ハルヒ(あー、キョンに私の心を読む力でもあればなぁ)キョン「……!?」
キョン「おっす」
ハルヒ「おはよう。ねえ、何か面白いことない?」
キョン「唐突だな。今更、驚かないが」
ハルヒ「最近、SOS団も目立った活動してないじゃない? なんか、こう、パーッと大きなイベントをやりたいんだけどね」
キョン(人力でどうにかなる程度のイベントなら何でもいいが、宇宙やら未来やら超能力でどうにかしなきゃいけないのはNGだぞ)
ハルヒ「はぁーあ……なにかないかしらねぇ……」
キョン(こいつにとって面白いこと、か。世界がひっくり返るぐらいのことは期待してても、ハルヒはそんなこと起こらないと思っている)
キョン(分かりやすい季節行事があれば、それで満足してくれはするんだが、如何せんこの時期は目立った催しはない)
キョン(不思議探索だけでは物足りなさそうにしているし、遊園地やショッピングモールとか普通の場所に行こうと誘ってもいい顔はしやがらない)
キョン(ハルヒを退屈にさせず、楽しませるのは酷く難しい。こいつの心でも読めれば、簡単に接待もできるんだがな)
ハルヒ「ふぅ……」
キョン(こいつが今、何を考えているのかなんて常人の俺にはさっぱりわから――)
ハルヒ(あー、キョンに私の心を読む力でもあればなぁ)
キョン「……!?」
キョン(これは……なんだ……。ハルヒの声が直接頭に響いてくるぞ……)
ハルヒ(キョンはあたしに対してきっとすごく優しくなるだろうし、気もかけてくれるだろうし)
ハルヒ(あたしが今、こうしたいって思うだけでキョンはすぐに準備してくれるに違いないわ)
ハルヒ(不思議探索のときだって、キョンが自分から俺はハルヒと一緒がいいって言ってくれるかもしれないしね)
ハルヒ(あたし自身、もう気持ちに嘘はつけなくなるし……いいことかもしれないわねぇ……)
キョン「ハ、ハルヒ!!」
ハルヒ「な、なによ」
キョン(声が止んだ……)
ハルヒ「どうしちゃったの?」
キョン「いや……そのだな……」
キョン(これはまずいぞ……。ある意味、世界が変わっちまうことより、朝倉が復活することよりも恐ろしい事件が起こってる……)
ハルヒ「ちょっと、なんなのよ。用もなく大声で呼ばないでくれる? ふんっ」
ハルヒ(いきなり好きだって言われるかと思ったじゃない。全く。キョンってたまに期待させるだけさせてくるのよね)
キョン(すぐに長門のところに行ったほうがいいな、これは……)
キョン「トイレだ」
ハルヒ「もうチャイムなっちゃうわよ。あとにしたら?」
キョン「そういうわけにも行かないんだ」
ハルヒ「ふぅん。ま、遅刻するのはアンタの勝手だしね」
キョン「そうだ。気にしないでくれ」
ハルヒ「はいはい」
ハルヒ(体調でも悪いのかしら。顔色もあんまりよくないし。岡部には上手く言い訳しておかないとね)
キョン(おいおい……丸聞こえだぞ、ハルヒさん……)
キョン(その声を口に出してくれたら、俺だって素直に感謝の言葉を並べられるんだがな)
キョン(今は長門のところにいかねば……!! このままじゃ、とてつもない地雷をいつか踏む、いや、見てしまうことになりかねん!!)
ハルヒ(一応、保健室に行くように勧めてみたほうが――)
キョン「ん……?」
キョン(ハルヒの声が途切れたな……。どこに居ても聞こえるわけじゃないってことか。とりあえず距離をとればいいんだろうか)
キョン(だが、教室内においてあいつは俺の真後ろにいるわけだから、なんとか早期解決をしなきゃならんことには変わりないな)
キョン(廊下に出ると、長門が立っていた。昔ながらの罰で廊下に立たされているわけでもないだろう)
キョン「長門、悪い。とてつもない事件が起きてるようだ」
長門「わたしのほうでも感知した。5分前、涼宮ハルヒを中心に小規模な拡散性思索音波が発生した」
キョン「なんだ、それは」
長門「周囲の生命体に感情や言語などあらゆるコミュニケートツールを介さずに意思疎通が可能となる音波」
キョン「ハルヒの考えていることがわかっちまうってことか」
長門「そう」
キョン「拡散性ってことは俺以外のやつにもその音波は届いてるのか?」
長門「半径1メートル以内にいた者が対象」
キョン(あのとき、ハルヒの近くにいたのは俺だけだな……。最悪の事態は避けれたわけだ……)
キョン「治す方法はあるか?」
長門「……」
キョン(長門の沈黙ほど、恐ろしいものはないぜ。言葉を選んでいるようにも、答えに詰まっているようにもとれるからな)
長門「厳密にいえば、対処は不可能」
長門「涼宮ハルヒから発生した音波は極めて特殊且つ複雑な情報因子が混在。音波を浴びた時点で、涼宮ハルヒの意志が強制的に脳内へ流入される仕組み」
長門「その因子を調査、解読、解除するためには時間が必要」
キョン「どれぐらいだ?」
長門「60万時間ほど」
キョン「それは困るな」
長門「困る」
キョン(最悪の事態は避けられても、俺の生き地獄までは避けられなかったか……。世界はそんなに甘くないんだなぁ)
長門「ただし、貴方が浴びた音波を解除する方法はある」
キョン「聞かなくてもわかる。ハルヒの力を利用するんだろ」
長門「そう」
キョン(だが、どうやって利用したらいいんだ? あいつに力を自覚させるのは論外として……)
長門「できる限りのサポートはする」
キョン「ああ、すまないが頼らせてくれるか」
長門「了解した」
キョン(教室に戻りたくねえな……)
キョン(ハルヒの頭の中を見てみたいと思ったことは幾度もあったが、実際に見ることができるとただただ、恐ろしい)
キョン(アホの谷口あたりなら苦笑いで済まられたものを、相手がハルヒだからなぁ)
ハルヒ(――遅いわねぇ。キョン、大丈夫かしら)
キョン(教室に入る前で聞こえてきやがった……。ハルヒの声が聞こえる距離は、大体半径10メートルから15メートルぐらいか……?)
ハルヒ(風邪とかじゃないわよね。早退とかしたら、どうしよう。そのときはSOS団の活動をお休みにして、お見舞いにいかなきゃ)
キョン(なんか色々と考えてるみたいだな……)
ハルヒ(キョンの家に行く前に買い出しもしなきゃね。うーん、そこまですると流石に世話を焼きすぎかしら。いや、でも、キョンが風邪で数日休むとかなっても困るし)
キョン(それはどうしてなんだ。雑用がいなくなるからか)
ハルヒ(キョンに会えないのは日曜日だけで十分だもん)
キョン「……」ガラッ
ハルヒ「ん?」
ハルヒ(あ、戻ってきた。よかった)
ハルヒ「はい、ちこくー! これで進級が一歩遠ざかったわね。安心して、留年してもSOS団にはちゃんと居させてあげるから」
ハルヒ「でも、SOS団はエリート集団でなきゃいけないんだから、留年とか絶対にダメよ。わかってる?」
キョン「分かってるって。岡部にはどう説明してくれたんだ?」
ハルヒ「はぁ? なんであたしがキョンの遅刻理由を説明しないといけないわけ? SOS団員だからって調子に乗らないで。自分の身は自分で守るものよ」
キョン「そうか」
ハルヒ(なんてね、ちゃんと岡部には遅刻はしてないっていってあるわよ。感謝しなさいよね)
キョン(何もかも筒抜けだぜ、ハルヒよ。ありがとよ)
ハルヒ「ねえ」
キョン「な、なんだ」
ハルヒ「なんであたしのほう、向かないわけ」
キョン「向く必要、あるのか?」
キョン(今、お前の目を見て話せる自信はこれっぽっちもないんだよ)
ハルヒ「ま、別にあんたの間抜け面なんて、見たくないし、いいけどね」
ハルヒ(まだ体調がよくないの……? やっぱり保健室まで一緒に行こうかしら)
キョン(やれやれ……。耐えられるのか、俺……)
キョン(ただ、俺の頭の中では容赦なくハルヒの声が反響している)
ハルヒ(あーあ、つまんない。ここ、もう予習してるし、聞き流しても問題なさそうね)
ハルヒ(いきなりテ口リストとか入ってこないかしらね)
キョン(おおい!! やめろ!! 実現したらどうなるんだよ!! コラ!!)
キョン(こんな山の上の県立高校にテ口リストが襲来する理由はないだろうが、万が一ってこともあるんだからよ)
ハルヒ(私が人質にされそうになったら、きっとキョンは守ろうとしてくれるわよね)
キョン(ああ、そうだな。立ち上がって、「やめろ!」ぐらいは言ってやる)
ハルヒ(けど、相手はテ口リストだし、銃器は持ってるわね。うーん、そんな相手にキョンが立ち向かって殺されちゃったら……)
キョン(殺されるのか、俺)
ハルヒ(ダメね。そんな恐ろしいこと考えちゃ。絶対にテ口リストなんてきませんよーに)
キョン(どうやら、北高最大の危機は脱したようだな)
ハルヒ(こういう時間はダメね。色んなこと妄想しちゃって)
キョン(地球の存亡にかかわる妄想だけはやめてほしいね)
ハルヒ(早く、放課後にならないかしら)
ハルヒ(キョンの背中って見るたびに突きたくなるのよね)
キョン(俺が眠ってしまえればよかったが、こんな声が聞こえていたら眠気なんぞ地球の裏側まで行っちまうぜ)
ハルヒ(足を挫いたら、キョンはあたしのこと負ぶってくれるかしら? でも、お姫様抱っこなんてのもいいわよね)
キョン(何を考えてやがる。ちゃんと授業に集中しろ)
ハルヒ(キョンはちゃんと抱っこできるわよね。今現在のあたしの体重が――)
キョン「(ハルヒ、ハルヒ)」
ハルヒ「(なによ?)」
キョン「(今日のSOS団はどんな活動をするつもりだ?)」
ハルヒ「(なんでそんなことを今、聞くのよ)」
キョン「(スムーズに始めたいと思ってよ)」
ハルヒ「(ちゃんと考えてあるから、アンタは授業に集中しなさい。余計バカになっちゃうわよ)」
キョン「(悪かった)」
ハルヒ(うーん。今日は何をしようかしらね。みくるちゃんに新しい衣装でも来てもらって撮影会でもしようかしら)
キョン(別の事を考えてもらったほうがまだいいな。体重なんて別に知りたくはないしな。興味はあるが)
キョン(午前最後の授業にて、ハルヒは三大欲求の一つを俺に送り付けてくる。何もしてやれないが)
ハルヒ(今日はキョンと一緒にお弁当食べるわよ。谷口や国木田くんに邪魔はさせないわよ)
キョン(俺と一緒に食べたいのか?)
ハルヒ(部室
コメント一覧
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- 2016年10月31日 22:51
- これは素晴らしいハルヒSS
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- 2016年10月31日 23:13
- このハルヒ同時に2.3こ考えごとしてない? 並列思考とか習得してるの?
あ、ssはとても良かったです
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- 2016年10月31日 23:14
- まあまあ長いな
1ページ目だけ読んだが読みたかった設定だし
明日にでも読むか
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- 2016年10月31日 23:19
- ハルヒss久しぶりに見たなぁ
普通にかわいいハルヒだった
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- 2016年10月31日 23:20
- あ~だめだめかわいすぎる
このままじゃ駄目になってしまう
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- 2016年10月31日 23:27
- 連レスすまんが
元スレで見たときはそんなに長く感じなかったのにまとめをスマホでみたら13ページあったんだな
なんでスレだと短く感じるんだろう
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- 2016年10月31日 23:32
- いいSSだった、掛け値無しに
数年前はハルヒをキ○ガイとしか思えなかったのに今は可愛いと思えているから不思議だ
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- 2016年10月31日 23:34
- ハルヒがこんなに可愛いワケないだろ!(くっそメチャクチャ可愛い!!)
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- 2016年10月31日 23:44
- 最後まで読んだけど楽に読めたよ
面白かったで
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- 2016年10月31日 23:46
- ハルヒが珍しくかわいいのは置いといて、しかし、喫茶店の奢りが10万円オーバーとかえげつな過ぎやろ。ハルヒに理性があるとか嘘やん
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- 2016年10月31日 23:47
- ※2
女性は男性に比べ並列思考処理が優れているのでそんなに不思議なことじゃない
やっぱハルヒ面白いわ
佐々木が出る直前まではもってんだよな また読み返そう
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- 2016年10月31日 23:47
- 昔あったMADの影響か、PerfumeのPUPPY LOVEが脳内で流れながらこのSS読んでられた、やばい、カワイイw
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- 2016年10月31日 23:55
- ※10
喫茶店で五人分の支払いを一年間月4回もやっていればそれぐらいいくだろう
長門もいるし
このハルヒはお返しをきちんと考えてるみたいだしハルヒかわいいでいいじゃん?
10万円分をどうお返しするのかわからんが
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