【艦これ】親潮「秋刀魚と私と黒潮さん」
親潮さんが、
大好きな黒潮さんのために奮闘するお話です。
(短め、ちょい百合)
初めまして。私、陽炎型駆逐艦四番艦、親潮です。
先日、この鎮守府に着任いたしました。よろしくお願いいたします。
現在は日々の演習により練度を高めているところですが、今秋、ついに私にも海域出撃の機会が巡って参りました。
そう、『秋刀魚漁』です!!
【鎮守府 駆逐艦寮(親潮と黒潮の部屋)】
親潮「明日からいよいよ秋刀魚漁開始…つまり私の初出撃…ちょっと緊張します…」ドキドキ
黒潮「まー秋刀魚漁での駆逐艦の役目は戦闘よりも見張りと護衛が主やから、そんな気張らんでええと思うよ」
彼女はルームメイトの黒潮さん。陽炎型駆逐艦三番艦、すなわち私の姉妹艦、私の姉ということになります。
黒潮さんはこの鎮守府には古くからおり、全駆逐艦の中でもトップクラスの練度を誇り、
出撃・遠征・事務作業にと引っ張りだこ。
ときには秘書艦の叢雲さんの代理を務めることもあるくらいです。
黒潮「外洋航海での会敵に慣れるという意味で、最初の出撃としてはちょうどええのかもしれんね」
黒潮「親潮と同じ時期に着任した駆逐艦の子らとローテーションで出撃するみたいやし、そんな激しくもないと思うし」
黒潮「あんまり構え過ぎず、楽しむくらいの気持ちでな~」
親潮「はい!ありがとうございます!」
黒潮「あ、でもー、秋刀魚はちゃんと獲ってくるんやで!何せウチがお腹すかせて待ってるから~」ケラケラ
それでいて、気配りもできて冗談も言える。私の尊敬する姉、それが黒潮さんなのです!
黒潮「ウチもサンマは大好きでな~。速攻で高めを狙えるあたりとか~」
親潮「(速攻?高め…?)」
黒潮「昔はよく陽炎と不知火と三人で一緒にやったもんや、サンマ」
親潮「ここでは秋刀魚を食べることを『やる』って表現するんですか?『一杯やる』みたいな感じで」
黒潮「あー………ちょっと今のはウチの言い方が分かりづらかったな。反省反省」
親潮「??」
たまに、仰ることが難しくて私には分からないときがありますが…(さらに精進せねば!)
黒潮「おっと、もうこんな時間か。ほなウチは遠征行ってくるわ。ちーとばかし遅くなるかもやから、よろしゅうな~」パタン
親潮「あ、はい!行ってらっしゃい!」
親潮「黒潮さんは『楽しむくらいの気持ちで』と仰ってたけど…」
親潮「同時に、『秋刀魚は大好き』とも仰っていたから、黒潮さんに美味しい秋刀魚を食べてもらえるよう、全力で秋刀魚漁に挑みたいと思います!」
親潮「日頃お世話になってる黒潮さんへ、感謝の気持ちをこめて!」フンス
【鎮守府 資料室】
親潮「まず、秋刀魚の生態について調べたいと思います!」
親潮「えーと、なになに…?」
親潮「………」
親潮「(さ、さっきから『黒潮』『親潮』という言葉がたくさん出てきて、何だか気になっちゃいますね…)」ドキドキ
親潮「………はっ!いけないいけない、ちゃんと集中して読まないと…!」
秋刀魚の本『秋刀魚は暖かい黒潮海域で産卵。孵化した稚魚は黒潮に乗って北上し、餌となるプランクトンが豊富な親潮海域に向かいます』
秋刀魚の本『よって、黒潮と親潮の混合域には、秋になると脂がのった秋刀魚が大量におり、漁場として最適云々…』
親潮「!!??」ガタッ!
親潮「(『黒潮』と『親潮』の『混合』で、さ、『産卵』………!?)」(←単語を拾い読みした結果の誤読)
親潮「 」(硬直)
秋雲「………あー、親潮…?」
親潮「 」
秋雲「もしもーし、親潮さーん?親潮おねーちゃーん?」フリフリ
親潮「………はっ!?ど、どうしたの秋雲、こんなところで…」
秋雲「いやそれはこっちのセリフでしょ…資料室に来てみたら、姉が一人で突っ立って固まってるんだもん」
秋雲「しかも、まるで、『それはもうセッ○スなのでは?』とでも言いたげな感じで真剣な顔しながら…」
親潮「セッ…!?」ギクリ
親潮「も、もう、何を言いだすの!!そんな顔してないし、大体どんな顔ですかそれは!」
秋雲「ん、その手に持ってるのは、秋刀魚の本だねぃ」
秋雲「(…秋刀魚、海流……親潮、黒潮……なるほど、そういうことか)」ピーン
秋雲「そういや明日からの秋刀魚漁、親潮おねーちゃんは編成に入ってるんだってね。こりゃ頑張らなきゃねぇ」ニヤニヤ
親潮「そうだけど…な、何ですかその顔は」
秋雲「いーや別にぃ?そーだ、もしあれだったら、去年の秋刀魚漁を経験してる秋雲さんが、コツをレクチャーしてあげるよ?」
親潮「本当?色々と教えてもらえると助かります!」
秋雲「ふふーん。探照灯の使い方なら任せなさーい!」ドヤァ
【鎮守府 駆逐艦寮(親潮と黒潮の部屋)】
親潮「色々と教わって参りました。秋雲はすごいですね、その場で手描きの資料を作ってくれて」
親潮「ところでこの資料の、ところどころに入っているイラスト、黒潮さんに似ている気がしてならないのですが…」
親潮「………」
親潮「(永久保存にしよう)」
親潮「そういえば、黒潮さん、遅いですね。遠征部隊はもう皆さんご帰投されていたようですが…」
親潮「黒潮さんの場合、引き続き事務作業をされているのでしょうね」
親潮「…よし!親潮も明日に向けての予習と準備、頑張ります!」フンス
親潮「えーと、なになに、『秋刀魚漁は、光の方向に秋刀魚を誘導するため、光の目立つ夜間に行われる』と」
親潮「でも、私たちは早朝から漁を行うんですよね。このへんも、深海棲艦の侵攻の影響で変わったのでしょうか」
親潮「秋雲のメモによると…なるほどなるほど。よし、次は有効な装備について………」
~~~(数刻後)~~~
黒潮「黒潮さん、ただいま帰ったで~(小声)」ガチャ
黒潮「おろ、まだ明かりついとる。親潮まだ起きとったんかいな」
黒潮「アカンで~明日は秋刀魚漁やろ?早朝に集合………って」
親潮「スースー」zzz…
黒潮「なんや寝とったんか。しかも机にむかって秋刀魚の資料を開きながら…」
黒潮「親潮はマジメなええ子やね、ほんま」ナデナデ
~~~(さらに数刻後)~~~
ピピピピピピ…
親潮「………はっ!」ガバッ
親潮「私ったら、いつの間に眠って…!?」アセアセ
親潮「今日は早くから集合なのに!い、いま何時!?」ワタワタ
親潮「あれ?私、どうしてベッドの上に…?布団までかけて…」
親潮「というか、目覚まし時計も鳴ってた…しかも私が起きる予定だった時刻に設定されてる…」
親潮「これは、もしかして」
黒潮「スースー」zzz…
親潮「(…ありがとうございます、黒潮さん!私、秋刀魚漁を頑張ります!)」
親潮「(折角黒潮さんがここまでしてくださったんですから、遅刻してはいけない!)」
親潮「(シャワー浴びて、着替えて、朝食を食べて、元気に出発…)」
親潮「(………ん?着替え?そういえば私、着替えてなかったはずが寝間着になってr………!?)」
親潮「はわわわ」///
【鎮守府 秋刀魚漁作戦本部】
提督「よし。揃ったようだな」
叢雲(秘書艦)「アンタたちには、鎮守府近海で対潜哨戒をしながら、秋刀魚を獲ってきてもらうわ」
提督「そんなに面白いほど獲れるわけではない海域だから、見敵必釣(サーチアンドフィッシング)でな」
伊勢「ええ!」
親潮「はい!」
秋津洲「かも!」
多摩「にゃ」
叢雲「秋刀魚の獲り方についてはこないだの作戦会議のとおりだけど」
叢雲「現場で分からないことがあったら伊勢に聞くこと」
伊勢「去年も参加した伊勢さんに任せなさい!」
提督「それと、親潮はこれが初めての海域出撃になるな」
提督「他の駆逐艦とローテーションで出撃してもらうことになるから、ま、気楽にな」
親潮「はい!」
提督「よし、それじゃあ元気に行ってこい!」
一同「了解!!」
ゾロゾロ
多摩「秋刀魚…楽しみにゃ」
秋津洲「ひ、久しぶりの出撃かも…」ドキドキ
伊勢「あはは、まあそんな緊張しないで」
叢雲「ん?親潮、どうしたの。みんな行っちゃったわよ」
親潮「は、はい、ごめんなさい。…あの、司令」
提督「ん、どうした?」
親潮「北方海域は、秋刀魚が特に多く獲れる海域だと伺っております」
提督「そうだな」
親潮「私、鎮守府近海での漁の次は、北方海域での漁にも参加したいのです」
提督「…!!」
叢雲「アンタねえ…確かに大分練度も上がってはいるけど、立て続けの出撃は…」
提督「まあ待て叢雲」
叢雲「え?」
提督「親潮………詳しい理由は聞かないが、これだけは確認させてくれ」
提督「『本気』なんだな?」
親潮「はい!!」
提督「よし…ではまずこの鎮守府近海での戦果と釣果で検討しよう!」
叢雲「ちょ」
親潮「はい!ありがとうございます!」
叢雲「ちょっとちょっと!」
秋雲「心配しなくても大丈夫だよ。親潮姉さんには、この秋雲の秋刀魚漁術を叩きこんであるから」
提督「おお、それは頼もしいな」
叢雲「ていうかアンタいつからいたのよ、しかも何を描いてるのよ」
秋雲「気にしないキニシナイ」カキカキ
叢雲「はあ…どうせ言っても無駄なんでしょもう。ほら親潮、早くしないと置いてかれるわよ」
親潮「あ、はい!では行ってまいります!」ダッ
叢雲「まったく………本当によかったの?」
提督「叢雲よ…お前には見えなかったのか?」
叢雲「何がよ」
提督「目だよ」
叢雲「はあ?」
秋雲「これだねぃ」バッ
叢雲「何を描いてたかと思えば…この絵は、秋刀魚を食べる黒潮?」
提督「そう。親潮の目に映っていたのは、黒潮の姿だった」
提督「『尊敬する黒潮さんに、美味しい秋刀魚をたくさん食べてもらいたい』…そんな強い想いが、親潮からは感じられた」
提督「その想いを邪魔するなんてことが、果たして許されるのだろうか(いや、許されない)」
提督「そのような行いを野暮と言わずして、何を野暮と呼ぼうか」
叢雲「また始まった…」ハァ
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