凛飛鳥蘭子「『昼夜侯爵と帳の姫』?」
モバP(以下P)「・・・ハイ、ハイ・・・ではその通りにお願いします、ハイ!」
飛鳥「・・・・・・」
P「ハイ、それでは!」ピッ
P「ーーーっいよっし!」
飛鳥「随分と機嫌がいいようだね。電話の話し方からして仕事関係だとは思うけど、一応改めて聞いておこうか?」
P「ふふふ・・・聞きたいか?聞きたいか二宮飛鳥?そうか聞きたいか!ならば教えてやr」
飛鳥「茶番は十分だよ、プロデューサー。早く本題に入ってくれ」
P「あ、そうかい・・・」ションボリ
P「・・・っと!本題を忘れるところだった」
飛鳥(全く、感情の起伏が激しいヤツだ・・・)
P「なんと!飛鳥が主役どころの演劇の仕事が契約できたんだ!」
飛鳥「へぇ、演劇ね・・・演劇?今までなかったタイプの仕事じゃないか?随分と珍しいね」
飛鳥「なるほどね・・・それにしても『主役どころ』、ね・・・なんだか含みのある言い方だけど、何かあるのかい?」
P「ん?深い意味はないぞ?ただ、主役は1人とは限らないってことさ」
飛鳥「なるほど、複数主人公の物語という訳か。それで、もう一人の主人公とやらは一体誰なんだい?」
P「それはだなーーー」
凛「おはようございます」ガチャ
P「おっと、タイミングが良かったな。凛、舞台の仕事で主役が決まったぞ」
凛「えっ?主役?舞台?」
飛鳥「プロデューサー、いきなり情報量で殴るのはよしたらどうだい?」
凛「あれ、これドッキリじゃないんだ。違うよね、プロデューサー?」
P「あぁ、違うぞ」(この前のドッキリ企画でやりすぎてしまったかな・・・後で何か奢っておこう)
凛「舞台が決定したのはいいけどさプロデューサー、台本はないの?」
P「その打ち合わせが一週間後にある。そのときに台本の受け渡しを行うそうだ」
飛鳥「劇のタイトルは既存のものなのかい?それとも新しく創作されたものなのかい?」
P「どうやらさっき電話してた相手がが脚本と監督を務める新作みたいだ。」
飛鳥「なるほどね・・・それでボクたちに白羽の矢がたったわけか」
凛「舞台劇か・・・ドラマの撮影とかは何回かしたことがあったけど、舞台の劇っていう形では初めてかな」
P「先方もそれは承知の上だ。舞台稽古で専門の指導者がつくし、なんならウチで契約してるトレーナーさんに依頼しても劇向けのレッスンは組んでもらえるだろう」
飛鳥「それと・・・台本はなくても、やる劇のタイトル位は決まってるんじゃないのかい?それが分からないままでは、イメージもしづらいと思うんだが」
P「あらら、それもまだ伝えてなかったか、ちと興奮しすぎたかな。今回二人に挑んでもらう舞台劇のタイトルはーーー」
P「『昼夜公爵と帳の姫』、だ」
そこへ二筋の光が差した。太陽のように暖かき光と、月のように美しき光。
そこから2人現れた。彼らは自らを「昼の侯爵」、「夜の侯爵」と名乗った。
彼らは強かった。荒れ狂う世界を瞬く間に治め、大地は癒え、空は青く澄みわたっていく。
2人の侯爵は全ての生き物から感謝された。
その後、彼らは一日を二つに分けた。
昼の侯爵は人間の繁栄と発展を司り、太陽が昇る刻を昼と定め、
夜の侯爵は獣たちの安寧と休息を司り、月が輝く刻を夜と定めた。
そうして世界は巡り、永遠を約束された・・・」
「あんたそんなこと言ってると、また重要なトコで音外してヒンシュク買うわよ」
「大丈夫、今度はあんなヘマしないさ」
「ホントに?」
「本当さ」
「それならいいんだけど。ほら。夜になるわよ。早く小屋に入らないと、夜の獣たちに食われちまうよ」
「へいへいっと・・・おや?」
「なんだい、今度は・・・」
「見てみろよ、アレ。もしかしてあれって昼の侯爵様じゃねえかな?」
「確かに、お美しい・・・アンタの何倍も」
「オイオイ・・・昼と夜が入れ替わる帳の刻においでになるってことは、夜の侯爵様と入れ替わりかな」
「どちらでもいいわ。早くしないとアンタの分の干し肉まで食べちまうよ」
「分かったって!」
飛鳥・凛「お疲れさまでした!」
飛鳥「・・・ふぅ、ようやく会議が終わったか。これはなかなかボクとしては大きな仕事になりそうだな・・・」
凛「お疲れ様、飛鳥。なんだか嬉しそうだったね」
飛鳥「あぁ凛さん、お疲れ様です」
凛「フフ。凛、でいいよ」
飛鳥「・・・じゃあ、凛。ボクとしては舞台劇どころか物語を演じる、といった仕事からは縁遠いところにあるようでね。
アイドルとしてペルソナを被ることは何度もあったし、ドラマという形で演じる仕事にも興味はあったんだが、
まさかこんな形で実現するとはね。フフッ、フフフ・・・!」
凛(私も初めてドラマのお仕事もらったとき、嬉しかったな・・・ちょっと懐かしいな)
飛鳥「そういう凛は、この仕事を貰って嬉しくないのかい?」
凛「えっ、私?もちろん嬉しいよ。けど、ちょっとだけ気になることがあって」
飛鳥「気になること・・・あぁ、『アレ』のことか」
凛「うん、まさか私たちが・・・」
飛鳥「だっけか。初めて監督さんから聞いたときは流石に驚いたな。」
凛「『昼夜公爵と帳の姫』・・・2人で主役級って聞いてたから、どっちかは侯爵役になるのかと思ったらこうなるとは思ってなかったな・・・」
飛鳥「ボクが演じるのが夜と動植物の安寧を守る『夜の侯爵』、凛が演じるのが昼と人間の繁栄を司る『昼の侯爵』・・・」
飛鳥「まぁ、いいんじゃないかな。どちらにせよボクたちは主役という大きな役割を担うことになった。それで十分さ」
凛「・・・なかなか割り切ったというか、いい顔してるね」
飛鳥「モデル関係の仕事であながち触れないことはないからね。この程度は訳はない」
凛「そっか。じゃあ、お互い頑張ろうね」
飛鳥「あぁ。これから数か月、よろしく頼むよ」
飛鳥「・・・あぁ、それと」
凛「どうかした?」
飛鳥「いろいろ連絡不足だったプロデューサーに、何かたかりに行かないかい?」
凛「・・・もう」
「やぁ夜の侯爵。ご機嫌いかがかな?」
「あなたが変わらず居てくれたおかげで、私も嬉しいさ」
「君こそその口は変わらないな」
「あなたこそ。今日もヒトの子らの安寧は守られたようで何より。昼に私が干渉することはできないからね」
「そこは任せたまえ。私がいる限り、人の子は大いに栄えるさ」
「全く心強い。それでは、統治の番を変わろうか」
「あぁ、任せたぞ」
「任せてくれ。私がいる限り、獣たちの繁栄は約束しよう」
「それでは、また日が明けるころに」
「暫しの別れだね。ゆっくり眠るといい」
「さぁ夜の時間だ!牙を持つ獣よ!囁く妖精よ!静かに輝く星たちよ!君たちの時間だ!」
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蘭子「煩わしい太陽ね!」
飛鳥「・・・・・・」
蘭子「・・・我が友飛鳥よ!」
飛鳥「・・・・・・」
蘭子「・・・飛鳥ちゃん?」
飛鳥「・・・・・・」
飛鳥「・・・・・・ふむ」ペラッ
蘭子「・・・・・・」ムスッ
蘭子「・・・!」
蘭子「飛鳥・・・」ボソッ
飛鳥「~~~ッ!!」ゾワッ
飛鳥「一体何を・・・!って蘭子か。どうしたんだい急に」
蘭子「ようやくお目覚めのようね。我が魔力にも感づけぬようでは、いずれ真の闇に落ちてしまうわ
(やっと気づいた!何回声かけても気づかなかったから、ちょっと驚かせちゃった)」
飛鳥「すまない蘭子、ちょっとこれに集中しててね」
蘭子「これは・・・新たなる魔本か?我が僕から聞いているぞ、新たなる境地を見出さんとするようだな
(これ、プロデューサー今度やるって言ってた舞台劇の台本かな?)]
飛鳥「あぁ、その主役に任されたんだ。だからこうして慣れない言葉の山を自分のモノにしようと試みてるのだが・・・やはり、難しいね」
蘭子「臆することはない。己が魂を地獄の業火にさらせば、浄化された魂の中に答えは見つかるわ
(いつもの飛鳥ちゃんらしく練習してれば、大丈夫だと思うよ?)」
飛鳥「言ってくれるじゃないか蘭子・・・本番を楽しみにしてくれ、最高の舞台にして見せる」
蘭子「我が魔眼の領域外だろうとも、汝の成功を祈る
(本番を観に行けるかは分からないけど、頑張ってね!)」
飛鳥「天使か・・・」
蘭子「ふえっ?」
飛鳥「い、いやなんでもない、何でもないんだ・・・」
飛鳥「少なくともグッドエンドではないね。ただ、全てが終わったわけではないという結末さ」
蘭子「・・・終に至らず邪法を開くとは、悪姫すら凍らすわ
(まだ全部読み切ってないのに、飛鳥ちゃんひどい・・・)」
飛鳥「っと、すまない。てっきりもう台本を読み終えたのかと」
蘭子「如何にも。だが大翼抱きし我は恩赦を授けようぞ
(そうだけど・・・別に大丈夫だよ)」
蘭子「しかし幸福に至らぬ結末か・・・悲壮の調べは棘の枷のよう・・・
(それにしてもバッドエンドかぁ・・・悲しい物語はなんだか嫌だね)」
飛鳥「相変わらず蘭子は世界観の割に心が優しいな・・・」
蘭子「・・・その言の葉はいかにして紡がれん(どういう意味で言ったの?)」
飛鳥「あぁ、勘違いしないでくれ。これでも褒めたつもりなんだ。なんどか一緒に仕事したけど、それは隠しきれてないなって」
蘭子「そ、そのようなことは(そ、そんなこと・・・)」
飛鳥「あるさ。そうでもなければ、わざわざ事務所に手作りのお菓子を持ってきたり、タオルを貸したりはしないだろう?」
蘭子「飛鳥ちゃん・・・」
飛鳥「蘭子・・・」
凛「何やってんの」ペシッ
飛鳥「あいたっ」
蘭子「蒼き疾走者よ、闇に飲まれよ!(凛ちゃん、お疲れ様です!)」
凛「ん、おはよう蘭子。それで飛鳥は台本放って何やってるの?」
飛鳥「何って・・・台本を読んでいたのさ。今のボクにそれ以外何がある
コメント一覧
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- 2016年11月19日 19:13
- 熱い
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- 2016年11月19日 19:46
- 蘭子は天使だな
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- 2016年11月19日 21:21
- 普通に劇中劇として面白かったな
次作も期待大
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- 2016年11月19日 22:18
- 本当に熱かった!
うまく言えないけど何故か泣けた。
これを読んで飛鳥をさらに好きになりそうです。
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