暁「行ってきます。司令官」
「えっとね今日はすごいのよ」
「じゃーん! プリンよプリン」
「いろいろなところにおねがいして、頼み込んでようやく手に入れたのよ」
「この暁様の人望の賜物なんだから」
「わかってるわね、ちゃんと半分こよ」
「ちょっとちょっとそっちのほうが少し大きいんじゃないの?」
「まったくもう油断もすきもないんだから」
「え? どうしたの司令官」
「……! それってもしかしてアイス!?」
「同じこと考えてたって? 一緒に食べようって?」
「最高ね! 司令官! 今日のあなたは最高に紳士だわ!」
「司令官もおいしい? そう、よかった」
「こんなにおいしいのは暁が隣にいてくれるからって?」
「んー口説き文句としてはいまいちね」
「ふふっ、私が帰ってくるまでに考えておくこと!」
「いいじゃないどうせ暇なんでしょ」
「そんな顔しないでよ、大丈夫なんだから」
「司令官は笑って見送るものよ」
「そうそう、ちょっと引きつってるけどね」
「マルナナマルマル、駆逐艦暁、出撃します……っと」
「行ってきます。司令官」
「まだ死んでないようで安心安心」
「そっちのろくでなしは元気?」
「はー相変わらずラブラブですなあ」
「ふーん、すましちゃってまあ」
「昔の暁だったらムキになってくれたのになあ」
「つまんないなあ、からかいがいがなくなっちゃって」
「そうそう、とうとう七駆も私だけになっちゃった」
「悲しいけどこれ戦争なのよね」
「大丈夫だって、覚悟はしてたから」
「うちのクソご主人様は泣き喚いちゃってたけどね」
「おかげで今日来るときも絶対に死ぬなって言われちゃった」
「死んでたまるかっつーの」
「死亡フラグ立てるなっつーの」
「……」
「さて暗い話はこれで終わり!」
「今回も一緒に生き残ろうぜ! 相棒!」
「作戦名は『いのちだいじに』」
「がんばろーおー!」
「あたしは雷巡北上。まーよろしく」
「ああいいよ。名乗らなくって」
「どうせ覚える意味ないし」
「え? どういうことだって?」
「だってあんたらすぐ死んじゃうじゃん」
「あーもうつっかかんないでよ」
「うざいなあ」
「わかったよ。そんなににらまないでよ加賀さん」
「ごめんね、駆逐艦」
「ハイこれで仲直り」
「まあ適当にがんばってよ。私が被弾しそうなときは盾くらいにはなってよね」
「みんなそろったみたいね」
「私は金剛型四番艦、霧島よ」
「この寄せ集めのくそったれ……おっと失礼。死にぞこないどもの旗艦よ」
「この作戦にはわが国の未来がかかってるらしいから、適当に頑張りましょう」
「作戦内容は簡単」
「見敵必殺。サーチアンドデストロイ」
「死ぬまで殺せってことよ。簡単でしょ?」
「これが成功したらとりあえずは補給物資のルートが確保できるらしいわ。よかったわね」
「で、作戦開始はいつ? え? 明日?」
「最高のジョークね。 こんなに笑ったのは先週の葬式以来だわ」
「……というわけで今日はこれにて解散」
「適当に親睦を深めておいてね」
「じゃまた明日」
「これよ。ペンギンがチャームポイントよ」
「提督のものを借りてきたの。いいのよ、明日のことは明日考えれば」
「おっとっと……ありがとう」
「さて何に乾杯する?」
「……じゃあ今日も生きのびられたことに乾杯」
「ふう……」
「それにしてもこうして三人で飲むのも恒例になってきたわね」
「今だからいうけど二人の第一印象は最悪だったわ」
「扶桑は超ネガティブでいまにも死にそうだったし、霧島はナイフみたいにとがってたし」
「ふふっ。じゃあみんな最悪からスタートしたのね」
「私たち案外似たもの同士なのかもね」
「……」
「ああ、今日は月がきれいね」
「……」
「きれいなお月様ね」
「司令官も同じ月を見てるかしら」
「響は……」
「まだあっちは出てないかな」
「あ、霧島さん、扶桑さん、加賀さん」
「三人で集まって、何してるの?」
「月見酒? ……ってそんなものどこから持ってきたのよ。知らないわよ」
「じゃ私も一杯だけもらおうかしら」
「……ん。甘い」
「甘いお酒は好き。苦いのはまだちょっと苦手かな」
「え? 素直になったって?」
「もう見栄を張る相手もいないからかしらね」
「……」
「それにしても月がきれいね」
「お酒に逃げていいのは大人だけよ」
「そうよ大人はずるいのよ」
「お子様にはまだ早かったかなー?」
「あはは。冗談よ冗談」
「暁ちゃんは酔ったらからかいがいがあって面白いわね」
「明日の作戦が心配?」
「大丈夫よ私たちが守るから」
「うん、あの夜空の月にかけて誓うわ」
「ふふふ、ジュリエット気取り?生意気ね」
「仕方ないわね」
「じゃあこの国の名前を背負った」
「扶桑の名にかけて誓うわ」
「みんな用意はいい?」
「よく眠れた?」
「親睦は深まった?」
「トイレは済ました? 神様にお祈りは? 遺書は書いた?」
「……ジョークよ」
「さて、爆笑ジョークで場も暖まったところで」
「出撃ね」
「十時の方向よ」
「重巡級2、軽巡級2、駆逐級2」
「まあ前哨戦ってところね」
「私は後ろで応援してるから、みんなやっちゃって頂戴」
「それは無理よ」
「だって持ってないんだもの」
「艦功も艦爆も艦戦も」
「持ってきたのは偵察機だけよ」
「大丈夫よ、期待されてる役割は果たすわ」
「同情なんていいからさっさと片付けて」
「私は応援してるから」
「ああ、ほんとに戦艦級に空母級がいるんでやんの」
「めんどくさいなあ、退避してていい?」
「さっきみたいに、戦艦様たちの邪魔にならないようにさー」
「わかったよ……ちぇ」
「魚雷装填完了っと」
「じゃーいきましょうかねー」
「ぬかったわね」
「あなたらしくもない」
「相手が戦艦だったとはいえ、よけられなかった攻撃じゃないでしょ」
「またそうやって不幸不幸って。山城じゃないんだから」
「はあ、まあいいわ」
「言い残す言葉はある?」
「ちゃんと伝えといてあげる」
「私が生き残ったらだけど」
「ん? なに? 言わないとわからない?」
「戦艦扶桑はここで処分していくって言ってるの」
「文句ある?」
「ああ、ばれてたの」
「どの道私に当たってたわよ」
「ほら私って不幸だから」
「……」
「あなたのそういうところ好きよ。霧島」
「だから泣かないで」
「ちゃんと狙ってよ」
「あの子達のこと頼んだわね」
「……ああ、空はあんなに青いのに」
「とうとうラスボスの登場ですか!?」
「腕が鳴るなあ」
「駆逐艦は私にお任せを」
「徹底的にやっちまうのね!」
「はいはい、わかってますよー」
「まっすぐいってぶっ飛ばせばいいんでしょう?」
「とっつげーき」
「どうするかね。相手まだ戦艦三隻も残ってるよ」
「頼みの綱の霧島さんは大破してるし」
「こりゃあ詰みかな」
「雷撃?」
「うーんそこまで近づくのは難しいんじゃないかな」
「それともこの距離から撃ってみる?」
「博打は嫌いじゃないけどね」
「えっ?」
「本気で言ってるの? 加賀さん」
「それが期待されてる役割ってやつ?」
「まあいいけどね、どうでも」
コメント一覧
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- 2016年11月09日 23:58
- 生き残りの寄せ集めが磨り減りながらの抵抗か
末期だねー
こういうのは書けないわ
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- 2016年11月09日 23:59
- 暁がレディになったSSの前日談かな
やっぱりみんなが幸せになるのが一番だと思いました。
システム上無いからなのか、こっち側でやるといまいち感情移入しにくい