566 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/10/28(木) 00:33:04 ID:0ca/VC0C
今年の5月。
その日休日だった私は、家で一日中ゴロゴロ。特別やることもない。
彼氏もいない。大学は格別面白くも無い。午後に見かねた親に起こされるまで寝ていた。
2時くらいにノロノロ起きて、朝食とも昼食ともつかない食事をして、ようやく友達から借りたプリントをコピーし忘れたことに気づいた。
家の近くのコンビニへ、眼鏡と普段着でコピーしに行った。晴れてたと思うけど、不思議と空は目に入らなかった。
コンビニに着くと、老夫婦が先客。正直、参ったな、ちょっとコンビニ変えようかな、と一瞬迷った。
けれどなんだか歩くのも億劫で、じっと待つことにした。しばらくして、老夫婦が、頭を丁寧に下げながらコピー機から離れた。
私はコピー機に近づくと、お金を入れ ……アレッ?
そこにあったのは、綺麗な白いリボンで包まれたゴディバのチョコレート。
私はまだ店内で買い物をしていた老夫婦を呼びとめ、それを返した。別に落し物を返すのと大して変わらない感覚で。「忘れてますよ」、と。

コピーを終え、再び億劫な足取りで帰ろうとすると、後ろから呼び止められた。……あの老夫婦だ。
「これ、結婚式の引き出物なのです。姪が今日結婚しました。どうぞ。」
私は呆気にとられた。渡されたのは「忘れ物」のはずのゴディバのチョコレート。
突然で驚いて、ありきたりの御礼しかできなかったと記憶している。
お婆さんは、「幸せのおすそわけよ」 とちょっと笑っていた。

帰りがけ、少し空を見た。外は晴れていた。鬱屈していた毎日だけど、いいこともあるかもしれない、そう思えた。
今、私はかけがえのない友達に恵まれて、充実した毎日を送っている。
でも、特別、あの日から環境が変わったわけじゃないんだ。大学も同じ、友達の顔ぶれも同じ。
違うのは、私の机の上のゴディバの包みと、私の少しの心の変化。