憲法の岐路　衆院審査会　改憲前提に流れるな

　衆院憲法審査会があす１０日から議論を再開する。憲法を変える必要が本当にあるのか、国民は改憲を求めているのか、原点を見据えた審議を求める。

　審査会は２００７年に成立した国民投票法に基づき衆参両院に設置された。憲法に関する総合的な調査や改正原案の審査をする。委員は与野党双方から出ている。

　２０００年から０５年にかけて活動した前身の衆参憲法調査会には改正原案を審議する権限は与えられていなかった。いわば勉強会の位置付けだった。

　これに対し審査会では、委員の過半数が賛成すれば原案を本会議に提出できる。改憲手続きの一部を担う機関である。

　衆院の審査会は昨年６月から止まったままだった。参考人として呼んだ３人の憲法学者全員が安保関連法案を「憲法違反」と指摘。国民の批判も高まって議論を続けることができなくなった。

　参院審査会も今年２月、自民の委員がオバマ米大統領について「黒人の血を引く奴隷」と失言して以降開いていない。こちらは１６日開催の見通しになっている。

　夏の参院選で改憲に前向きな勢力が３分の２以上の議席を確保した。衆参両院で改憲勢力が改憲発議に必要な議席を占めてから、初めての審査会である。差し当たり、終戦後の憲法制定過程と立憲主義をテーマに議論をスタートさせる段取りだ。

　これから大事なのは改憲ありきに流れないことだ。今の憲法には変えなければならないほどの不都合はないと私たちは考えている。慎重で丁寧な運営を求める。

　安倍晋三首相は今国会冒頭の所信表明演説で、改憲案を国民に提示するのは「国会議員の責任」と述べた。改憲発議を当然のことのように述べる首相の姿勢には危惧を覚える。

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20161109/KT161108ETI090005000.php

衆院憲法審、１７日に延期

　衆院憲法審査会は９日の筆頭幹事間協議で、１０日開催で合意していた審査会の延期を決めた。当初１０、１７両日開催としていた審議日程について、１７、２４両日とすることを確認した。
　民進党の武正公一野党筆頭幹事は協議で、環太平洋連携協定（ＴＰＰ）承認案・関連法案をめぐる与野党対立を踏まえ、「国会が静かな状況ではない」と延期を提案。自民党の中谷元与党筆頭幹事も受け入れた。（2016/11/09-17:15）

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016110900713&g=pol