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【ワールドトリガー】 香取「――次は負けない」|エレファント速報:SSまとめブログ

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【ワールドトリガー】 香取「――次は負けない」

1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:40:04.80 ID:Yo/N732Ho


ワールドトリガーのssです
時系列はROUND3終わった後
玉狛は上位入りして、香取隊は入れ替わりに中位に落ちたところからです



2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:40:45.86 ID:Yo/N732Ho



2月9日 日曜日

「中位に落ちた?」

一夜明けてランク変動の結果を麓郎から聞かされた。
結果は中位落ちだ。

「どっか上がったの?」

「玉狛第二ってチームみたいだね」

玉狛第二、聞いたことのないチームだ。
話を聞けば今期できあがったばかりのチームらしい。
そんなチームと入れ替わりで降格なんて。

――バン

机に叩きつけた拳が大きな音を鳴らす。
痛みはない。
トリオン体というものは、こういうとき都合が良い。



3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:43:43.33 ID:Yo/N732Ho


「どこ行くんだよ」

「帰るのよ」

「っは? これからミーティングの予定だっただろ?」

「上位チームのためのね。中位なんて、ミーティングの必要もないわ」

「逆だろ。最近戦ってなかったからこそミーティングが大事なんじゃないか」

もっともだ、と思った。
しかし、同時にアタシのプライドが邪魔をする。
2期連続上位クラス入りのプライドが。

「なら少しでも練習しなさいよ。アタシの足を引っ張らないようにね!」

「おい!」

声を無視してアタシは退室を出た。
これ以上、麓郎の声は聴きたくなかった。



4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:45:30.63 ID:Yo/N732Ho


*****

雪こそふっていないものの春を感じるにはまだまだ遠く、三門市の風は身を切るように寒い。

アタシはカバンからマフラーを取り出し、少しの風も通さまいときつく首元に巻きつけた。

冷たい空気が火照った頭を冷やす。



どうも最近イライラすることが多い。

中位におちたこともその理由の1つではある。

でもそれだけじゃない。

この頃、いろんなことが上手くいかない。

何をしても失敗する。

そんな現状が、アタシをいらだたせるのだろか。

良くわからない。

分からないことがさらにアタシをイライラさせていた。




5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:47:53.58 ID:Yo/N732Ho


いまごろ雄太が麓郎をなだめているころだろうか。

麓郎の言っていることは分かる。

しかし、いまさら中位グループにさした対策も必要ないだろう思ったのも事実だ。

ROUND4ではアタシが点を取って勝つ。

そして上位にもどる。

それだけの話だ。

それだけのはずだ。



6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:50:07.79 ID:Yo/N732Ho


15分ほど歩いて、ある店の前にたどり着いた。

今ではめっきり見ることも減ったゲームショップ。

アタシのお気に入りの場所だ。

嫌なことがあると良くここに来ていた。

現実の嫌なことも、ゲームの世界までは持ち込めない


店内のゲームの間を縫うようにして進む。



7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:51:33.85 ID:Yo/N732Ho


「ラスト1本、ついてる」

アタシが探していたのは、ついこの間発売したばかりのゲーム。

シリース物の3作目。

誰もが知ってるゲームではないけれど、3作発売されるくらいには人気のあるものだった。


「ミーティング。しないで正解だったわね」

ミーティングなんかしていたら売れていたかもしれない。

格下チームのミーティングなんてした挙句に、ゲームまで売切れてたとしたら、泣きっ面に蜂も良いところである。

ラッキー、ラッキー。

心の中でそう呟きながら、アタシはその残ったゲームソフトへと手を伸ばした。



8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:53:18.04 ID:Yo/N732Ho


「あ……」

「お……」

手と手とが重なり合う。

こんなことが起こるなんて漫画かよ、と悪態をつく。

男の人だったら譲ってもらおう。

女の人だったら強気にでれば良い。

そんなことを考えながら、触れ合った手から上の方に視線を移らせると、見知った顔がそこにあった。



9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:54:30.60 ID:Yo/N732Ho


「香取ちゃん?」

「……こんにちは、先輩」

A級1位オペレーター国近先輩だ。

「奇遇だね~こんなところで出会うなんて」

「そうですね」

知り合いと会うなんて。

それも顔を知っているくらいの先輩だ。

正直きまずい。



10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:55:40.56 ID:Yo/N732Ho


「先輩もゲームとかするんですね」

「するよ~ゲーム大好きだからね~」

「意外です」

この先輩がゲームに勤しむ姿は想像つかなかった。

やっていたとしても、牧場作ったりとか、その手のゲームな気がした。

「私も驚いたよ~。でも、そうするとー」

うーんと人差し指を顎に添えて唸っている。

あざといとも捉えられかねないポーズも、この先輩だと不思議と自然にきまっている。



11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:57:03.83 ID:Yo/N732Ho


「なんですか?」

「このゲームどうしよっか?」

ま、それしかないよね。

ソフトは1本、買い手は2人、半分こというわけにはいかない。

なんとしても購入したいと思っていたが、相手がこの先輩では仕方がない。

今日のところは諦めよう。

「アタシはいいですから、先輩どうぞ」

「そんなの悪いよー香取ちゃんが買ったら良いよ」

「そういうわけには、アタシのほうが後輩ですから」

「だったら私も先輩として、自分だけ買うわけにはいかないよ」



12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:58:14.77 ID:Yo/N732Ho


っち。

心の中で舌打ちをする。

本当にめんどうくさい。

形だけの譲り合い。

ただ過ぎる時間。

何も生み出さない、無駄な時間だ。

この時間が終わるなら、ゲームを譲ることもいとわないとさえ思った。

「そうだ! じゃあ私が買うからうちの作戦室来なよ!」

「は、いや……それは」

「うんうん、それが良い。私もこのゲーム好きな人話したいし」

「ん……」



13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/07(金) 22:59:17.50 ID:Yo/N732Ho


どうこの場を切り抜けようか。

ゲームなんて誰かとするものはない。

その類のゲームはあるが、アタシは好きじゃない。

それも、とくに親しいわけでもない先輩と。


そんなことばかり考えていたら、手が引っ張られるのを感じる。

先輩の手だ。

いつのまにか会計をすましていたらしい。

グイグイと引っ張られ、抵抗を試みるタイミングさえない。

「じゃーいこかー」

やれやれ。

アタシは、自嘲気味にそう呟いた。




17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:34:33.06 ID:52KX4B+ao


「ごめんね~散らかっててー」

A級の作戦室は広いらしいのだが、この部屋からそれを感じ取ることは出来ない。

入って最初に目に入るは、一対のソファーと机。

机の上にもソファーの上にも私物が散乱している。

「いまお茶いれるからね~」

「あ……ありがとうございます」

先輩に準備をさせるなんて。

そう思って口を開きかけたのだが、ここは太刀川隊の作戦室だ。

アタシがお茶の準備を出来るわけもなく、ここはご厚意に甘えることにした。



18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:36:15.00 ID:52KX4B+ao


ぼうっと突っ立てるのも何だかマヌケに思える。

かといって1人だけ勝手にソファーに座るのもいかがなものか。

どうしようかと、辺りをキョロキョロ見回しているとモニターの近くにゲーム機を発見した。

ついさっき購入したゲームソフトに対応するハードだ。

アタシはサクサクとそのゲーム機のセッティングを始めることにした。

「ありがとうー準備手伝ってもらっちゃって」

「これくらいは……」

「本当にゲーム好きなんですね。こんなたくさんあるなんて」

「太刀川さんとかも結構ゲームやるからねー。ほとんど私の趣味だけど」



19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:38:33.70 ID:52KX4B+ao


なるほど道理でコントーローラーなんかも多いわけだ。

みればパーティーゲームの類も何個かあった。

太刀川さんや出水先輩たちと楽しそうにゲームしている姿が簡単に想像できる。

アタシには無縁の話だ。

皆でワイワイやったり、協力しながら進むゲームは肌に合わなかった。

1人でドンドン先に進められるようなゲームが好きだ。


「香取ちゃんのとこもゲームたくさんおいてあるのー?」

「昔は置いてあったんですけど……全部片付けました」



20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:39:55.75 ID:52KX4B+ao


作戦室にゲームがあるとどうしても気になってしまう。

だから少し前にアタシが片付けた。

もっとも、携帯ゲームをするようになったので、あまり効果はなかったのだけれど。

ゲーム機の準備が終わり、国近先輩がソフトを箱から取り出してセットする。


(アタシ1人ならスキップするんだけどなあ)

OP画面が始まり心の中で呟く。

逆に先輩はすごく楽しそうだった。




21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:41:06.15 ID:52KX4B+ao


*****

「また、一緒にやろうねー」

「はい、ありがとうございました」

区切りの良いとこまでプレイしてお開きとなった。

最後に洗い物の手伝いをし、お礼を述べ、アタシは作戦室を出た。


基地から出ると辺りは真っ暗になっていた。

思った以上の時間を過ごしていたらしい。




22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/08(土) 20:41:48.26 ID:52KX4B+ao


自宅までの帰り道で、今日のことを思い出す。

誰かと一緒にゲームをした経験は少なかったけれど、悪いものではなかった。

先輩とアタシとでは同じゲームでも楽しみ方が違う。

アタシはいかに効率よくクリア出来るかが楽しみだが、先輩はそれとは真逆といっていい。

細かいところまで調べ、眺め、楽しむ。

ゲームの魅力を一部分でも逃してはいけないとしているようだった。

効率的とはいえないけれど。

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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年10月28日 21:29
      • あれ、続きあったのか

        実力が上がり加古さんの目に止まり、特製チャーハンをごちそうになり「ボーダーやめる」を連呼しそう
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年10月28日 21:52
      • なるほどなぁ〜
        ssが上手!
        あと、香取ちゃんかわいい
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年10月28日 22:05
      • なんか見たことあるぞ、ここで
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年10月28日 23:43
      • なんで再掲載したの?
        三週間前にここで見たよ。

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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