文香「机の下は居心地がいいのですか……?」
文香(初めはまるで異世界のように感じていたこの事務所にも、すっかり馴染んでしまいました)
文香(もうひとつの家……と言っても過言ではないくらいに……)
文香(……人の多いところは……あまり得意ではないのですが……)
文香(でもここは……とても落ち着きます……)
文香(どうして……なんて疑問に思う必要すらありませんね)
文香(……不思議なものです)
文香(目を閉じれば……今でも書に囲まれた私の領域が簡単に思い出せるというのに……)
文香(それがいまや、書ではなく、たくさんの人や視線に囲まれることになるとは……)
文香(……本当に、不思議なものです)
文香(今の私の興味は、馴染んだこの部屋の一点に向けられています)
文香(……プロデューサーさんの机の下)
文香(そこにはまゆさんと輝子さんが並んで座っていました)
まゆ「……」
文香(まゆさんは……編み物中です)
文香(真剣に……でも楽しそうに編んでいますね……あそこから何ができるのでしょうか?)
文香(きっとプロデューサーさんにプレゼントするものでしょうけど……編み物に造詣は深くないので、わかりません)
輝子「フヒ……」
文香(対して、輝子さんは……きのこの世話でしょうか?)
文香(あのきのこは……なんでしょう?)
文香(きのこにも造詣は深くないので……さっきと同じ言い訳になってしまいました)
文香(物語を読みこそすれ、専門書などはほとんど読まないので……知識はないようなもので……)
文香(……お恥ずかしい限りです)
文香(机の下……なんて、地震でもない限り潜らないものだと思っていましたが……)
文香(こうして机の下に潜む二人に違和感を覚えません……)
文香(……むしろ自然のことのように感じます)
文香(おそらく、二人が……いえ、今日はいない乃々さんも入れて三人が机の下にいることが日常となったからでしょう)
文香(突飛な行動でも、恒常的に続ければそれは日常となります)
文香(この光景を日常と感じるのも、三人の積み重ねによるものでしょう)
文香(……しかし、ひとつ疑問があります)
文香(というよりは、不思議に感じていること……ですね)
文香(……どうして彼女たちは机の下に入っているのでしょうか……?)
文香(……いえ、入るのが日常になっているのですから、おそらくここの居心地がいいからでしょうけど……)
文香(それなら……その居心地の良さっていうのはいったいどこから……?)
文香(……)
文香「……」
まゆ「あの……?」
文香「……」
輝子「お、おーい……?」
文香「……あ」
文香「……失礼しました。少々考えごとをしていたので……」
まゆ「考え事……ですか?」
文香「そう……ですね」
輝子「だ、だいぶ集中してたな……私達が呼んでも気づかなかったし」
輝子「ずっと見られてたから……少し照れた」
文香「……すいません」
輝子「いや……謝ることじゃないから……大丈夫……フヒ」
輝子「でも……な、何をそんなに考え事してたんだ?」
文香「そうですね……」
文香「少し不思議に思ったことがありまして……」
まゆ「不思議に……?」
文香「はい……」
文香「その……プロデューサーさんの机の下というのは、それほどに居心地がいいのですか……?」
まゆ「ええ、とても……」
輝子「フヒ……いいぞ」
文香「即答……」
まゆ「居心地が悪ければまゆだって出て行っちゃいますし」
輝子「だな……心地いいからずっとここにいる……ずっとここにいたい……フヒ」
文香「……それもそうですね」
まゆ「どこに、ですか……?」
文香「はい」
文香「その……失礼かとは思いますが……」
文香「私は、机の下に居心地の良さを感じるとは思っていなくて……」
輝子「フヒ……ばっさり……」
文香「……すみません」
まゆ「いえ……そうですよね」
まゆ「普通はこんなところに潜りませんし……」
文香「……」
文香「ですが、お二人は日常のように机の下に潜んでる……」
文香「ならば、私の知らない魅力があるのでは……と、興味を持ちました」
文香「なので……よろしければ、聞いてみたいです」
文香「お二人がここに居心地のよさを感じる理由を」
まゆ「……」
輝子「……」
まゆ「いえ……そうですね、ここが居心地がいいと感じる理由は……」
文香「……」
まゆ「その……まゆが机の下に入ったのはプロデューサーさんを近くに感じたかったからなんですけど……」
文香「近くに……」
まゆ「はい」
まゆ「この机はプロデューサーさんが普段お仕事に使っている机ですから……いたるところにプロデューサーさんを感じるんです……」
まゆ「置かれているペンからも……しまっている資料からも……普段座っている椅子なんか特に……♪」
文香「はぁ……」
文香(……そういうものなのでしょうか?)
まゆ「そして、ここはそれに囲まれる、一番素敵な場所……」
まゆ「机の下に入ることで……まゆ自身が机になったような気分に慣れるんです……」
まゆ「そしてプロデューサーさんをたくさん感じることができて……うふふ♪」
まゆ「……というのが最初にここに入った理由で……居心地のよさを感じる理由でもあるんですけど……」
まゆ「……それだけでは無いんです」
文香「……」
輝子「私も……最初はキノコのために……って感じだったんだ」
輝子「ここは暗くてジメジメしてて……みんな喜んでたから……」
輝子「ほら……今も喜んでるだろ……フヒ」
文香「はぁ……」
文香(……私には違いがよくわかりませんが)
輝子「だから……ここにいたんだけど……」
輝子「今は……それ以外にも居心地のよさを感じてる……と思う……」
輝子「それはきっと……まゆさんとボノノちゃんがいるから……」
文香「!」
まゆ「ええ……まゆも、そう思います」
まゆ「お二人と過ごすこの空間が何より暖かくて……居心地がいいんです」
輝子「私も、すごく落ち着けるんだ……フヒ」
輝子「それに……困ったときにすぐ助けてくれるし」
まゆ「うふふ、お互い様ですよ……♪」
文香「……なるほど」
文香(……机の下とは、おそらくシェアハウスのようなものだったのでしょう)
文香(集まる理由こそ異なれど……同じ共同体で接していくうちに、仲間への絆が深まっていく……)
文香(そしてそれは、まるで家族のように強い絆で結ばれるのでしょう……)
文香(だからこそ、三人は居心地の良さを感じ、机の下に今もなお潜んでいるのかもしれません……)
文香(……)
文香(……少しだけ、羨ましいですね)
輝子「文香さんも……入ってみるか……?」
文香「……なぜでしょうか?」
輝子「あ……その……」
輝子「な、なんか羨ましそうに見えた……から……とか」
文香「!」
文香「……顔に出てましたか?」
輝子「……わりと」
文香「そうですか……」
まゆ「うふふ……」
輝子「フヒ……」
文香「……恥ずかしい」
文香「机の下に……ですか」
輝子「ああ……机の下は来るもの拒まず……去るもの追わず……フフ」
文香「そうですか……」
まゆ「……先ほどまでの理由はあくまでまゆのであり、輝子ちゃんのです」
まゆ「もしかしたら、文香さんもまた別の居心地の良さを感じるかもしれませんよ」
文香「……」
文香「……少しだけ、入ってみてもいいですか?」
輝子「もちろんだ……フヒ」
まゆ「それでは、まゆたちはどきますねぇ」
文香「……ありがとうございます」
文香(……何事も、体験です)
文香(少しでも興味を持ったのならば、体験してみるといい……これもアイドルをはじめてから学んだことですね)
文香(書で満足せず……自らの体を使って……)
まゆ「……文香さん?」
輝子「きゅ、急に……と、止まってどうしたんだ……?」
文香「あ……」
文香「いえ……なんでもありません……」
文香(……しかし)
文香(書から少し離れても……自分の世界にふけってしまう癖は治りませんね……)
輝子「フヒ……どうぞ……」
まゆ「とはいっても、今は誰も入ってませんけど……」
輝子「トモダチはまだ中にいるぞ……」
まゆ「……そうでしたね、ごめんなさい」
輝子「いや……」
文香「……」
文香(……ふむ)
文香(なるほど……これが机の下)
文香(……想像していたものとは違いました)
文香(もっと無機質で冷たいものかと思っていましたが……そんなことはなく……)
文香(確かに、薄暗く……静かなのですが……ほのかに暖かい……)
文香(……どこか、書庫を思い出す雰囲気です)
文香(あの、心地のいい閉じた空間を……)
文香(書の匂いこそしませんが……でも……どこか同じ空気をまとっているように思います)
文香(……なるほど)
文香(これは……心地いい……)
文香「……」
輝子「ま、また固まった……」
まゆ「うふ……でも楽しそうですよ」
輝子「だな……」
輝子「まゆさんも最初に入ったときあんな感じだった……フヒ」
まゆ「……」
文香(この中で本を読んでみたら……きっと……)
文香「……」
文香「あの……もう少しここを借りていても……?」
まゆ「うふ、構いませんよぉ」
輝子「堪能してくれ……フヒ」
文香「ありがとうございます」
文香「……」
文香「……」ペラ
文香(……)
文香(アイドルになってから……久しく体感していませんでした……)
文香(ひっそりと閉じた空間で、書へと入り込む……この感覚を……)
文香(……)
文香(……)
文香(……ふふ)
文香「……」
文香「……」ペラ
コメント一覧
-
- 2016年11月29日 19:21
- 机の下に文香がいてくれるなら何でも頑張れる
-
- 2016年11月29日 19:29
- 四次元空間にしないと入りきれなくなりそう
-
- 2016年11月29日 19:38
- うーむ、新たな扉を開いたか文香。
さて、次は膝の上だな。
-
- 2016年11月29日 19:40
- 仕事場の机の下に文香が居るとか…
最高かよ。
こんなの張り切って出勤どころか
休日、祝日も喜んで出勤するわ。
-
- 2016年11月29日 19:45
- ああ、机になりたい…
-
- 2016年11月29日 20:03
- アンダーザデスクに新たなメンバー追加か…
-
- 2016年11月29日 20:15
- 机の下ってなると…どうしてもさ…ほら、ね…?
股の間から顔出してくれたら嬉しいかなって
-
- 2016年11月29日 20:20
- 文香SS増えろ〜
-
- 2016年11月29日 20:41
- Pの机の下はガバガバ
-
- 2016年11月29日 20:46
- この空間いい匂いしそう
-
- 2016年11月29日 21:02
- ちょっと待って?
気づいてないフリして仕事をするPに赤面して言い出せないふみふみが入ってないやん!
ちひろに連絡させてもらうね?
-
- 2016年11月29日 21:43
- 文ちゃんが机の下にいるって書いてあるから、家の机の下見たら誰も居なかった
-
- 2016年11月29日 21:50
- ままゆでもギリギリアウトだったのに、ふみふみが机の下に居たら妙な想像しちゃうだろ(興奮
-
- 2016年11月29日 21:56
- コミュやっててこのネタ絶対誰かやるだろうなぁ……と思ってた
-
- 2016年11月29日 22:07
- ※7 13
うむ
……ウム!
-
- 2016年11月29日 22:24
- 机
下←このポロンチョしてる部分がちょっとやらしいよね
-
- 2016年11月29日 22:36
- 今日は暑いな〜誰も見てないから脱いで椅子に座るか〜(ポロン)
-
- 2016年11月29日 22:45
- ※1,4
マジ共感w
-
- 2016年11月29日 22:50
- キノコ帽子かぶってるふみふみとか反則だろ!!
お持ち帰りしたい!!
-
- 2016年11月29日 23:11
- ええい某SSの足がサツ人的に臭いPを呼んでくれるわ
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