ったんだろ」
杏「もしもし、プロデューサー?」
P『!! 杏! 杏なのか!? 良かった……連絡がついて……
コメント一覧
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- 2016年10月24日 22:42
- ぬふふ
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- 2016年10月24日 22:46
- 杏が罪を償うなら復讐ではないのか?(クリミナルガールズ感)
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- 2016年10月24日 23:08
- 杏にぬめっとした汁ぶっかけられるってマジ?
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- 2016年10月24日 23:18
- これは良い後味悪さ
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- 2016年10月24日 23:20
- 最初のコメントはいらないかなぁ
優しさを感じるけど
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- 2016年10月24日 23:38
- てっきり杏のクローン作成して、元気になったきらりとクローン杏の番組をオリジナルが観るendかと思ったよ
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