工藤忍「飛び出し娘と一人の異星人」
忍「アイドルになりたいって言ってもまわりから反対されて、なかば喧嘩別れみたいに上京して、やっと掴んだ夢の一歩」
忍「もう後戻りはできない。どんなに辛くてもアイドルになってみせる!」
忍「ずっとテレビで見てきた、センターで輝くアイドルのように!」
忍「……よし!行こう。挨拶は元気に、初めが肝心だよね」
忍「おはようございます!」ガチャ
菜々「はぁ~、お茶美味しい」
忍「失礼しました」バタン
忍(……メイドさんがいた)
忍(もう一度)ガチャ
菜々「うう、ちょっと動いただけで節々にくるなあ……」
忍「……」パタン
忍(メイドさんの嘆きを聞いてしまった。メイドさんも色々大変なんだね)
忍(じゃなくて!も、もう一回)
忍「……」ガチャ
菜々「あのー、中入らないんですか?」
忍「わひゃあ!?」
菜々「うぎゃあ!?」
菜々「あれ?工藤忍ちゃん、ですよね?話は聞いてますよ。今日からウチのアイドルになるっていう」
忍「あ、やっぱりここアイドルの事務所で合ってたんですか?」
菜々「それ以外何に見えるっていうんですか?」
忍「いや、でもメイドさんがいるし」
菜々「ああ、これは(ナナの)趣味みたいなものでして」
忍「(事務所の人の)趣味!?」
忍(……そういえば聞いたことある。アイドル事務所には『そういうこと』を強要してくるところもあるって)
忍(ど、どうしよう。今から逃げる?でも、どこに?)
忍(もう後戻りは、後戻りだけはできないし)
忍(アタシはなんとしても、アイドルにならなきゃ、アイドルになるまで、帰れない……)
菜々「ウサミン星からやってきた永遠の17歳!安部菜々です!キャハッ!」
忍(……そういう路線かあ……キツいなあ)
忍「あ、アップル星からやってきた永遠の16歳、工藤忍です…きゃは…」
菜々「まさかのキャラモロ被りですか!?」
忍「あ、ごめんなさい。すぐメイド服に着替えますから」
菜々「忍ちゃん!?目が死んでますよ!」
忍「工藤忍、頑張ります……」
菜々「それ頑張れないときのヤツですよ!」
モバP「ただいま戻りました。あれ、忍もう来てたのか早いな。ってなんで忍は目が死んでるんだ?」
菜々「プロデューサーさん!ヘルプ!ヘルプです!」
忍「お、おかえりなさいませ。……ご主人様」
モバP「……いいね」
菜々「いいね、じゃなーい!」
菜々「しかじか」
忍「つまりそのような事実は存在しないと」
モバP「その言い方だとすごく嘘っぽいけど、そうだ」
菜々「ナナがメイド服なのはこれが一番着なれてて、やる気が出るってだけですよ」
忍「つまりあくまでメイド服は自分の意志で着ているものであり、強要されたわけではないと」
菜々「すごく嘘っぽいけど、そうです」
モバP「もしかしてまだ疑ってらっしゃる?」
忍「ご、ごめん。ただ都会ってすごいなーと思って。おか、個性的な子が普通にいるんだね」
菜々「今、おかしな子って言おうとしました?」
モバP「こんな変な人そうそういないぞ」
菜々「こっちはオブラートに包みすらしない」
忍「キャラは立ってるよ!菜々ちゃんみたいに個性強い人、アタシの友達にも一人ぐらいしかいないし」
モバP「いるのかよ!」
菜々「キャラじゃないもん!」
菜々「おめでとうございます、忍ちゃん!これから一緒に頑張りましょうね!」
忍「あ、ありがとう」
忍(ついにアタシ、アイドルになれたんだ!やった!)
菜々(いい顔してますねえ)
モバP(菜々さんも似たような顔でしたよ)
菜々(乙女の心を読まないでください)
モバP(ウッス!菜々先輩、ウッス!)
菜々(意外と脳内は体育会系ですか!?)
忍(なんでこの人たち無言で見つめあってるんだろう?)
菜々「プロデューサーさん、心の声のままですよ」
忍(だったら、レッスン場とか見てきていい?)
菜々「忍ちゃんも心の声にならないで!」
モバP(おう、いいぞ。そういえばこの後、菜々さんレッスン入ってましたよね?)
菜々「え、はい。せっかくですし、忍ちゃん、ナナのレッスンを見ますか?」
忍(いいの?じゃあ、お願い)
モバP(よかったな、忍)
菜々「いいから喋って!ナナが一人で喋ってるみたいになってますから!」
忍「レッスン場、けっこう広いね」
菜々「他の事務所も一緒に使ってる場所ですからね。通っていれば、色んなアイドルの子と会えますよ」
忍「へえ、楽しみかも」
菜々「あ、そうだ。忍ちゃん、この後忙しかったりします?レッスン終わってからなら、この辺を案内できますけど」
忍「そんな、こっちこそいいの!?レッスンの後にそんな」
菜々「いいですって。じゃあ待っててくださいね」
ベテトレ「安部、準備できたか?」
菜々「はーい。忍ちゃん、行ってきます」
忍「うん、頑張って」
菜々「はい」スッ
忍(え……)
忍(立ち上がった瞬間、菜々ちゃんの纏う空気が、変わった気がした)
忍(今日は色々あったけど、菜々ちゃんすごかったなあ)
忍(普段はどっちかというとほわっとした人なのに、音楽が流れた瞬間空気が引き締まってた)
忍(生で見たからっていうのもあるだろうけど、テレビ越しで見てきたアイドル達の動きと比べても勝るとも劣らない)
忍(体力は、うん。トレーナーさんが指摘してたように、確かになかったけど)
忍(でも少なくとも、全体的に今のアタシでは足元にも及ばないレベルだった)
忍(本当はへとへとなはずなのに、まるで疲れを見せないで街を案内してくれた)
忍(その内容だって、人気のお店とかじゃなくて、安い八百屋さんとか安売りをするスーパーみたいな、一人暮らしを始めたアタシが今一番必要な情報だったし)
忍(菜々ちゃんも一人暮らしをしているそうだけど、同じ学生とは思えないぐらい、慣れてた)
忍(というか、菜々ちゃんの住んでるところはウサミン星……はさすがに設定にしても、この辺ではないみたいなのに、どうしてこの辺の安売り情報を知ってるんだろう)
忍(もしかして、アタシのために調べてくれてたんじゃ。……たぶん、そうなんだろうな)
忍(たった一歳しか違わないのに、こんなに違う。あと一年で、アタシはあんなふうになれるのかな)
忍(っと、いけないいけない。弱気になっちゃダメだよね)
忍(……でも)
忍(あんなにすごい人なのに)
菜々『ウサミン星からやってきた、永遠の17歳です』
忍(ああやってキャラ付けがないと、芸能界は生き残れないの……?)
忍(じゃあ、アタシは?)
忍(アタシはこのままでいいの?)
『やめときなよ』
忍(ああ、またこの夢だ)
『アイドルになるって大変なんだよ』
忍(わかってるよ、そんなこと)
『東京行くなんて、無茶だよ』
忍(無茶でもやりたいの)
忍(彼らに悪意はない。むしろアタシのことを心配して言ってくれていた)
忍(夢に向かって歩こうとするアタシを止める声)
忍(夢は夢のまま、見ていた方が幸せだと諭す声)
忍(それは綺麗な夢を見続ける眠りへと誘う、甘くて優しい毒リンゴ)
忍(一人、一人と現れては、アタシに夢を諦めろと言う)
忍(でも、なりたいと思わなきゃなれないでしょ)
『アイドルなら、もっと他の子の方が向いてるでしょ』
忍(なりたいのは、アタシなんだよ)
『辛くなったら、いつでも戻ってきなよ』
忍(違う。言ってほしいのは、そんな言葉じゃなくて)
忍(夢の終盤。ふっと、一人の女の子が現れた)
『忍ちゃんならきっとアイドルになれるよ』
忍「……っ!?」ガバッ
忍「はぁ……はぁ……」
忍「……嫌な夢、見た」
忍「おはようございます」
モバP「あれ、忍?こんな早朝にどうした?」
忍「ちょっとランニングをね。そしたら事務所の電気ついてたのが見えたから、ちょっと覗いてみようと」
モバP「ふーん。嫌な夢でも見たか?」
忍「な、なんでそれを?」
モバP「忍は実家飛び出して、単身こっち来たんだろ?まだ色々と不安定かもってな。気持ちも生活も」
忍「う、まあ、そうなんだけど」
モバP「あんまり自分を追い込まないようにな。俺ならいつでも相談受けるし、菜々さんだって同じじぇ、JKだから、話合うだろ。ぷぷっ」
忍(なんで笑ってるんだろう?)
モバP「そういうわけじゃないんだけどな。ちょっと今日はやりたいことがあって」
忍「やりたいこと?」
モバP「昨日言ったけど、今日は忍の宣材写真を撮る予定だろ?どんな雰囲気にしようか、ちょっと何種類か案を考えてた。ほら」
忍「わ、何枚写真撮る気なの?」
モバP「これでもけっこう少ない方だぞ。これから更に絞るけど」
モバP「菜々さんの時はあの人の言うウサミン星のイメージがまったくわからなくて、いくら案考えても無駄になったりして大変だった
コメント一覧
-
- 2016年11月07日 23:54
- 取り合えず忍がクローズ・ユア・ドリームされる音。
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
LINE読者登録QRコード
スポンサードリンク