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キョン「紐神樣って、知ってるか?」ハルヒ「はぁ?」|エレファント速報:SSまとめブログ

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キョン「紐神樣って、知ってるか?」ハルヒ「はぁ?」

1:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:19:43.634 ID:ux2jZjBg0.net

11月も下旬となり、いよいよもって本格的に冬の訪れを実感せざるを得なくなってきた、ある日のこと。

将来的にどんな役に立つかもわからない授業を既に終え、その後の絶対的な確信をもって全く役に立たないと断言できるSOS団の部活動……という名目のただのお茶会を済ませた俺は、寄り道もせずに真っ直ぐと自宅に帰ってきた。

キョン「ただいま」

キョンの妹「あ、キョンくんおかえり~」

玄関を開けて、「ただいま」と言えば、こうして可愛い妹が出迎えてくれる。
そんな何気ない日常こそ、日に日に下がっていく気温と湿度、それに加え退屈な授業と放課後の怠惰な部活動によってカサカサに乾いた俺の心のささくれを潤す、リップクリームのような役割を果たすのだ。

もちろん、部活動の内容はともかく、朝比奈さんのような女神と共に過ごすだけで、とても癒やされることは間違いない。
だが、残念ながら我が部の構成員は朝比奈さん1人、というわけではないのだ。
人畜無害な長門はともかく、他の2名は存在するだけで俺の心のささくれに対し、塩を塗るような奴らである。

そんなわけで、この自宅こそ、俺にとって唯一無二の安全地帯なのだが……

キョン「……ん?」

ふと、玄関に、呼ばれざる客の靴が、きっちりと揃えて置いてあることに気づいた。

気づいて、しまった。



2:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:20:44.080 ID:ux2jZjBg0.net

キョン「……まさか」

玄関に置いてあった靴は、サイズ的に女物。
嫌な予感を覚えつつ、自室の扉を開け放った俺の目に飛び込んできたのは、健康的な脚線美を描く、黒いオーバーニーソックスに包まれた御御足。
うつ伏せになって俺のベッドに寝転んだ、その見えそうで見えない絶妙な無防備感に、ついつい根元の方を凝視すると、むっちりとした太ももが見て取れる。正直、噛みつきたい。

これが一体、誰の足かって?
そんなのは決まっている。

ハルヒ「あ、キョン!お邪魔してるわよっ!」

ベッドに寝転んだまま、ちらっとこちらを振り向き、ハルヒはそれだけ告げると、また手元の漫画に没頭し始めた。
そう、こいつは今、俺の部屋で、俺の漫画を読み散らかし、俺のベッドでゴロゴロしている。

つまり、俺の安全地帯は完全に、ハルヒによって占領されていた。

キョン「……何しに来たんだ?」

あまりの惨状に軽い目眩を覚えつつ、辛うじてその質問を口にした。

まずは状況確認だ。こいつが一体どのような意図をもって、俺の主権を侵害しに来たのかを明らかにせねばならない。
それはもちろん、俺の部屋に巣食うこの限りなく面倒な存在を直ちに、そして速やかに排除する為に必要なプロセスだからである。

しかし、そんな俺の心中など歯牙にもかけず、ハルヒはニッコリ笑い……

ハルヒ「遊びに来たのっ!」

何とも反応に困る、無邪気な答えを返したのだった。



3:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:21:26.598 ID:ux2jZjBg0.net

キョン「……そうかい。なら、勝手にしろ」

「遊びに来た」と、言われたら、「帰れ」ともなかなか言えず、仕方なく俺はハルヒの滞在を許可することにした。
苦渋の決断であったが、致し方あるまい。
他にどうしろというのだ。
より良い模範解答があったら、是非とも教えて貰いたいもんだ。

いや、わかってるさ。
本当に帰って欲しかったら、ハルヒが何を言おうとも「帰れ」と言って押し切ってしまえば良かったってことぐらい、誰でもわかる。
それをしなかったということは、すっかりその御御足に魅せられて……ではなく、口ではどうこう言いつつも、なんだかんだで俺は、ハルヒのことを受け入れているということだろう。

こいつの自由奔放さには辟易としているが、こうして遊びに来たと言うからには、それなりにもてなしてやってもいい。
そのくらいは、許容範囲と言える。

しかし、気になるのは寄り道もせずに帰宅した俺より、何故こいつが先に家にたどり着いているのかということだが……

ハルヒ「ん?そんなの走って来たからに決まってるじゃない!びっくりさせようと思って!」

なるほどな。
改めて、このアホの行動を予測することは困難であるということを、俺は思い知らされた。



4:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:22:01.182 ID:ux2jZjBg0.net

キョン「……ほらよ」

そんなこんなで遊びに来たというハルヒに、俺は最低限のもてなしとしてお茶の一つでも出すべきだと、そう思い、冷蔵庫でキンキンに冷えた麦茶を差し出した。
なんでこのクソ寒い季節にそんな物をって?
それはもちろん、突然の来訪者に対する、俺なりの嫌味に他ならない。

しかし、ハルヒは平然とそれを……受け取らなかった。

ハルヒ「ん。そこ、置いといて」

漫画を読むことに集中しているハルヒは、こちらをチラリとも見ずに顎をしゃくり、テーブルの上に置けとジェスチャーする。
そう、この女は、わざわざ学校から走って遊びに来たという癖に、さっきからずっとこんな調子なのだ。

いるよな、こういう奴。
漫画に限らず、本を読んだり、ゲームをしたり、携帯を弄ったり。
いい加減にしろ!と、怒鳴り散らし、漫画を取り上げたくなる衝動に駆られるが、そこはぐっと堪える。

そうさ。
俺は断じて、『構ってちゃん』ではないのだ。

なので、ふんっと鼻を鳴らし、麦茶をテーブルの上に置き、俺も読書をすることにした。
別に拗ねている訳ではない。
たまたま読みかけの本があり、元より帰宅後は続きを読む予定だった。

ちなみに、その本は漫画などではなく、文庫本である。
いや、文庫本と言っても、長門の読むようなお堅いそれではなく、所謂ライトノベルと呼ばれる代物だ。

俺がラノベを読むのが意外と思われるかも知れないが、一応それなりの理由があったりする。
このラノベは、様々な『神』に翻弄される少年の物語であり、俺はそんな物語を読むことで、身近な『神』への対応の仕方を学ぼうとしていたのだった。



5:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:23:02.738 ID:ux2jZjBg0.net

ハルヒ「あー面白かった」

しばらくの間、互いに無言のまま漫画とラノベをそれぞれペラペラめくっていたのだが、どうやらハルヒは一足先に読み終わったらしく、一言感想を口にするとそのままだらしなくベッドに寝そべった。

まぁ、漫画とラノベじゃあ、漫画の方が早く読み終えるのは必然か。
むしろ、それこそが、ラノベの良さと言える。
漫画のような感覚で、漫画よりも長く読めることを、俺はこのラノベを通して知った。
逆言えば、知り得たことはそのくらいなものであり、既刊を次々読み進めていっても、身近な『神』……つまり、ハルヒへの対処法は何一つ見い出せなかった。

しかし、今となってはそんなことはどうでも良かったりする。
何せこのラノベは面白い。
手に汗握るバトルシーンや、いじらしい恋愛模様、複雑に絡み合う様々な勢力の思惑、そして人間の善意と悪意。
よくもまぁ、文字だけでこれだけ人の心を動かせるものだ。

そう、このラノベを読むと、心が震える。
人はそれをワクワクとか、ドキドキと表現するだろうが、俺としてはそれらをひっくるめて、『感動』と、表現したい。

いや、別に読んで大泣きしたとか、そういうわけではないのだが、心が震える、揺り動かされる、というのは、それはひとえに『感動』したからだと、思うのだ。

というわけで、現在俺はかなりの『感動』に包まれており、同時に作中の主人公と同じく、『冒険したい欲』にも苛まれていた。

だからだろう。
こんな、馬鹿な質問をしてしまったのは。

キョン「紐神様って、知ってるか?」



6:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:23:59.440 ID:ux2jZjBg0.net

ハルヒ「はぁ?」

やっちまった。
突然意味不明なことを言い出した俺に、ハルヒはポカンと口を開けて頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、その目は完全に不審者を見るものとなっていた。

思わず、逃げ出したくなる衝動に駆られる。
いや、ダッシュで部屋から飛び出すのはあまりに不自然だろうから、適当に誤魔化すのが最善か。

しかし……それでいいのか?
俺は、逃げるのか?
ハルヒから?
何故?

あの主人公は……そう、さっきまで読んでいたラノベの主人公は、決して逃げなかった。
もちろんそれは、守るべき仲間がそばに転がっていたからだったりするのだが、だけど、それ以上に、曲げられない信念があったからじゃないか?

『冒険をしない者に殻を破れぬのも、また真理でしょう』

そうだ。その通りだ。
アニメ版では、『冒険をしない者に、殻を破ることは出来ますまい』だったか?
いずれにしても、本当に、良いことを言う。
ここで逃げれば、俺は一生殻を破ることは出来まい。

だから言え。口を動かせ。憧憬の火を灯せ!
手に持ってるラノベを掲げろっ!!

キョン「あ、あのな……紐神様ってのは、この本の表紙に描かれているキャラクターのことなんだ」

よし、これでいい。これで、踏み出した。
これで、覚悟は決まった。

今日俺は……冒険をしよう。



7:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:25:30.473 ID:ux2jZjBg0.net

ハルヒ「ふーん。それで?」

そんな俺の覚悟とは裏腹に、ハルヒの反応は芳しくない。だが、そんなことは最初から分かり切っていたことだ。
それしきの冷水を浴びせられたくらいで、俺の身を焦がすこの熱は冷めたりはしない。

キョン「な、なかなか、斬新だろ?」

ハルヒ「そう?かなり『テンプレートキャラ』に見えるけど?」

なっ!?『テンプレ』……だと?
いきなり出鼻を挫かれてしまった。

だが、よくよく考えれば、ハルヒの言い分はもっともである。
ラノベの表紙に描かれた紐神様は、ツインテの口リ巨乳であり、かなり使い古されたデザインであることは一見して明らかだ。

その上、ハルヒは知る由も無いだろうが、この紐の女神様の一人称は『ボク』。
つまり、僕っ娘であり、それもまた、『テンプレート』に拍車をかけていることは間違いない。

しかし、そんな『テンプレ』でも、ここまで寄せ集めたらどうだ?
逆に斬新なキャラクターに仕上がっていると言えなくもないだろう。

それにこの女神様の斬新さの本質はそこではない。これまでのヒロインに見られなかった、大きな武器を、この神物は持ち合わせているのだ。

キョン「ほら、よく見ろって。ここに紐があるだろう?」

ハルヒ「あ、ホントだ。へぇ、紐で胸を支えるってのは、確かに斬新ね」

よしよし。
なんだ、意外と物分かりが良いじゃないか。
この女神様の魅力をハルヒがすんなりと受け入れたことは、素直に喜ばしかった。



9:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:26:45.033 ID:ux2jZjBg0.net

ハルヒ「それで?」

キョン「……えっ?」

ハルヒに紐神様の魅力をわからせ、充実感と満足感、ついでに達成感に浸りまくっていた俺は、突如、現実に引き戻される。

ハルヒ「いや、だから、それがどうしたって聞いてんの」

それが、どうしたって?
そんなの、ただひたすらに『可愛い』に決まってるじゃないか。
何言ってんだ、こいつ。

キョン「か、可愛いだろう?」

ハルヒ「はぁ?それだけ?」

それだけも何も、他に何があるってんだ。
本日二度目のクエスチョンマークに、ふつふつと怒りが湧いてくるが、ここで怒るのはどうかと思う。

何せ、不可抗力とは言え、話題を振ったのはこちらなのだ。
その話題の中で、俺は一定の水準を満たし、愚かなハルヒは満たされなかった。
ただ、それだけのことだ。

そんな哀れなハルヒに対し、俺が激昂するのはあまりに大人気ないと言える。

なので、仕方なく話を広げることにした。
しかし、どう広げるか。
ああ、そうだ。この方向でいこう。

キョン「お前も頭に紐を付けてるだろう?なら、それでこの紐神様と同じことが出来るんじゃないか?」



10:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/11/27(日) 21:28:12.838 ID:ux2jZjBg0.net

ハルヒ「はぁ?」

三度目のクエスチョンマーク。
こいつはこのリアクションしか返せないのか?

まぁ、いい。この際、仕方ない。
アホなハルヒにもわかるように、説明してやろうではないか。

キョン「だから、お前のその頭の紐で
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年11月27日 23:42
      • ギアス続編決定おめでとう

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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