真紅のトリックオアアレスト
- § 主な登場人形紹介
【真紅】
愛しさと切なさと心強さと腐敗と自由と暴力を愛する第5ドールにして、誰もが認めた究極の少女アリス。
【雛苺】
毎日が夏休みだと思っている第6ドール。宿題は踏み倒すもの。
【翠星石】
毎日、ジュンへのローキックを怠らない第3ドール。庭仕事はしない。
【蒼星石】
翠星石との愛を守るために旅立ち、明日を見失った第4ドール。
【金糸雀】
知能指数が高くて、何でも知っている第2ドール。
【珪孔雀】
マシュマロばっかり食べている第8ドール。たまに食べ過ぎてゲロを吐く。
【水銀燈】
流行に乗っかり「水銀水」なるものの販売を始めたが、悲しいほどに売れない第1ドール。
【雪華綺晶】
少し未来の大ジュンの並行世界で、円熟したハロウィンを楽しむ第7ドール。
【薔薇水晶】
流行に乗っかり「水晶水」なるものの販売を始め、そこそこ儲けている槐ドール。
- § 桜田ジュンの部屋
真紅「はぁ~…」
ジュン「どうした真紅? 大きなため息なんかついちゃって」
雛苺「ため息すると唐揚げが逃げちゃうの! だから、ため息しちゃダメなのよ真紅!」
翠星石「馬鹿チビぃ、逃げるのは唐揚げじゃあなくて幸せですよ」
雛苺「そ、そうとも言うの!」
真紅「…やれやれ。今日も今日とて桜田家では、知性がまるで感じられない低劣なやり取りが繰り広げられている」
翠星石「む? 何ですか真紅、その言いようは。流石の翠星石もカチンときたですよ」
真紅「事実を言ったまでよ。私は高尚で文化的でキッチュでポップでニヒリズムあふれる会話を楽しみたいの」
ジュン「……」
真紅「なのに、あなた達ボンクラ共のせいで会話レベルを下げざるを得ない日々。ため息もつきたくなる」
雛苺「そんなことないの! ヒナ達の中で一番レベルが低いのは真紅なのよ! フンマンやるかたないのー!」
真紅「まあ、雛苺! あなた、私をそんな風に見ていたというの!?」
ジュン「落ち着け落ち着け。つまらないことで喧嘩するな」
真紅「つまらなくなんかない! 当事者にとってはそれこそローザミスティカとプライドを賭けるに値する闘争よ!」
翠星石「すぅぐヒートアップするですね真紅」
雛苺「二言目にはいつも『ミスティカ賭けるか!?』なの」
翠星石「ですぅ。とても高尚な乙女のセリフとは思えんですね」
真紅「むむむ…」
ジュン「翠星石達も真紅を煽るな」
翠星石「へいへい…ですぅ」
ジュン「真紅も高尚な会話を楽しみたいと言うなら、文句垂れてないで試しにやってみればいいだろ?」
真紅「でも…」
雛苺「デモもスト様もないのー! ヒナ達ちゃんと真紅を楽しませるトークスキルぐらい持ってるの!」
翠星石「そうですそうです。真紅の考える高尚さだなんてたかが知れているですよ」
真紅「じゃあ、ちゃんと真面目に聞いてくれる? 私の話を」
ジュン「聞く聞く」
真紅「こほん…。それじゃあ、話させてもらうのだわ。今日まで温めていた学説を!」
ジュン「学説だと…?」
真紅「ええ。名付けて『真紅ちゃんウナギ説』!」
雛苺「…え?」
翠星石「アカン、これ真面目に聞いたらアカン奴でっせチビ人間!!」
ジュン「ま、まだそれは早計だぞ翠星石…」
真紅「私はウナギを愛し続けるあまり、ついに私そのものの身も心もウナギであることに気づいたというわけよ」
ジュン「……」
真紅「ふっ…。とても信じられないという顔をしているわね。これだから俗物は…」
翠星石「信じられないのは学説じゃなくて、てめーの正気ですよ真紅」
真紅「いいわ。そこまで言うのなら証拠を見せましょう」
雛苺「証拠ぉ?」
真紅「まず、第一にウナギは日本人に…いえ、世界中の人々に大人気の食材」
ジュン「それは確かにそうだが…」
雛苺「ヒナもウナギ好きー」
真紅「そして僭越ながら、私こと真紅ちゃんも老若男女問わず大人気の逸材。もはや人類種の財産と言っても過言でない」
翠星石「ははっ…」
真紅「次の証拠として、鰻と梅干は食い合わせが悪いと言われることがある。私も梅干はあまり好きじゃあない」
雛苺「……」
真紅「さらにウナギの血には毒がある。薔薇乙女の敗北を認めないローザミスティカもまた他の姉妹にとっては猛毒」
ジュン「……」
真紅「以上の理由から、真紅ちゃんがウナギである事は確定的に明らか。証明終了だわ」
翠星石「……」
真紅「フフフ。どうやら、私のあまりにも見事な演繹的ロジックに言葉を失っているようね」
ジュン「びっくりするほど低レベルな与太話で呆れてるんだよ」
真紅「なっ!? わ、私が一晩寝ずに考えたノーベル生理学賞間違いなしの学説が低レヴェルぅ~?」
雛苺「そんなくだらない話を考えるためだけに徹夜だなんて、真紅は頭がおかしいの」
真紅「馬鹿にしないで頂戴! 徹夜で考えた話はもう一つあるわ!」
翠星石「えっ!? まだ、あるんですか!?」
ジュン「おいおい…、絶望のネクストステージだな」
真紅「ハロウィンでトリックオアトリート…『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』ってあるじゃない」
ジュン「あるな。と言うか話題を一気に変えすぎだろ…」
真紅「それで、この『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』って、如何にも欧米的な脅迫思想的フレーズでしょ?」
翠星石「うーむ、言われてみればそうかもしれんですが」
真紅「この決め台詞は、日本の奥ゆかしいハロウィンにそぐわないと思うのよね」
ジュン「日本のハロウィンはコスプレ大会みたいになってるが、奥ゆかしいのか…アレで」
真紅「なので、こう…もっと日本のおもてなし的アトモスフィアにあふれたフレーズに変えたい」
雛苺「うゆゆ? どう変えるのよ?」
真紅「先ず、日本のハロウィンは子供主体ではなく大人主体な感じだから台詞も大人目線にする」
ジュン「ほう?」
真紅「そして脅迫的なアトモスフィアを取り除き、下手に出て奥ゆかしさを演出したい。そうすると…」
翠星石「そうすると…?」
真紅「『お菓子をあげるからイタズラしてもいいかな?』これで決まりよ。まさに気遣いに満ちた和風ハロウィンだわ」
ジュン「…それを? 言うの? 大人から子供に向かって?」
真紅「いえぇぇ~す!」
ジュン「はい、アウトー」
翠星石「どう見ても子供狙いの犯罪者です。気遣いじゃあなく気違いに満ち溢れるですぅ」
雛苺「ギルティなのー!」
真紅「えっ!? なんで!? なんでギルティ? どうして犯罪!? すんごい下手に出てる台詞よコレ!」
ジュン「なんでも何も…、常識的に考えて捕まるだろ」
真紅「ふざけないで! 子供にお菓子をあげてイタズラをする! これが日本の正しいハロウィンよ! これは譲れない!」
翠星石「し、真紅…」
雛苺「やっぱり真紅は頭がおかしいの」
真紅「くっ…。やはり時代を先取りした天才の発想は俗人には理解されないようね」
ジュン「いや、だから真紅…そうじゃあなくてだな」
真紅「こうなれば実践あるのみよ。この私の提唱する全く新しい和風ハロウィンで世間に熱狂の渦を起こしてみせる!」
翠星石「真紅!? 早まるなですぅ!」
雛苺「そうなのぉ! 桜田家から犯罪者を出すわけにはいかないのよ!」
真紅「だまらっしゃい! 薔薇乙女は常に法へのチャレンジ精神を持ち続ける必要があるのよ! 故に私は行く!」ダダダッ
ジュン「あっ、こら…ッ!!」
翠星石「あーあ…、行っちまいやがんの…ですぅ」
- § EnjuDoll(槐の店)
珪孔雀「念願の赤月君フィギュアを手に入れたぞ!」
薔薇水晶「お買い上げありがとうございまーす」
槐「僕が言うのも何だけど、良い買い物したねぇ珪孔雀」
珪孔雀「は、はい! ありがとうございます。これ、どこを探しても見つからなくって!」
薔薇水晶「しかし、ついに珪孔雀も美少年フィギュアに手を出すようになりましたか」
珪孔雀「いや…、こ、これは違うんです! 人形として、勉学のために買っただけでして…」
薔薇水晶「勉学…? という事は構造を調べるために赤月君フィギュアをペロペロしたりするわけですね」
珪孔雀「ペ、ぺロペロだなんて! そんな事するわけないんだからっ…」
真紅「トリックオアトリートぉーーっ!!」ガシャーン
珪孔雀「きゃあああーーー! いきなり窓ガラスが割れ…っ!?」
槐「過熱したハロウィンの暴徒が石でも投げ込んだのか!?」
真紅「いいえ、私がダイナミックエントリーしただけよ」スタッ
槐「何だ真紅か。窓ガラスを破らずに普通にドアから入ってきてよね」
真紅「それは失礼したのだわ。はい、お菓子のカリカリ梅あげるから許して」スッ
薔薇水晶「お菓子はイタズラの免罪符ではありませんよ真紅」
真紅「えっ? ハロウィンなのに!?」
槐「君はハロウィンを何だと思ってるの?」
真紅「子供にお菓子をあげてイタズラする日にしようと思っている」
珪孔雀「え? 何それ怖いです」
真紅「まあ、そういうわけだから珪孔雀喜びなさい。あなたにお菓子をあげに来た、そしてイタズラをする」
珪孔雀「ッッ!?」
真紅「ほらほら、このくんくん探偵チョコあげるから。大人しく私にイタズラされなさい」
珪孔雀「や、やめてください真紅お姉様!」
真紅「やめまっせーん! て、あら? あなた何持ってるのよ、これ?」ヒョイ
珪孔雀「そ、それは私の魂! 赤月君フィギュア!」
真紅「へー、珪孔雀あなたがフィギュアに興味を持つだなんてね。なかなか良い出来じゃない」マジマジ
薔薇水晶「……」
真紅「どれどれ? アソコも人間と同じかどうか確かめてみましょう」ヌギヌギ
珪孔雀「何をするんですか真紅お姉様!?」
真紅「イタズラは既に始まっているのだわ珪孔雀! このフィギュアの次はあなたを脱がす番よ!」
珪孔雀「ひぃっ!?」
槐「ちょっと、やめないか」
薔薇水晶「流石にゲスの極みですよ…真紅」
真紅「ダマラッシェー! 昨今のコスプレ祭りに終始するハロウィンはこのままでは閉塞してしまうという事が分からないの!?」
槐「は?」
真紅「今にも窒息しそうな和風ハロウィンに合法的イタズラ可能性という新風を吹き込むための儀式なのよ、これは!」
薔薇水晶「……」
真紅「そして珪孔雀は儀式に供えられた尊い犠牲なのだわ」
珪孔雀「勝手にお供え物にしないでください~」
金糸雀「トリックオアトリートかしら~」ガチャッ
薔薇水晶「金糸雀…ッ!?」
槐「この取り込んでいる最中に、いきなり!?」
金糸雀「ハロウィンは時と場所を選ばずかしら」」
珪孔雀「いや、そこは選びましょうよ…お姉様」
金糸雀「あら、珪孔雀もここにいたの? そっちには真紅も? 奇遇かしら」
真紅「……」
金糸雀「それはさておき、気を取り直してトリックオアトリート! お菓子をくれなきゃ…」
真紅「はい、よっちゃんイカあげるわ。だから、とっとと帰りなさい金
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というレス↓は禁止。
禁止な。
な。
- :-:2016/10/30(日) 22:13:50
- 真紅ちゃんは身内に注意されても反省しないから、警察にしょっ引いてもらうのは限りなく正しい。
ただしその反省も長くは続かない模様。
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- > 真紅「どれどれ? アソコも人間と同じかどうか確かめてみましょう」ヌギヌギ
おお、なんたるマッポーか。
SLPY薔薇人形の世界では、紳士もジョナサンも眠っておられるのですか
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- 『真紅ちゃんうなぎ説』が管理人のお尻の穴レベルにガバガバすぎるんですがそれは。。。
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- 警察からは赤い通り魔って呼ばれてるんだな…きっと通りすがりの善良な怪獣に突然チョップやアローをお見舞いしているに違いない
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- いつだかのハロウィンに結菱邸襲撃してた奴がいまさら奥ゆかしさを説こうとしてもねぇ真紅さん・・・
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