【ガルパン】逸見ルッキンスター
- 2016年10月28日 22:10
- SS、ガールズ&パンツァー
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キャラのイメージと違うところが多々あると思います。
いわゆるエリみほです。
よければ読んでください。よろしくお願いします。
「…………」
「お前は一か月間の停学だそうだ」
「…………」
「当然だな。あろうことか規律を重んじる黒森峰機甲科生が、……チームメイトに思い切り暴行を働いたんだ。だが、軽すぎるくらいだろう。なぁ。………運が良かったな。あいつ、顔面強打撲でなんとか全治二週間だそうだぞ」
「…………」
「おい、エリカ。お前からは何か言い分は無いのか」
「…………」
「…………」
「おいっ!!なんとか言ったらどうだ!!!」
「……………何も」
「何?」
「………何も、ありません」
「はい」
「……貴様は部屋で寝ているがいい。その間我々はお前抜きで悠々と練習を続ける。……意味は、分かるな」
「…………はい」
「……もういい。行け」
「…………」
ガチャ
バタン
「………くそっ………!!!」
ガァン!!!
「む、むむむ………」
目の前のノートを睨みつける。
文武両道を旨とする黒森峰機甲科生は、機甲科の専門授業だけを一生懸命やりゃあいいってもんじゃない。
頭はパーです。でも戦車だけは動かせますでは、普通科の生徒にも示しはつかないというものだ。
王者たるもの知恵も必要なのだ。
それから隣に置いてある参考書のイラストを睨みつける。
能天気なタッチのキャラクターが、馬鹿でかい指のついた指し棒片手に(重くないのか?)、朗々と吹き出しびっちりで喋っている。
「くっ、このメガネ……」
毎度毎度、ね?簡単でしょ?じゃないぞ、この野郎。能天気なのはタッチだけではないらしい。
全ての高校戦車道を納める者の規範として、黒森峰は勉学に置いても王者たらねばならない。
いい校風、いや、学科風だと思う。
そう、我々はあるべき姿に向かって真っ直ぐに進むべきなのだ。
「エリカさん何やってるの?」
ひょこっ、という間抜けな音が聞こえてくるかのような動きで、栗色の髪が飛び出してきた。
私の同室で、我が黒森峰の誇る副隊長で、私のライバル(なんと言われようと少なくとも私の中では)で、私の、まあ、友達の。西住みほだ。
とっくに風呂にも入って、もう寝る準備万端だ。勉強なんてする気は一切ない。
明日できるなら明日やればいいじゃないの。そんな声が頭の後ろでゆらゆら揺れるぼんぼりから聞こえてくるようで、これまた私のやる気を削ぐ。
いつもながら、王者たる者の姿とは正反対を体現したような奴だ。
「……あんたね、いきなり出てくるんじゃないわよ」
「といいつつ、気づいてたんでしょ?」
「まあね」
先ほどから、こちらのやっていることを気にする様子があった。
ベッドでごろごろ漫画を読むのもそぞろに、こちらを度々見てきている。という視線を感じていた。
こういう時、こいつは構ってやらないとへそを曲げるのだ。
ふん、と鼻を鳴らす。しょんないな。ま、一通りテスト範囲は済んでるし、ちょっとくらい付き合ってやろう。
「ねぇ、何やってるの?」
「物理」
ペンの頭でコツコツとノートを叩くと、うげ、という顔でこちらを見てくる。
「流石になんとなく分かってたけどね……」
じゃあ聞くなよな。構って欲しいんだろうけど。全くこの子は。
「かっこいいでしょ?」
「ここぞとばかりにクォーター感だして来ちゃって」
呆れたような顔をされる。心外だ。
「それに、誰かさんがラクすることもないしね」
「……いじわる」
今度は膨れっ面をされる。やっぱり。そっちが本音よね。
いじわるというのも全く心外だ。私はみほのためを思ってやっているのだ。ラクな方にラクな方に流れて、結局私自身に教えを請いちゃう……いやいや、そんなことのないようにだ。
まぁ単純にニュアンスを掴みやすいってのと、祖母にずっと教えて貰ったドイツ語を忘れないように、記憶のメンテナンスも兼ねているのだけれど。
「好きだよね、物理」
「まーね」
「何が楽しいのか分からないけどねぇ」
「教えたげましょうか?」
え、遠慮しときます、と、苦笑いで返してくる。
ふふふ、そうでしょう。知ってる通り私は、一から厳しく教えるわよ。長いし大変よ。
それでもテストが間近になると、こいつは決まって私に、おずおずと理系科目のノートと教科書を差し出してくるのだ。
もう定例行事。決定事項。
……戦車戦のことなら生報告、生データでも驚くくらいのスピードで吸い込むのに。
こと理系科目での西住みほは、私がいないと色んな意味でバカ犬レベルの学習能力なのだ。
中学の頃から何度あったか数えられない。普段からやっとけっちゅーの。全く。
ふと、みほが真顔になった。
「ああ、ちょっと気になってね、オリジナル問題」
「オリジナル問題?」
「月から撃った砲弾が、月の重力を超えるために必要な速度と、地球に着弾するまでの時間」
「……エリカさんたまに突飛なこと言い出すよね」
「ねぇ」
「えっ」
「あなた、そのいちいちびくびくおどおどするの、やめなさいよ。虫酸が走るのよ」
「いっ、いつみさ、ごっ、ごめんなさい……」
「……その、意味もなく謝られるのが一番むかつくの」
「ごっ、ごめ、あっ、ごめ、あの………」
「……舐めてんの?」
「ちっ違うよ!」
「…………」
かれこれ、もう一時間近くはいる。
「ねぇ、まだ?」
「待って今いいとこ」
その目はずっと、手に持つビビッドな色合いの表紙の、分厚い少年誌に注がれている。まさに釘付け。
「好きよねぇ、それ」
首だけで頷かれる。全く。
まぁいいけどね。
書棚から見える表紙のキャラクター達は、悩みごとなんて一切ないぜ!という顔で右手を振り上げてこちらに突撃してきている。なんだ、そのポーズ。
戦車道の時よりよほど夢中なその姿に呆れつつ、私は既に読み終えたファッション誌を手に取る。
あんまり知られていないが、みほは実はかなりマイペースだ。
普段から他人の迷惑にならないよう、なんでも、食事ですら、なるべくペースを合わせているが。
その反動か、中学の頃から同室で、気を使わなくていいと思っているらしい私には、基本勝手に振る舞うところがある。
困ったやつだ。
「うん、オッケー。チェック終了です」
それから10分ほどしてようやく少年誌から目を離すと、心底満足そうにそう呟いた。
まるで犬が散歩で縄張りを検分するかの如し。こいつこういうとこある。
途中で帰ろうとするとムギーと引っ張って抵抗してくるところまで含めて。
「というかチェックって、あんた何ポジションなのよ」
「編集者かな?今週のステップ最高だったよ」
「何様よ……全く、こちとら普段読まない占いコーナーまで読んじゃったわよ」
「天秤座何位?」
「腹立たしいことに一位」
「やった」
空が紫色になっていた。
「わぁ~……」
「……ま、たまには長居するものね」
「そうだよぉ、こんなの見られるの学園艦にいられる時だけだよ。こういう素敵なものを見逃しちゃうんだよ」
「……戦車道だって素敵よ」
私の言葉には答えず、みほは顔をずっと空に向けている。
「……ねぇ、みほ。見て、宵の明星」
南南西を指差すと、首がすいとそっちを向いた。
「……綺麗。一番星だね」
ほけっと口を開いている。
緩んだ頬と上がった眉毛を見ると、お気に召してくれているらしい。
「地球から見た天体で、太陽と月以外だと一番輝いて見えるのよ」
「へぇぇ……」
「そして、地球に一番近い惑星でもある」
「ほぇぇ……」
「そして……」
「もう、エリカさん、雰囲気……!」
えぇ、これダメなの?
笑ったり怒ったり、忙しい。最初に会った頃は、怯えがちだけど、もっとフラットな子だと思っていたのをふと思い出した。
「もう……それで?」
「え?」
「続き、さっきの」
……マイペースだ。
「……金星は、生まれたばかりの頃は地球にそっくりだったのよ」
「じゃあ、生き物が実は住んでたりするの?」
「それはありえないわね」
「なんで?」
「…………」
なんというべきか。
理由は色々ある。
水がない。大気の組成も気圧もものすごい。熱い。雨は濃硫酸。こんなに輝いているのは、雲が分厚すぎて光を反射しすぎているから。
まあ、まとめれば。
「太陽に近すぎたから」
みほは、悲しそうな顔をした。
「あんたさぁ、何、姉が近くにいないとロクに話も出来ないわけ」
「えっ……」
「いい年してお姉ちゃんお姉ちゃんって……キモいのよ」
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コメント一覧
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- 2016年10月28日 23:02
- 国数理社英
これを見た瞬間黒森峰って中学校だっけ?と思ってしまった
作者何歳だよ
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- 2016年10月28日 23:18
- 大変結構
ですが西住殿から告白されて即受け入れないなどありえないであります!!
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- 2016年10月28日 23:32
- SS書くの慣れてないってかあんまり読まれること意識してないのかな感あるけど面白かった
星の話とかすごく良い感じ
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素敵なssを読ませてもらいました。ありがとうございます