Adobe Systems(以下Adobe)は、米国サンディエゴにおいて、同社のプライベートイベント「Adobe MAX 2016」を11月2日〜4日の2日間にわたって開催する。
ここではCriative Cloudの2017年版をお披露目するほか、Premiere ProやAfter Effects、Photoshop、Illustratorなどのデスクトップアプリケーションが更新。さらにモバイルアプリに関しても大幅にアップデートされ、Photoshop Sketchでは、クリエイター待望のPhotoshop CCブラシが利用可能になる。
また、Project Felix(プロジェクト・フェリックス)と呼ばれる新しいアプリケーションでは、用意されているアセットから3Dモデルを作成し、2Dの写真と組み合わせることで、3Dの専門的な知識がないグラフィックデザイナーでも手軽にフォトリアリスティックな3D画像を作成することができるようになる。
カンタンにCG画像を作成できるProject Felix
──3Dグラフィクスの知識がなくても手軽に2D/3D融合の画像を作成可能なProject Felix今回発表された「Project Felix」は、CGデザイナー向けのツール。これまで2Dのイラストしか扱ってこなかったグラフィクスデザイナーであっても、手軽に3Dのアセット(プリセットのデータ)を活用して、2Dと3Dが融合したフォトリアリスティックな画像を作成できる点を売りにする。
UIは最近Adobeのデザイナー向けツールと共通で、左側にライブラリのパネルがあり、そこから必要なアセットを選択し、キャンバスに置いていくことで映像を作っていく。
▲Project Felixは、2Dと3Dを利用したフォトリアリスティックな画像を簡単に作れるようになる
3Dのアセットは、プリセット(有償・無償の両方)されているほか、素材の利用権を取引するAdobe Stock経由で、他のユーザーから購入することもできる。それをもとにクリエイターは、Photoshopで作成した自分のロゴを入れたりなど、これまでのAdobeのツールで慣れているのと同じUIを活用して3Dモデルを作成していき、最後に2Dの画像と融合して作っていくことができる。
また、マシンラーニングの機能も活用しており、完成した映像をPCが自動で学習しながらチェックし、背景に合わせた形での水平だしなどを、アプリケーションが自動でチェックして合わせることもできる。
▲Project Felixは現時点でベータ版としての提供になる
▲背景の写真にペットボトルの3Dイメージを追加した様子。こんなにCGが簡単に作れるようになる
▲マシンに負荷をかけないよう、メインの画面ではレンダリング前のワイヤーフレームでの表示、右下の小さな画面でプレビューをだしながら作業できる
▲アセットは、Adobe Stockに追加される新しいタブの「3D」メニューから探してきて追加することもできる
▲このようにプリセットでアセットを置いて簡単にデータを配置していける
▲Photoshopで作ったロゴデータを貼り付けたりできる
▲水平だしなどをマシーンラーニングで行うことが可能になっている。
また最大の特徴は、Adobeのツールであるために、Creative Cloudのツールとの連携が可能な点だ。レンダリングした画像はPhotoshop形式で書き出せるため、レイヤーなどを維持しながらPhotoshop CCにもっていき、そこで細かな調整をしたりすることが可能だ。
3DモデルをレンダリングまでをProject Felixで行い、その後はPhotoshop CCでレイヤーを生かした状態で細かな調整をするという使い方ができるのが、Photoshop CCに慣れ親しんでいるクリエイターなどには嬉しいところ。Project Felixはまもなくベータ版の提供が開始される予定で、利用するにはCreative Cloudのメンバーシップが必要になる。まずは英語版のみがグローバルで展開され、その後各国語版にローカライズされていく予定だとAdobeでは説明している。
モバイル版も強化、アプリのAndroid対応も進む
もう1つの注目点は、モバイルアプリの機能が拡張されることだ。注目の強化点は2つあり、1つがPhotoshop SketchにおけるPhotoshopブラシの対応。もう1つがAndroid版の強化となる。▲モバイルアプリのアップデート内容
Photoshop Sketchは、PhotoshopのブランドでiOS向けに提供されている3つのモバイルアプリ(Photoshop Fix、Photoshop Mix、Photoshop Sketch)のうちの1つで、グラフィックスデザイナーなどが、iPad ProのApple Penを利用して、イラストを描く用途などに利用できる。従来のPhotoshop Sketchでは、Photoshop Sketchに利用されているブラシのみ利用可能だった。
▲Photoshop CCで使っていたブラシを読み込んで、それをPhotoshop Sketchで利用しているところ。使い慣れたブラシがSketchで利用できるので、モバイルでの利便性が向上しそうだ
ブラシというのは、Photoshop CCでデザイナーなどが多用している、行ってみれば仮想のペン先だ。デザイナーはこのペン先を自分で作ってみたり、他のデザイナーなどが市販しているブラシを買ったりしてPhotoshop CCをカスタマイズしてイラストを描いている。
これまでブラシは、Photoshop Sketch内で作成することができていたのだが、デスクトップ版Photoshop CCのブラシをPhotoshop Sketchに持ってくることができなかった。しかし、今後公開されるアップデートでは、それが可能になる。これにより、デザイナーからすれば慣れ親しんだPhotoshop CCのブラシを持ってきて、Photoshop SketchとiPad Proでイラストを描けるというわけだ。これはデザイナーにとって、iPad Proの価値が大きく上がることになる。
また、AdobeはこれまでAndroidには提供してこなかったPhotoshop Sketch、Photoshop Fix、CompCCの提供もAdobe MAXにあわせて開始する。このため、デジタイザーペンの機能を持つAndroidタブレットも、iPad Proと同じようにPhotoshop Sketchでイラストを描いたりすることが可能になる。