とある魔法使いのおはなし
- 2016年10月28日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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ざっ
冒険家「ここか…」地図ぴらっ
冒険家「かつて世界に暗雲をもたらさんとした悪逆非道の魔法使いが支配する古城、ねぇ」
冒険家「なるほど、趣はあるが……はたして禁忌とまでされる程のものか?」
冒険家「中には宝物庫があり、そこには古代の価値ある遺産や財宝が唸るほどあるそうじゃないか」
冒険家「もちろんそれも含めてデマかもしれないが…まことしやかに囁かれる迷信というのは俺たちの冒険心をそそらせる」
冒険家「俺のような自由人(無職)にしてみれば、ここはまさにうってつけな遊び場だ」
冒険家「さっそく入って確かめるとするか…」すたすた
冒険家「ふん…吹き抜け窓から穏やかな陽が射し込み、雄大な自然の景色を眺めに散歩できる回廊」
冒険家「なだらかな風の澄み渡る城内は埃一つ立たず実に心地好い」
冒険家「ふっ…さすがに魔法使いの城と称されるだけのことはある。とても繊細に行き届いた素晴らしい造りだ」
冒険家「てっきり野蛮な盗賊や野生の動植物に蝕まれ、荒廃してしまったがゆえに立ち入りを禁じられたのかと踏んでいたが……どうやらそういう訳でもないらしい」
冒険家「ともすれば何故ここを禁忌としたのか、だ」
冒険家「一見すると危険はなく何者かの干渉を受けるような害もない」
冒険家「………」
冒険家「この城には未だ見ぬ宝が眠っており、それを誰も掴めないでいる」
冒険家「だからこそ国はここを禁忌と定め、不可侵を義務付けた」
冒険家「そう……全ては莫大な秘宝を独占する為」
冒険家「ククク!どうりでイヤに厳重な警備が敷かれていた訳だ」
冒険家「だが俺の目は誤魔化せん!関門など難なく突破したこの俺様!冒険家(無職)ヴェルザー様が秘宝の在処を暴いてやる!!!」
???「よく響く独り言だな」
冒険家「え?」くるっ
???「お前、五月蝿いよ。彼の目が覚めちゃうじゃないか」
冒険家「び、びっくりした!先客がいたのか」
???「………」
???「なんでお前に指図されるのかな、ここはボクの城なのに」
冒険家「はぁ?なにを言い出すんだ」
???「何ってそのままだけど」
冒険家「やれやれ、どうやって入ったか知らないが秘密基地ごっこは町に戻ってやんなさい。ここは君のような子供の来る場所じゃない」
???「」いらっ
???「冒険家?そんなの暇をもて余したろくでなしのやることだろ」
冒険家「ほう?言ってくれるな!じゃあ君は何者だというのか」
???「この城の主」
冒険家「まだそんなふざけた事を……」
???「お前、焼かれるのと引き裂かれるの、どっちが好き?」
冒険家「なに…?」
???「」キュイイイン
冒険家「(掌が光った…!?)」びくっ
???「ちなみにボクは爆破だけど」ひゅっ
冒険家「ま、まさかお前…!ま、まま魔法つか」
ボンッ!
ぱらぱらぱら
???(魔法使い)「あーあ、散らかっちゃった…。火炎魔法で焼却しとこ」ピッ
ボォォ………
魔法使い「朝食の支度しないと」すたすた
男「おはよ…」ごしごし
魔法使い「おはよう!」ニコッ
男「ふあ~……ねみぃ」
魔法使い「はい、紅茶!寝覚めにいいよ」ことっ
男「ん、あんがと…」ごくごく
魔法使い「えへへ!おいしー?」でれでれ
男「ああ…ていうか、なんか機嫌いいな」
魔法使い「そう?」
男「朝っぱらからまぶしいくらい笑ってんから…」
魔法使い「キミといる時はいつもこんな感じだよ、ボク」ニコニコ
男「あ、ああそう…」
男「(別にそんな好きじゃないんだが…)」もぐもぐ
魔法使い「どうかな!どうかな!?」わくわく
男「ああ、うん。うまいよ」
魔法使い「よかったぁ!」
男「(とりあえずうまいって言っとけばいいし、変に感想求められないだけいいけどさ)」
魔法使い「はいコレ!」どっさり
男「ん?なんだ、この大量の瓶詰めは」
魔法使い「キミに喜んでもらいたくて1年分作ったんだ!お昼も夕飯も大好きなジャム尽くしだよ!」キラキラ
男「いや、それはちょっと」
魔法使い「安心して!飽きさせないように味は工夫してあるから!ほら、苺だけじゃなくて葡萄や蜜柑、餡もあるよ!」
男「や、やりすぎだろ」
魔法使い「へ?」
男「そんなジャムばっか食えねーよ」
魔法使い「………」
男「(あ、やば)」
男「だ、大丈夫だ!気持ちはちゃんと伝わったから」
魔法使い「ううん、無理しないで?この生ゴミはボクが責任持って滅しておくから」
男「(滅す…?)せっかく作ったんだし残しときゃいいじゃんか」
魔法使い「へ?キミの口に入らない食物なんて取っておく意味ないよ。全ての生命はキミの口に入るか入らないかに分けられてるんだから」
男「分けられてないわ、食物連鎖の頂点か、俺は」
魔法使い「そうだよ?」首かしげ
男「そうじゃねーよ、さも当然みてぇに言うな」
男「怒ってないよ。ただ大げさだと言ってるんだ」
魔法使い「ごめんね…」しゅん
男「だから怒ってないっての」
魔法使い「ホント…?」
男「本当だよ。だから気にすんな」
魔法使い「えへへ、ならよかったぁ」ぱぁぁ
男「……」
男「どーも…」
魔法使い「」キュイイイン
バシャッ ジャブジャブ
男「(また空中に浮かして洗ってら。水の魔法と風の魔法の応用とか言ってたけど便利だよな)」
魔法使い「すぐ終わるから今日もいっぱい遊ぼう?」ニコッ
男「ああ、そうだな」
魔法使い「~~♪」
男「(こんな無邪気なヤツが昔、世界を滅亡寸前まで追い込んだって言うんだから信じられない)」
男「(そもそも俺だって、なんでこんなとこにいるんだか)」
ざっ
男「ここか」地図ぴらっ
男「世界を滅亡に追いやろうとした悪魔の住み処ってのは」
男「ふっ!トレジャーハンター(無職)の血が騒ぐぜ」
男「物々しい噂と違って、ずいぶん凝った内装だな。観光名所にでもした方がいいんじゃないか」
男「しかしだだっ広いばかりで魔物や罠もなければお宝の類いもなさそうだ。やはり迷信だったか」
男「ま、そりゃそうか。魔物も魔法も大昔の言い伝えで実際は無かったとされてるしな」
男「この城に踏みいった冒険家が何人も行方知れずになってると聞いたから探ってみたが、きっとなにもないと知ってよそへ移ったんだろう」
男「俺も帰るとするか」くるっ
魔法使い「やあ」
男「うわあっ!?」ずさっ
魔法使い「なにしてんの」
男「な、なんだお前!?どっから出てきやがった!」
魔法使い「ボクは魔法使い。この城の主さ」
男「(ま、魔法使い…マジかよ、こんなガキが?)」
魔法使い「焼かれるのと引き裂かれるの、どっちが好き?」
男「え?や、焼く…?」
魔法使い「破裂でもいいかもね」ピッ
男「」ビクッ
どぱぁんっ!
魔法使い「どう?自分の頭が卵の殻みたいにひしゃげる感覚は」
男「な、なな何を……」
魔法使い「今のは幻影魔法、簡単に言うとキミの想像力を強く働かせてあげたのさ」
男「ほ、本物…なのか」ごくり
魔法使い「さ、選びなよ。いつもなら一瞬で滅するんだけど今日はなんとなく遊びたい気分でね」
男「ま、待ってくれ!話をさせてくれないか」
魔法使い「勝手に話せばいいよ、聞いてあげるかは別として」
男「(ど、どうする…!まさかこんな平和ボケした時代に本物の魔法使いがいやがるとは…!)」
魔法使い「どうしたんだい?話をしたいんじゃなかったの?」
男「(こ、ここは一つ穏便に……って訳にもいかなそうだな。今まで来た奴らも全員こいつに殺されたっぽいし)」
魔法使い「……待てないなぁ」キュイイイン
男「わ、待て!落ち着けって!?」
魔法使い「水に溺れさせて息の根を止めてもいいし、土に包んで圧死させるのもいいな。キミはどれがお望み?」ニタァァ
男「(冗談じゃねーぞ!こうなったら一か八か!)」チャキッ
魔法使い「あはは、おもしろいね、そんなナイフ一本でなにができるんだろう」クスクス
男「ウオオオオ!!!」バッ
魔法使い「はい死んだ♪」ピッ
男「この短剣を差し上げます!!!」ミツギ
魔法使い「……はい?」ピタッ
魔法使い「……」
男「どうぞお受け取りくださいませ!」スッ
魔法使い「ふーん…」パシッ
男「い、いかがですか」
魔法使い「確かに…この赤く燃える輝きはルビーの特徴と一致してるな。といっても小粒だから大した価値はなさそうだけど」シゲシゲ
男「る、ルビーは太古より高貴な身分の方が身に付ける一流の宝石です!まさにあなた様にお似合いかと!」
魔法使い「そうだね
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